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キャリア - 2023.12.22更新 / 2023.09.28公開

【仕事と子育ての両立】マミートラックがキャリア形成に与える影響とは

共働き世帯にとって、仕事と子育ての両立は大きな課題となっており、その背景には、日本における女性の社会進出の遅れがあるとされています。

この記事では、産休や育休後に復職した女性従業員が、キャリアアップすることが困難であるという現状から生まれた「マミートラック」について解説していきます。

マミートラックとは

マミートラックとは、産休や育休から復職した女性従業員が、自分の意思とは無関係に出世コースから外れてしまうことを指します。

元々は、キャリアと育児の両立を望む復職後の女性従業員に対し、柔軟な働き方や配慮を行うべきという意図から生まれた言葉でしたが、現在では「ママ専用」のレーンのみを走らなければならない状態を、マミートラックと呼ぶようになりました。

マミートラックはなぜ起こる?

では、マミートラックはなぜ起こるのでしょうか。主な要因として以下のような点が挙げられます
 

  1. 様々な取り組みの弊害

  2. 女性進出の遅れ

  3. ジェンダーバイアス

 
順番に見ていきましょう。

1.様々な取り組みの弊害

復職後の女性従業員に対して不適切な扱いや、過度な仕事量を課すことはハラスメントに該当するケースもあるため、企業が様々な配慮をした結果、マミートラックのような状態が生じると考えられています。

しかし、全ての産休・育休から復職した女性従業員が、以前と同様のポジションで働きたいと希望しているわけではなく、マミートラックを望む場合もあることから、配慮のバランスのむずかしさにつながっているといえます。

2.女性進出の遅れ

2022年に内閣府が発表した、「女性活躍に関する基礎データ」の中の「就業者・管理的職業従事者に占める女性の割合の国際比較」では、就業者に占める割合は44.7パーセントである一方で、管理的職業従事者に占める女性の割合は13.2パーセントと、諸外国と比較しても非常に低い水準となっています。


内閣府 | ⼥性活躍に関する基礎データ 6ページ目グラフを加工して作成

また、日本における多くの職場では、男性のキャリアに適した働き方や昇進条件が根強く存在することも指摘されています。

男性が出世コースや上級ポジションに進むことが期待される中で、女性は家庭の責任分担が多いこともあり、結果的にマミートラックにつながるのではないかと考えられています。

ジェンダーギャップ指数

スイスの非営利財団である世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数」は政治・経済・教育・健康などから算出される指標で、1を男女平等、0を不平等とした場合の数値になるため、0に近いほど男女格差が大きいとしています。

2023年のジェンダーギャップ指数では、日本は0.647で146か国中125位でした。1位のアイスランドと比較すると、日本は低い値となっています。


内閣府 | 男女共同参画に関する国際的な指数の表を加工して作成

3.ジェンダーバイアス

多様性が認められる時代においても、ジェンダーバイアスは存在しています。

とくに、社会的な期待や偏見に基づいた、性別に関する固定観念をジェンダーステレオタイプといいます。

たとえば、女性は優先的に子育てや家庭に関わるべきというジェンダーステレオタイプが広く存在する場合、出産や育児を理由に昇進や出世が遅れる場合があるのです。

呼び名の変化

少し前までは、配偶者を「主人」や「奥さん」と呼ぶことも少なくありませんでしたが、現在では可能な限りフラットな状態での呼び名が適切であるとされています。

これは家庭内だけではなく、小学校などでも「あだ名」や「ニックネーム」で呼ぶのではなく、男女関わらず苗字や名前に「さん」をつけて呼び合うことが推奨されています。

しかし、仕事と家庭の両立をはかる取り組みや制度を整備していくなかで、呼び名のようにジェンダーバイアスをを取り除いていくことは簡単ではないという背景も、マミートラックが起こる要因と考えてよいでしょう。

【あわせて読みたい】

アンコンシャス・バイアス―だれにでもある「無意識の思い込み」について

 

マミートラックのメリット

マミートラックにはメリットも存在します。

各家庭によってサポート体制も異なるため、負担にも個人差が発生しますが、時短勤務やポジションの変更が行われている場合には、急場にも対応ができるというメリットがあります。

子育て世代のストレス

産休や育休前と同じポジションでフルタイム勤務となると、複合的なストレスにさらされる可能性があります。

厚生労働省がまとめた2019年「国民生活基礎調査の概況」の「性・年齢階級にみた悩みやストレスがある者の割合」では、30〜39歳、40〜49歳の女性のストレスは60.4パーセントと、同世代の男性と比較しても高い割合となっています。


厚生労働省 | 2019年 国民生活基礎調査の概況 図21を加工して作成

無理をしながら仕事と家庭の両立を続けていくと、健康にも影響が出てきます。そのため、マミートラックはこころとからだの健康の面においても、非常に有効であるといえます。

マミートラックのデメリット

では、マミートラックのデメリットについてもみていきましょう。

産休や育休前は最前線で仕事をこなしていたり、責任のあるポジションを任される立場だった場合は、無理のない範囲でという配慮によって配置転換や働き方が制限されると、モチベーション低下につながります。

たとえば、産休や育休後に復職した女性従業員が、意思とは関係なく自動的に時短勤務になると、その分の業務を他の従業員が負担するケースもあることから、互いがストレスを感じ、コミュニケーションに不和が生じる可能性もあります。

マミートラックがキャリア形成に与える影響

マミートラックのデメリットとして最も多く挙げられるのが、キャリア形成への影響です。

マミートラックの基準で働き続けると、以前のような評価がされにくくなります。産休や育休がキャリアにおける一時的な中断と見なされることで、以前のポジションには戻りにくくなります。

また、一定期間の離脱により、スキルや経験にもブランクがあるとみなされる場合もあり、ポジションや勤務形態の変更だけではなく、給与面に影響をあたえるケースもあります。

仕事と子育てを両立するためには?

重要なポジションで仕事したい、管理職を目指したい、子育てとの両立をしていきたいと考えている場合は、社内の取り組みや制度だけではなく、自身での対策も重要になってきます。

キャリアデザインの明確化

キャリアデザインを行うことで、将来の変化や状況に適応する柔軟性を身につけることができます。

また、人事や上司にキャリアデザインをしっかりと伝えておくことで、企業内でのキャリアパスのすり合わせをより具体的に行えるようになるでしょう。

産休や育休前からしっかりと、復職後の働き方について話し合うことで、思っていたのと違ったという状態を防ぐことが期待できます。

支援やサービスを利用する

日本では核家族化が進んでも、「家族が子育ての中心である」という考え方から変化がみられないまま現在に至ります。

仕事と子育ての両立には、支援やサービスが必要不可欠です。保育所、認定こども園、地域型保育、一時預かり、そして小学生からは放課後の学童クラブなどもあります。

その他にも、こども家庭庁がファミリー・サポート・センター事業を行っています。内閣府では、2022年から企業主導型ベビーシッター利用者支援事業を実施しており、使用条件を満たしていれば割引が適用される場合がありますので、利用を視野に入れて検討してみるのもよいでしょう。

働き方の見直し

無理のない仕事と子育ての両立が、現在の働き方では困難であると感じている場合は、見直すことも大切です。

会社の方針や制度に対しては、個人で変えていくことは困難であるため、より柔軟に、働きやすい環境を検討してみるのもよいでしょう。

また、新たなスキルを身につけることも有効です。この場合、マミートラックが有利に働くケースもありますので、どのような働き方であれば、より自分が思い描く仕事と子育ての両立が可能なのかを洗い出すことも大切です。

【あわせて読みたい】

「プロティアンキャリア」とは? これまでのキャリアと何が違うか

 

まとめ

この記事では、「マミートラック」について解説しました。

仕事と子育ての両立と一口に言っても、各家庭や個人によって状況や両立のバランスは様々です。

また、復職した女性従業員だけではなく、一緒に働く従業員もよりよい環境で働けるような取り組みが今後の課題となるでしょう。

Q&A

マミートラックとは何ですか?
マミートラックは、産休や育休から復職した女性従業員が、自分の意思とは無関係に出世コースから外れてしまう状況を指します。
マミートラックの主な原因は何ですか?
マミートラックの主な原因は、男女平等の支援が不十分な環境や、仕事と育児の両立が難しい労働条件があることです。また、社会的なジェンダーステレオタイプや、育児が女性の責任とされる偏見も影響しています。
仕事と子育てを両立するためにはどのような対策がありますか?
自身のキャリアデザインを明確にすることや、支援サービスの利用、そして働き方の見直しをすることが有効な対策といえるでしょう。
マミートラックによる影響はどのようなものがありますか?
マミートラックによる影響は、女性が昇進や昇格の機会を逃すことで、給与格差や地位の格差が拡大する可能性があります。また、女性の才能や能力が適切に評価されず、組織や社会全体の多様性が損なわれることも予想されます。

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