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キャリア - 2024.08.15更新 / 2023.06.23公開
【徹底解説】キャリア形成に活かす「マズローの欲求段階説」
「今よりももっと仕事で成果を出したい」
「現在の仕事で満足感が得られない」
など、意欲はあるのにキャリア形成に不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
このページでは、「マズローの欲求段階説」について解説し、キャリア形成に活かす方法をご紹介します。
抱えているキャリアに関する課題を紐解き、解決し、前向きに取り組むヒントにしていただければ幸いです。
マズローの欲求段階説とは
アブラハム・ハロルド・マズロー(1908~1970)はアメリカ合衆国の心理学者で、人間性心理学の生みの親とされる人物です。
マズローの唱えた有名な理論が、欲求段階説です。欲求階層説、欲求5段階説、マズローの法則とも呼ばれます。
これは、人間の欲求をピラミッド状の5つの階層に分けて考える理論で、低い階層の欲求が満たされることで、次の欲求が現れるという法則を示しています。
「動機づけ」と深いかかわりを持つ「マズローの欲求段階説」
マズローの欲求段階説は、人が何か行動を起こす際の原動力を表す「動機づけ」「モチベーション」と深い関わりがあります。
人間の行動は、ある程度科学的に分析・説明できるという行動主義的な考え方がある一方、人間は日常的に様々な感覚や感情を抱える生き物であり、そういった心理を踏まえなければ、本当の性質は見えてこないという側面もあります。
マズローの理論は、日常的な感覚に即した形で心理を理論化するものとして生まれたという背景があります。
マズローが提唱した5つの欲求
マズローの理論の中で用いられる5つの階層について、低次の階層から順に解説します。
生理的欲求
ピラミッドの一番下の階層にある、人間にとって基本的な欲求です。食欲・睡眠欲・性欲などの、生命活動を維持するために不可欠な必要最低限の欲求を指します。
現代社会では、生理的欲求が全く満たされていないと感じる人は少ないでしょう。しかし、仕事が忙しいなどの理由で、一時的に睡眠不足になる、食事が摂れないといった状況に陥る場合もあります。
生理的欲求は土台ともいえる欲求
生理的欲求は、これより高次の欲求を持ったり、何かをするモチベーションを持つために不可欠な、土台ともいえる欲求です。この階層が満たされない状況が続くと、肉体的にも精神的にも不安定な状態となってしまいます。
安全の欲求
身体的に安全で経済的にも安定した環境で生活したい、身の危険を感じる状態から抜け出したいという欲求です。
安全の欲求の例
日本はインフラの整備がされているため、生活の中で危険を感じる場面が少なく、身の危険というと想像がしづらいかもしれませんが、たとえば災害などが続いている際に「身の安全の確保」が保証されていないと、安全の欲求が満たされていない状態といえます。
社会的欲求
会社や家族といった集団に属したい、仲間を得たい、他者とつながりたいという欲求のことです。「所属と愛情の欲求」「帰属欲求」「親和欲求」といわれることもあります。集団に属したり、他者と一緒にいることで、リスクや危険から身を守りたいという欲求ともいえます。
社会的欲求が満たされていないとどうなる?
マズローは、社会的欲求が満たされない場合、孤独感や不安感を感じやすく、鬱などの精神疾患に陥るケースがあると述べています。
職場においては、良好な人間関係を築くことが仕事そのものへの愛着やモチベーションにつながり、従業員が成果を出しやすいと言われています。
承認欲求
認められたい、特別視されたい、評価されたい、称賛されたい、尊敬されたいという欲求です。
承認欲求は低レベルの承認欲求と、高レベルの承認欲求に分けて考えることができます。
高レベルと低レベルの承認欲求の違い
低レベルの承認欲求は他者承認欲求とも呼ばれ、他者からの注目や尊敬を受けることで満たされる欲求を指します。
高レベルの承認欲求は、自己承認欲求とも呼ばれ、技術や能力の習得、自立性が高まることによって自己尊重の意識が高くなることで満たされる欲求を指します。
承認欲求は、働くということにおいて、5つの欲求の中でも最も重要な欲求の1つです。従業員が認められていると感じられる環境、自身を高めようと前向きに取り組める環境であれば、従業員個人はもちろん組織が成長しやすくなります。
自己実現欲求
5つの階層のトップにある欲求です。本来あるべき自分、自己の存在意義を実現したいという欲求です。自分だけが成し遂げられること、自分らしく理想を追求し現実にすることなどが挙げられます。
承認欲求の段階で基準となっていた、評価や称賛などは必要なく、あくまで理想の自分に近づくことそのものに対する欲求です。
他者の目や見返りに依存しない動機を、内発的動機と呼びます。これは、自身の内側から自発的に起きるモチベーションのことで、外発的なものよりも、長期間にわたり集中して行動しやすいことがわかっています。
自己実現欲求労働において重要な欲求の1つ
承認欲求にならび、自己実現欲求も、働くということにおいて、5つの欲求の中でも最も重要な欲求の1つです。
従業員があるポジションで最大限に理想を追求することは、従業員個人にとってのキャリア形成や、組織への貢献につながります。
組織の中で活躍する人間として信頼されることで、さらなるモチベーションにつながり、貢献意欲も高まります。
6段階目の欲求「自己超越の欲求」
ここまで、5つの階層に分かれた欲求について解説してきましたが、実はマズローはさらにもう1つの階層について言及しています。
これは、「自己超越の欲求」です。
自己超越の欲求とは、社会や他者、自分以外のものに対して貢献したいというものです。
自己実現欲求までにあった「自分の環境をこうしたい」「自分をこうしたい」という、自分中心の欲求ではなく、「より良い社会を実現したい」「社会や他者に起きている問題を解決したい」といったベクトルで生まれる欲求です。
自己超越の欲求の例
自己超越の欲求のわかりやすい例として、寄付活動やボランティア活動などが挙げられます。
先の5段階の欲求を満たした人が行き着く境地とも言えます。生活や仕事など、身の回りのことや自分自身を変化させ、向上させていくためには、5段階までを参考に考えるとよいでしょう。
マズローの理論における欲求の3つの分類
マズローが提唱した5つの欲求は、性質の違いによって3つに分類して考えることもできます。
-
物質的・精神的分類
-
外的・内的分類
-
欠乏・成長による分類
1.物質的・精神的分類
物質的欲求:生理的欲求、安全の欲求 |
生命を維持するために必要な物資に関わる欲求として捉えます。物質的な要因に影響します。 |
精神的欲求:社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求 |
非物質的な事柄に関わる欲求として捉えます。 |
2.外的・内的分類
外的欲求:生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求 |
自分に関係する環境を満たそうとする欲求として捉えます。 |
内的欲求:承認欲求、自己実現欲求 |
自分の内面を満たそうとする欲求として捉えます。 |
3.欠乏・成長による分類
欠乏欲求:生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求 |
不足しているものを補おうとする欲求として捉えます。 |
成長欲求:自己実現欲求 |
欠乏しているものがないという前提で、自分をさらに成長させたいという欲求として捉えます。 |
それぞれの欲求を、分類ごとに見直す理解が深まり、その時々の課題がわかりやすくなります。
【解説】ダニエル・レビンソンの発達段階説-人生の四季とは | リカレントcounselor |
欲求段階説をキャリア形成に活かそう
ここまで説明してきたマズローの欲求段階説は、様々な場面に活用できるものです。
対人関係、ビジネス、長期的な自己実現など、あらゆるシチュエーションで、私達は満足と不満、モチベーションの高い状態と低い状態を繰り返しながら生きています。
今自身が、どういったことを背景に、どういった欲求を抱いているのかを理解し、取るべき行動を考えることで、成功しやすい状態を生むことができます。成功がモチベーションにつながり、さらなる成長へつながっていきます。
ここでは、欲求段階説を活用したキャリア形成について解説していきます。
欲求とキャリアの関係
欲求とキャリア形成には、深いつながりがあるとされています。
キャリア形成とは、仕事や役割に必要な能力を習得する、経験を積む、理想の働き方の実現やなりたい姿に向けて取り組んでいくといったプロセスのことです。
継続的に取り組むためには、「仕事や自分の役割から得られる満足:職務満足」や、モチベーションが必須となってきます。
また。職務満足を得るには、働く環境が整備されていて安全性が確保されているという最低限の条件の他、適切な仕事が与えられていて評価されているといった、欲求段階説の中の承認欲求が大きく関わってきます。
周囲からの評価でモチベーションアップが期待できる
周囲から正当な評価をされている安心感と満足感は、より高レベルの承認欲求、自己承認欲求につながり、技術や能力の習得を図ろうというモチベーションにつながります。こういった状態であれば、自ずとキャリア形成が見込めます。
仕事の中で承認欲求を満たすことで、さらに自分にできることを増やしたい、スキルを高めたいと考え、自発的に行動するようになります。これが先に挙げた自己実現欲求です。
仕事の中で自己実現欲求を満たそうとする人は、自主性が高く、長期的に取り組む傾向にあることがわかっています。内発的動機で行動するため、モチベーション維持につながります。
周囲が期待している以上の力を発揮する、パイオニアとして新しいことに挑戦するなど、組織にとって良い影響を与えてくれる場合が多いです。また、そのように取り組んでいる姿勢が周囲を鼓舞するということもあります。
キャリアを積んで自分らしくいきいきと働くことができ、組織にも貢献できる可能性が高まるのです。
【内的キャリアを知ると働き方が変わる! 考え方をわかりやすく解説 | リカレントcounselor |
仕事に求めるものを明確にし、自己実現につなげる
働き手として、欲求段階説を活用してみましょう。
まず、自身の状況を欲求の分類ごとに評価してみることをおすすめします。
外的欲求と内的欲求に分類し、各欲求について考えるとわかりやすいでしょう。
外的欲求:生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求
自分に関係する環境を満たそうとする欲求
職場環境、労働条件は自身が求めるものと見合っているか確認しましょう。不満な点がある場合、理想的な環境や条件を明確にします。今の組織で解決できるか、どのように解決できるか、できない場合、異動や転職といった手段を考えるというように、課題を探します。
内的欲求:承認欲求、自己実現欲求
自分の内面を満たそうとする欲求
現在の仕事への満足度、達成度などを確認します。自身のスキルを磨くことで解決できるものか、人間関係の問題か、そもそも仕事内容に満足しているかなど、解決すべきことを見つけます。
人材育成の視点から従業員のキャリア形成につなげる
組織や上司といった立場から、欲求段階説を活用してみましょう。
欲求の性質ごとに、従業員の満足度を把握しましょう。
外的欲求:生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求
自分に関係する環境を満たそうとする欲求
マネジメントの場合、まずは土台となる労働環境が整っているか、従業員が満足しているか注意する必要があります。労働時間が長いといった従業員に無理を強いる勤務状態になっていないかということはもちろん、ハラスメントなどが起きていないかどうかにも注意が必要です。
この部分については、人事や総務、法務など様々な分野から基準を測る指標が整備されている場合が多いので、今一度確認してみてください。
内的欲求:承認欲求、自己実現欲求
自分の内面を満たそうとする欲求
従業員それぞれの働きをしっかりと評価し、お互いに発言し合える信頼を形成する事が重要です。今の仕事への考えや、不満、これからやりたいと考えていることなどを、マネジメントする側がきっちりと受け止め、手助けできる環境が理想的です。
同じ業務を担っていても、従業員が求めていることはそれぞれ異なる場合があります。個人個人が、組織に求めていることは何か、やりたいことは何か、満足度の得られる仕事は何かを見極めることが重要です。
マズローの欲求段階説を活用する際の注意点
先に述べた通り、従業員の価値観は様々です。
欲求のどの段階に重きを置いているかが異なる場合があります。また、どのようにして満たされるかも一様に判断できるものではありません。
同じ環境と条件、人間関係の中で働いていても、不満を抱く人、いきいきと働く人と様々であるはずです。
世代による価値観の違い
わかりやすい例に、世代による価値観の違いが挙げられます。
長年勤務してきたベテラン従業員はいきいき働いているけれど、若い世代は不満を抱いているというケースがあります。デジタルネイティブ世代に代表されるように、従業員が求める働きやすさを実現するツールや体制、環境にギャップが生まれることがあるのです。
マズローの欲求段階説は、長きにわたり様々な場面で活用されてきたものです。キャリア形成について考えるためにも非常に有効と言えます。
1つの価値観や良し悪しの基準を押し付けるものではなく、現状の課題を見つけ、より良い状態を導くためのプローチとして活用していきましょう。
まとめ
マズローの欲求段階説は、長きにわたり様々な場面で活用されてきた理論で、キャリア形成や自己実現に有効です。
自身や周囲の方を見つめ直し、高いモチベーションで、前向きに取り組みたいと考えている方の、ご参考になれば幸いです。
Q&A
生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求です。
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