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アントレプレナーシップ~「起業家精神」はすべての人に求められる

激動の時代を生き抜いていくためには、自分自身を育てていく意識が不可欠です。そうした意識の表れの一つに、「アントレプレナーシップ」があります。
ここでは、アントレプレナーシップとはそもそも何か、そしてなぜ現代社会においてアントレプレナーシップが強く求められるのかについて解説します。
アントレプレナーシップとは
「アントレプレナーシップ」とは、「起業家精神」を意味する言葉です。
アントレプレナーはフランス語の“entrepreneur(起業家)”を語源とし、もともとは「仲買人」を指す言葉として用いられていました。アントレプレナーシップの研究は1980年代にその起源を見出すことができますが、より活発に議論されるようになったのは2000年以降と考えるのが妥当でしょう。つまりアントレプレナーシップの概念は、「現代」という時代が生み出した必要な考え方だったといえます。
さて、この「アントレプレナーシップ」ですが、既に述べたように「起業家精神」を意味します。多くの人は「起業家精神」と聞くと、「会社をゼロから立ち上げる挑戦的な姿勢」を思い浮かべるかもしれません。確かにアントレプレナーシップには、そのような意味合いも含まれています。
しかし、現代において用いられる「アントレプレナーシップ」という言葉は、単に「会社をゼロから立ち上げる姿勢」だけを指すものではありません。アントレプレナーシップは、起業家のみならず、組織に所属しながら新しいプロジェクトを立ち上げようと志す人々や、組織に革新をもたらそうと尽力するリーダーも発揮できる資質です。そのためアントレプレナーシップは、「新しい価値を生み出そうとする精神や姿勢」を指す言葉として広く理解されています。
なぜ今の時代にアントレプレナーシップが求められるようになったのか?
「アントレプレナーシップ」は企業だけでなく、学校などの教育機関においても注目され、その重要性が認識されるようになっています。アントレプレナーシップが求められるようになった背景には、主に以下の3つの要因が挙げられます。
- 働き方の多様化
- 世界情勢の不安定化とグローバル化
- 顧客ニーズの急速な変化
ひとつずつ見ていきましょう。
働き方の多様化
現代の日本では、年功序列制度や終身雇用制度を見直し、あるいは廃止する企業が増加傾向にあります。
厚生労働省の2022年度労働経済分析調査によると、正規雇用労働者における転職経験者の割合は男性で51%、女性で61%に達し、非正規雇用労働者では男性82%、女性89%という結果が出ています
出典:厚生労働省 2022年度 労働経済の分析
さらに、「ダイバーシティ」という言葉が社会に広く浸透し、働き方も多様化しています。リモートワークやフレックスタイム制、副業・兼業を推奨する企業も着実に増加しています。
このような働き方の多様化は、「従来の雇用形態では働き続けることが困難だった人々」や「プライベートと仕事の両立を重視したい人々」にとって、有益な選択肢を提供しています。
しかし同時に、多様な働き方が可能になった現代においては、受け身の姿勢や学習意欲の低い人材は、企業にとって魅力的な存在とは見なされにくくなっているのが現状です。働き方が多様になった今、「自分はどのような働き方をしていけば良いのか」「企業にとって価値のある人材となるためにはどのような人物を目指すべきか」「自らの未来を切り拓く力とは何か」といった、アントレプレナーシップに根差した問いに対する答えを、一人ひとりが求められていると言えるでしょう。
世界情勢の不安定化とグローバル化
2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下「コロナ」)は、それまでの世界と以後の世界を一変させました。特に、対面でのサービスが中心であった飲食業界は壊滅的な打撃に見舞われ、医療現場も大きな影響を受けました。その他の多くの産業も、その活動に大きな制約を受けることとなりました。
また新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、「今後も何かあれば、世界は大きく変わるかもしれない」という認識を多くの人にもたらしました。世界情勢は不安定に揺れ動いていますし、仕事をするときには国内のみならず国外にも目を向けなければならなくなっています。
こうした変化の中で、「従来通りの仕事を続ける」「指示を待つだけ」といった受動的な姿勢では、環境の変化に対応できず、結果的に競争から取り残されるリスクが高まります。
顧客ニーズの目まぐるしい変遷
現代社会は、より便利に、より快適に、そしてより高い倫理観を持つ方向へと進化し続けています。企業が発信する情報は瞬時に消費者に届き、消費者の声もまた企業に即座に伝わるようになりました。SNSの影響力は非常に大きく、消費者の「こんな商品が欲しい」という要望も、「〇〇企業のこの対応は問題ではないか」という批判も、瞬く間に広範囲に共有されます。
また消費者は数多くの選択肢を持つため、「この企業の商品やサービスが期待外れであれば、すぐに別の企業のものに乗り換えよう」と容易に判断を下すことができます。
かつてと比較して、顧客のニーズは目まぐるしく変化しています。そして競合他社との競争を勝ち抜くためには、企業や組織に属する人々が顧客のニーズを的確かつ迅速に把握し、より良い形で商品やサービスに反映させていくことが求められます。同時に、「顧客ニーズに応えるためにはどれほどのコストがかかるのか」「その費用対効果はどうなのか」を冷静に見極める能力も不可欠です。
多様性、グローバル化、そして絶え間ないニーズの変化という状況下において、自ら考え、判断し、行動できるアントレプレナーシップが求められるようになったのは、必然の流れと言えるでしょう。
アントレプレナーシップの要素を知っておこう
アントレプレナーシップの重要性を理解したところで、ここからは「アントレプレナーシップを構成する要素とは何か」について解説します。
向学心を持ち続けること
アントレプレナーシップにおいて最も重要な要素の一つは、常に学び続ける意欲、すなわち「向学心を持ち続けること」です。
現在の状況を把握し、状況を変えようとするために勉強をし続けることは、アントレプレナーシップの最も基本となるものです。
日々の仕事に追われていたり、不安定な立ち位置であがいていたりすると、向学心を持つことはなかなか難しいものです。しかしそのなかでもなお、「より高度の資格を取る」「自業界のみならず、他業界にもヒントがないかを模索し続ける」といった向学心を持ち続けることが、現状打破の力となります。
責任を負う覚悟を持ち続けること
「起業家精神」としての意味合いが強いアントレプレナーシップにおいては、“起こった事柄に対する責任を自らが負う覚悟”も重要な要素として考えられています。
たとえ失敗に直面したとしても、他者に責任を転嫁するのではなく、「これは自身の選択の結果である」と受け止め、責任を果たす姿勢が求められます。
これは組織に所属する人々にも同様に当てはまります。リーダーは「責任を引き受ける役割を担う」と言われることがありますが、「何か問題が発生した際に、自らが責任を取る」という覚悟があるからこそ、大胆な改革案を提案することができるのです。
リーダーシップを持ち、それを発揮できること
事業や計画を遂行するには、その過程のどこかで必ずだれかと関わることになります。
特に一般的な事業の場合は、多くのチームメンバーと関わることになります。リーダーポジションあるいは企画者のポジションで動こうとするのであれば、彼らと積極的に関わり、彼らを引っ張っていくだけの力が求められます。チームの意見をよく吸い上げ、自分の考えを伝え、課題を共有してそれを解決していくための働きかけをしていかなければならないのです。
失敗を前向きにとらえられる能力があること
不安定で変化の速い現代社会において、明確な「正解」を事前に見出すことは極めて困難です。
綿密な準備をし、資金を投入し、優秀なチームを編成し、責任を負う覚悟で臨んだとしても、計画が完全に失敗に終わる可能性は常に存在します。場合によっては、大きな損失を被るかもしれません。
しかし失敗に直面した際にそれを前向きな経験として捉え、速やかに立ち直ることができる人と、いつまでも過去の失敗に囚われ前に進むことができない人とでは、その後の展開は大きく異なります。
アントレプレナーシップとは、「失敗をしないための精神」ではなく、「失敗を恐れず、たとえ失敗してもそこから学び、再び立ち上がる精神」であると言えるでしょう。
まとめ
目まぐるしく移り変わる2020年代の現在においては、「昔と同じ働き方」「従来型の精神性」で働き続けることが難しくなりつつあります。
そのなかで注目されるようになってきた「アントレプレナーシップ」は、起業家精神と訳されるものですが、これはゼロから起業をする人だけではなく、組織に属する人にも求められる精神だといえます。
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