グラフィックデザイナー高田唯氏を講師に迎え、デザイン特別授業&ワークショップを開催しました。タイポグラフィやロゴ、ポスター、書籍など多彩なデザインを手がけ、2011年には「JAGDA新人賞」を受賞した高田氏。当日は、高田氏の学生時代からの友人でグラフィックデザイナーとして活躍しているリカレント専任講師の後藤先生にも特別にご参加いただきました。平日の夜にも関わらず、会場は満席。熱気あふれる雰囲気の中で、特別授業がスタートしました。

(株)ALL RIGHT代表/グラフィックデザイナー高田 唯 氏
講師
(株)ALL RIGHT代表/
グラフィックデザイナー
高田 唯

プロフィール 桑沢デザイン研究所卒。2006年「ALL RIGHT GRAPHICS」設立。2007年活版印刷工房「オールライト工房(現・ALL RIGHT PRINTING)」設立。同年、“紙と紙にまつわるプロダクト”をコンセプトとしたショップ「PAPIER LABO.」設立に参加。2011年にJAGDA新人賞受賞。2013年より東京造形大学 助教としても活躍。

グラフィックデザイナー/リカレント講師 後藤 圭介氏
特別出演
グラフィックデザイナー/
リカレント専任講師
後藤 圭介

プロフィール 桑沢デザイン研究所卒。田中一光デザイン室、佐藤卓デザイン事務所でのデザイン業務を経て、現在はユニバーサルデザインなどの福祉関係の仕事から、美術関係の仕事までグラフィックデザイナーとして幅広く活躍。
リカレントでは、グラフィックデザインからアナログデザインまでの授業を担当。

高田唯氏の代表作品

小杉幸一氏の代表作品

第1部 素の文字、素のデザインの魅力と無限にある新たなデザインの視点

第1部では、高田氏がデザインを志したきっかけや手がけてきた仕事、そして高田氏が関心をもつ「天然タイポ」について紹介。素の文字、素のデザインの魅力と、無限にある新たなデザインの視点を解説する講義が行われました。
桑沢デザイン研究所を卒業後、大手デザイン会社を経て、2006年に独立した高田氏。多彩なクリエイターたちとコラボレーションして手がけた仕事を紹介しながら、これからデザイン業界をめざす参加者たちへ「ポートフォリオには、自分でテーマを考えて作った作品を入れるとその人らしさが出る」などのアドバイスも。また、自身と同じグラフィックデザイナーである父の「デザイナーは社会問題についても考えるべき。それをデザインに反映していかなくては」という言葉が高田氏自身のデザインに影響を与えたエピソードも紹介。今後のデザインのあり方についても言及されました。

時間があれば街に出て、街のあちこちに佇む個性的で味のある文字、いわゆる「天然タイポ」を撮影しているという高田氏。駅の乗換えの案内板、お店の看板、ポスターなど、高田氏が街で見つけた魅力的な「天然タイポ」の写真を紹介しながら、レタリングやレイアウト、色や形などを含めどこにデザインとしての魅力があるかを説明。中には思わず笑いを誘われる「天然タイポ」も。しかし、それらのデザインに共通しているのは、「必要な情報を早く伝える」こと。それはまさにグラフィックデザインの原点である、と高田氏は言います。だからこそ、「天然タイポ」にはたくさんのデザインのヒントがあり、「デザインの役割とは何か」「これからのデザインはどうあるべきか」という問いへの答えにも、「街に転がっている文字たちが語りかけている気がする」と高田氏は語ってくださいました。

第2部 デザインワークショップ〜新しい句読点をデザインする〜

第2部では、「新しい句読点を開発する」デザインワークショップを開催しました。「キャッチーなデザインだけでなく、情報をいかにわかりやすく伝えるかがデザインでは大切。このワークでそこに触れてもらいたい」と高田氏が趣旨を説明。参加者が真剣な表情でワークに取り組む中、高田氏は会場を回りながら参加者一人ひとりにアドバイスを行っていました。
ワーク終了後は、リカレント専任講師の後藤先生も加わり、高田氏と参加者の作品の講評も行っていただきました。音楽記号をモチーフにしたもの、メールやSNSの文章から考え出されたものなど、作品が次々にスクリーンに映し出され、制作者がコンセプトを発表。どの作品もユニークなアイデアのあるものばかりで、「みなさんの作品を持ち帰って、今後の研究に役立てたい」と高田氏がおっしゃるほど力作揃いでした。

高田氏が最後に語ったのは、「個性は追わなくても出てくるもの」ということ。参加者の「自分の引き出しを作るために、何をすればいいか」という質問の答えとして語られた、「いきなり“自分らしさ”はできない。まずは好きなデザイナーの真似から始める。真似を繰り返す中で、“自分らしさ”が生まれてくる」というメッセージに刺激を受けた参加者も多かったようです。また、「自分がいつも選ばない色でデザインするなど、色の実験をしてみては」など、デザインの幅を広げるためのアドバイスも。これからデザイン業界をめざす参加者にとっても、すでにデザインの仕事に携わっている参加者にとっても、考え方、物の見方など、新たな発見の多い授業となったようです。

受講者の作例

←柔軟な発想で生み出された「新しい句読点」。
実際に使ってみたい実用的なものから、ユニークなものまで様々な句読点が発表されました。「どの作品も素晴らしい!」と高田氏も絶賛されていました。