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キャリアコンサルタント資格 - 2023.08.22更新 / 2023.08.23公開

【アルバート・エリスのABC理論とは?】ネガティブをポジティブに変えるために

このページでは、アルバート・エリスの「ABC理論」、そしてそこから発展した「ABCDE理論」について解説していきます。

アルバート・エリス~20世紀を代表する臨床心理学者

アルバート・エリスは、20世紀を代表するアメリカの臨床心理学者のうちのひとりです。

当時の精神分野の治療は、「精神」に重きを置き、長く時間のかかるものでした。こういった状況に対して、アルバ―ト・エリスが1955年から提唱し始めたのは、「論理療法(REBT)」と呼ばれるものです。この論理療法は、現代でエビデンスのある療法として広く知られている「認知行動療法」の基礎となりました。

論理療法とは

論理療法は、人が感じる心理的な問題は、「何が起きたか」ではなく「それをどのように解釈したか」によって起こりうるものである、とする考え方です。

そして、この論理療法の代表的な理論のうちのひとつとして、「ABC理論」があります。

ABC理論とは

ABC理論は、Activating events(出来事)、Belief(信念、認知)、Consequences(結果)の頭文字をとった言葉です。

アルバート・エリスは、「A(出来事)そのものが、C(心理的な結果)に結び付く」という考えを否定して、「A(出来事)が起きて、それをB(認知)して、結果的にC(心理的な結果)に結び付く」としました。

ごく簡単に言うのならば、「起きた出来事自体(A)はまったく一緒でも、それをどう捉えるか(B)によって、結果(C)は変わってくる」としたのです。

ABC理論の例

たとえば、テストで80点をとったとしましょう。

この80点を、「ミスはあったが、次はミスをしないようにしよう」と考えれば落ち込むことはありません。 しかし、「100点をとらなければならないのに、失敗した。自分はダメなやつだ」と考えれば、自分が苦しめられることになります。

同じ「80点」という出来事は変わらなくても、それを「次に生かそう」と考えるか「こんな失敗をして、自分はダメなやつだ」ととらえるかによって、心の在り方は変わってくるのです。

イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)の種類

アルバート・エリスは、さらに歩を進めてこのB(認知)を、「イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)」と「ラショナル・ビリーフ(合理的な信念)」に分けました。

「イラショナル・ビリーフ」とは、ごく簡単に言えば、「偏った捉え方」のことです。ちなみに、「ラショナル・ビリーフ」は、イラショナル・ビリーフとは逆の意味を持ちます。

イラショナル・ビリーフの種類としては、以下のようなものが例として挙げられます。
 

  1. 「ねばならない」主義
  2. 悲観的志向
  3. 非難・卑下的
  4. 欲求不満低耐性

 
少しわかりにくいので、具体例を紹介します。

イラショナル・ビリーフの具体例

①「ねばならない」主義

「〇〇しなければならない」と思い込む

例:夫、父親として、仕事で結果を残して出世をし、土日は家族サービスをしなければならない、と考える。

 

悲観的志向

「何もうまくいかない」「もう終わりだ」と思い込む

例:希望していた学校に合格できず、「あの学校に入れなかったのなら人生おしまいだ」と考える。

 

非難・卑下的

人や自分を非難したり、ダメな人間だと思い込む

例:仕事でミスをしてしまい「自分はダメな人間だ」と思う。または、仕事でミスをした人に対して「あの人は仕事ができない」と決めつける。

 

欲求不満低耐性

「我慢できない」「耐えられない」と思い込む

例:嫌いな人と同じチームになってしまい、我慢できないと思い、部活をやめてしまう。

 
これらのイラショナル・ビリーフを、完全に避けて生きていくことはなかなか難しいといえます。

しかし、イラショナル・ビリーフにとらわれすぎてしまうと、本当はプラスの意味もマイナスの意味も持っていない「出来事」に対してマイナスの意味を付与して苦しくなってしまいます。

ABCDE理論について

上記ではABC理論、そのなかでもとりわけその中心となる「B(捉え方)」について解説してきました。そして、そこで述べてきたように、Bの「イラショナル・ビリーフ」を完全に払拭することは極めて難しいといえます。

ただそれでも、イラショナル・ビリーフを解決するための有効な手立てはあります。 それが、「反論」と「効果(を考えること)」です。

この「反論 “Dispute” あるいは “Dialogue” 」と、「効果 “Effect” 」の頭文字と、前述した「ABC理論」を合わせて「ABCDE理論」といわれています。ここからはこの “D” と “E” について見ていきましょう。

ABCDE理論の例

“D” とは「イラショナル・ビリーフに対する反論」です。

たとえば、「数学のテストで20点を取ってしまった(A)」→「このままではどこの学校も受からないに違いない(B/イラショナル・ビリーフ/過度な一般化)」→「自分がダメな人間だと落ち込む(C)」となろうとしているところに、Bの後に、自分自身で「でも英語では80点だった」などのように具体的で論理的な反論を入れ込むのです。

こうすることで、 「数学のテストで20点を取ってしまった(A)」→「このままではどこの学校も受からないに違いない(B/イラショナル・ビリーフ/過度な一般化)」→「でも、英語では80点だった」→「英語と同じように数学もがんばれば、点数をアップさせられる」などのように、結論そのものや捉え方そのものを変えることができるのです。なお、 “E” の「効果」とは、「Dによって変えられたことで、得られた信念や思考の変化」を指します。

物事を適応的に捉える

私たちは生きていくうえで、どうしてもイラショナル・ビリーフにとらわれることがあります。その「イラショナル・ビリーフ」に対して、合理的な反論(D)を行うことで、状況に適した捉え方ができるわけです。そしてそのような柔軟な対応ができることは、人生をより良い方向に進めたり、自分の心を軽くしたりすることに役立ちます。

【あわせて読みたい】

【レジリエンスとは?】変化や逆境に負けない力の鍛え方

 

まとめ

「出来事そのものは変えられなくても、それをどうとらえるかによって、心の感じ方は変わる」「たとえ不適切で非合理的な思い込みにとらわれても、それに対して論理的に反論することで、新しい思考を得られる」とするのが、ABC理論およびABCDE理論の考え方です。

このように考えていくと、ABCDE理論とは、「ネガティブ思考をポジティブ思考に切り替え、より合理的でより有用な方向に人生の舵を切っていくための手がかりとなる理論である」といえるのかもしれません。

Q&A

ABC理論とは?
ABC理論は、“Activating events(出来事)”、“Belief(信念、認知)”、“Consequences(結論)”の頭文字をとった言葉です。
「A(出来事)そのものが、C(心理的な問題)に結び付く」のではなく、「A(出来事)が起きて、それをB(認知)して、結果的にC(心理的な結果)に結び付く」としました。
ABC理論は誰が提唱しましたか?
アメリカの臨床心理学者のアルバート・エリスが提唱しました。
「イラショナル・ビリーフ」とは?
「イラショナル・ビリーフ」は、「非合理的な信念」と訳され、「偏った捉え方」を指します。例えば、「試験で不合格だった。自分の人生はもう意味がない」といった思い込みが挙げられます。
ABCDE理論の考え方とは
ネガティブ思考をポジティブ思考に切り替え、より合理的でより有用な方向に人生の舵を切っていくための手がかりとなるのがABCDE理論であるといえます。

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