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キャリア - 2023.01.25更新 / 2022.12.19公開

【職場を変える!】ハーズバーグの二要因理論を解説

近年、人手不足の対応として、従業員の職場定着や一人ひとりの生産性向上に取り組む企業が増えています。その中で、従業員の仕事に対する満足度を向上することが重要視されていますが、そもそも、仕事への満足感や不満にはどういったことが影響するのでしょうか。

このページでは、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論(動機付け・衛生理論)」をもとに、仕事に満足する要因、不満を持つ要因を解説します。職場での課題発見・解決の具体例もご紹介します。

ハーズバーグの二要因理論  ── 動機づけ・衛生要因

二要因理論とは

「二要因理論」とは、アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した、仕事へのモチベーションに関する理論です

この理論が提唱された19世紀は、産業化がめまぐるしく進んだ時代でした。効率が求められる中で、個々の生産性を高めることが重要になったのです。

個々の生産性は、「働きたい」、「働きたくない」といったモチベーションが大きく関与します。そのため、ハーズバーグは働く人にとって何がモチベーションとなるのかの研究を始め、結果として導かれたのが「二要因理論」です。

この理論では、仕事へ満足する要因、不満を抱く要因を、「動機づけ要因」と「衛生要因」に分けて考えます。

「欲求」に焦点を当てたマズロー

ハーズバーグと並んで紹介されることが多い人物に、「欲求」に焦点を当てた研究を行ったマズローがいます。マズローの理論は欲求を5段階に分けて論じており、「欲求5段階説」と呼ばれています。

マズローは人間の普遍的な欲求を、低次なもの、例えば、「何か食べたい」・「寝たい」という生理的な欲求から、より高次なもの、例えば「人に認められたい」・「自己実現」したいというものへ移行していくものとしました。

ハーズバーグは仕事に関するモチベーションに絞り、満足と不満という反対方向へ向かう要因に大別した点が特徴的といえます。

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動機づけ要因とは

動機づけ要因は、満足につながる要因です。具体的には、達成、承認、仕事そのもののやりがい、責任、昇進などです。

動機付け要因が満たされていることで、「仕事を通してスキルアップしたい」、「目標達成のために努力したい」というモチベーションを引き起こす可能性があります。

衛生要因とは

衛生要因とは、不満を引き起こす要因です。具体的には、対人関係、仕事環境、会社の方針、監督者の行動などです。

衛生要因が満たされていないと、「今の職場では働きたくないから退職したい」、「別の会社に転職したい」、「積極的に働きたくない」といった気持ちを引き起こす可能性があります。

動機づけ要因と衛生要因の関係

動機づけ要因と衛生要因の両方が満たされていることは、従業員にとって重要です。動機づけ要因だけが満たされている場合を考えてみましょう。

達成感のある仕事、そして働きが認められていると感じる状況、能力にふさわしい責任あるポジション。こういった状態であれば、仕事自体へのモチベーションは保たれるでしょう。

しかし、動機づけ要因が満たされていても、衛生要因が満たされていなければ、職場に不満がある状態です。例えば、仕事に見合った額の給与が支給されない、人間関係に問題があるといった状態では、仕事自体に満足感を得られる瞬間はあっても、大きな不満を抱えてしまうでしょう。

反対の場合も考えてみましょう。衛生要因だけが満たされている場合、不満は解消されている状態ですが、働きがいや達成感は満たされていません。

そのため、従業員は不満がないだけで、十分な満足感が得られません。高いモチベーションも期待できません。動機づけ要因、衛生要因、両方が満たされることでモチベーションが高まり、満足度が向上するのです。

ハーズバーグの二要因理論  ── 具体事例

動機づけ要因が満たされていない事例

動機づけ要因が満たされていない状態を、より具体的な事例で考えてみましょう。

例えば、上司に頑張りが認めてもらえないという状況です。同じチーム内でも業務を細かく分担している場合や、上司が一人ひとりに従業員を見る機会が少ない場合は、数字として残らない業務は、成果を出していても評価されにくいとされています。

マネジメントする上司や管理職の立場では、従業員が何にモチベーションを感じるのかなどを把握していることは非常に重要ですが、従業員と認識がずれている場合もありますので注意しましょう。

従業員の新しい仕事やチャレンジを理解し適切に評価するという上司としての姿勢も必要であるといえます。

衛生要因が満たされていない事例

例えば、望まない転勤が頻繁にある場合、会社の状況や個人の価値観によっては、転勤をチャンスと捉えることもできます。しかし、望んでいない転勤である場合は、従業員は多くのストレスを抱えることとなり、メンタルヘルス不調につながることも考えられます。

また、家族と同居しているケースでは単身赴任や引っ越しの検討が必要となるため、プライベートでも少なからずリスクを抱えることになるでしょう。

給与や待遇が向上し、昇進のチャンスが広がるといったメリットがある場合でも、転勤に対して不満を解消するだけの価値を見出せなければ、従業員には大きな負担となるのです。

このような状況は、退職や転職の選択肢にも繋がるため、従業員の不満を解消するためには、テレワークの制度を導入するなど柔軟な働き方を提供することが必要であるといえます。

動機づけ・衛生要因を満たした事例

ヤフーの「1on1ミーティング」

「1on1ミーティング」とは、上司と部下が1対1で行う定期的なミーティングのことです。上司と部下の面談を行う会社は多いですが、だいたい月に一回程度、もしくは三ヵ月、半年に一度などのペースで実施するのが一般的です。

ヤフー株式会社は、「社員が才能を解き放って成長する機会を増やす人財開発企業」という目標を掲げ、2012年から「1on1ミーティング」を実施しています。

部署にもよりますが、だいたい週に一回程度、「1on1ミーティング」を実施しているそうです。リラックスした雰囲気で日々の業務や仕事環境について考えを共有します。

従業員が学んだこと、感じたことを、上司がしっかりと受け止めることを重視しています。部下が何にやる気を感じ、あるいは不満を抱いているのか、しっかり確認していくことで、問題に対処することが可能になります。

従業員にとって、理解してもらえている、適切な評価・アドバイスをもらえていると感じる機会は、モチベーションアップにつながり、動機づけ要因が満たされやすくなると考えられています。

大企業が続々と転勤・単身赴任の廃止、コロナ後もテレワーク中心へ

2020年にカルビー、2021年にNTTが、転勤・単身赴任を見直し、新型コロナウイルス収束後もテレワークを中心とした働き方を基本にすると発表しました。

オンラインでもある程度稼働可能な業務があることがわかったことも影響しています。住居は従業員にとって重要な問題です。転勤の問題、あるいは家とオフィスが離れていることによる通勤のストレスなどは、衛生要因となります。個々が過ごしやすい環境で働けることで不満が解消されることが期待されます。

一方で、テレワーク中心にすることによってコミュニケーションが減る、イノベーションが起きづらくなることを問題視する声もあります。従業員の衛生要因を満たしつつ、企業として高い生産性を維持できるかどうか考え続けることが課題の一つとして挙げられています。

ハーズバーグの二要因理論を活用しよう!

ハーズバーグの二要因理論は、職場で起きる問題解決の糸口になります。働く個人として、同僚や上司と接する際、部下と接する際、様々な場面で有効です。ここでは主に、マネジメントの視点を中心に、実践方法をご紹介していきます。

動機づけ要因を見直してみよう

先に、動機づけ要因を5つ紹介しました。それぞれに分けて考えてみましょう。

達成

達成するため、達成感を得るためには、適切な目標が必要です。従業員それぞれに合った内容・量の仕事が配分されているでしょうか。負担が大き過ぎる場合、従業員はうまく仕事をこなせず、不満につながります。個々の従業員の考え方、受け止め方を共有することが重要です。上司と部下が積極的に対話できる場面を設けることで改善できます。

承認

従業員個々の働きが見えやすい環境になっているでしょうか。頑張っているのに評価されない、そういった不満を抱えている場合があります。また、上司としては評価しているつもりだけれど伝わっていないという可能性もあります。評価面談や給与への反映だけではなく、積極的に承認する、称賛する文化が重要です。

仕事そのもの

従業員がやりたいこと、仕事を通して実現したいことを理解することは重要です。周囲が適職だと思って任せた業務が、モチベーション低下につながってしまっている可能性があります。スキルが高い従業員ほど、業務がこなせてしまうため抱え込む場合もあります。

また、仕事が簡単過ぎる、少なすぎる場合も、達成感を得られずモチベーションが低下することも考えられます。現在の仕事そのものに対してどう考えているか、共有することが重要です。スキルアップすることによって、次は別の仕事がしたいと、考えも変わっていくはずです。定期的な話し合いが必要です。

責任

能力が高まるごとに責任範囲も拡大していきますが、これだけのことを任せてもらえているという満足感にもつながります。これは昇進・昇格などを通して管理職になるということだけでなくチームのリーダーを任せる、新しい企画に挑戦してもらうなど、様々なサイズ感で実施できます。

昇進

昇進は企業ごとの決まりがあり、個々では解決が難しい問題ではあります。些細なことではありますが、組織内で適切な評価を行い、報告することが重要になってきます。

衛生要因を見直してみよう

衛生要因の解決は、部署全体、会社全体で取り組まなければいけないものも多くあります。先に説明したように、会社の政策、経営、監督、給与などが要素になってくるからです。また、対人関係も重要なことです。従業員の不満をすくい上げられる体制であることはとても重要です。経営・マネジメント側には伝わっていないものも多くあります。

従業員の不満を明確に洗い出し、明らかに整備されていないことは、重要度に合わせて取り掛かりましょう。他の企業の良い取り組みに関心を持ち、自社の従業員ではどうか考えることも大事です。

デメリットもある? 二要因理論を用いる際の注意点

職場の問題解決に二要因理論は有効ですが、注意点もあります。

まず、個人の価値観は異なるという点です。何にどう満足するか、不満を持つかは個人によって異なります。「こうすればいいはず」と満足度のものさしをつくってしまった結果、逆に従業員のモチベーションを損ねることがないよう注意が必要です。また、特定の従業員だけが満足するような仕組みになっていないかにも気を配ることが必要です。

個人のバイアスがかかるケース

さらに、マネジメント側の主観が介入してしまう可能性もあります。従業員の意図をうまく汲み取れていない場合、面談やヒアリングをしても効果は得られません。

また、人間には悪いことは環境のせい、良いことは自分のおかげと考えやすい傾向にあることが報告されています。従業員の考え方にバイアスがかかり、ヒアリングをしても適切な課題がうまく導き出せないという場合もあります。二要因理論が使える状態であるか確認しながら進めることが重要です。

まとめ

このページでは、ハーズバーグの「二要因理論(動機付け・衛生理論)」を通して、仕事への満足・不満要因について解説してきました。働き方や職場環境の改善は、様々な理論や事例をもとに判断し、取り組んでいきましょう。

今回取り上げたハーズバーグの二要因理論には注意点もありますが、それは他の理論についても同様のことがいえます。様々な角度から状況を見極め、場面にあった課題の解決法を考えることが重要です。
 

Q&A

二要因理論とは何ですか?
アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した仕事へのモチベーションに関する理論です。仕事へ満足する要因、不満を抱く要因を、「動機づけ要因」と「衛生要因」に分けて考えます。
「動機づけ要因」とは何ですか?
満足を引き起こす要因です。具体的には、達成、承認、仕事そのもののやりがい、責任、昇進などです。
動機付け要因は、成長や自己実現に対する欲求につながるとされています。仕事を通してスキルアップしたい、目標達成のために努力したいという気持ちを引き起こす可能性があります。
「衛生要因」とは何ですか?
不満を引き起こす要因です。具体的には、仕事環境、会社の方針、監督者の行動などです。
衛生要因は、不快さを回避する欲求につながります。今の職場では働きたくないから退職したい、別の会社に転職したい、積極的に働きたくないといった気持ちを引き起こす可能性があります。
マネジメントで活用できる二要因理論は?
達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進の5つの動機づけ要因を活用してみましょう。

 

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