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就職氷河期世代とは? いまさら聞けない意味と原因を解説

監修元村 久美子(国家資格キャリアコンサルタント)

 
「就職氷河期」という言葉がメディアに初めて登場したのは1992年秋ごろと言われています。言葉が生まれた背景には、その直前までの就職事情がバブル景気からくる“超”売り手市場だったことが関係しています。
このページでは、改めて就職氷河期世代について解説していきます。

就職氷河期世代とは

「就職氷河期世代」とは、ごく簡単に言うのであれば、就職が非常に難しかった時期に新卒で就職活動を行わなければならなかった世代のことをいいます。

データや見方によって多少の違いはありますが、おおむね1993年〜2005年くらいに就職活動をしていた世代(40歳〜50歳)を指します。

また、日本で広く知られている氷河期世代は、最近耳にすることが多いZ世代の前の世代にあたるため、世界共通でY世代と呼ばれています。

就職氷河期の完全失業率と有効求人倍率

1970年から2023年までの完全失業率と有効求人倍率の年平均をみてみると、1990年にピークだった有効求人倍率は1993年あたりから急激に下がり、完全失業率の割合が高くなっていることがわかります。

総務省統計局 「労働力調査」厚生労働省「職業安定業務統計」を参考に作成

この世代は、就職が非常に難しかった世代です。就職氷河期世代でもっともひどい就職難にあえいでいたのは2000年〜2003年の層ですが、このときは大卒であっても就職率が最悪の年で63%前後、高卒の場合は60%程度にまで落ち込みました。

また平均値で見ても、就職氷河期世代の大卒の就職率は約70%、高卒に関してもほぼ同等程度です。

この時代の就職がいかに厳しいものであったかが、この数字に表れているといえるでしょう。

就職率でみる氷河期世代の厳しさ

2019年の就職率は大卒ならば85%を軽く超えていますし、5人中2人〜3人が高卒であった1985年の高卒の就職率は、実に90%近くにも達しています。

また1985年〜2019年の間で就職氷河期世代を除いた場合の就職率の平均は、大卒で80%、高卒でも78%を超えています。

つまり就職氷河期世代は、ほかの世代に比べて、大卒の場合は10%近く、高卒の場合は8%近くも就職率が低かったうえに、年度によってはそれよりもさらに厳しい状況だったといえるのです。

氷河期世代の非正規雇用率

就職氷河期世代が影響を受けたのは、単純な就職率だけではありません。非正規雇用での就職率にも大きな影響を与えました。

現在のように「ライフスタイルが多様化して、さまざまな働き方ができるようになったから非正規雇用率が上昇した」という状況とは異なり、就職氷河期世代は「正規で就職したくても正規雇用での就職口がない」という状況にありました。

正規雇用率がもっとも高かった1990年〜1991年は、大卒の正規雇用率が0.9を超えていました(1.0がマックス)。また高卒の場合も0.85を超えており、ほとんどの人が正規で採用されていました。

しかし就職氷河期世代のなかでも最も厳しい2002年〜2003年にかけては、大卒の正規雇用率は0.83程度、高卒に至っては0.71程度にまで落ち込みます。またそれと呼応するように非正規での雇用率が増えていき、2003年には大卒のうちの15%程度が、2001年には高卒の25%近くが初職であっても非正規雇用の雇用形態に甘んじなければなりませんでした。

このような数字を見れば、就職氷河期世代がいかに過酷な状況に置かれていたかが分かることでしょう。

出典:
東京大学社会科学研究所近藤絢子「就職氷河期世代のその後:雇用・所得・健康状態」
内閣府「日本経済2019-2020-人口減少世代の持続的な成長に向けて―」

なぜ就職氷河期世代が発生したのか?~きっかけは「バブル崩壊」にあり

ではなぜ、このように就職氷河期世代が生まれてしまったのでしょうか。

これは、だれもが一度は耳にしたことがあるであろう「バブル崩壊」によるものです。

1985年9月にドル高を是正するために行われた「プラザ合意」によって円高ドル安状態になったことは、輸出業を生業としていた日本の企業に大きなダメージを与えました。このダメージを回復させようと国は金融緩和政策を実施します。

この金融緩和政策によって企業が融資を受けやすくなったのですが、同時に「余剰資金を土地や株に回そう」という考えが生み出されました。そしてこの考え方は企業だけではなく、個人にも大きな影響を与えました。

1990年直前までの日本は「バブル」好景気

土地や株に資金を回す企業が増え、土地や株の値段は大きく上昇します。日本は空前ともいえる好景気に沸き、「土地や株は永遠に値上がりを続ける」という価値観のもと、実態のない「バブル」好景気が作り出されます。これが1990年直前までの流れです。

しかしこのような状況は、健全な経済状況とはいえません。そこで国は1989年の5月以降、今度は金融の引き締め政策を実施し始めたり、土地に関連する融資の制限を行ったり、地価税をコントロールしたりし始めます。

このような政策によって、実際の価値以上の値段がついていた地価や株価は大きく下がり、企業や個人は「高いお金を出して買った土地や株が売れない」「土地や株を売っても、マイナス分が補填できない」という状況に陥ります。また融資を受けられなくなった企業が立て続けに倒産していきます。

こうして、実体を伴わずに膨れ上がったバブルという泡は崩壊を迎えました。

バブル崩壊の影響を受けた就職氷河期世代

バブルが崩壊して企業が大打撃を受ければ、当然企業には従業員を雇い続けるだけの体力がなくなります。企業は、バブル崩壊までに雇用していた従業員にリストラを言い渡さなければならない状況に陥ります。従業員の給与すら保証できないなかで、新規採用にまで手や目やお金をかけられる企業の数は、決して多くありませんでした。

バブル崩壊にまつわる話は数多く、1974年〜1980年ごろの生まれの人のなかには「大学に進学せず、高卒で就職すればよかった。そうすればバブル好景気の恩恵にギリギリあずかることができ、就職できたのに」「すでに就職氷河期に突入していたが、自分が大学を卒業するころには状況が改善するだろうと大学院まで進んだ。しかし余計に状況は悪化した。それなら高卒で就職した方がまだマシだった」という声が上がっています。

就職氷河期世代支援プログラム

就職氷河期世代は、個々人の努力だけでは状況を覆すことが非常に難しいものでした。そのためしばしばこの世代は、「ロスジェネ=ロストジェネレーション=失われた世代」とも評されます。

就職氷河期世代の問題は、個々人の問題だけに留まるものではありません。そのため現在は国からもこの世代を助けるべく、さまざまな取り組みがなされています。

1.今のキャリアを見直したい方に

今も不安定な仕事に就いている就職氷河期世代に向けて、全国のハローワークでは専用窓口を設けています。正社員就職などを目指した様々な支援や状況に合わせた支援セミナーの実施、スキルや知識を習得するハロートレーニング(職業訓練)なども充実しています。就職氷河期世代に向けた求人への応募や応募書類の作成支援、面接サポートなども行っています。お住まいの自治体によっては就職氷河期世代向けの就労支援プログラム等でキャリアコンサルティングを受けられることもあります。

2.働くための準備をしたい方に

厚生労働省が管轄する地域若者サポートステーション(サポステ)では、様々な理由により現在仕事をしていない49歳までの方を対象に、就職のための準備から職場定着・ステップアップまでの継続的な支援を行っています。ブランク期間があったり、正規雇用の経験が少なかったりといった方でもビジネスマナーやコミュニケーション講座等のセミナーや職場体験プログラム(ジョブトレ)等を経て、自身の可能性や方向性を探ることができます。キャリアコンサルタントの個別面談も心強い支援となります。

3.ひきこもり等の様々な事情から一歩踏み出したい方に

様々な理由により現在仕事をしていない方、ひきこもり状態にある方、生活が苦しい方、安心出来る居場所が欲しい方、働きたいけれども働くのが不安な方などに向けて、ひきこもり地域支援センターや自立相談支援機関では社会参加や自立に向けたサポートを行なっています。キャリアコンサルタントの他、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士等の専門支援員による個対応のサポートが期待できます。

就職氷河期世代の支援にかかせない「国家資格キャリアコンサルタント」

就職氷河期世代の苦難は現在も続いています。社会人のスタートが非正規雇用だった場合に適切なビジネストレーニングを受けられなかったり、会社都合による退職や転職を強いられキャリアにブランク期間があったりするなどで転職採用の際にデメリットが多いなども挙げられます。

未経験からでもキャリアコンサルタントに挑戦できる理由

キャリアコンサルタントは職業生活やキャリア形成を支援する専門家であり、相談者の悩みや目標に寄り添いながら、適切なアドバイスやサポートを提供します。これまでの経験や人間関係のスキルが大いに活かせる職種で、未経験でも安心して挑戦できます。

就職氷河期世代の支援に注目されているキャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントはキャリア支援の専門家として、様々な悩みや状況を抱えた就職氷河期世代の相談者の悩みに寄り添い、強みを洗い出しながら目標を設定していく支援を行います。人によってはすぐに応募サポートに進む場合もあれば、職業訓練などのスキル習得といった方向へ支援していくこともあるでしょう。キャリアコンサルタントとしても様々な支援策を講じられるやりがいにもつながります。

キャリアコンサルタントとしての活躍の場

就職氷河期世代に向けたハローワークの窓口での相談業務や就職支援セミナー等を担当する講師等もキャリアコンサルタントが務めることがあります。地域若者サポートステーション等では専任の相談員として支援者に寄り添った面談を担当したり、グループワークなどを企画したりすることもあります。より福祉的な就労支援窓口では寄り添い型の面談サポートやアウトリーチといった社会貢献度の高い支援を行うこともあるでしょう。

キャリアコンサルタントのなり方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
 

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まとめ

就職氷河期世代は、バブル崩壊後の経済的混乱の中で就職活動が極めて困難だった時期を経験しました。そのため、現在でも就職氷河期を経験した世代はその影響を大きく受けているケースがあります。

しかし、近年では政府による支援策が強化され、社会全体で氷河期世代を支援する取り組みが進んでいます。そのため就職氷河期世代を支援するキャリアコンサルタントの活躍の場も広がっています。

Q&A

就職氷河期世代とは?
「就職氷河期世代」とは、就職が非常に難しかった時期に新卒で就職活動を行わなければならなかった世代のことをいいます。 データや見方によって多少の違いはありますが、おおむね1993年〜2005年くらいに就職活動をしていた世代を指します
就職氷河期世代は何年生まれ?
就職氷河期世代は、おおむね1970年〜1984年に生まれた40代から50代の人を指します。
就職氷河期世代の原因は?
就職氷河期世代が生まれた主な原因としては「バブル崩壊」が挙げられます。バブル崩壊により企業は打撃を受け、新しく人を採用することが難しくなりました。
氷河期世代をサポートする仕事はありますか?
就職氷河期世代の支援に必要な存在であり、やりがいのある職業です。未経験からでも挑戦が可能な国家資格でもあります。

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監修者

元村 久美子

広告会社、大手化粧品会社宣伝部にてマスコミュニケーションに携わる。
その後フリーランスとして様々な分野で活動。
国家資格キャリアコンサルタントとしては企業内障害者ジョブ支援、
自治体の就労支援事業の講師・相談員・現場統括責任者を歴任。
現在は文化芸術振興の広報業務にも携わっている。

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