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自分らしさを強みにする「オーセンティック・リーダーシップ」とは? 求められるスキルと必要とされる理由

自分らしさを強みにする「オーセンティック・リーダーシップ」とは? 求められるスキルと必要とされる理由 (2)

リーダーシップと聞くと、「周囲を引っ張る統率力を持つもの」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

リーダーシップの考え方はいくつかありますが、オーセンティック・リーダーシップは、リーダー自身の「個性」や「価値観」に重点を置き、周囲と協力しながら目標達成を目指すスタイルを指します。

多様な価値観を認め、一人ひとりを尊重する現代において、このリーダーシップは注目されています。

オーセンティック・リーダーシップとは、「自分らしさを根底としたリーダーシップ」のこと

オーセンティック・リーダーシップとは、リーダーが自身の価値観、倫理観、そして個性(自分らしさ)を偽りなく発揮し、それに基づいてチームを導くリーダーシップのスタイルを指します。特に、自分の弱みや不完全さも受け入れ、部下や周囲のサポートを得ながら目標達成を目指す点が特徴です。

「リーダーたるものはこうあるべき」といった、これまでのリーダーシップのイメージとは対照的なものと言えるでしょう。

オーセンティック・リーダーシップは、2003年にアメリカの医療機器メーカーであるメドトロニック社の元CEO、ビル・ジョージが著書で提唱したことで広く知られるようになりました。コロナ禍以降、ビジネス環境や働き方が大きく変化し、その重要性が再認識されていますが、オーセンティック・リーダーシップ自体は、それ以前から存在し、その有効性が議論されてきた考え方です。

オーセンティック・リーダーシップに求められる素養とは

オーセンティック・リーダーシップは「自分らしさ」「自分自身の倫理観や価値観」を重要視するリーダーシップであるため、明確に「オーセンティック・リーダーシップに必須のスキルは〇〇である」と断言できるものではありません。そのように決めつけてしまえば、オーセンティック・リーダーシップにとってもっとも重要とされる「その人らしさ」が失われてしまうからです。

しかし、より良いオーセンティック・リーダーシップを発揮するために、適した素養や持っておいた方が望ましいポリシーはあります。それが下記の5つです。

明確な目標がある

「部下をどう導いていくべきか」「チーム全体の目標をどうすべきか」を考えるのがリーダーの役目だと思われることが多いですが、優れたオーセンティック・リーダーは「自分自身が」どうなりたいかを明確に持っているとされています。

部下やチームの目標だけでなく、自分自身の目指す方向や身に付けたいスキルなどをしっかりと持っていて、高い向上心でそれを実現していく姿勢こそが、オーセンティック・リーダーに求められる素養だと言えるでしょう。
リーダー自身の具体的な目標や夢が、部下にとってのロールモデルとなり、チーム全体のモチベーション向上につながります。例えば、リーダーが新たなスキルの習得に意欲的に取り組む姿勢を見せることで、部下も自身の成長目標を明確にするきっかけになるでしょう。

倫理観を大切にする

利益を上げられればよい、自社の利益が一番であるという考え方は、もはや古いものとなりつつあります。SDGsやESG投資を見るまでもなく、現在は企業倫理から形成される企業イメージが非常に重要視されています。

次代のリーダーとなるオーセンティック・リーダーにも、このような倫理観が求められます。人間として正しい倫理観、企業人として求められる良識を持った上で、自社の利益を目指していく姿勢を部下に見せる必要があります。

周囲の人と協調性を持って歩んでいく姿勢を持っている

リーダーを必要とする仕事の場合、周囲とのコミュニケーションが必要不可欠です。特にオーセンティック・リーダーシップにおいては、「周囲との協調性」が重要視されます。

周りの言葉に耳を傾け、周りの人に適切なアドバイスをして、一緒に歩んでいく姿勢が現在のリーダーには求められています。

相手の話を聞いて助言をするときは、誠意を持ち、「しっかり耳を傾けている」という態度をとることが大切です。相手の目を見て頷く、話の要約を繰り返す、共感の言葉をかけるといった行動は、相手に「話を聞いてもらえている」という安心感を与え、信頼関係の構築につながります。

 

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自制心、自身を省みる勇気がある

オーセンティック・リーダーは自らの倫理観や価値観に沿って仕事を進めていくため、高い自制心が求められます。なぜなら、「自分の倫理観や価値観に沿うこと」と、「自分の思いのままに振る舞うこと」はイコールではないからです。

自分自身を、良い意味で疑う心を持ち、「自分は正しく進めているか」「この方針で間違いがないか」と、自分自身を顧みる勇気がオーセンティック・リーダーには必要です。
また、自分自身がこうしたいと考える道筋があっても、それが自社あるいは部下、取引先にとってマイナスになる選択であるなら、自制心を働かせるだけの決断ができる人材であることが求められます。

自分の弱点に対して自覚的で、それを部下に打ち明けられる

上でも取り上げましたが、オーセンティック・リーダーシップは特に、「弱みを打ち明けられる」という勇気を強く持つリーダーシップのかたちです。

自分自身の弱みに対して自覚的であること、自分自身が苦手である分野に対して自覚的であることがオーセンティック・リーダーには求められますし、またその分野を部下に頼む決断力も必要です。

多くの人は、自分の弱みと向き合うことを嫌がります。また、部下に対して弱みを打ち明けることは、「部下に負担をかけてしまうのではないか」「弱いリーダーと思われてしまうのではないか」とためらってしまうケースもあるでしょう。

しかしオーセンティック・リーダーシップは、一人の強烈なカリスマによるけん引を求めるかたちではありません。上司が自分の弱みを冷静に分析し、部下に適切に仕事を振り分ける決断力を持ち、それぞれの長所を生かしていくことが、オーセンティック・リーダーシップの本質です。

この姿勢は、部下が仕事で困ったときに、上司に相談しやすい土壌を作る上でも役立ちます。

自分らしさを強みにする「オーセンティック・リーダーシップ」とは? 求められるスキルと必要とされる理由

今、なぜオーセンティック・リーダーシップが求められているか

オーセンティック・リーダーシップは、現在の世界情勢のなかで、強く求められているものです。では、なぜオーセンティック・リーダーシップが求められるようになったのでしょうか。

「平等」「透明性」「心理的安全」が求められるようになったから

職場におけるハラスメントに対して防止措置が講じられるようになった現在は、「社員が平等であること」「透明性を保った職場であること」「一人ひとりが心理的安全を得られ、発言できる環境であること」が強く求められるようになりました。このような状況にある企業は、より優秀な人材を獲得しやすくなりますし、また優秀な社員へと育成しやすくなります。

さらに、SNSなどですぐに自社の良い点も悪い点も流されるようになった現在では、これらを獲得できていない企業はすぐにマイナスイメージがついてしまいます。

「部下も上司も一緒に歩いていこう」「話しやすい職場を作ろう」と考え、そのように働きかけるオーセンティック・リーダーは反感を持たれることが少ないため、企業のイメージダウンにもつながりにくいと言えます。

ニーズや情勢が変わりやすく、「一人のカリスマ」では乗り切れない事態が起きやすくなってきたから

VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity:変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と呼ばれる現代において、予測不可能な変化に対応するには、リーダー一人の力では限界があります。多様な視点や専門性を持つチームメンバーの意見を尊重し、集合知として活かすオーセンティック・リーダーシップは、組織の適応能力を高める上で不可欠です。

時代の変化への対応には、一人の優秀なカリスマ的リーダーよりも、多くの人の意見を採り上げられるオーセンティック・リーダーの方が適しているのです。

個人の多様な働き方や働きやすさを重視する人が増えてきたから

現代において、育児や介護をしながらもキャリアを継続したいと願う人々が増えています。実際、男性の育児休暇取得率は1994年の0.1%から2023年には3%へと大きく伸び、専業主婦家庭よりも兼業主婦家庭が多くなるなど、働き方の価値観は大きく変化しています。仕事も家庭も大切にしたいという、多様なニーズが顕在化していると言えるでしょう。

彼らのなかには「リモートワークを希望する」「時差出勤を希望する」という人も多いことでしょう。オーセンティック・リーダーシップを発揮できる人は、彼らの希望に丁寧に寄り添い、それぞれに合った働き方を提案しようとします。これは人材の定着と、部下の仕事へのモチベーション向上に役立ちます。

自分らしさを強みにする「オーセンティック・リーダーシップ」とは? 求められるスキルと必要とされる理由

まとめ

自らの倫理観と価値観に従い、協調性を持ってチームを導いていく「オーセンティック・リーダーシップ」は、新しいリーダーシップのかたちです。

すでにリーダーの立場にいる方や、これからリーダーになっていく方、リーダーを育てる人材育成に携わっている方など、これからの自身や会社のリーダーシップのあり方を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

Q&A

オーセンティック・リーダーシップとは?
リーダーが自身の価値観、倫理観、そして個性(自分らしさ)を偽りなく発揮し、それに基づいてチームを導くリーダーシップのスタイルを指します。
オーセンティック・リーダーシップのメリットは?
信頼の構築、心理的安全の提供、自立心と成長促進、高い社員の定着率、そして変化への柔軟な対応が挙げられます。
オーセンティック・リーダーシップのデメリットは?
オーセンティック・リーダーシップのデメリットには以下が挙げられます。
・協調性を重んじるあまりに意思決定に時間がかかる場合がある
・リーダーが向上心を失い、ぬるま湯状態になってしまう
・リーダー自身の弱みを開示するタイミングや程度を誤ると、部下の不安を煽ったり、かえって信頼を損ねるリスクもある
オーセンティック・リーダーシップの発揮のために必要なこととは?
「自分自身の目標や価値観を明確にしつつも、絶対視しないこと」「コミュニケーションを図ること」「向上心を持ち続けること」が重要です。オーセンティック・リーダーは自分自身の倫理観や価値観を基本にしてチームを導いていきます。しかしそれが絶対的なものだと認識していると、方向転換ができなくなり、チームが瓦解します。そのため、良い意味で自分の価値観を疑い、周りの人に対しても間違いがないかを聞くコミュニケーション能力を持ち、常に新しいことを勉強する向上心を持つことが求められます。

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