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キャリア - 2023.04.13更新 / 2023.04.06公開

【時短勉強】L・サニー・ハンセンの統合的生涯設計理論をサクッと理解

キャリア理論で欠かせないのが、L・サニー・ハンセンのキャリア理論です。日本を含め世界各国でワークショップや講師を務め、キャリアに対する考え方は、現代社会でも役立つものが詰め込まれています。

L・サニー・ハンセンの統合的生涯設計

主にアメリカのキャリア理論を牽引してきたL・サニー・ハンセン。

ハンセンが提唱した統合的生涯設計(統合的ライフ・キャリアプランニング/Integrated Life Plan)は、人生を例えば「仕事」だけで考えるのではなく、仕事や家庭、社会、世界とのつながりで統合的に考えていくというものです。

仕事を人生の中の役割の一つと捉える

それまでのキャリアプランの対象は「仕事と生活」が中心でした。また、自分に合うキャリアを選択するには、自分自身を見つめ直し、自己理解を深めることが重要だという考えが主流でした。

一方で統合的生涯設計は、仕事を人生の中の役割の一つと捉えます。また、視野を広げ、刻々と変化する環境や世界情勢、多様化する価値観などにも目を向けてキャリアを考えていく、というものになります。

この統合的生涯設計は「4L」と「6つの重要課題」で説明されています。

ハンセンの「4L」

4Lとは、人生における4つの役割である「愛(Love)」「仕事(Labor)」「余暇(Leisure)」「学習(Learning)」を指しています。この4Lはよく「パッチワーク」で表現され、4つの役割のどれか一つだけではなく、役割をそれぞれ繋いで人生を豊かにしていく、と考えます。

仕事で忙しい毎日を過ごしていると、仕事が人生の中心であるかのように感じてしまいます。しかし、充実した余暇を過ごすことで仕事とバランスがとれたり、学習をしてスキルアップを目指すことでより仕事へのモチベーションが上がる、ということもあるでしょう。

また、仕事をバリバリしていた女性が出産をした際に、「仕事か子育てか」のどちらか1つしか選択肢がないのではなく、「仕事や子育て(愛)をどう両立していくか」「余暇をどう確保していくか」といった幅広い視野を持つことで、自分自身が納得のいく、より良い選択ができます。

これが、サニー・ハンセンの提唱した4Lの考え方になります。

ハンセンの「6つの重要課題」

統合的生涯設計をより具体的な行動・課題として表したものが次の「6つの重要課題」です。
 

①  グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
➁  人生を意味ある全体像のなかに織り込む
③  家庭と仕事の間を結ぶ
④  多元性と包括性を大切にする
⑤  個人の転機と組織の変革に共に対処する―チェンジ・エージェント
⑥  精神性、人生の目的、意味を探求する

 
①から⑥をもう少し説明します。

①  グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す

自分に合う仕事を探すという従来の発想とは異なり,地域や地球規模で我々が直面している多くの問題を解決するために,創造性を発揮してなすべき仕事に取り組むこと。

渡辺三枝子『キャリアの心理学』(ナカニシヤ出版、2018年、210頁以下)210頁
 
 
➁  人生を意味ある全体像のなかに織り込む

キャリア設計は仕事や職場での役割にばかり焦点をあててきたため,人間のほかの役割や発達(社会性,知性,肉体,精神,感情など)を無視してしまうこともあった。従来見過ごされてきた面や,男女の役割にも焦点を当て,男も女もその人生に自己充足や結びつきを感じられるようにすることが大切である。

渡辺三枝子『キャリアの心理学』(ナカニシヤ出版、2018年、210頁以下)211頁
 
 
③  家庭と仕事の間を結ぶ

「総合的人生設計」は,男女が平等のパートナーとして協力し合うことを強調している。

渡辺三枝子『キャリアの心理学』(ナカニシヤ出版、2018年、210頁以下)211頁
 
 
④  多元性と包括性を大切にする

人種,性別,年齢,障害,信念,言語,宗教など様々な違いをきちんと認識し,様々な視点からものを見ることができるようになること。

渡辺三枝子『キャリアの心理学』(ナカニシヤ出版、2018年、210頁以下)211頁
 
 
⑤  個人の転機と組織の変革に共に対処する―チェンジ・エージェント

転機において個人が決断することは一つの大切な課題である。また,個人が自分自身,家庭,組織における変化の担い手になろうということも強調している。

渡辺三枝子『キャリアの心理学』(ナカニシヤ出版、2018年、210頁以下)211頁
 
 
⑥  精神性、人生の目的、意味を探求する

ハンセンは精神性を,宗教的な意味ではなく,一人ひとりがそこから自分自身の意味を理解している中核そのものという意味で捉え,より大きな社会,コミュニティへの貢献という「統合的人生設計」の側面を支える概念として使っている。

渡辺三枝子『キャリアの心理学』(ナカニシヤ出版、2018年、210頁以下)211頁
 
L・サニー・ハンセンは、これらの課題を軸にキャリアの方向性を考えることによって、充実したキャリアを歩めることを提唱しています。

統合的生涯設計をキャリアコンサルティングに活かす

L・サニー・ハンセンの理論は、現代社会に適した理論で、「しっくりきた」という方も多いのではないでしょうか。

キャリアには様々な理論がありますが、キャリアコンサルタントとしてキャリアコンサルティングを行う際は、ここで説明した「6つの重要課題」も意識しておくとよいでしょう。相談者によっては、キャリアを考える指針となることもあります。

また、最初に出てきた4Lは、4つの役割をパッチワークのようにつないでいく、というものでした。

それぞれの役割の比重は人によって様々です。「今は人生の中で仕事が70%、愛が20%、余暇が10%。今後は、仕事を60%、愛を30%にして家族との時間を大事にしていきたい」という考え方もあります。キャリアコンサルティングを通して、相談者に自身の「4L」について考えてもらうことは、相談者が気づきを得ることにもつながるでしょう。

まとめ

サニー・ハンセンの「統合的生涯設計」は、人生を仕事や家庭、社会、世界とのつながりで統合的に考えていくというものです。

最初に紹介した「4L」は、個人で自分自身の価値観を知るのにも有効です。1枚の紙に四角を書き、それを4分割して、「愛(Love)」「仕事(Labor)」「余暇(Leisure)」「学習(Learning)」を書いてみてください。分割する大きさは、自分にとっての重要度に比例させます。「今はこの割合。だけで来年はこうしたいな」というように今後の進み方の方向性を探ることができるかもしれません。

Q&A

L・サニー・ハンセンの理論といえば何ですか?
統合的生涯設計(統合的ライフ・キャリアプランニング/Integrated Life Plan)が代表的なものです。この考え方、考える指針として「4L」「6つの重要課題」があります。
L・サニー・ハンセンが提唱した「4L」とは何ですか?
人生における4つの役割である「愛(Love)」「仕事(Labor)」「余暇(Leisure)」「学習(Learning)」の頭文字をとったものです。この4つの役割をパッチワークのように繋ぎ合わせることでより良い人生を選択できるとしています。
ハンセンの「4L」の考え方を教えて下さい
人生を豊かにするためには、どれか一つの役割ではなく、「4L」をパッチワークのように繋げて考えようというのが、ハンセンが提唱した「4L」です。
L・サニー・ハンセンが提唱した「6つの重要課題」は何ですか?
①グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
②人生を意味ある全体像のなかに織り込む
③家庭と仕事の間を結ぶ
④多元性と包括性を大切にする
⑤個人の転機と組織の変革に共に対処する―チェンジ・エージェント
⑥精神性、人生の目的、意味を探求する

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