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キャリア - 2024.07.25更新 / 2023.04.21公開

「所属する安心感」、ビロンギング~ダイバーシティ・インクルージョン・エクイティとの違いについて

「自由な働き方をしよう」「より自分らしい働き方ができるように」「一人ひとりが、従来の枠組みにとらわれない活躍ができることを目指して」という考え方に続いて、現在では「ビロンギング」という言葉が注目を集めています。

この記事では、「ビロンギング」について詳しく紹介していきます。

「ビロンギング」とは

「ビロンギング」という言葉は、まだ歴史が極めて浅く、ここ数年で急速に注目されるようになった言葉ですので、多くの人にとってなじみの薄い言葉かも知れません。

ビロンギング/Belonging
「ビロンギング」とは、働き方における意識のうちのひとつで、「所属していることによって安心感が得られている状態」を指します。

「ビロンギング」が注目される背景

近年は、より自由に自分らしく、枠組みにとらわれない働き方に共感し、その実現を模索してきた流れがあるため、「ビロンギング」のような「所属する安心感」というものは、時代を逆行しているのではと感じる方も多いでしょう。

「ダイバーシティ」や「インクルージョン」との関係

ビロンギングに関連する言葉に「ダイバーシティ」や「インクルージョン」があります。

ダイバーシティは組織内の多様性を認識し、異なるバックグラウンドや経験を持つ人々を受け入れる文化を指します。インクルージョンは、すべてのメンバーが自身の能力を発揮でき、尊重される環境を提供することを意味します。

この2つの言葉と「ビロンギング」は、反対の意味を持つように思えますが、「ビロンギング」の考え方はダイバーシティやインクルージョンの考え方と対立するものではありません。

「所属している安心感」

「ビロンギング」は、「所属している状態」のみを指すのではなく、「所属していることによって得られる『安心感』」を指す言葉だからです。

また、従業員が安心感を得ていることで、職場の心理的安全性が確保されることにもつながります。

支え合うことで実現する「ビロンギング」

私たちは古来から、協力し合って生きることの重要性を認識してきました。自己の能力を最大限に発揮するためには、他者との連携が不可欠であり、また他者を支えることで心の安定感を得ることができることも学んできました。

また、個々の能力だけでは限界に達することがありますが、チームとして協力し合うことで可能性を広がります。このような人との協力関係によって生まれる成果や安心感、所属意識に着目したのが「ビロンギング」です。

「ビロンギング」が実現しやすい職場環境は?

たとえば、会社で常に怒号が飛び交っているような環境では、「ビロンギング」は実現しにくいですが、チーム全体で助け合いながら働き、問題が生じた際は互いに支え合うような環境では、「ビロンギング」実現しやすい傾向にあるといえます。

「ビロンギング」を知るために~ダイバーシティとは何か

上記でも少し触れた、関連するキーワードである「ダイバーシティ」について詳しく知っておくことが「ビロンギング」を理解することにつながります。

ダイバーシティ/Diversity
ダイバーシティとは、簡単に言えば「多様性」を指す言葉です。

この世の中には、誰一人として同じ人間は存在しません。ダイバーシティは一人ひとり持っている個性や価値観、年齢、性別や国籍などの違いを受け入れ共存している状態を指します。

変化し続ける現代社会において、ダイバーシティを認めていくことが企業の発展にもつながるのです。

「ビロンギング」を知るために~インクルージョンとは何か

インクルージョン/inclusion
インクルージョンは、「包括」という意味であり、「異なる属性を持つ人を多く受け入れて、一人ひとりが協力し合うかたちを作ること」を指す言葉です。

ダイバーシティ&インクルージョン

インクルージョンは「ダイバーシティ&インクルージョン」というかたちで記されることもあります。

ダイバーシティは主に「異なる属性を持つ人を受け入れる」というスタンスを指し示すのに対し、インクルージョンは「異なる属性を持つ人を受け入れたうえで、彼らが活躍しやすい環境を整えること」に焦点を当てたものと解釈されることが多い言葉です。

ダイバーシティの次にインクルージョンがあり、それが発展していった先に「ビロンギング」があります。このため、ダイバーシティとインクルージョン抜きには語れない言葉だと言えるでしょう。

 

あわせて読みたい

ダイバーシティとは? 簡単に解説 | リカレントcounselor

 

「ビロンギング」を知るために~エクイティとは何か

エクイティ/Equity
エクイティは、「公平」という意味を持つ言葉です。証券や不動産用語では「株式資本」という意味合いで「エクイティ」が使用されていますが、本記事では「公平」「公平性」という意味での「エクイティ」を解説していきます。

エクイティが「公平性」の意味で使われるとき、そこには「個々の社員の持つ特性に合わせて、公平にサポートを行っていくこと」という意味を持ちます。

エクイティの例

たとえば、「女性であるからという理由で/国籍が日本ではないという理由で/年齢が若すぎるという理由で、昇進などの条件を変えることはせず、平等に公平に評価する」という姿勢です。

これは、「女性の/外国籍の/若い人の権利だけを重要視しよう」とする考え方ではない、ということも理解しておきましょう。

エクイティが実現できていない状態とは

「女性ならば当たり前に認められる育休だが、男性の場合は(育児の主体となりたいのに)却下される」「日本人だというだけで昇進の機会が少なくなる」「中高年であるという理由で、学びの機会が得られなくなる」などのような状態も、エクイティが実現できていない状態だといえます。

エクイティは、ダイバーシティやインクルージョンに加えるかたちで用いられる言葉です。

「ビロンギング」が得られるまでの過程

ダイバーシティによって異なる属性を持つ人を受け入れる姿勢を作り、インクルージョンによって彼らが一人ひとり活躍しやすい環境を作り、さらにエクイティによって昇進の機会などが与えられる組織で働くことにより、「ビロンギング」が得られるということです。

また、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、そして「ビロンギング」の頭文字を取ってDEIBまたはDEI&Bと表すこともあります。

「ビロンギング」が広まるメリットとは

こも章では、「ビロンギングが広まるメリットは何か」について考えていきましょう。

これには、
 

  1. ダイバーシティでは不足しがちであった「所属する安心感」が得られる

  2. ブランディング力が強化される

  3. 仕事の効率が上がるうえ、健康も保ちやすくなる

 
の3つがあります。1つずつみていきましょう。

1.ダイバーシティでは不足しがちであった「所属する安心感」が得られる

かつての日本では、「新卒で入った会社でそのまま活躍し、勤続年数に応じて昇進していき定年退職を迎える」というスタイルが一般的でした。

現在ではなくなりつつある「終身雇用制」が、ごく当たり前の選択肢であった時代では、ほとんどの人が会社という組織にしっかりと所属していました。

しかし「スキルアップやキャリアアップのための転職」「年功序列制度の見直し」「成果による評価」「フレキシブルな働き方の推進」という考えが世の中に広まっていきました。この終身雇用制度の崩壊にともない、「組織に所属することによって得られる安心感」が薄まったのは事実です。

上司や先輩、同僚や後輩が数か月後にはいなくなっている可能性もありますし、成果が挙げられず立つ瀬がない、という状態になることもありえます。

このような不安感を抱える人にとって、「所属する安心感」、およびそれを与えるための施策を得られる「ビロンギング」は、非常に大きなメリットだといえるでしょう。

また、働く側のメンタルヘルスへの影響はもちろん、企業側にとっても「運営・運用のしやすさ」というメリットを与えてくれます。

2.ブランディング力が強化される

ダイバーシティやインクルージョン、さらにエクイティや「ビロンギング」は、「働く側」にとって大きなメリットを持ちますが、、雇用する側にとってもプラスをもたらすものでもあります。

現在の就活者は、企業に憧れて入社試験を受けることももちろんありますが、「自分が働きやすい職場であるかどうか」を見て応募するなど、シビアな一面もあります。このような状況ですから、企業自体のイメージは非常に重要です。

「わが社ではダイバーシティやインクルージョン、エクイティや「ビロンギング」に積極的に取り組んでいて、実際にこのようなことを行っている」と企業側がアピールすることにより、就活者は良い印象を抱くでしょう。

また、特にBtoCの企業の場合、「企業イメージの上昇」が見込めるという点にも注目すべきでしょう。就活者や求職者は、柔軟で公平な安心感のある企業を好みます。「どちらと取引をすべきか迷っている」という場合は、新しい働き方を積極的に導入している企業を選びたくなるでしょう。

3.仕事の効率が上がるうえ、健康も保ちやすくなる

人は「帰ることができる場所」「安心して働ける場所」を得ることで、より大きな力を発揮することができるようになります。また、病欠率も大きく下降し、離職率を減らす効果も期待できます。

たとえば、エヴァン・W・カーらが調査した研究によれば、「被雇用者は、ビロンギングを実感することで、仕事の効率が56パーセントも向上する。さらに、病欠率は75パーセントも低下する。離職リスクも50パーセント低下する。10000人規模の企業の場合は、年間で70億8600万円近くも節約できる。さらには、「ビロンギング」を得ている人は、そうではない人に比べて、就活者に対して自社を推薦する割合が167パーセント(約1.7倍)にもなる」としています。
出典)Harvard business Review | ”The Value of Belonging at Work

つまり「ビロンギング」は、企業に対して「仕事の効率化」「病欠率の低下」「離職者の減少」「人材関係に関わる費用の軽減」をもたらすとともに、より良き人材を確保するための方法ともなりえるのです。

まとめ

この記事では、「ビロンギング」についてや、注目されるようになって背景や関連用語、そして「ビロンギング」のメリットについて紹介しました。

比較的新しい言葉である「ビロンギング」は、ダイバーシティやインクルージョン、エクイティと密接に関わっている言葉です。

「ビロンギング」は特にダイバーシティやインクルージョンと対比して語られることが多いものですが、ダイバーシティやインクルージョンが発展していった先に「ビロンギング」の考え方がある、と理解するのがよいでしょう。

多様性が認められ、さまざまな働き方ができるようになった現在だからこそ、「所属する安心感」を表す「ビロンギング」の考え方は、非常に重要なものといえます。

Q&A

「ビロンギング」とはなんですか?
「ビロンギング」とは、働き方における意識のうちのひとつで、「所属していることによって安心感が得られている状態」を指す言葉です。
DEIBとは何?
ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン・「ビロンギング」を合わせた言葉です。DEI&Bと言われることもあります。多様性を認め、活躍しやすい環境が整っており、公平な評価が行われていて、非雇用者が所属の安心感を得られる状態である、と考えることができるでしょう。
ダイバーシティと「ビロンギング」は対立関係にあるか?
「一人ひとりの多様性」に注目したダイバーシティと、「所属することで得られる安心感」を取り上げる「ビロンギング」は、しばしば対比関係で語られます。しかし上でも話したように対比関係にはあっても、対立関係にはありません。ダイバーシティとインクルージョンの先に、「ビロンギング」があります。
「ビロンギング」は誰によって成し遂げられる?
組織そのもの、そして組織に所属する従業員によって成し遂げられる
企業は「ビロンギング」の成立のために動きますが、企業のみが取り組むわけではありません。その組織に属する従業員の力も必要となります。

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