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キャリア - 2023.07.03更新 / 2023.07.05公開

ウェルビーイングとは? 意味から具体例までわかりやすく解説

「ウェルビーイング」という言葉をご存知でしょうか。世界的に様々な分野で注目され、用いられるようになっている言葉です。

本記事では、「ウェルビーイング」について詳しく解説します。具体的な指標や取組事例もご紹介しますので、「最近よく聞く言葉で興味がある」という方や、「定義が曖昧でピンとこない」という方も、ぜひ参考にしてください。

ウェルビーイング(well-being)とは

「ウェルビーイング」は、”よい”の「Well」と”状態”の「Being」を組み合わせた言葉で、「健康」「幸福」などに訳されます。

健康や幸福の定義は様々ですが、身体的な健康、精神的な健康、社会的に良好な状態、これらすべてが満たされた状態を、「ウェルビーイング」とすることが多く、個人として「幸福」な状態、というのがわかりやすいでしょう。

「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。

引用:厚生労働省 | 「雇用政策研究会報告書概要(案)」

また、近年は個々人の幸せのみでなく、企業などの組織、社会や経済の状態に対して用いられることもあります。

ウェルビーイングが使われるようになった経緯

ウェルビーイングは1948年発効の世界保健機関(WHO)憲章で初めて使われた言葉です。

それまで健康とは、身体的に良好な状態を指すことがほとんどでしたが、ウェルビーイングの登場によって、より広い概念へと変化していきます。

肉体的、精神的、社会的な意味合いを包括し、かつ、”being”という単語に見られるように、一時的なものではなく持続的した”状態”であることがポイントです。

新しい健康が定義されるとともに、ウェルビーイングの具体性が様々な場面で考えられるようになりました。

ウェルビーイングの定義

ウェルビーイングは、私達の日常にある要素と関係してくるものです。

社会、ビジネス、労働環境や教育現場、様々な状況でウェルビーイングを実現する取り組みが検討されるようになったのです。

日本では、厚生労働省が就業面におけるウェルビーイングを以下のように定義しています。

働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより、自らの権利や自己実現が保障され、働きがいを持ち、身体的、精神的、社会的に良好な状態になることをさす

引用:厚生労働省  |  「ウェル・ビーイングの向上と生産性向上」

また、世界的な事柄では、世界経済フォーラムのダボス会議で、会長のクラウス・シュワブ氏が次のように述べています。

金融や社会経済などのシステムを一度すべてリセットして再構築するグレート・リセットにより、経済を人々のウェルビーイングを中心に考え直すべきです。

世界的な経済問題に対してもウェルビーイングという概念が用いられています。

ウェルビーイングが重要視されるワケ

ウェルビーイングの向上は、労働者一人ひとりが安心して生活を送ることができるのはもちろん、生産性の向上にもつながります。

GDPといった経済活動の指標のみでは、働き手個人の豊かさは測れないことが浮き彫りになり、労働環境、ビジネスなどの場面でも注目されるようになり、重要視されるようになったのです。

ウェルビーイングが注目されている背景

では、ウェルビーイングが注目されている背景にはどのようなことがあるのでしょうか。
 

  1. 働き手不足の懸念と人材確保
  2. 価値観の多様化
  3. 働き方改革
  4. SDGsの観点

 
順番にみていきましょう。

1.働き手不足の懸念と人材確保

日本では、少子高齢化と人口減少が深刻な問題となっています。働き手の減少も見込まれており、各企業で人材を確保することが難しくなっていくことが予想されます。

これまでの生産性を維持するためには、一人当たりの労働力を上げる必要があります。

厚生労働省でも、雇用管理改善支援、雇用管理制度の導入支援、各種助成金、能力開発支援、非正規雇用労働者の正社員化支援など、人材確保対策の推進をしています。

2.価値観の多様化

減少が見込まれる中での労働力の確保や人材の活用は、多様な価値観を受け入れることにも関係してきます。

「ダイバーシティ」という言葉を見聞きする機会も増えましたが、多様性と訳されるダイバーシティは、性別、年齢、人種や信仰、障がいの有無などに留まりません。

どのような経験やスキルがあるかだけではなく、特性や潜在的な能力という複合的な見方をすることが、人材育成においては重要です。

また多様な人材を活用するためには、それぞれのキャリアプランを描いて実践させていく仕組みや、円滑なコミュニケーションも必要といえるでしょう。

3.働き方改革

長時間労働の是正、公正な待遇確保によって、働き手の健康と安全性の問題を解決するとともに、多様で柔軟な働き方を目指すものです。

家庭や体調の事情から仕事に参加できなかった方などに働いてもらう上で、多様な働き方ができる仕組みは必須です。

働き手それぞれに合った働き方を認めることで、多くの人材が活躍しやすくなります。柔軟な働き方ができることで業務の効率化が行われ、生産性が高まることも期待できます。

4.SDGsの観点

SDGs(Sustainable Development Goals)は、「持続可能な開発目標」のことです。2030年までに、持続可能でより良い世界を目指すための国際目標として掲げられています。

SDGsの目標として「すべての人に健康と福祉を」が挙げられています。

世界全体で見た場合、子どもの死亡率や医療格差などが特に問題視されています。

SDGsの基準では、日本の健康や福祉も問題が少ないわけではありません。高齢化による医療費・介護費の増加、健康寿命の問題、医療スタッフの不足、自殺率の高さなど問題がある状況です。

【あわせて読みたい】

厚生労働省も掲げる「ディーセント・ワーク」、これはいったいどんなもの? その意味とは

 

ウェルビーイングの測り方

ウェルビーイングの概念や注目されているポイントを解説してきましたが、文化や環境の違いなど個人差が大きく影響することもあります。

ここでは、具体的なウェルビーイングの測り方をご紹介します。

ギャラップ社ウェルビーイング「5つの構成要素」

ウェルビーイングに関する調査の中で特に有名なのが、アメリカの世論調査会社ギャラップが行った調査です。

140以上の国での大規模な調査で、「体験」と「評価」を軸としています。軸を体験と評価の2つにすることで、直近の体験の影響が大きくならないようにしています。評価の項目は、世界幸福度ランキングの指標の1つにもされています。

ギャラップ社では、調査をもとに5つの要素を導き出しています。
 

Career well-being
(キャリア ウェルビーイング)

仕事だけではなく私生活を含む、キャリア形成の幸福です。

 

Social well-being
(ソーシャル ウェルビーイング)

人間関係に対する幸福です。

 

Financial well-being
(フィナンシャル ウェルビーイング)

経済的な幸福のことです。

 

Physical well-being
(フィジカル ウェルビーイング)

身体的な幸福です。

 

Community well-being
(コミュニティ ウェルビーイング)

周囲のコミュニティとの幸福についてです。

 

国連「世界幸福度ランキング」

  1. 一人当たりのGDP
  2. 社会的支援
  3. 健康寿命
  4. 人生で何をするか選択の自由度
  5. 他人への寛容さ(チャリティへの参加など)
  6. 腐敗認識度(普段の生活への不満、社会や政府への不満など)

 

OECD「より良い暮らし指標」

OECD(経済協力開発機構)は、2011年から「OECDより良い暮らしイニシアチブ(OECD Better Life Initiative)」というウェルビーイングの分析のための研究プロジェクトを行っています。

より良い暮らし指標(BLI)) は、GDP以上では測れない、人々の暮らしやすさを計測、比較する指標です。

暮らしの11の分野(住宅、所得、雇用、社会的つながり、教育、環境、市民参画、健康、主観的幸福、安全、ワークライフバランス)で調査を行っています。

世界と日本のウェルビーイング現状

近年の日本のウェルビーイングの状況はどうでしょうか。世界幸福度ランキングの順位を見てみましょう。

世界幸福度ランキング 日本の順位

調査年

順位

2015年

46位

2016年

53位

2017年

51位

2018年

54位

2019年

58位

2020年

62位

2021年

56位

2022年

54位

 
2020年には62位まで落ち込みましたが、2022年には54位まで回復しています。

世界幸福度ランキング G7の順位

G7であるドイツ、カナダ、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、日本の7か国のうちでは最下位となっています。
 

国名

順位

ドイツ

14位

カナダ

15位

アメリカ

16位

イギリス

17位

フランス

20位

イタリア

31位

日本

54位

 
また、日本国内では、2021年に日本版「well-being Initiative」が設立され、次のように報告しています。

日本では経済的な発展に対して、生活満足度(主観的well-beingが長年にわたり向上していないことが課題です。

その原因・改善すべきところを見つけ出す研究が始まっており、GDPだけでは捉えきれていない指標を補うため、GDW(国内総充実/Gross Domestic well-being)を「経済社会における豊かさのあり方」として位置付けるべく、推進しています。

日本ではウェルビーイングの取り組みがまだまだ十分ではなく、特に職場でのウェルビーイング満足度が低い傾向にあることも報告されています。

国や各組織、そして現場レベルでも、さらなる取り組みが必要です。

【具体例紹介】世界のウェルビーイング向上の取り組み

ここからはウェルビーイングの具体的な取り組みを紹介します。まずは世界からです。

Googleのデジタルウェルビーイング

「デジタルウェルビーイング」は、2018年にGoogleのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)が重要性を訴え、広く知られるようになった言葉です。

デジタル技術を人々の心身の健康や幸福につなげる考え方のことで、デジタル機器への依存症を防ぐ取り組みなどがあります。

2018年以降、GoogleのOSには、様々なデジタルウェルビーイング機能が追加されています。利用したことがある方も多いのではないでしょうか。

幸福度ランキング連続1位のフィンランド

フィンランドは独立をしてから僅か100数年で、2021年時点での人口が554.1万人の国です。ではフィンランドがなぜ、世界の幸福度ランキングで1位と言われているのでしょうか。

フィンランドの特徴

  1. ワークライフバランスの調和が取れている
  2. 特に教育に関しては平等を重視しており、小学校から大学まで教育が無償
  3. 労働生産性に関してもOECD加盟38カ国中14位と高い

 
フィンランド自体が「ウェルビーイング国家」と自認しており、国ぐるみで取り組みをしていることが、幸福度が高い理由といえるでしょう。

【具体例紹介】日本のウェルビーイング向上の取り組み

次に、日本の政府、地域、企業におけるウェルビーイングの取り組みを紹介します。

楽天グループ

楽天グループでは、自社の価値観を示した『楽天主義』をベースに、ウェルビーイングを中心にした組織開発、企業文化の醸成に取り組んでいます。

2020年には、自社のウェルビーイングに関するガイドラインを策定し、経済産業省の「健康経営優良法人ホワイト500」にも認定されています。

従業員の身体的健康のための様々な取り組みの他、仲間、時間、空間という3つの要素に余白を設けるという取り組みも行っています。

地域のまちづくりに反映させるウェルビーイング

近年は、地域ごとの住民の幸福度を指標に、より暮らしやすいまちづくりを活かす動きも多くなっています。

医療や福祉、子育てなど、分野ごとの課題を明確にし、地域の特徴を活かして解決する試みです。

まとめ

このページでは「ウェルビーイング」について解説してきました。

ウェルビーイングは、私たちがこれからをよりよく生きる上で重要なものです。ぜひ、個人として、組織の一員として、ウェルビーイング実現に積極的に取り組んでみてください。

Q&A

ウェルビーイングとは何ですか?
「ウェルビーイング」は、”よい”を表す「Well」と”状態”を表す「Being」が組み合わさった言葉で、「健康」「幸福」などに直訳されます。近年では、身体的な健康、精神的な健康、社会的に良好な状態、これらすべてが満たされた状態を指します。
なぜウェルビーイングが注目されているのですか?
ウェルビーイングの向上が、社会や経済活動にも影響することがわかってきたためです。働き手一人ひとりの身体的健康はもちろん、働き方や価値観の多様性なども改善されるようになっています。
ウェルビーイングの調査方法はどのようなものがありますか?
有名なものに、ギャラップ社ウェルビーイング「5つの構成要素」、国連の「世界幸福度ランキング」、OECDの「より良い暮らし指標」などがあります。
ウェルビーイングに必要な取り組みは何ですか?
ウェルビーイングは個人の権利が保障され、心身ともに健康で社会的に良好な状態を意味する概念ですが、個人でだけではなく、国全体で取り組んでいくことが必要です。例として、世界の幸福度ランキング1位であるフィンランドは「ウェルビーイング国家」と自認しています。

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