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キャリア - 2023.12.01更新 / 2023.04.13公開

【レジリエンスとは?】変化や逆境に負けない力の鍛え方

私たちと取り巻く環境は、日々めまぐるしく変化しています。

企業や組織内で働く従業員が厳しい状況から成長していくためには、対応力やストレスに対応する力が求められるようになりました。

この記事では、変化の激しい現代だからこそ注目されている「レジリエンス」とはなにかについて解説していきます。

また、「レジリエンス」の鍛え方にも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。

「レジリエンス」とは何か

レジリエンスとは

レジリエンス(resilience)は、回復力、復元力、再起力、弾性などを意味する言葉で、逆境を乗り越える力、困難に対応する力という意味合いで用いられています。

ビジネスにおける「レジリエンス」とは、企業や組織が直面する社会や市場の変化に対して、柔軟かつ効果的にリスクや困難を克服し、適応する能力を指します。

レジリエンスのイメージ図

また、「レジリエンス」は予測不可能な状況に対応するために必要な特性であり、様々な外部の要因に対処する際に重要とされています。

社会的影響も高まる「レジリエンス」

「レジリエンス」は適応や対応という意味合いでしたが、徐々に逆境を乗り越えるといった意味合いに変化し、教育、経営など様々な分野で用いられるようになりました。

また、個人の能力というところからも広がり、組織・企業においての「レジリエンス」も重要視されています。

近年に入り、国際的に注目を集める次のような機会も増え、レジリエンスという言葉の社会的影響力も高まりました。

 

2013年の世界経済フォーラム(ダボス会議)

メインテーマが「レジリエント・ダイナミズム」になる。様々なリスクにさらされ続ける世界経済の成長には、リスクに柔軟に対応するレジリエンスが必要不可欠であると、広く認識されている。

 

アメリカの大手出版社

レジリエンス を「2021年の言葉」に採用し、世界的な注目を集める。新型コロナウイルスの拡大など、予期せぬ事態の中で世界経済が混乱をみせる中、これからを切り拓く言葉として採用された。」

 
また、2011年の東日本大震災を受けて、日本では2013年に「強くてしなやか(強靭な)国づくりを方針とした、「国土強靭化」ナショナル・レジリエンスを推進しています。

企業や組織におけるレジリエンス

企業・組織においては、リスクや変化に対応し、維持、改良、発展し続ける力の有無がわかりやすいでしょう。様々な経営的問題に対処ができ、予期せぬ問題にも対応できる逆境力の強さがあるかどうかが鍵となります。

逆境に強い組織を「レジリエントな組織」と呼んだり、それを実現する経営を「レジリエント経営」などと呼ぶことがあります。

働き手が環境の変化に対応する力

働き手個人においては、与えられた役割や業務の遂行、配置転換など職場環境の変化に対応し、新たなスキルを習得していけるような特性がわかりやすいでしょう。

個人の働き方や求められるスキル、周囲のツール、同僚の価値観も変化していきます。それに伴い、個人はストレスや不安を感じる事もあるでしょう。それらを乗り越える力である「レジリエンス」の有無が重視されるようになってきているのです。

ビジネスの場では逆境に強いビジネスパーソンを「レジリエンスがある人」「レジリエントな人」と呼ぶこともあります。

レジリエンスに似た言葉との違い

この章では、レジリエンスと似ている意味を持つ用語をいくつか紹介していきます。
 

  1. ストレス耐性

  2. ハーディネス

  3. コーピング

 
順番にみていきましょう。

ストレス耐性

ストレス耐性とは、文字通りストレスに対する抵抗力のことです。厚生労働省はストレス耐性には次のような要素があると説明をしています。

ストレスに気づくか気づかないかという「感知能力」、ストレスを作りやすい性格かどうかという「回避能力」、ストレッサーをなくしたり、弱めたりする「根本の処理能力」、ストレス状態に陥ったとき、そのストレスの意味を良い方向に捉え直すことができる「転換能力」、ストレスそのものの「経験」、ストレスをどのくらいためていられるかという「容量」です。

引用:厚生労働省  |  「こころの耳」

ハーディネス

ハーディネスとは、ストレス下でも健康を害しにくい性格・特性のことです。

レジリエンスが「回復力」を意味するのに対し、ハーディネスは「防御力」と言い換えられることがあります。

倒れてしまった状態から立ち上がる力がレジリエンス、ストレスから身を守り倒れない強さや力がハーディネスといえます。

コーピング

コーピングは「ストレスへの対処行動」を意味し、ストレスコーピングとも呼ばれています。

レジリエンスが困難を乗り越え、学びや経験によって回復し成長するのに対して、コーピングはストレスに対しての具体的な対処法を探っていきます。

コーピングについてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

「コーピング」とは何か? ストレスへの具体的な対応方法とは職場におけるストレス対策

 

レジリエンスが注目される背景

レジリエンスが重視されるようになった経緯をご紹介しましたが、近年特に注目が集まっている背景には何があるのでしょうか。

VUCA時代の到来

現代社会は、複雑で未来の予測が難しいVUCA(ブーカ)時代と呼ばれています。

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)が飛躍的に高まった状況を示す言葉です。

VUCA時代についてはこちらの記事で紹介しています。

VUCA時代でも迷わないキャリア戦略とは?個人に与える具体的な影響も解説

 
実際に、私達の身の回りにはこれまで想定できなかった様々な問題が起こっており、これからの未来についても予測が難しい状況にあります。

こういった社会を生き抜くためには、個人・組織それぞれが力をつけていくことが必要になってくるのです。

急激なグローバル化と競争社会の激化

特に1980年代以降、インターネットなどの普及によって、世界中の人とやり取り可能なグローバル化が急速に進みました。

世界中の人間が顧客になる可能性があるというのは、メリットだと思えますが、企業間競争が激化することにも繋がります。

企業はこの競争で勝ち抜くために、高い生産性を発揮できる人材を求めるようになるため、働き手としては自身の価値をよりアピールする必要があります。

また、従業員として採用された後も、キャリア形成にも力を入れる必要が生じてきます。

急速な技術革新

AIやロボット産業の発達など、技術革新によって様々な業務が人以外に置き換えられる可能性が出てきています。

業務のみならず事業そのものが市場から撤退せざるをえないという場合もあるでしょう。

これまで通りのやり方で経営を維持することは難しくなっています。組織、個人ともに状況を見据え新しい局面で活躍できる力が必要となってくるのです。

働き手不足が与える働き方への変化

日本では少子高齢化が進み、今後の見通しも深刻であることがわかっています。今までの働き方では、働き手が足りなくなるとが想定されます。

少ない人数でこれまでと同等の成果を出すためには、一人ひとりがさらに力を発揮しなくてはいけなくなります。働き手のスキルを高める、広げるという観点からキャリアが重視されています。

多様な働き方の重要性

多くの人が多様なあり方で社会に参加できる状態をつくることも重視されています。

「働き方改革」の取り組みによって多様な働き方を認め、働きやすい環境をつくり、新たな労働力を生むことができます。

働き手の数を確保すればよいという考えではなく、貢献できる人材を多様な形で採用するという考えであることがポイントです。

これらの背景をまとめると、組織・個人ともに変化に柔軟に対応する力である「レジリエンス」を発揮することが重要であることが見えてきます。

レジリエンスを高めるメリット

これからの社会は変化に柔軟に対応する力であるレジリエンスが必要不可欠です。この章では、レジリエンスの効果、高めるメリットの具体例を紹介します。

個人がレジリエンスを高めるメリット

ストレスへの対処力をアップ

前述の通り、現代は変化の多い社会です。ストレス社会とも呼ばれます。こういった環境で生き抜くためにレジリエンスは必須です。

変化へ適応し、成長できる

組織の中での配置転換、求められる技術・役割が変わる可能性が出てくるでしょう。これらを前向きに捉えることはビジネスパーソンにとって重要です。

目標をやり遂げることができる

困難でも継続する、工夫できないか考え抜くことで、目標達成につながります。新たな目標に取り組み、立ち向かうことで成長し続けることができます。

組織がレジリエンスを高めるメリット

リスクに向き合い、経営戦略を転換するなど臨機応変に対応できる

これからは先の読めない時代です。想定外のリスクが生じた時に対応できるかどうかは組織の経営に直結します。

経済や市場の変化のみならず、新型コロナウイルスの流行に見る未曾有への事態への対応力なども重要です。

ダイバーシティの推進

柔軟な対応のできる組織であるためには、組織内部に様々な人材・チームが存在していることがキーとなります。

多様な力が合わさることで、様々な事態に対応できる幅の利く組織を実現できます。

また、そのような文化にあると、従業員同士もお互いを認め合う雰囲気ができやすく、イノベーションが生まれやすいともいわれています。

従業員個人のレジリエンスも引き出す

組織の文化・風土は従業員個人にも大きく影響します。レジリエンスが高く、文化として根付いている企業は、離職率が低く、従業員個人も活き活きと働けるといわれています。

組織にレジリエンスのあることは、外からのリスクに強いだけでなく、組織にとって重要な資産である従業員の力も存分に活かすことができる状況を指します。

変化が大きく不確実性の高い現代社会において、高いレジリエンスを持っていることは、組織・個人双方にとって大きなメリットになります。

強さを発揮するレジリエンスの鍛え方

ここまで、レジリエンスの重要性と効果について紹介してきました。それでは、レジリエンスはどうすれば高めることができるのでしょうか。

レジリエンスが高い状態というのは、様々な力が総合的に包括されている状態といえます。

どういった力を備えている状態を指すのか、個人に焦点を当てて考えてみます。

そして、レジリエンスを高める具体的な方法について紹介します。

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人には次のような特徴があるとされています。

  1. 考え方が柔軟、多様な思考性

  2. 気持ちの切り替えがスムーズ

  3. 人間関係を良好に築くことができる・困難や失敗に直面しても挑戦し続ける…など

こういった特徴を持つ人は、ストレスに対処しやすい傾向にあります。これらは必ずしも生まれ持った特徴ではなく、自身で意識して鍛えることができるものです。

高いレジリエンスは、自身の他の強みを活かすことにつながります。

個人がレジリエンスを高める方法

日々の業務の遂行、目標を立て行動する中で、次のようなことに注意してみてください。

マイナスの感情に向き合う

新しいことをするときや以前失敗した業務に再挑戦をするとき、人は不安になるものです。その際は、なぜ不安を感じているのか明確にしてみてください。

「なんとなく不安」という感情を、「これに不安を感じているんだ」と言葉にして捉え直すことで、前向きになれることがあります。

不安やそわそわする気持ちを自己効力感に変えることは、レジリエンスの高い人に多い思考パターンであり、とても重要なことです。

思考パターンを変え、客観的視点で考える

人が出来事を主観のみで考えている場合、ネガティブに捉えやすい傾向にあります。

例えば、「上司に怒られた」という出来事に対して悲観的になるのではなく、客観的な視点を持つことによって、状況や改善点、やるべきことなどを冷静に判断することが期待できるのです。

周囲との関わりを大切にする

立ち直れないような状況・心境にならないことも重要です。普段から同僚など、周囲に共感し、サポートすることで、自身もサポートされやすい関係性をつくることができます。

自分以外の人が成功しやすい状況を考え続ける姿勢は、物事をポジティブに捉え、困難に出くわした際の対処方法を広げることにもつながります。

組織・チームのレジリエンスを高める方法

組織・チームのレジリエンスを意識する場合、組織ごとの状況や課題に合った取り組みをすることは重要です。ここでは、普遍的な2点の方法を紹介します。

従業員一人ひとりのレジリエンスを高める

会社を支えているのは、一人ひとりの従業員です。そのため、一人ひとりのレジリエンスを高めることが組織としての向上につながると言えるでしょう。

文化・目標意識を定着させる

自社の目標や方向性を明確にし、従業員に共有することが重要です。

困難をしなやかな回復力を持って乗り越えることで、進むべき道が明確になり、従業員が一丸となって対処する力が生まれます。

経営側の理想や実現したいことを、実際に形にしていくのは従業員です。従業員一人ひとりに会社の目標をしっかりと落とし込むことが必要です。

心理的安全性の高い環境をつくる

心理的安全性を確保することは、従業員個人をサポートするために重要です。

心理的安全性とは、組織や集団の中で個人が安心して考えや意見を発言できる環境を指します。

心理的安全性の確保されていない組織の中だと従業員は、怒られたくないから発言しない、失敗を隠す、挑戦をしない、といった傾向にあることがわかっています。

難しい課題に挑戦することを過度に恐れる必要のない環境づくり、従業員通しのコミュニケーションの推進が重要です。

まとめ

このページでは、レジリエンスについて解説してきました。レジリエンスとは何か、注目されるようになった背景、メリット、鍛え方をまとめました。

レジリエンスとは何かを理解し高めることで、変化の激しい時代に対処していけるでしょう。

Q&A

レジリエンスとは何ですか?
レジリエンス(resilience)は、回復力、復元力、再起力、弾性などを意味する単語です。近年は、逆境を乗り越える力、困難に対応する力という意味合いで用いられています。
なぜレジリエンスが注目されているのですか?
VUCA時代という言葉にみられるように、変化が大きく不確実性の高い社会になっているためです。リスクや困難に柔軟に対応する力として注目されています。
レジリエンスを高める方法は何ですか?
考え方を柔軟・多様にする。周囲と助け合える関係を構築する。困難や失敗に直面してもチャンレンジできるような前向きな捉え方を持つ。などがあります。
レジリエンスを高めるとどのようなメリットがありますか
・外部環境の変化に対応できる
・モチベーションの向上
などが挙げられます。また、組織やチームでは
・リスクマネジメントが強化される
・心理的安全性の高い環境をつくることができる
などのメリットがあります。

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