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キャリア - 2024.09.23更新 / 2024.06.01公開
【事例あり】障がい者雇用を支援するジョブコーチとは?
「ジョブコーチ」という言葉をご存知でしょうか?
「ジョブコーチ」は「職場適応援助者」ともいわれ、障がい者の就業と職場適応を支援する人のことです。
日本では主に国や自治体が主体となって取り組みを推進しており、多くの企業と労働者をつなぐ役割を担っています。
ジョブコーチとは何か、役割や種類を解説
ジョブコーチ(職場適応援助者)とは
「ジョブコーチ」とは、障がい者の就業と職場適応を支援する人のことで、「職場適応援助者」とも呼ばれます。また、ジョブコーチの支援を「ジョブコーチ支援」と呼ぶことがあります。
ジョブコーチは、障がい者と雇用する企業の両方へ支援を行い、労働者と雇用主をつなぐ役割を持っています。
障がいを持つ労働者が抱える問題は、その特性によっても異なります。労働者はジョブコーチからの職場への適応支援を受けることで、よりよい活躍が見込めます。
また、様々な特性の人材に活躍してもらうために体制の整備を進める企業も多く、ジョブコーチには、労働者と企業双方を活性化させる役割が期待されています。
ジョブコーチの支援内容
ジョブコーチの支援は、対象となる人が「仕事を遂行すること」「職場に適応すること」を目的としています。そのための具体的な目標を定め、支援計画に基づいて実施されます。
また、ジョブコーチは障がい者本人だけでなく、事業主に対しても支援を行っていきます。具体例は次の通りです。
障がい者への支援
-
スケジュール作成、マニュアル作成、効率の良い作業の進め方の助言など、業務遂行力を向上するための支援
-
職場の人との関わり方など、職場内コミュニケーション能力の向上を支援
-
安定して就業するための健康管理といった生活自立、就業規則の理解促進といった社会自立の促進支援
事業主・職場への支援
-
障がい特性に配慮した雇用管理に関する助言
-
能力を発揮しやすい仕事の説明など、配置、職務内容の設定に関する助言
-
研修の実施など、障がいの理解に関する社内啓発
-
障がい者との関わり方に関する助言
-
指導方法に関する助言
ジョブコーチ浸透の経緯
そもそもどのような経緯でジョブコーチが生まれたのか、紹介します。
ジョブコーチが誕生したアメリカの取り組み
ジョブコーチの先駆けとなったのは、1980年代アメリカの「Supported Employment(援助付き雇用)」という制度(「リハビリテーション法」から改正)です。この制度は日本でも紹介されました。
アメリカでは、身体的な障がいを持つ人を対象に就業をサポートする体制が整備されてきましたが、実際には障がいの幅は広く、知的障がい、発達障害など、リハビリテーションだけで一律に解決できるものではありませんでした。
また、環境の整理といった面でも、アプローチが必要であることがわかってきました。それらの課題を解決する役割としてジョブコーチが誕生したのです。
日本でのジョブコーチの取り組み
日本でも、主に厚生労働省が主体となって、ジョブコーチの支援を実施してきました。各自治体での取り組みも進んでおり、活用する企業は増加傾向にあります。
多様な人材の活躍は世界的に注目されていますが、少子高齢化に伴う労働者不足の問題がある日本においては特に重要です。障がい者の法定雇用率(※)の段階的な引き上げなども既に実施、今後も予定されています。
障がいを持つ人、雇用する側が負担を強いられるのではなく、双方が活躍できる社会になるために、今ジョブコーチが期待されているのです。
〈障がい者の法定雇用率とは?〉
法定雇用率とは次のような義務を定めるものです。
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。(障害者雇用促進法43条第1項)
民間企業の法定雇用率は2.5%です。従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。
参考 厚生労働省 事業主の方へ ~従業員を雇う場合のルールと支援策~
厚生労働省は、2023年時点2.3%から、2024年度に2.5%、2026年度に2.7%へと段階的に引き上げる方針を発表しています。
ジョブコーチの利用方法は?
ジョブコーチはどのように利用するのか、対象となる人やジョブコーチの種類を紹介します。
ジョブコーチ支援の流れ・特徴
ジョブコーチの支援期間は1〜8ヶ月(標準2〜4ヶ月)です。
次のように、段階的に支援を行っていきます。
-
集中支援(週3〜4日訪問):職場適応上の課題を分析し、集中的に改善を図ります。
-
移行支援(週1〜2日訪問):企業や職場に支援ノウハウの伝授、キーパーソンの育成により、支援の主体を徐々に職場に移行します。
-
フォローアップ(数週間~数ヶ月に一度訪問)
-
障がい者が職場に適応した段階で支援は終了になります。
はじめは集中して支援を行い、徐々に障がい者・企業・職場間でコミュニケーションが取れるよう、移行していくのが特徴です。
ジョブコーチ支援の対象者・状況
ジョブコーチ支援の対象となるのは、「職場での支援が必要な障がいのある人」です。 休職中または在職中であれば、障害者手帳の有無は問いません。障がい者と事業主双方の同意が必要となります。
うつ病などのメンタル不調、業務がうまく遂行できないという悩みからジョブコーチの支援を受けるケースもあります。
ジョブコーチの3つの種類
ジョブコーチは活躍する場所によって次の3つに分けられます。
配置型ジョブコーチ
地域障害者職業センターで、就職が困難な障がい者を対象に、就職や職場適応のための支援を行います。
また、訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチと連携し、効果的な支援のための助言などを行います。
訪問型ジョブコーチ
就労支援を行う社会福祉法人に所属し、企業に出向して障がい者が職場に適応できるよう支援を行います。
企業に対して、障がい特性に配慮した雇用や配置、職務内容に関する助言を行ったり、障がい者へは業務を遂行するための支援、その家族には関わり方に関する助言などを行います。
企業在籍型ジョブコーチ
障がい者を雇用する企業に雇用され、障がい者が職場に適応できるように支援を行います。支援内容は、訪問型ジョブコーチと同様ですが、同じ会社に所属しているため、より柔軟な支援ができるといえるでしょう。
参考 厚生労働省 「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」
ジョブコーチに関する助成金制度
ジョブコーチを利用する際は、下記のような助成金がありますので参考にしてください。
ジョブコーチになるには?
ジョブコーチの役割を知ることで、興味を持った方もいるのではないでしょうか。
現に、企業に在籍しながらジョブコーチを取得し、活躍されている人も多く、2021年度のジョブコーチ数は配置型が313人、訪問型が563人、企業在籍型が182人となっています。
出典 厚生労働省 職場適応援助者の活動状況
ジョブコーチになるためには、高齢・障がい者・求職者雇用支援機構や厚生労働省が定める機関で研修(職場適応援助者養成研修)を受講するなどの要件があります。
配置型ジョブコーチになる要件
障がい者関係業務の経験を有し、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が委嘱した者、委嘱後は、原則として研修を受講。
訪問型ジョブコーチになる要件
訪問型ジョブコーチ養成研修を修了し、障がい者の就労支援に係る業務経験が1年以上ある者。
企業在籍型ジョブコーチになる要件
企業在籍型ジョブコーチ養成研修を修了した者。
浸透しているジョブコーチの具体事例
日本でどのようなジョブコーチの活動があるのかを、事例とともに紹介していきます。
脳出血の後遺症から社内他部署への異動
突然の怪我や病によって、それまでの業務を担えなくなるケースは少なくありません。
メッキ加工業の日本プレーテックの事例では、ドライバー職を担っていた方が脳出血とその後の後遺症によって復帰が厳しい状態になるということがありました。配置型ジョブコーチの力を借り、メッキ加工ラインで復帰、職場定着を図りました。
ジョブコーチが現場に足を運び、ヒーターの温度など職場の細やかな環境も気にかけながら、サポートを行いました。
全国トップとされる奈良県の障がい者雇用
これまで障がい者雇用の実績を出してきた奈良県では、中小企業が率先して障がい者を受け入れる取り組みが進んでいます。
企業在籍型ジョブコーチの資格を取得し、企業内から障がい者の雇用と活躍を推進する動きもあります。
ジョブコーチの力を借りた様々な事例
近年増えているのは、うつ病や気分障害からの職場復帰や再就職です。社会人に多い症例であり、どういった人にも身近な問題となりうることです。
また、年齢に関係なく突然仕事に支障をきたす病気や症状に見舞われることも少なくありません。若い世代だと「頑張れば大丈夫」と無理をしてしまうケースもあるようです。以前のように業務を遂行できず、心が折れてしまうといったこともあります。
専門医と自身の現状を確認した上で、頼れる場合はジョブコーチの力を借りてみるのも選択肢のひとつです。
「家族もいるし自分一人で頑張らなくてはと思っていた。弱みを見せてはいけないと思っていた」
「相談したことで楽になり、解決策もわかった」
このような声も多いのです。
ジョブコーチ支援の対象は「職場での支援が必要な障がいのある人」であって障害者手帳の有無は問わないと述べましたが、どのような障がいを抱えているかは人それぞれです。企業や職場としても、それぞれが無理なく活躍できる環境でありたいと考えているはずです。
こういった現代において、ジョブコーチは重要な存在だといえるでしょう。
まとめ
このページでは、ジョブコーチの概要、利用方法、具体的な事例をご紹介してきました。
ジョブコーチは、労働者と企業をつなぎ、双方がより活躍できるよう手助けしてくれる存在です。多様な人材が必要とされる今に必要な存在だといえます。
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