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キャリア - 2023.05.29公開

コーヒーカップモデルを解説!信頼関係の構築が課題解決につながる

キャリアカウンセリングやスクールカウンセリングなど、近年、「カウンセリング」という言葉を様々な場面で見聞きするようになりました。

このページでは、カウンセリングとはどういうものなのか、また、國分康孝氏が提唱したカウンセリングモデルである「コーヒーカップモデル」とはどのようなものかを詳しく解説していきます。

現在カウンセリングに関わっている方、自身や身近な方が問題を抱えているという方、様々な方の問題解決になれば幸いです。

そもそもカウンセリングとは

カウンセリングとは

カウンセリングとは、悩みを抱える相談者に対して、問題解決へと導く支援をすることです。

カウンセリングは、心理・医療、キャリアなど、各分野において専門の資格を持ったプロフェッショナルが実施します。

具体的にカウンセリングを行うのは、心理カウンセラーやキャリアコンサルタントなどです。

カウンセリングの仕組み

基本的にはどの分野のカウンセリングも、「相談者の悩みを共有する」「カウンセラーが対話の中で問題を掘り下げる」「相談者の気づきや問題解決の方法を導き出す」という流れです。

この中で取り入れられる具体的な技法や、より詳細な方法のモデルは様々あります。

その中でも本記事では「コーヒーカップモデル」に注目し、後に詳しくご紹介していきます。

なぜカウンセリングは重要なのか

相談者が抱えている問題の深刻度合いに関わらず、カウンセリングを受けることで以下のようなメリットを得ることが期待できます。
 

  1. 自身の話を受け止めてもらえるという安心感を得る
  2. 自分の考え方の癖を知ることができる
  3. 問題を客観的に見ることができ、前向きに受け止められる
  4. 問題解決のための具体的な手段を知ることができる。取り組むことで成長できる

 
一人で抱え込むよりも、カウンセリングを行うことによってより有効な方法で解決できる可能性が高まるのです。

コーヒーカップモデルとは

コーヒーカップモデル提唱者:國分康孝氏のカウンセリング論

「コーヒーカップモデル」とは、日本の心理学者である國分康孝氏が提唱したカウンセリングのモデルのことです。

コーヒーカップモデルでは、カウンセリングを「言語的、非言語的コミュニケーションを通して、行動変容を試みる人間関係」と定義しています。
参考)一般社団法人 日本職業協会

これは、相談者と良好な信頼関係を築き、目標・計画を設定して取り組んでいく包括的・折衷的アプローチの1つとされています。

「現在地」から「目的地」への移行をサポートする「カウンセリング」

國分氏の考えるカウンセリングとは、ある人が「現在地」から「目的地」へ移行するのを支援するものです。

進路や学業、就職やキャリア、家族などとの関係、人生において様々な問題や課題が生じますが、それらを乗り越え、臨むステージに進めるよう支援するのがカウンセリングということです。

また、國分氏は、カウンセリング心理学を学ぶということは、基礎となる様々なスキルを身につけながら、状況に合わせて対応できるカウンセリングのモデルを確立することだと述べています。

國分氏は、「コーヒーカップモデル」を自身の中心に据えて、必要に応じて他のモデルを取り入れながら、カウンセリングとカウンセリング心理学に取り組んでいきました。

このコーヒーカップモデルと、國分氏が提唱するカウンセラーに求められる人間性について、詳しく紹介します。

國分康孝氏が提唱するカウンセラーに求められる4つの人間性

國分氏は、カウンセラーに求められる人間性(パーソナリティ)を4つ挙げています。

人好き

人好きは、他人だけではなく、自分のことも好いている状態です。自己受容できる自分もできない自分もありのままに受け入れていることができている状態。

共感性

共感性はカウンセラーは日常生活でできるだけ感情体験をしておくのがよいとされています。感情体験が多いほど、他者の感情を理解し、想像できるためです。

無構え

無構えは、天真爛漫で、防御がない人のほうが、カウンセラーには好ましいとされています。後に「コーヒーカップモデル」の説明の中でも詳しく述べますが、カウンセリングは、カウンセラーと相談者の信頼関係が重要になるためです。

自分の人生

自分の人生が幸福なとき、初めて人の幸福を喜ぶことができます。そのため、カウンセラーは自分自身の人生を持ち、大切にしなくてはなりません。

以上の4つの人間性を念頭に、「コーヒーカップモデル」について考えていきましょう。

コーヒーカップモデル 3段階のプロセス

コーヒーカップモデルは、「リレーションづくり」「問題をつかむ」「問題解決の段階」の3つのプロセスで進められます。このプロセスを図にすると、コーヒーカップの断面のように見えることから「コーヒーカップモデル」と名付けられました。

それぞれのプロセスについて、詳しく解説します。

リレーションづくり(面接初期)

カウンセリングにおいてリレーションとは、相談者とカウンセラーとの関係作りを指します。

まず、面接初期では言語的スキルによってリレーションをづくりをしていきます。

相談者に共感する、相談者の言葉を肯定する、相談者の考えを受け止め明確にすることなどがこれにあたります。

具体的な技法としては、受容、繰り返し、言い換え、明確化、支持、質問などが挙げられます。

また、カウンセリングでは、相談者とカウンセラーの間に信頼関係が形成されることを「ラポール形成」と呼びます。

問題をつかむ(面接中期)

面接中期では、非言語的スキルによって問題をつかみます。

カウンセリングでは、相談者の話を深く掘り下げ、問題の核心を探ることが重要です。また、相談者が問題をどのように受け止めているか、主観的で歪んだ認知が働いていないかといったことの見極めも必要です。

相談者の話を聞き、質問などを繰り返す中で、相談者がどのような言動を取るかを洞察することが重要です。

具体的には、視線、表情、ジェスチャー、声の質・量、席のとり方、言葉づかい、身だしなみなどがポイントになります。

問題解決の段階(面接後期)

面接後期は、明らかになった問題を解決する、処置を行う段階です。

カウンセラーは、アドバイスや情報提供から問題解決を図ります。医療機関や弁護士などの力が必要と判断する場合は依頼を行います。

具体的な技法は、リファー、ケースワーク、スーパービジョン、コンサルテーション、具申などです。

問題の解決方法は、分野とその内容によってアプローチ方法が大きく異なる場合があります。その時々で効果的な措置を講じることが非常に重要です。

コーヒーカップモデルに当てはめて課題を解決しよう

コーヒーカップモデルは、カウンセラーなど専門的な職種だけでなく誰でも有効活用できるものです。

私たちは日常生活の様々な場面で、自身の問題、周囲との関係構築、身近な人の問題と対峙することがあります。どのように解決するか、手助けするかは、身近な問題であるはずです。

ここでは、職場での問題を例に挙げ、課題解決につながる場合をご紹介します。

職場におけるコーヒーカップモデルの活用

ウンセリングがありますが、職場ではこの他に管理職が行う「ラインケア」というメンタルヘルス対策があります。

ラインケア

「ラインケア」は、部長・課長・係長といった管理職が、従業員と1on1などを行うことによって、職場環境を把握し、改善をしていくことで従業員の健康を守るメンタルヘルス対策です。このラインケアを「コーヒーカップモデル」に当てはめると、まず、第一段階として「リレーションづくり」がなされている必要があります。

リレーションづくり

「リレーションづくり」とは、言語的スキルによって信頼関係を形成する段階と説明しましたが、職場でどのように可能になるでしょうか。

國分氏はカウンセリングにおけるリレーションの形成は「カウセリングという機会をつくることで生まれやすくなる」と述べています。これを職場の1on1などに置き換えてみると、機会を多く設けることで、単なる上下関係による業務指導ではなく、一個人として対話しやすい環境になると言えるでしょう。

上司が部下の言葉を受け止める、共感する、肯定する、言い換えて明確にする、これらを行うことで、信頼関係が生まれやすくなります。

そのため、ラインケアのような場面でも、このコーヒーカップモデルの「リレーションづくり」が有効と言えるでしょう。

【あわせて読みたい】

【職場を変える!】ハーズバーグの二要因理論を解説

 

第二段階 「問題をつかむ」

「コーヒーカップモデル」におけるカウンセリングの第二段階として「問題をつかむ」を挙げました。非言語的スキルによって問題をつかむ段階です。

部下のどのような言動に注目するかは、専門的な知識がないと難しいところもあるかもしれません。

目的は、問題の本質を探ること、問題を掘り下げることです。例えば、部下が特定の状況下、特定の話の時に言葉が少なく、緊張している様子が見られることがあれば、素直に話せない状況や、部下目線でしかわからない問題を抱えている可能性があります。

上司から新しい視点や気づきを与えられることでより前向きに取り組めることもあるでしょう。

最終段階 「問題解決」

「コーヒーカップモデル」の最後は「問題解決の段階」、明らかになった問題を解決する処置を行う段階です。

部下に気づきを与え、部下が取り組むことで問題が解決する場合。上司が他の従業員に働きかけを必要とする場合。必要に応じて、専門機関への受診や相談を勧める場合など、様々なパターンが考えられます。

また、さらに上の権限の役職者などに相談・報告を行う場合は、不必要な情報を口外しないことが重要です。相談した話が適切に扱われなかった場合、部下や他の従業員が不安を抱く原因になってしまいます。

部下の立場で考えることが重要です。

ラインケアはモチベーションアップにつながる

1on1などの「ラインケア」は、従業員の能力を育てることやモチベーションアップにつながります。マネジメント側にとっては、ただ負担になるだけでなく、部下を育てる力を高め、職場を動かす能力のアップにつながるというメリットがあるはずです。

そのため、コーヒーカップのモデルを活用することで、信頼関係の形成や問題解決が大きく期待できると言えるでしょう。

まとめ

このページでは、「コーヒーカップモデル」について解説してきました。

そもそもカウンセリングとは何かということから、國分氏の提唱した「コーヒーカップモデル」、カウンセラーに求められる人間性などについてや、職場でも活用できるコーヒーカップモデルについても紹介しました。

現在カウンセリングに関わっている方、自身や身近な人が問題を抱えているという方、多くの方のご参考になれば幸いです。

Q&A

カウンセリングとは何ですか?
カウンセリングとは、悩みを抱える相談者に対して、問題解決へと導く支援をすることです。
「コーヒーカップモデル」とは何ですか?
「コーヒーカップモデル」とは、日本の心理学者である國分康孝氏が提唱したカウンセリングのモデルのことです「リレーションづくり」「問題をつかむ」「問題解決の段階」の3つのプロセスで進められます。このプロセスを図にすると、コーヒーカップの断面のように見えることから「コーヒーカップモデル」と名付けられました。
國分康孝氏が提唱するカウンセラーに求められる4つの人間性は何ですか?
「人好き」「共感性」「無構え」「自分の人生」の4つです。
コーヒーカップモデルはカウンセリング以外でも活用することはできますか
上司と部下が行う1on1などでもコーヒーカップモデルを活用することで、信頼関係の構築や、課題解決が期待できます。

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