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キャリア - 2024.08.23更新 / 2023.11.02公開
【知っておきたい】ダニングクルーガー効果とは? なぜ自分を過大評価してしまうのか
「ダニングクルーガー効果」についてご存知でしょうか?
「ダニングクルーガー効果」とは、能力の低い人や経験の浅い人が、自分を過大評価してしまうことを指します。これは、誰にでもありえることですが、なぜ自分を過大評価してしまうのでしょうか。
ダニングクルーガー効果とは
ダニングクルーガー効果(Dunning–Kruger effect)とは、能力の低い人や経験の浅い人が、自分の能力を正しく認識できず、自分を過大評価することです。
そのため、現実の評価と自己評価にズレが生じている状態になります。
これは、思い込みにより非合理的な認識をしてしまう「認知バイアス」と呼ばれる心理現象の一つです。
ダニングクルーガー効果の歴史
ダニングクルーガー効果は1999年、心理学者であるデヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって提唱され、2000年には「人々を笑わせ、考えさせた研究」に与えられるイグノーベル賞を受賞し、世界から注目を浴びることとなりました。
ダニングクルーガー効果の実験
ダニング氏とクルーガー氏は、「能力の低い人が自分を過大に評価してしまう理由はなぜか」という研究の中で、実験を行いました。
大学生を対象に筆記試験を行い、その成績を自己評価してもらう、という実験です。これにより、成績の悪い人ほど自己評価が高く、成績の良い人ほど自己評価が低いという結果を得ることができました。
ダニングクルーガー効果の仕組みを知ろう
ダニングクルーガー効果は、縦軸を自信、横軸を知識・経験とした曲線で表すことができます。
この曲線を4段階に分けて説明します。
① 思い込みの段階 |
新しい知識を得たことで、それが全体の一部にすぎないにもかかわらず、すべてを理解したと思い込んでいる状態。 |
② 思い込みだと知る段階 |
自分の知識は全体のほんの一部に過ぎず、学ぶことがたくさんあると知り、自信を失っている状態。 |
③ 自信を持ち始める段階 |
学ぶことで成長を実感し、少しだけ前に進めたと自信を取り戻し始めている状態。 |
④ 正しく自己評価できる段階 |
さらに学びを進めることで能力が成熟し、自分が得意なこと・不得意なことがわかり、正しい自己評価が行えるようになる状態。 |
ダニングクルーガー効果で指摘される自己の過大評価や根拠のない自信は、「② 思い込みだと知る段階」の段階で起こる事象を指しています。
ダニングクルーガー効果の逆「インポスター症候群」
ダニングクルーガー効果と逆の働きをするものとして「インポスター症候群」があります。「インポスター(impostor)」は詐欺師という意味です。
自己評価が低いことで起こる「インポスター症候群」
周囲から高い評価を得ているにも関わらず、「運が良かっただけ」「周りの人や環境のおかげ」と、自分を過小評価してしまう状態を指します。
自己評価が低いあまり、自分が周囲をだましていると感じてしまいます。「インポスター症候群」という名前はここからきています。
ダニングクルーガー効果の影響は?
次に、ダニングクルーガー効果によって生まれる過大な自己評価がどのような影響を及ぼすのか解説します。
自分を過大評価する
自分を現実以上に過大評価することが、ダニングクルーガー効果の特徴でありデメリットと言えます。
能力以上の仕事を引き受けてしまい対応できなくなったり、慎重に取り組まなくてはいけないことで手を抜いて失敗する、自分は大丈夫だろうと油断して事故を起こすというケースもあります。
他者の正当な評価ができなくなる
自分だけではなく、周囲の人への評価も正当に行えなくなります。自分が優れていると思い込んでいるため、他者は自分より劣っていると決めつける傾向が大きくなります。
チームを引っ張る立場の人、他者を評価する立場の人がダニングクルーガー効果に陥っていると、周囲の人から不満がでてくる可能性が高まります。
成長できない
自分を高く評価しているため、新しい知識の習得に励んだり、上を目指すための努力をしなくなります。自分を正しく認識できていないため、自分に何が不足しているのか、どうすれば成長できるのかに気付けなくなります。
一方、能力のある人は自己評価が低いため、努力を続けてさらに能力は高まり、差が大きくなっていきます。
コミュニケーションに問題が起きやすくなる
正しく自他の評価が行えていないため、話が噛み合わない、突拍子のないことを言うといった印象を持たれやすくなります。そのため、周囲から関わりたくないと距離を置かれることもあります。
また、自己評価が高いため、周りを下に見て偉そうな態度をとってしまい、コミュニケーションでトラブルを起こすこともあります。
責任転嫁しやすくなる
自分は優秀だからミスを起こすわけがないと考え、何か問題が起きたときに、その責任は自分ではなく他者や他の要因のせいであると思い込むケースがあります。本質的な原因が何なのか捉えづらくなり、問題解決は難しくなります。
騙されやすくなる
自分が下す判断に根拠のない自信を持っているため、真偽の判断が難しくなります。また、自分を褒めてくれる人、高く評価してくれる人を、正しい人・良い人と思い込みやすい傾向もあるので、詐欺などの犯罪に巻き込まれやすいとされています。
困難に対処できなくなる
自分を高く評価し、根拠のない自信を持っている人は、何事にも前向きに挑戦する傾向にありますが、いざ物事に取り組んでみると、実際の実力と自己評価に大きなギャップがあるという事実にぶつかり、受け入れられなくなってしまうことがあります。
打ちのめされて取り組むことを止めてしまう、極端な自己否定に陥るといった場合があります。
ダニングクルーガー効果に陥る原因
ダニングクルーガー効果によって様々な影響があることを説明してきました。それでは、ダニングクルーガー効果に陥る原因、陥りやすいのはどういった人なのか解説します。
他者の意見を聞く機会が少ない、受け付けない
普段、他者からの意見やフィードバックを受ける機会が少ない人は、ダニングクルーガー効果に陥りやすいとされています。人は、客観的な視点を取り入れることによって、自分の正当な評価・立ち位置を知ることができるのです。
また、周囲の意見を受け付けず聞く耳を持たない、主観的な考え方の人も、ダニングクルーガー効果に陥りやすいタイプです。
原因を追求しない
何か失敗をしたときに、何が原因で失敗したのかを振り返らない人はダニングクルーガー効果に陥りやすいといえます。
原因を追求しないと、自分の失敗や不足している点を知ることができないために改善もされず、成長をすることが出来なくなります。成長できないと、自分自身を正しく認識する能力も育まれず、歪んだ自己認識ができてしまいます。
他責思考が強い
何か問題が発生したときに、自分以外に原因があると考えるのがクセになっている人はダニングクルーガー効果に陥りやすい状態です。
他者のせいにすることで、自分自身の行動などを振り返らず、自分にクリアしなければいけない課題があることに気づけません。失敗を成長につなげるチャンスも逃してしまうのです。
ダニングクルーガー効果がもたらすメリットもある!
ここまで、ダニングクルーガー効果のデメリットや原因を解説してきましたが、実はダニングクルーガー効果にはメリットもあります。
根拠のない自信がチャレンジ精神を生む
ダニングクルーガー効果による自己の過大評価は、根拠のない自信を生みます。根拠のない自信は、「きっとやれる」「初めてだけど何とかなるだろう」という前向きなマインドにつながります。
自分の能力以上のことにトライしたり、経験したことがないことにチャレンジする精神を生むのです。
また、会議などでも臆することなく自分の意見を言うことができます。発言が求められる会議においては、自分の意見を言うことが重要ですので、そういった場ではメリットとなるでしょう。
ダニングクルーガー効果の事例
ダニングクルーガー効果は誰にでも起こりうるものです。具体的にダニングクルーガー効果がどのようなシーンで影響を与えているのか、事例と対処法をご紹介します。
ビジネス・仕事
高い自己評価から、自分の能力ではこなせない仕事を引き受け、処理しきれない、納期に間に合わないといったトラブルを起こすケースがあります。
また、自己評価が高い人は、自信に溢れて優秀に見えることがあるため、周囲も仕事を任せてしまうこともあるのです。
投資などお金に関すること
「絶対にうまくいく」「自分の判断は誤っていない」といった根拠のない自信から、投資に手を出して損をする、詐欺に合ってしまう、というお金での失敗例があります。
近年はインターネットの普及によって様々な情報を得やすく、自分が収集した情報に対して大きな信頼を持ってしまい、失敗に至るケースも増えています。
勉強
語学や資格など、新しいことを学び始めてすぐのとき、「すごく理解できた」「知識を習得できた」という感覚になったことはないでしょうか。実はこれも、ダニングクルーガー効果が働いていると言われています。
実際には思うほどの知識・スキルが身についていないにも関わらず、勉強を始めてすぐの頃はわかっている気になりやすいのです。
テストや試験を受けてみて、思うように数字に表れず勉強を止めてしまうというケースもあります。
日常生活
自動車の免許を取得して数年が経ち、「自分は失敗するわけがない」という自信から慎重さを欠き、事故を起こしてしまうケースがあります。運転に対する慣れが、運転の能力を高めたわけではないのに、自分では向上していると錯覚してしまうのです。
ダニングクルーガー効果に対処するには
先に説明したような、ダニングクルーガー効果に陥らないためには、以下のポイントを押さえると効果的です。
ダニングクルーガー効果に陥らないための対処法
自分自身を客観的に見る
客観的な指標で捉える・考える習慣を身につけることを意識しましょう。自分の考えと現実にギャップはないかを客観的に捉え、コントロールしていきましょう。
数値で明確化する
ダニングクルーガー効果によって生まれる自己評価や自信は、根拠がないことが問題です。何か評価をするとき、数値などの客観的でわかりやすい指標を作って見直してみることをおすすめします。主観によって判断が歪んでいることに気がつきやすくなるでしょう。
問題が起きたら必ず原因を振り返る
原因は自分になかったか、あったとしたらどういう点だったのか掘り下げましょう。些細なことであっても、他責思考に陥っていないか注意して、事態の把握に努めましょう。
他人の意見を大事にする
先に説明した通り、人の意見を取り入れることで客観的に物事を捉えられるようになります。
加えて、新しい情報や考えを得る機会にもなります。身近な人の意見に耳を傾ける機会、多くの人と交流する機会を積極的に持つと良いでしょう。
自己効力感とは? 概要から高める方法まで徹底解説 | リカレントcounselor |
まとめ
このページでは、「ダニングクルーガー効果」について解説してきました。
ダニングクルーガー効果は誰でも陥る可能性があるものです。常に自分を客観的な視点で見るようにし、思い込みではなく確かな能力を身につけ、自信につなげることが大切です。
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