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COUNSELOR - 2019.03.21

「カウンセラーを目指す方必見」カウンセラーとして大事なこと

この記事を書いた方のご紹介

谷口知子(リカレント専任講師)

公認心理師、臨床心理士、EAPコンサルタント、キャリアコンサルタント。国家公務員行政職から臨床心理士として生きる道を選び、教育、司法、医療、産業領域に渡って幅広い臨床経験を積む。現在は独立してカウンセリングルームを開業し、認知行動療法を中心としたカウンセリングを行うとともに、企業に対してはEAP支援を、そのほかカウンセラーの育成や雑誌の執筆も手掛けている。著書出版予定。

カウンセラーとして大事なこと

「カウンセラーになるには、まず何をすればいいですか」
「今からできることや、今から練習できることはありますか」

熱心な方々から、よくこのような質問を受けることがありますが、おそらくこの質問の時点では多くの方が技法に目が向いていると感じます。

カウンセラーとして大事なこと、それは技法よりも前に、まずカウンセラー自身である「自分を磨く」ことにあります。

カウンセラー自身も人間だからこそ不完全な存在であり、しかしまた、その不完全さゆえに、磨けば磨くほどに成長し続けることができる存在でもあるといえます。

この「自ら成長する」ということを何にもまして必要だと考えた人こそ、『来談者中心療法』を創始したカール・ロジャーズです。

『来談者中心療法』は、1960年代にアメリカで発展し、その後日本に導入されましたが、今やカウンセリング場面において必ず用いられる理論として有名ですので、『来談者中心療法』の理論を理解することは、カウンセラーの質を高めることに繋がります。

今回は、ロジャーズ理論を中心に、今すぐ実行できる3つのことをお話したいと思います。

カウンセラーの人間観

「人間観」とは、「人間とはどういう存在なのか」という問いに対する考え方のことですが、簡単に言えば「人をどう見るか、どう捉えるか」という視点のことです。

カウンセラーの持つ人間観は、それがカウンセラーの態度や姿勢にも現れ、さらにクライエントに対するアセスメントや技法にも影響してきますので、「自分がどんな人間観を持っているか」を知ることは、カウンセラーとしてのとても重要な一歩となります。

ロジャーズは『来談者中心療法』を通じて、非指示的な心理療法を提唱しました。
それは、ロジャーズの人間観「人間は自己実現に向かう有機体である」という考え方に基づいています。

つまり、自然界のすべてが有機体であるように、人間もまた進化・発達の過程を問わず、自分自身の維持と自分自身をより良い方向に向かわせる力が備わっている、「人は誰でも自己成長の力を持っている」と信じ、それゆえ、「カウンセラーの役割は、クライエントが自己成長の力を発揮できる手助けをすること」だと考えて、非指示的な関わりを重んじる『来談者中心療法』に至りました。

「人間をどのように見ているか」
「クライエントに信頼されるような人間観を持っているだろうか」
「そのような人間観を持つにはどうしたらいいのか」

まずは、ご自分の人間観をまっすぐ見つめて自分自身を知り、そこから、自分がクライエントに信頼されるような人間になるにはどうすればいいのかなどを考えて、自分自身の価値観などを洗い出してみるといいでしょう。

カウンセラーの人間的成長

また、カウンセラーの役割として、「クライエントが自己成長の力を発揮できる手助けをする」ために、ロジャーズはカウンセラーの基本的態度として、必要にして十分な条件を3つ挙げました。

それが有名な
「自己一致」
「無条件の肯定的関心」
「共感的理解」 です。

クライエントが建設的な変化をするためには、カウンセラーの温かさや理解に満ちていて、ありのままの人間を基本的に受容するといった雰囲気に満ちている関係性を作り上げられるような「カウンセラーの態度」に接することが必要であり、ただそれだけでクライエントは自己洞察が深まって、自己成長へと繋がると考えました。

しかし、この3つの概念を頭でわかっていても、その本質を実践することは容易ではない、つまり、実践しようとすれば「自ら成長する」ことができるカウンセラーでなければならないため、ロジャーズは、クライエントよりもむしろ、カウンセラー自身の人間性に重きをおいて、カウンセラーの人間的成長を強く求めました。

そういう意味では、カウンセラーとは、自己成長という目標に向かって、誰もがその過程にあるといえますから、カウンセラーとして大事なことは、常に自分を内省し、自らを成長させようとする意識を持ち続けることなのだと思います。

身体の「センサー」を研ぎ澄ます

私が初学者だった頃に、ある著書の中で(本の名前も思い出せないのですが)、ある有名な先生(確か、河合隼雄先生だったと思いますが・・)が初学者に教えていることとして、「まず自分のセンサーを磨くこと」、つまり、「自分の内面に起こる動きを見つめ、把握し、研ぎ澄ませることを練習すると良い」と書かれているのを読んで、早速、その練習から取り掛かったことを覚えています。

私たちの身体は、頭で思考する・判断することよりも先に働いて、周りで起きていることや自分の内部で起きていることなど、あらゆることについて伝えてきます。

神経、五感、平衡感覚、内臓感覚まで多種多様な感覚を持っていますので、「センサー」を磨くことは、それら全ての働きを敏感にキャッチすることができ、それによってクライエントの僅かな変化や心の動きを鋭く観察できたり、自分の中に起こる「違和感」に気づいて、自己一致につなげることができます。

しかし、普段、忙しく過ごしている私たちは、自分に意識を向けることよりも、仕事のことや家族のことなど、外界に注意を向けている時間が長く、それが長期化すれば、いつの間にか自分の中のセンサーはさびてしまう、あるいはどこかしまい込んでしまった人さえいるのではないかと思います。

そこで、カウンセラーとして大事なことは、今一度、全ての感覚を取り戻し、全ての動きを敏感にキャッチできるように磨いておかねばならないのです。

「今この瞬間、見えているものは何か」
「香ってくる匂いはどんな匂いか」
「口にしている食材はどんな触感、味、大きさか」
「イスの座り心地はどうか」
「聞こえてくる生活の音や音楽はどんな気持ちにさせるか」

など、五感で感じるものに注意深く意識を向けてみたり、あるいは

「嫌な出来事・人を思い浮かべた時、身体のどこに、どのような感覚が起こるか」
「愛する人・動物に触れる時、どのような感覚で癒しが起こるか」

など、感情によって起こる身体反応にも意識を向けて練習しましょう。

練習はわざわざ時間を取らなくても生活の中でできますし、たった3分間でもいいので、できるだけ継続して行い、身体の一部ではなく、全身をスキャンするように全身に注意を向けて、全身の感覚を磨くようにしましょう。

実は、この「内面を見つめる作業」を始めると、大事なものを無くしたり、事故にも遭いやすくなると言われていて、有名な先生をはじめ、著者であるお弟子さんたちも皆、そのような体験をされたそうです。

私も当時、本当に携帯電話を無くしてびっくりしましたが、ある意味、ものを無くして初めて一人前になれるのかなとも感じました。

最後に、これからカウンセラーを目指す方、目指している方に一言。
「カウンセラーへの道は一日にして成らず」です。

初めは誰もが壁にぶつかって不安になることもありますが、自分を磨き続け、自ら成長しようと努力し続ければ、必ず結果はついてきます。
クライエントに信頼されるカウンセラーを目指して、一緒に頑張りましょう。

 

今回はリカレントの専任講師の谷口知子先生に「カウンセラーとして大事なこと」をテーマに語っていただきました。これからカウンセラーを目指す方や目指している方の参考になればと思います。

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