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COUNSELOR - 2019.10.31

「カウンセラーを目指す方必見」カウンセラーとしての質を高めるには?

この記事を書いた方のご紹介

谷口知子(リカレント専任講師)

公認心理師、臨床心理士、EAPコンサルタント、キャリアコンサルタント。国家公務員行政職から臨床心理士として生きる道を選び、教育、司法、医療、産業領域に渡って幅広い臨床経験を積む。現在は独立してカウンセリングルームを開業し、認知行動療法を中心としたカウンセリングを行うとともに、企業に対してはEAP支援を、そのほかカウンセラーの育成や雑誌の執筆も手掛けている。著書出版予定。

今回は、これからカウンセラーを目指される方々や、カウンセラーという専門的職業に興味をお持ちくださった方々のために、そして、より質の高いカウンセラーが増えることを願いまして、「カウンセラーとしての質を高める」コツとして、「内省」をする際に気をつけたいことについてお話をしてみたいと思います。

「内省」の仕方がポイント

さて、「内省」と一言で言っていますが、実は、一生懸命「内省」してくださっても、「内省」が上手くできていなければ、本当の成長には繋がりません。

「内省」をしているつもりでも、全く自分自身が見えていない方や、他者の価値観や考え方を受け入れることに柔軟性のない初学者も多く、とても残念に感じます。
そもそも「内省」とはどういう意味でしょうか。

内省とは

内省とは、「自分の考えや言動などを深く省みること」をいいますが、この「深く省みる」方法こそが、内省のポイントであるといえます。

言い換えれば、「深く省みる」ためには、「自分の意識やその状態を自ら観察する」必要がありますが、自らを観察するためには、「自分を自分の主観から切り離し、自分自身を客観的に観察する」必要があります。

つまり、「客観的に自分の考えや言動を振り返って反省」できて初めて、「内省」ができたといえるのであり、なんとなく振り返っただけでは、それは「内省」とはいえないのです。

しかしながら、カウンセラーも人間です。人間である以上は、完全に自分を自分の主観から切り離して観察することは、大変難しいのが実情といえます。

したがって、前回お話ししたように、「身体のセンサーを研ぎ澄ます」、つまり、カウンセラー自身のセンサーである、五感を普段から磨いておく必要があるのです。

カウンセリング中の「内省」

次に、カウンセラーとして、カウンセリング中(初学者の方はロールプレイング中でもいいでしょう)の自分を振り返って、「内省」することを考えてみてください。

自分一人の言動を「内省」するだけでも慣れない作業なのに、カウンセリング自体が、主観的なクライエントと、主観的なカウンセラーの心理的な相互作用で成り立っていますので、さらに「内省」が複雑になります。

分かりやすく言うと、カウンセリング中のクライエントの態度・発言は、何かしらカウンセラーの言動の影響を受けていますし、カウンセラーの態度・発言もまた、クライエントの言動の影響を受けています。

カウンセリングとは心理的相互作用の連続である

カウンセラーとクライエントは、互いに影響を与え合っているからこそ、「内省」が難しいのです。

ここで大事なことは、クライエントの反応は、カウンセラー側の何らかの刺激によって引き起こされているのであり、クライエント側の要因だけで発現しているわけではないという視点です。

例えば、カウンセラーがいくら共感しているつもりでも、共感としての言動が取れていなければ、当然、クライエントは共感されていないと感じて、クライエントはあまり話さなくなるでしょう。

それを、カウンセラー自身が共感できていないということに気がつかないまま、あまり話さないクライエントのことを「話すことに抵抗を示すクライエント」だとか、「話すのが苦手なクライエント」だと思い込んでしまうと、それがクライエントに伝わってしまいますので、ラポール(信頼関係)を築くどころか、クライエントとの溝は深まるばかりです。

カウンセラーは、自分自身の言動に敏感になるとともに、クライエントのことをもっともっと知り、相互的な視点でクライエントを理解するようにしてください。

「なぜ、クライエントからこのような話が出たのか」

「自分はその時どのような態度をとっていたのか」

「共感したつもりだったが、ラポールを築けなかったのはなぜだろうか」

「クライエントをどのように理解し、どのような対応をとればよかったのか」

常に、自分がどんな影響を相手に与えているか、逆に、相手から受けた影響で自分の心にどんな変化が起きているのか、が「内省」できなければ、カウンセリングを立て直すことができませんので、カウンセリングは中断になってしまいます。

したがって、初学者の方には特に、スーパービジョンを受けることが推奨されています。

スーパービジョンとは

スーパービジョンとは、経験豊かな指導者(スーパーバイザー)からカウンセラーとしての指導やアドバイスを受けて、自己のカウンセリングの問題点や過程を振り返り、よりよいカウンセリングのあり方を習得することをいいます。

スーパービジョンの中で、自分では見えなかった相互作用をスーパーバイザーが紐解いてくれ、経験者の助けを借りながら自分自身への「内省」を繰り返すことで、本当の「内省」に近づくことができて、より自分を「人間的成長」へと導くことができるのだと考えます。

いろんな角度から自分とクライエントの言動を振り返り、カウンセラーとは、クライエントに常に影響を及ぼし続けている存在であるということを、決して忘れないで欲しいと思います。

柔軟に「内省」をする

また、自ら「内省」するにせよ、スーパービジョンを受けるにしろ、「内省」する者が柔軟に考え、そして、現実や指導を素直に受け入れる力がなければ、やはり成長には繋がりません。

私たちは、通常、自分が置かれている状況を、自分なりに、主観的に判断をし続けています。

それは、半ば無意識的に、そして自動的に行われ、その判断は、状況に対してうまく適応できるように行われています。

考え方の「クセ」を知る

例えば、水が半分入っているコップを見た時に、「水が半分しか入っていない」と考えると心配になりますが、「水が半分も入っている」と考えると気が楽になります。人によってどちらかをよく使うといった、その状況の受け取り方、考え方には「クセ(習慣)」があり、その考え方や受け取り方によって気持ちの状態は変わりますので、自分の考え方の「クセ」を知っておくことはとても大事なことなのです。

この自分の「クセ」を知らないと、ある一つの視点が正しいと思い込み、柔軟性に欠けて、自分の考えにこだわってしまうことがあります。

では、「クセ」を知って、そこからどのように考えればいいのでしょうか。

先程の水の例のように、いつも「水が半分も入っている」と考えれば、常に気楽に暮らせるのでしょうか。現代の日本で通常に暮らしている分には、それでもあまり問題はないかもしれません。

しかし、日照り続きや災害で水不足になっていたり、水源の乏しい国で気楽に「水が半分も入っている」と考えていると、一気に飲んでしまうという結果になってしまいますので、水がすぐに手に入らない状況では、「半分しか入っていない」と考えて水を丁寧に使う必要があります。

このように、その時の考え方が適切かどうかは、きちんと現実が見えてはじめて判断できることになります。

現実を見ないまま考えることは、ポジティブな内容であってもネガティブな内容であっても、それはどちらも「決めつけ」になります。

一方的に決めつけず、現実に対してしなやかな目を向け、それを受け入れることができれば、自ずと「自分」が見えてくることでしょう。

まとめ

「自らを成長させる」ことは、本当に大変ですね。

この深みこそが「心理カウンセリング」の醍醐味でもあります。

初めは難しそうな顔をしていた方々も、勉強を始めるといつの間にか目がキラキラ輝いて、この醍醐味にどんどん引き込まれていく方も多いと感じます。
私もその一人です。

カウンセラーである限り、その成長に終わりはなく、ゆえに、「カウンセラーへの道は一日にして成らず」だといえます。

初めは誰もが壁にぶつかって不安になることもありますが、自分を磨き続け、自ら成長しようと努力し続ければ、必ず結果はついてきますので、クライエントに信頼されるカウンセラーなれることを目指して一緒に頑張りましょう。

今回はリカレントの専任講師の谷口知子先生に「カウンセラーとしての質を高めるには?」をテーマに語っていただきました。これからカウンセラーを目指す方や目指している方の参考になればと思います。

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