「+DESIGNING×リカレント」のコラボ企画第2弾となる特別授業を開催しました。講師は博報堂のアートディレクターで「新一番搾り」「パルコアラ」「HUSTLER」「ZOFF」「nexus7」など、様々なブランドや企業のデザインを手掛ける小杉幸一氏。また、小杉氏の小学校時代からの友人でWebデザイナー/リカレント講師の中里寛先生にも特別にご参加いただきました。当日はたくさんの方にお集まりいただき、満席の会場で授業がスタートしました。

アートディレクター/グラフィックデザイナー小杉 幸一 氏
講師
アートディレクター/
グラフィックデザイナー
小杉 幸一

プロフィール 博報堂 アートディレクター/グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学卒。「新一番搾り」「パルコアラ」「HUSTLER」「ZOFF」「nexus7」など、様々なブランドや各種イベント、企業のデザインを手掛ける。

受賞歴 東京ADC賞/JAGDA新人賞/NYADC賞/カンヌ国際広告祭<DESIGN部門>GOLD/ACC賞/ADFEST グランプリ/JRポスターグランプリ最優秀賞/ギャラクシー賞/インタラクティブデザインアワード/Spikes Asiaなど国内外で数多く受賞

Webデザイナーリカレント講師 中里 寛氏
特別出演
Webデザイナー
リカレント講師
中里 寛

プロフィール 多摩美術大学卒。
デザイン事務所で企業サイト制作や私立大学サイト運営に携わり、その後独立。フリーのWebデザイナーとして活躍。
リカレントでは専任講師としてWebデザインの授業を担当。

小杉幸一氏の代表作品

小杉幸一氏の代表作品 「新一番搾り」2014 KIRIN/「nexus7」2013 Google/「パルコアラ」2009 PARCO/「東京国際映画祭」2013 東京国際映画祭/「HUSTLER」2014 SUZUKI

第1部 「擬人化デザイン」のメソッド

多くの商品やブランドの広告を手掛け、世の中に浸透する広告を打ち出してきたアートディレクターの小杉氏。第1部では、小杉氏が実践してきた「擬人化デザイン」のメソッドを紐解く講義が行われました。
デザインをする時に、まずは手掛ける商品やブランドを俯瞰してみることが大事という小杉氏。そのために有効なのが、商品やブランドを「擬人化する」というプロセス。この商品はどういう性格か?どういうセンスか?どういう話し方をするか?といった「人格」を考えることでマクロな視点で商品をとらえることができるようになると言います。また、人格のイメージから色=性格、フォント=音色、ポイント数=ボリュームを選択すればビジョンも明確になり、デザインの方向性も定まります。「アートディレクションとは、色・トーン・書体・写真などを駆使し、目的となる確固とした人格をつくりあげること」と小杉氏。商品を「擬人化」することで、多くの人が関わる制作チーム内でも共有イメージが生まれてゴール(目的)も明確になり、さらには商品に個性的で強い「人格」を与えることができればできるほど世の中に浸透し機能するデザインになる、と具体例を挙げながらわかりやすく説明していただきました。

続いて、スライドに映し出されたのは小杉氏がこれまでに手掛けた商品やブランド。実例を挙げながら、擬人化デザインの手法にさらに迫ります。
まず取りあげられたのは、KIRIN「一番搾り」。2013年にはフローズン生、ツートン生といった若者向けビールを発売するものの、ブランドイメージは重厚、厳格で若者向けというイメージが市場に伝わり難い状態でした。そこで小杉氏が目指したのは商品イメージを「楽しくて誰とでも友達になれる若者」という人格に一新すること。まず、商品のロゴはそのままにキャッチコピーに「一番搾り」を採用し、フォントを軽やかな印象の明朝体に、色は「軽快・カジュアル・好奇心」を連想する黄色を選びました。このイメージを商品に関わる全てにおいて統一することで核となる人格が浸透し、広告やCM展開でもブレることなくデザインが決まっていきました。
次は、「パルコ」のグランバザール。「親しみのある人」という人格を目指して生まれたのが愛らしい表情の「パルコアラ」。キャラクターを生み出すことによって、場合によってはゴチャゴチャとした印象になりがちなグランバザールのイメージを統一し、その上で親しみやすさをアップさせました。続く「HUSTLER」では、軽自動車のイメージをカラフル、ポップで面白いものに変えるため「わくわくできる人」という人格をつくりあげる過程が紹介されました。

第2部 自分の名前を擬人化させるデザインワークショップ

後半の第2部では、自分の名前をモチーフに「擬人化メソッド」を体験するワークショップが行われました。「まずは自分のキャラクターを言葉に置き換えてみてください。そのワードを第3者に伝えるとしたら、色は?書体は?と表現を考えてみましょう」と小杉氏が説明すると、色鉛筆やカラーペン、画用紙など様々な画材を使って制作がスタート。皆さん真剣な表情で課題に取り組み始めました。このワークショップには、小杉氏の友人でwebデザイナーとして活躍するリカレント講師の中里先生も加わり、続く作品講評会では小杉氏と共に講評も行っていただきました。講評会では、立体的なものや動きがあるものなど個性的な力作が続々とスライドに映し出され、制作者のプレゼンテーションでは、どよめきや笑い、驚きの声などがあがりました。「擬人化デザイン」のメソッドに基づいて制作された作品はどれも自己分析や表現方法がしっかりしたもので、その効果をうかがい知ることもできました。

ワークショップの締め括りに「出来上がった作品を周りの人と交換して、自分が意図したことがどれぐらい伝わっているかを実感してください」と小杉氏。今回のワークショップでは、自分が意図した「人格」をどのようにアウトプットにつなげていくかを体験しました。実際のアートディレクションの仕事では、クライアントにヒアリングすることで内面にあるものを引き出し、目標とする「人格」を固め、それが誰にでも伝わるように丁寧にアウトプットしていきます。
「何となくではなく、意図してデザインしなければ伝わらない。デザイナーとしてアウトプットに責任を持つことも重要だと思っています。みなさんも頑張ってください」小杉氏のあたたかいメッセージが参加者の心に響く授業となりました。

受講者の作例

  • 楽しいことが好きで、みんなで盛り上がれるビンゴに自分のイニシャルをちりばめた作品。

  • 昔、レースをしていた経験からチェッカーフラグ風のデザインに。タイヤの形をイニシャルにして、引っ張ると動く仕掛けに。

  • 苗字の「ヨ」をデザイン。好き嫌いがはっきりしている性格を白と黒で、テープをよれさせて抜けている性格を表現。

  • スカイダイビングに興味があり、即行動したけれどパラシュートをつけ忘れた・・というストーリーで性格を表現。