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インテリアコーディネート(インテリアコーディネーター)スペシャリスト対談

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スペシャリスト対談
内田利恵子 × 吉田ジュンコ
福祉住環境コーディネートでも、インテリア性をもっと考えたい
吉田:

ここ数年で、「バリアフリー」という言葉は広く浸透してきましたね。お客様からのご依頼は、ほぼ100%そういったことを意識してのものが多くなってきているように感じます。例えば、50代以上の方々からの「こんなところが使いづらい」とか「こんなところが危険」とかですね。若い方々からは「ユニバーサルデザイン」という言葉でアプローチしてこられる事も多くなってきていてビックリしています。

内田:

それは、マスメディアの影響もありますよね。高齢化とか、年金の受給額が削減されるとか、老後の不安を煽り立てるようなことを言ってますでしょ。そうすると、皆さんの関心が集まるんですね。

吉田:

そうですね。皆さんが住空間を通してご自身の将来の生活というものを、シミュレーションできるようになったということでしょうか。年をとったり、体調が悪くなったりするのは容赦なく訪れること。それを皆さんが当たり前のこととして、受けとめられるようになったのでしょうね。

内田:

そうですね。年齢に関係なく、将来の生活ビジョンを持つことは大切ですね。

吉田:

一方で、福祉住環境を考える時には、むしろ明るいイメージで取り組んでいただきたいと思っています。例えば、光る素材とか、あるいは明確な色調のものを使いたいのに、障害をお持ちの方や高齢者のご家庭ではそれを発揮することができないとか、無駄なことだろうとか、後ろ向きになることはないと思うのです。これは私がインテリアコーディネーターのビギナーだった時の経験談ですが、定年を迎えたあるご夫婦のお宅のプランニングの山場にさしかかった時、既に了解をいただいて進行していたナチュラルテイストプランを「もう一度考え直したい」というご連絡を奥様からいただきました。「実は華やかなピンク色を使って欲しいんだけど駄目かしら」って。そう言われて思い出すと、スリッパとか奥様のエプロンのパイピングとか、所々にピンク色が散りばめられていたんですね。そのことに気づいた時、私は雷に打たれたようでした。どうしてヒアリングの際に、気づいてあげられなかったのだろうって。

内田:

高齢者だからといって、落ち着いた色を使わなきゃいけないとは限らないと思いますね。

吉田:

そうなんです。ですから、奥様のご要望を踏まえて再度、プレゼンをしました。でも、ピンクという色を必ずしも広い面積に使うプランに変更した訳ではなく、ピンク色が一番美しく見える配色、ピンクをイメージできるインテリアコーディネーションをプレゼンした訳です。アクセントタイルにポイントとしてピンクを添えたり、台所の調理器具やナプキンなどの小物を揃えたりして、全体的にロマンティックなイメージに仕上げました。

内田:

きっと、そのお客様もとても満足されたんでしょうね。必ずしもお客様はご自分の希望を、的確な言葉で伝えられるわけではないので、言葉の中にある、潜在的な本音というものを汲んであげられるかどうかがポイントです。そのことを紐解くコミュニケーションがお客様とできることも大切な要素です。住まい作りのお話をするとなると、変に気構えてしまうんでしょうね。

吉田:

そうですね。住まいづくりは、生活や人生を変えることにもなる重要な協同作業ですからね。

お客様一人ひとりのご意見を、フレキシブルに反映できる力を
内田:

私達インテリアコーディネーターは、お客様と何気ないお話をしながら、お客様の暮らしの細部をどこまでイメージできるかどうかということが大切です。また、福祉住環境や、バリアフリーというテーマにしても、手摺りがあるとか段差をなくすとか、ハードなところではいくらでも示唆することはできますが、手摺りさえついていれば、段差がなければ、福祉住環境だというふうに考えて欲しくないということは言えますね。そして、もう一つ大切なことは、高齢者や障害がある方が自力で生活しようとする意志を、できる限り尊重してあげることだと思います。

吉田:

そうですね。これも、ある年輩のご夫婦のお宅を設計した時の事ですが、段差を敢えてつくったことがあります。もちろんインテリアに配慮した手摺りをつけて、アップダウンの動作が日常頻繁に行なわれるようにしたのです。

内田:

マニュアル的には危険なことだし、どちらかというとやってはいけないという部類に入ることですよね。

吉田:

おっしゃるとおりなんですが、ご夫婦が一日に何回も「よいしょ」って、この段差を上り下りすることによって、「足腰が鍛えられた」って、おっしゃっていただいたんですよ。

内田:

もちろん、基本的知識は充分に押さえておくという前提で、応用はいくらでもできますよね。

吉田:

福祉住環境とか、バリアフリーに関わる最低限のことは配慮しながらも、住み替えをしたり、リフォームすることによって、今より、皆さんが元気になって欲しいし、楽しく過ごして欲しいのです。そして、積極的にお客様を招いたりして、人と接点を持って欲しいなと。「皆さんの迷惑にならないように」と暮らしていらした方も、もっともっとオープンにね。

内田:

そういう意味では、フレキシブルにお客様のご要望を汲み取り、生活に広がりが出来るような提案をさせていただく事に大きな意義がありますよね。中には、とても細かくお気づきになって、多くのご要望をおっしゃってくださるお客様もいらっしゃるでしょ。いろいろとこだわりをお持ちだったり、「あれはどうなのか、これはどうなのか」と、営業スタッフもたじろいでしまうくらい、ものすごく熱心でいらっしゃる。それはそうですよね、一世一代の高いお買い物ですから心配で仕方がないと思います。私たちはその方よりも、もっと細かい注意を払い、安心していただけるよう留意していく必要があります。

生活をコーディネートする、トータル・コーディネートが理想
内田:

ところで、受講生の皆さんには、授業以外でもショールーム見学とかセミナーやイベントへの参加など、自ら視野を広げるために是非やっていただきたい事がありますよね。ご自分で積極的に足を運んで、そこでいろんな経験をしていただきたいですよね。例えば、椅子の座り心地を確かめてみるだけでなく、いろいろな姿勢を取って、何をするための椅子なのかなと考えてみたり、浴槽を跨いで高さを調べたり。そこでは自分が、お客様の立場になってみるんです。吉田先生は、受講生にどんな勉強方法をおすすめしてますか。

吉田:

そうですね。皆さんには楽しく学びながらご自身の幅を広げて欲しいと思っていますので、日常の何気ない1コマ1コマから、たくさんのことを感じ取れるトレーニングをしていただきたいですね。例えば、ご自分の家から、駅までの街並みのリサーチ。いつもは慌ただしく通り過ぎてしまう景色の中にも新しい発見がたくさんあるんです。10分早く家を出られるなという日に、今日は「窓バージョンでいこう」って、通りにあるお宅の窓を全部見る。いろいろできますよ。屋根バージョンとか、壁バージョンとか。あとは、照明が灯る夜はどうか、という感じでリサーチしていくんです。それだったらすぐできるでしょ。そのとき特に何かを調べようとか気構えずに、全体の中の「ある部分」がどういう役割になっているかをよく観察して欲しいわけです。よく展示会に足を運んでも「どこを、何を見たら良いか分からなかった」という方がいますが、こうしたトレーニングを繰り返すうちに、モノや色や街並みのメッセージが聞こえてくるはずです。こういう事が、お客様の言葉からいろいろ汲み取るコンサルティング能力にも繋がっていくのだと思います。洗濯物の干し方ひとつからも、本当にいろいろなことが見えてくるんです。何気ない日常の生活をデザインすることから、内装を考えられるようになっていき、ひいては景観も美しくなり、都市形成に繋がっていくと思うんです。

内田:

住まいだけでなく、都市環境設計や公共施設設計など、日本でも福祉やバリアフリーというテーマはとても重要。北欧、いわゆるスカンジナビアのインテリアデザインは日本でも大変人気ですが、福祉住環境においても、最も発展しているのがデンマーク、ノルウェー、スウェーデン。このような国では、例えば車椅子は特殊なものではないんです。我々はまだ、ここはバリアフリー、ここはその設備がないと予め確認しておかないとお店にも入れないというようなところがありますからね。福祉住環境の歴史が最も長いデンマークなどをぜひ参考にしていきたいものですね。

吉田:

欧米ですと、景観保護も法律で定められているんです。日本には、景観保護を意識した概念がまだまだ少ないんですね。でも、こうした意識は、プロとして仕事をしていく以上、とても大切な事だと思います。問題意識を持つことによって、普段見えてこなかったことが見えてくる。まだまだ、改善できる点はたくさんあります。実現していくには、そうしたモチベーションを持った新しい人材が、もっともっと必要ですよね。

福祉住環境を考える時は、むしろ明るいイメージで取り組みたい。住み替えやリフォームで皆さんが元気になり、楽しく過ごせるように。

内田 利恵子
内田 利恵子Rieko Uchida
福祉住環境コーディネーター/インテリアコーディネーター/
リカレント 福祉住環境コーディネート講座 主任講師

インテリアコーディネーターとして、15年以上のキャリアを持つ。また、福祉住環境コーディネーター1級取得者で、リカレントでは、福祉住環境コーディネート講座の主任講師として、指導力・資格合格率など高い実績を誇る。

吉田 ジュンコ
吉田 ジュンコJunco Yoshida
インテリアアーキテクト/ライフスタイルプランナー/
リカレント インテリアコーディネート講座 主任講師

住空間デザインや商業空間・公共施設プロデュースに従事。テレビなどの各メディアでもリフォームナビゲーターとして活躍。リカレントでは、インテリアコーディネート講座の主任講師として、受講生からの人気も高く、膨大な修了生をインテリア業界に導いている。

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