照明デザインスペシャリスト対談
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スペシャリスト対談
河原武儀 × 加藤明
空間デザインにおいて、「光」が重要なファクターに。
河原:

日本のデザインや設計などクリエイティブな仕事は昔から世界的な評価が高いですが、最近では日本の照明デザインも評価を受ける場が増えてきたと感じますね。例えば、5月に開業した「東京スカイツリー」は全ての照明にLEDを使用し、江戸紫というカラーライティングのグラデーションが世界の多くの人々に感動を与えました。

加藤:

日本人には「日本流」とも言える感性があって、物事を美しく見る見方をもっていますからね。

河原:

そうですね。日本人はその美的感覚や感性で、提灯(ちょうちん)とか行灯(あんどん)とか、そういうあかりに美しさを感じてきました。

加藤:

昔からのDNAが我々にも受け継がれているのだと思います。「光」は、カタチがないから捉えることができないもので、妙なことや不思議なことが唯一残っているものですから、非常に魅力的です。私は、空間に関わるインテリアを中心にしたデザインをしていますが、今、「光」がとても大事なキーワードになっている時代だと感じます。空間の中で照明は1つの素材に過ぎませんが重要なファクターであることは間違いありません。

河原:

光は人間の心理や行動、健康にまでも大きな影響を与えますからね。例えば、照明には「照度基準」が定められていて、オフィスのデスクの上はこれぐらいの明るさがないといけないとか、推奨される照度がある。それを目標値として照明が計画されてきたわけですが、その基準の根拠はあいまいで日本の照度基準は外国と比べても高く設定されている。だから、LEDの場合だと睡眠障害を起こすぐらい明るすぎたりするのです。これでは、いかに綺麗で使いやすい空間をつくったとしても、光とか明るさが精神的な豊かさにダメージを与えてしまいます。

加藤:

その通りですね。そういう状況の中で、空間をデザインする者は何をすればいいのかと考えた時、私はメンタル的な目的に準じた空間づくりをしたいと思いました。最近では、老人ホームやケアセンター、ケアセンターを併設した病院の計画にも携わっていますが、医療の分野では、各々の空間に研究し尽くされた形がある。例えば、個室の窓はこの向きが良い、ベッドの大きさはこれぐらいが良い、洗面台は入り口の近くにあるのが良いとか。ですが、その決まった理由を乗り越えてもう少し豊かにしていくことができないかと思うわけです。そうなると天井に単純にシーリングライトをつけるのではなく全て間接照明にするとか、従来の光源をLEDに替えて朝昼晩の時間帯や天候によって光のあり方をコントロールする仕掛けをつくるとか、そういうことに注視して手を抜かずに仕事をしていくことが大事になります。

河原:

おっしゃるように、これからは高齢者・介護・医療の施設や個人宅、オフィスなど人間が長い時間を過ごす場所の「光」を考えていかなければならないと思います。商業施設やアミューズメントパークなどのライティングは世界的なレベルになっていますから、次は個人に向けた空間ですね。現状では、一日中同じ明るさ・同じ色の照明が大半ですから。

加藤:

そうですね。そういう部分では日本は大きく遅れをとっています。今後は日本独自のあかりや明るさをつくっていく必要がありますね。

明るさの追求を終えて光の質、デザインを求める時代へ。
河原:

東日本大震災以降、人々の省エネや節電への意識は大きく変わったと思いますし、寿命や消費電力等でかつてない性能をもつ「LED」も普及したと思います。ですが、私はそろそろ次の段階に進まなければならない時期がきていると感じています。LEDが登場して、照明メーカーの間で起きたのは明るさの競争でした。ルーメンパーワット、つまり1Wに対する明るさの追求に開発費がつぎ込まれたのです。これでは省エネにもなりませんし、明るさの呪縛から解き放たれる必要があります。

加藤:

リノベーションの仕事でも、ハロゲンランプやシリカランプなどパワーを使う照明をLEDに替える場合、依頼主は「同じ明るさになればいい」としか言わない。ですが、同じ明るさにする必要は全くないのです。なぜかというと光そのものが違うものだから、同じ明るさを復元する必要はないのです。それよりも、もっと豊かで効果のある光をデザインして、フレッシュな空間に生まれ変わらせる方がLEDの良さが活きてきます。

河原:

今までの照明の代替という考え方がいけない。

加藤:

そうなんです。まず、違う光というところから始めなければいけない。ですから、上から下ばかり照らすのではなく、下から上を照らしてもいいですしね。光源が変わることによって様々な仕掛けができる可能性がありますから。結局、LEDが普及して最初に起きたことは中身だけがLEDに変わったということなのです。それはおかしいということに気付いて考えなきゃいけないですね。

河原:

私は、これからは「電気の省エネ」だけではなく、「明るさの省エネ」という新しい方向に進んでいく必要があると思っています。LED時代だからこそ明るさの追及はそろそろ止めて、陰影礼賛じゃないですけど暗い場所の啓蒙もしていかなければならない。「東京スカイツリー」が美しいのは周りが暗いからであって、明るい所と暗い所の間にできるグラデーションに良さがある。全てが明るいところに美はないですよ。

加藤:

震災直後に関東では計画停電を経験して、「暗闇にも良さがある」という人がいました。ですが、1年が経ち周りを見渡してみると街の明るさもライトアップも元に戻っていて、何も変わっていない。

河原:

そうですね。何かに気付き始めている人が確かにいたし、変わるチャンスがあったのに元に戻ってしまった。これからは、我々照明デザインに関わる者が何を発信し伝えていくかが重要になりますね。

無限に広がる光の可能性広い視野でフレキシブルに。
河原:

今後は、デジタルという切り口によって新たな照明の使い方や楽しみ方が増えてくるのではないかと思っています。最近では、都市から「光の制御」をやっていこうと言われていますね。コンピューターを使い、時間帯や天候、人の流れなどによって照明の明るさを変えるもので、そういったデジタルなものが将来的に考えられています。

加藤:

すでにオフィスライティングには、「マイクロワット」というセンサーで光を自動コントロールするシステムも出始めています。これは太陽の光や時間によって明るさが変わるもので、室内が曇りだすと明るくなり、外から太陽が差し込むと暗くなるというものですね。

河原:

ええ、今あるものは自然光に対するシステムで、それが更に人間の意思や行動に対するものになれば将来すごく楽しみな分野になると思います。例えば、「ああ、疲れた」と言って声を出して椅子に座ったらそれを感知して、疲れを癒す光に変わる。そういう人間に寄り添うような切り口で実現していくということに非常に大きな将来性がありますね。考えるだけでも実に楽しい。

加藤:

ええ、面白いですね。今後はテクノロジー的にはLEDが光源を席巻していくでしょう。その次は有機ELという紙のような発光物が広まっていく。私は、そこから生まれてくるのは「光る形」だと思います。すでに実現しているのはタブレットPCで、あと数年の内にはスマートフォンも有機ELになって一枚の紙のようにペラペラなものになるでしょうね。

河原:

LEDや有機ELはまだ開発段階にありますから。可能性は無限に広がりますね。

加藤:

そうですね。光源がLEDという小さなチップになることで可能になることが増えてくる。照明という括りでは括れない「光るもの」が生まれて、生活シーンの中であらゆるものが光り始めます。

河原:

これまでは照明は電球だったけれど、電球以外のものが光るということが起こるのですね。

加藤:

ええ、照明器具があかりだという常識が崩れていく。例えば、壁面や床に照明をひかなくても、そのものが光り始めたり。そうなれば非常に面白いなと思いますね。照明じゃないものが、あかりになるということに大きな期待感がありますし、そうなると照明という括りがもっと広がっていくのではないかと思います。ですから、照明やあかりに関わる人は広範囲であらゆるものに興味を持ち受け入れるキャパシティが必要になってくるでしょう。そういうものがあって初めて、アイディアが生まれ活かすことができるのですから。

河原:

そうですね。リカレントの受講生には、照明だけでなく色々なことをトータルに学んでいくことが大事だと伝えています。広く学ぶことで自分の視野や思考を広げていくことが重要だと。専門家になろうとして、自分のやりたいことを狭めている人が多いように感じますからね。

加藤:

私も「専門家でありながら専門家じゃない振りをすることが大事だ」とよく言いますね。専門のことだけではなく、専門以外のことにも手を伸ばして、工夫を凝らすことで自分のクリエイションができる時代ですから。何にでもフレキシブルに対応していけるように定着せず、浮遊していたほうが良いと思いますね。

武原 徳恵
河原 武儀Takenori Kawahara
照明デザイナー/照明コンサルタント
リカレント 照明デザイン講座 講師

LED照明の総合展示会「LED Next Stage 2012」の基調講演をはじめ、「ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)」「ためしてガッテン(NHK)」など、様々なメディアで取り上げられている照明デザイナーの第一人者。「ライティングコンサルタンツ・オフィス」代表。受講生に圧倒的な支持を受けている。

大石 いづみ
加藤 明Akira Katoh
インテリアデザイナー/ライティングデザイナー
リカレント インテリアデザイン講座 講師

世界的なデザイナー倉俣史朗氏に師事し、その後、デザイン事務所「atelier Physis」を設立。インテリア、商業施設、照明、建築に至るまで多角的なデザインに従事。近年では、「羽田空港国際線旅客ターミナル」の光演出など、LED照明を使用した照明デザインを手掛けている。リカレントでは、DIALuxを導入した照明計画の実践授業を担当。

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