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キャリア - 2024.09.12更新 / 2024.03.29公開

変化に対応する力「ダイナミック・ケイパビリティ」をわかりやすく解説

コロナ禍以前と以降では、社会の在り方が大きく変化しました。そのような中で、「ダイナミック・ケイパビリティ」という言葉が注目されています。

変化に対応していく力を表す「ダイナミック・ケイパビリティ」について

経済産業省がまとめた「2020年版ものづくり白書」では、「ダイナミック・ケイパビリティ」を以下のように説明しています。

環境や状況が予測困難なほど激しく変化する中では、企業には、その変化に対応するために自己を変革していく能力が最も重要なものとなる。そのような能力を、「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」という。

引用:経済産業省  |  2020年版ものづくり白書3ページ① 企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化の必要

予測できない不確実なVUCA時代において、「必要とされる能力」「対応するための方法」の能力が乏しい企業は、安定した経営を続けることが難しくなります。

VUCAについてはこちらの記事で解説しています。
 

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ダイナミック・ケイパビリティとは、「目まぐるしく環境が変わるなかにおいて、企業が、その変化に対応するように自らを改革していく能力」のことを指す言葉であるといえるでしょう。

ダイナミック・ケイパビリティ論は、カリフォルニア大学バークレー校のデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱されました。

ちなみダイナミック・ケイパビリティの起源となる論は、1980年代に、ハーバード大学でマイケル・ポーター氏によって唱えられた「競争戦略論」だとされています。

では、このような不確実な時代に注目されているダイナミック・ケイパビリティを構成する要素とは、どのようなものなのでしょうか。

次の章で詳しく見ていきます。

ダイナミック・ケイパビリティを構成する3つの要素

ダイナミック・ケイパビリティには構成する要素として、

  1. 感知(センシング)

  2. 捕捉(サイジング)

  3. 変革(トランスフォーミング)

の3つがあります。

それぞれ解説していきます。

変更を感じ取る能力「感知(センシング)」

「感知(センシング)」とは、企業が危機管理を行ううえで非常に重要になってくる要素です。

「自社に迫っている脅威」「自業界を脅かすかもしれない危機」を察知する能力を、「感知(センシング)」と呼びます。

脅威や危機は、事前に「このようなことが起こるかもしれない」と予想することができれば、それを回避する対策を打ち出すことができるでしょう。

また、感知(センシング)には、「外部の変化を把握する能力」という意味合いも含まれています。変化していく顧客のニーズや社会全体の風潮、同業他社の動きや世界の意識を的確につかむ能力を、この言葉で言い表すこともあるのです。

このような「危機を察知する力」「外部の変化を把握する能力」を有している企業は、自社の強みや課題、変化させなければならないところと変化させてはいけないところを的確に判断できるといえます。

経営資源の分配能力を指す「捕捉(サイジング)」

どのような企業であっても、その経営資源は無限ではありません。会社が抱える資産には限界がありますし、従業員の数にも限りがあります。また、「知識や経験はあるものの、それが一部に偏っている」という状況に陥ることも考えられます。

これを考えるうえで重要になるのが、「捕捉(サイジング)」です。

これは、「自社が抱えている資源を的確に把握し、かつそれを有効活用していくための能力」と訳されるものです。この能力が十分にある企業の場合、めまぐるしく移り変わる現在の状況に応じて、人材の配置換えを行ったり、現在の資源と知識・技術から新しいプロジェクトを行ったりといったことができるようになりますし、またそれによってプラスの効果が得られやすくなります。

なお、「現在の自社の能力では、経営危機に陥る可能性がある(あるいは経営危機を乗り切れない)」と判断した場合は、捕捉(サイジング)に基づき、外部から人的資源を借りたり、自社の在り方自体を見直したりする必要があるでしょう。

変化していく力「変革(トランスフォーミング)」

ダイナミック・ケイパビリティを構成する要素を考えるときに、おそらくもっともイメージしやすいのは、この「変革(トランスフォーミング)」でしょう。

ダイナミック・ケイパビリティにおける「変革(トランスフォーミング)」とは、「感知(センシング)と捕捉(サイジング)によって得られた企業としての競争力を、さらにより良い企業にするために変えていくための能力」と解釈されます。

現在の外部の変化をしっかりと冷静にとらえたうえで、経営資源の利用や分配を行い、それによって組織を変えていく力を、「変革(トランスフォーミング)」としているのです。

この「変革(トランスフォーミング)」の力をしっかり持っている企業は、移り変わりが激しい時代においても、存続することが可能となります。

ただ「変革(トランスフォーミング)」は、一朝一夕で身に付くものではなく、単独で存在するものでもありません。「変革(トランスフォーミング)」の力は、その前段階となる、「感知(センジング)」と「捕捉(サイジング)」があって初めて成り立つものなのです。

ダイナミック・ケイパビリティと合わせて考えたい「オーディナリー・ケイパビリティ」について

ダイナミック・ケイパビリティの対義語として「オーディナリー・ケイパビリティ」があります。

オーディナリー・ケイパビリティは、「日常的な処理の能力」と訳されることが多いものです。

すでに保有している経営資源をより有効により効率よく活用することで、現在の取り組みのなかで企業としての利益を最大限にあげようとする考え方をいいます。

たとえば、「現在リリースしている商品をしっかり品質管理すること」「現在抱えている顧客からの問い合わせに対して、丁寧に対応していくこと」「現在抱えている在庫の回転率を上げること」などが、このオーディナリー・ケイパビリティに分類されます。

ダイナミック・ケイパビリティは「新しいことに積極的に取り組むことで競争力を上げて、企業が生き抜いていくようにするための能力」であるのに対して、オーディナリー・ケイパビリティは「今現在取り組んでいる事業をより良い方法で行うことで、企業を安定させるための能力」であるといえるでしょう。

自動車製造業界を例にみるダイナミック・ケイパビリティとオーディナリー・ケイパビリティ

自動車製造業界を例に「ダイナミック・ケイパビリティ」と「オーディナリー・ケイパビリティ」をみていきましょう。

自動車製造業界において、ダイナミック・ケイパビリティは新技術の導入や市場の変化に適応する能力を示します。

自動運転技術の発展やEVカーの台頭など、業界は急速な変化を経験しています。そのため、企業は素早く新技術を取り入れ、市場のニーズに応える新製品を開発する能力が必要になります。

一方で、オーディナリー・ケイパビリティは、自動車製造プロセスの改善や品質管理など、日常業務における効率性や安定性を確保する能力を指します

生産ラインの効率化やリーン生産の導入など、これらの取り組みによって企業はコストを削減し、品質を向上させることができます。

両者は相互補完的な関係にあります。ダイナミック・ケイパビリティが新たな機会を探索し、競争力を維持するための土台を提供する一方で、オーディナリー・ケイパビリティはその土台の上で安定的に業務を遂行し、成果を最大化する役割を果たします。

つまり、ダイナミック・ケイパビリティとオーディナリー・ケイパビリティは、企業において両方とも重要なものであり、車の両輪のような関係にあるものだといえます。

まとめ

時代とともに、企業に求められる役割や技術、取り組み方は変わっていっています。ただ近年は特にその変化が目まぐるしいといえます。

このような世界を生き抜いていくために、企業には自らを変革していく「ダイナミック・ケイパビリティ」が求められています。そして、私たち個人も、自分の能力を把握し、環境の変化に柔軟に対応していく能力が必要だといえるでしょう。

Q&A

ダイナミック・ケイパビリティとは?
変化が激しい環境において、企業がその変化に対応するように自らを改革していく能力のことを指します。
ダイナミック・ケイパビリティが注目される背景とは?
予測困難なVUCA時代の影響があります。激しい競争や急速な技術変化に柔軟に対応し、新たな機会を迅速に捉える必要があるため、ダイナミック・ケイパビリティが注目されています
ダイナミック・ケイパビリティの事例を知りたい
写真フィルムを展開していた富士フィルムは、デジタルカメラやカメラつき携帯の普及で経営難に陥りました。しかし今まで培ってきた技術を、化粧品の開発や保護フィルムの開発に生かして、増収・増益に成功しています(2023年)。
ダイナミック・ケイパビリティに課題はあるか
まず、ダイナミック・ケイパビリティでポイントとなるには「再構築」です。そのため、全くのゼロから作り出すのではなく、保有している資産を徹底的に洗い出していくことが重要であり、課題であるといえるでしょう

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