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人間の印象を強く左右する「初頭効果」と「親近効果」について

人間の印象を強く左右する「初頭効果」と「親近効果」について

プライベートの場でもビジネスの場でも、「相手に良い印象を持ってもらいたい」「強く印象に残りたい」と思うのは人としてごく自然なことです。では、相手に良い印象・強い印象をもたらすためにはどのような方法があるのでしょうか。その方法のひとつとして、「初頭効果」と「親近効果」という心理学的な作用があります。これらの心理学的アプローチを理解し、コミュニケーションやマーケティング、営業、プレゼンテーションなどのあらゆるビジネスシーンで活用することで、あなたのメッセージはより効果的に伝わり、人々の印象に深く刻まれるでしょう。

初頭効果とは? 第一印象が重要な理由

初頭効果(しょとうこうか、primacy effect)とは、文字通り、「最初に見たものが、深く印象に残る」という効果のことです。初対面のときの印象が良いと、その後も円滑な関係を築きやすくなるのは、この初頭効果によるものです。また、宣伝・広告において、重要な「結論」を先に持ってきたり、印象的なフレーズを冒頭に置いたりする際には、この初頭効果が活用されています。

初頭効果の概念はかなり古くからあり、1946年にはポーランド生まれの心理学者ソロモン・アッシュの実験によって確立されました。「ネガティブな単語とポジティブな単語を同数組み合わせた文章を提示した際、最初にネガティブな単語が来た場合はマイナスの印象を抱く人が多く、ポジティブな単語が来た場合はプラスの印象を抱く人が多い」という研究結果が出たのです。

アンカリング効果とは

ちなみに、初頭効果と似た作用や働きを持つ効果として、「アンカリング効果」があります。これは、「2つの異なる数字などを提示された場合、最初に出された数字を基点として考えてしまう効果」をいいます。たとえば、「通常ならば10万円のこの商品が、期間限定でなんと7万円!」とされた場合、最初の「10万円」が基準となり、次に出された「7万円」を安く感じてしまうという効果です。これは単純に最初から「7万円」と提示したときよりも購買に結びつきやすくなります。

ハロー効果とは

また、「目立たせた部分に、全体の印象が引っ張られる効果」として、「ハロー効果」もあります。これは、「物・人・場所などの説明をするとき、最も特徴的な部分によって全体の印象が決まること」をいいます。たとえば、「東京大学の教授も認めた」「ノーベル化学賞の技術を応用した」などの表記がこれに当たります。

親近効果とは? 印象に残すための最後のひと押し

初頭効果と対をなす概念として、「親近効果(しんきんこうか、 recency effect)」があります。

親近効果は、「最後に見たものによって、人の印象が左右される」というものです。

現在の広告などでは、メリットだけを押し出していると、「売り込みが露骨すぎる」という印象を持たせてしまうので、あえてデメリットを提示する、などの手法をとっているところもあります。この場合、まず初めにデメリットを提示して、終盤に多くのスペースを割いてメリットを紹介するという手法がよくとられます。これは、この親近効果を狙ってのことです。「人間は最後に見たもの、直近で見たものが、深く印象に残る」といった心理作用を利用しているわけです。

親近効果の概念は、初頭効果から30年後の、1976年にアメリカの心理学者ノーマン・ヘンリー・アンダーソンによって提唱され始めました。彼は裁判を模した実験で、

  1. 「弁護人から検事」の順番で証言を行う
  2. 「検事から弁護人」の順番で証言を行う

という2つのやり方をとり、陪審員役に「どちらが正しいと思うか」を判断させました。

結果、1では「検事が正しい」、2では「弁護人が正しい」と答える人が多く、直近で述べた意見の方に人の印象は大きく引っ張られることを明らかにしました。

初頭効果と親近効果、使い分けのポイントと活用事例

初頭効果と親近効果は、情報の提示順序によって人の印象や記憶に与える影響が異なる現象を指します。一見すると矛盾しているように思えるかもしれませんが、どちらも人間の心理に作用する正しい効果です。

では、それぞれがより効果的に働くターゲットや場面を見ていきましょう。

初頭効果のターゲット

初頭効果の代表的なターゲットはこちらです。

  • まだ対象(商品、サービス、人物など)への興味・関心が低いユーザー
  • 情報を積極的に受け取る準備ができていない、あるいは情報過多で選別しきれていないユーザー

初頭効果が有効な場面

初頭効果が有効なのは、「短い時間で強い第一印象を与えたい、注意を引きたい」という場面です。

例えば、以下が挙げられます。

  • 広告のキャッチコピー
  • Webサイトのファーストビュー
  • 初対面の挨拶
  • ニュース記事のヘッドライン

親近効果のターゲット

親近効果の代表的なターゲットはこちらです。

  • すでに対象(商品、サービス、人物など)にある程度の興味を持っているユーザー
  • 具体的な検討段階に入っているユーザー

親近効果が有効な場面

親近効果が有効なのは、「複数の選択肢の中から最終的な決定や行動(購入、契約、承諾など)を後押ししたい」という場面。

例えば、以下が挙げられます。

  • 商品説明の最後のメリット提示
  • 商談のクロージング
  • プレゼンテーションのまとめ
  • 議論の最終弁論

次に、具体例を挙げて解説していきます。あなたが「新しいテレビを売りたい」という設定で見ていきましょう。

初頭効果の活用事例:最初の情報で引き込む

「良いテレビがあれば買い替えたい」と漠然と考えている人に対しては、初頭効果を狙います。

最初に「このテレビは、これまでのテレビと比べて圧倒的になめらかな映像が特徴です。まるでそこにいるかのような臨場感を体験できます!」と、最も魅力的でインパクトのある情報を提示します。これにより、「どんなテレビだろう?」と興味を持ってもらい、その後の説明を聞いてもらいやすくなります。マーケティングや営業の冒頭で相手の心をつかむための重要なテクニックです。

親近効果の活用事例:最後の情報で決断を促す

テレビを買い替える必要があり、すでにカタログでスペックを比較し、いくつか候補を絞り込んでいる人に対しては、親近効果を有効活用します。

「こちらのテレビは、他社の同インチ商品より5,000円ほど高価ですが、1時間あたりの電気代は他社商品に比べて非常に安く、月々の電気代は●円程度安くなります。長期的に見れば、結果的に最もお得な選択となるでしょう」と、購入の決め手となるような具体的なメリットや条件を最後に伝えます。これにより、比較検討の最終段階で、あなたの提案が「一番良い選択だ」と感じてもらいやすくなります。プレゼンテーションや商談のクロージングで、最後の印象を強く残すためのコミュニケーション術と言えるでしょう。

面接における初頭効果と親近効果の活用

広告や商品だけでなく、対人関係においても初頭効果と親近効果を活用できます。面接を例に具体例を見ていきましょう。

初頭効果の具体例 第一印象が重要

面接の場では、入室時の姿勢や最初の挨拶が面接官に与える第一印象を大きく左右します。

面接での活用例

部屋に入った瞬間の、背筋を伸ばした姿勢や、面接官の目を見てハキハキと発する「本日はよろしくお願いいたします!」という明るい挨拶は、「やる気」や「真面目さ」を面接官に強く印象付けます。
自己紹介や志望動機で、最も伝えたい熱意や強みを冒頭に持ってくることで、面接官は「この人は何に貢献してくれるのだろう」と、その後の話にも耳を傾けてくれるでしょう。

親近効果の具体例 最後のひと押しで印象を決定づける

面接の終盤や退室時の言動が、印象を決定づけることがあります。

面接での活用例

面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれた際、入社への意欲や企業への関心を示す具体的な逆質問をすることで、「この人は入社意欲が高い」「よく企業研究をしている」という強い印象を残せます。

面接が終わり、退室する際の丁寧なお礼の言葉や、最後まで姿勢を崩さない振る舞いは、「礼儀正しい」「最後まで気が抜けない」といった好印象を与え、面接の締めくくりを良いものにします。

「いつ言うか」で結果は大きく変わってくる

商品やサービス、面接などで自分をアピールする時、「どのような情報を伝えるか」の取捨選択を行うことは非常に重要です。ただ情報の取捨選択がうまくいっていたとしても、伝え方が悪ければ、相手にうまくアプローチすることができません。

しかし、「大事なことは初めに言う」「インパクトのあることは最後に言う」という初頭効果と親近効果を意識すれば、より良い印象を残すことができるでしょう。この心理学的アプローチをコミュニケーションに活かすことで、ビジネスにおける交渉やプレゼンテーション、営業活動など、あらゆる場面で相手の印象にポジティブな影響を与え、望む結果に近づけることが期待できます。心理学を踏まえた「伝える技術」を学ぶことは、ビジネスの場において非常に重要なのです。

Q&A

初頭効果と親近効果の違いは?
初頭効果は「先に見たものが印象に残る現象」、親近効果は「最後に見たものが印象に残る現象」を指します。
初頭効果は、商品・サービス・人への関心が薄い(ない)ターゲットに対して有用に働きます。対して親近効果は、すでにある程度対象とする商品・サービス・人に関心のある人に対して有効です。これは特にマーケティング戦略を立てる上で非常に重要な心理学的視点です。
初頭効果と親近効果は同時に使用できますか?
併用することでより高い効果を得られます。
初頭効果と親近効果は対で語られることのあるものであり、「より有用に働くターゲット」は異なります。
ただ、併用することもできます。そのため、「最初にまずインパクトのある情報を並べて関心を引いた後、最後にお得情報などを残してアプローチして終える」などのやり方もとれます。これは広告やプレゼンテーションで効果的な心理学的コミュニケーション戦略です。
初頭効果や親近効果は、どんな場面で使える?
初頭効果と親近効果は、ダイレクトメールや電話勧誘、店舗での接客など、あらゆるシーンで用いることができます。実際、現在ネットにあふれている広告などを見れば、初頭効果もしくは親近効果(あるいはその両方)が使われていることがわかるでしょう。ビジネスの交渉や営業、プレゼンテーションだけでなく、コミュニケーション全般で相手に良い印象を与えるために役立ちます。
アンカリング効果やハロー効果は、初頭効果・親近効果とどう関連しますか?
アンカリング効果は、最初に提示された数字が基準となり、その後の判断に影響を与える点で初頭効果と似た作用があります。一方、ハロー効果は、対象の際立った特徴が全体の印象を決定する点で、特定の情報が強く印象に残るという点で関連性があります。どちらも人間の認知バイアスとして、情報の提示方法が印象に与える影響を示すものです。

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