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職場でのポストも柔軟に~ポストチェンジ制度について

働き方の形は、時代によって少しずつ変わってきています。従業員がその人らしく生きられるように、そして企業にとっても多くの利益を得られるようにと、新しい働き方が提唱され続けています。

今回はそのなかから「ポストチェンジ制度」を取り上げて、その概要や、混同しやすい言葉との違い、この制度のメリットを解説します。

ポストチェンジ制度とは?

ポストチェンジ制度とは、「部長や課長などの管理職を対象に、家庭の事情やライフステージの変更を理由として、本人の希望により、今の立場(職位)から、ほかのポジションに移ることができる」という制度です。

部・課をまとめる役目にある管理職は、仕事の重圧によって大きなストレスを抱えてしまうケースがあります。そのような状況では、家族に介護が必要になったり、妊娠~出産~子育てが始まったりしたときに、「私生活が大変なのに、仕事があるためにこれを後回しにせざるを得ない」などの問題が起きてしまいがちです。

そのため、「部長・課長クラスの従業員は、本人の希望に応じて課長補佐級もしくは一般職などのポストに移す」というポストチェンジ制度が作られました。

自分の希望で決められるポストチェンジ制度

ポストチェンジ制度の最も大きな特徴は、「自分の希望で決められる」という点です。会社側から強制されることなく、従業員自身の意志で、「ポストチェンジ制度を適用してもらいたい」と言うことができます。

制度前の職位に戻れる

ポストチェンジ制度はあくまで一時的な措置であり、その期間は3年までを限界としています。期間経過後は原則ポストチェンジ制度前の職位に戻れるため、「ポストチェンジ制度を使って1年働いていたら、もう自分のポジションが人に奪われていた」などということはありません。

介護、出産、不妊治療などのライフイベントが対象

ポストチェンジ制度は、「今介護を行わなければならない人」「妊娠出産が予定されている人」などにとどまらず、不妊治療を行う人も対象としています。不妊治療は、通院日の調整が難しく、場合によっては「明日来てください」などと言われることがあります。このような状況では、責任の重すぎる仕事に就き続けることはなかなか大変でしょう。しかしポストチェンジ制度を使えば、日程調整もつきやすくなります。

ポストチェンジ制度の始まり

ポストチェンジ制度は、日本の京王電鉄が2024年の4月16日から以下のような背景から導入しました。

管理職としての職責を果たしながら育児との両立を不安に感じる社員の声を受けて
検討を行う中で、同じ悩みを抱える管理職がいるかもしれないという潜在的なニーズや、
管理職登用にあたって、将来的なライフイベントを考え登用されることを躊躇する社員
がいる可能性などを踏まえ、制度化したものです。

引用:京王電鉄  |  NEWS RELEASE 2024年4月16日

職場でのポストも柔軟に~ポストチェンジ制度について

ポストチェンジ制度と類似制度との違い

ポストチェンジ制度と似た制度として、「ポストオフ制度」「カムバック制度」「雇用形態の変更」があります。これらの意味と、ポストチェンジ制度との違いについて解説していきます。
 

比較対象 雇用 役職/職位
ポストチェンジ制度 継続 役職・職位のみ変更
ポストオフ制度 継続 役職からの退任
カムバック制度 再雇用 役職に関わらず元社員を対象
雇用形態の変更 継続 雇用形態自体を変更

 

ポストチェンジ制度とポストオフ制度の違い

ポストチェンジ制度は、従業員本人の希望により、ライフステージの変化を理由として職位を変更する制度です。一時的な措置であり、元の職位に戻ることも可能です。

一方でポストオフ制度は、一部、役職から離れても給与や待遇が変わらないケースもあるようですが、企業側の判断により、一定の年齢に達した管理職を役職から退任させることが一般的です。主に組織の新陳代謝や若手の登用を目的としており、原則として本人の意思は考慮されません。そのため、キャリアダウンと捉えられやすく、対象者からの不満が出やすいという特徴があります。

ポストチェンジ制度カムバック制度の違い

ポストチェンジ制度は、同一企業内で雇用関係を継続しつつ、異なるポストで働くことを指します。

一方、カムバック制度(ジョブリターン制度、アルムナイ制度、キャリア・カムバック制度とも呼ばれる)は、育児や介護などを理由に一度退職した人を、再雇用する制度です。カムバック制度では一度雇用関係が途切れるのに対し、ポストチェンジ制度では雇用関係が継続するという点が大きな違いです。カムバック制度は役職に関わらず元社員を対象とし、キャリアの見直しや再構築を視野に入れることができます。

ポストチェンジ制度と雇用形態の変更の違い

ポストチェンジ制度は、正社員の立場を維持したまま、役職や職位のみを変更する制度です。

一方、雇用形態の変更は、正社員からパートタイマーなど、雇用形態自体を変更することを指します。育児や介護などのライフイベントにより、スケジュール調整が難しくなるため、正社員での勤務が困難になった際に選択されることがあります。

正社員は福利厚生や収入面でパートタイマーなどに比べて有利なことが多いですが、パートタイマーは勤務の自由度が高く、プライベートとの両立がしやすいというメリットがあります。ポストチェンジ制度は、正社員としての待遇を維持しつつ、一時的に職責を軽減したい場合に有効な選択肢となります。

ポストチェンジ制度のメリット3つ

最後に、ポストチェンジ制度のメリットを紹介していきます。

働きやすい環境を整えられる

ポストチェンジ制度を導入することで、従業員にとって働きやすい環境を整えることができます。

多様性が認められる職場、自分に合った働き方ができる職場にすることができれば、従業員は安心して働けるようになります。「このように良くしてくれる企業なのだから、私も一生懸命働こう」「妊娠・出産をしてもキャリアが分断しないのであれば、一生涯の仕事にできるように、積極的に資格を取得していこう」などのように、仕事に対して高いモチベーションを持つ人材を雇用し続けることが可能になります。

優秀な人材の確保・定着を図れる

企業にとって最も痛手なのは、「優秀な人材が離れていくこと」です。特に、時間をかけて育て上げた従業員が離れるのは、大きなマイナスです。

しかしポストチェンジ制度を導入することで、家庭の事情で退職する人を引き止めやすくなります。優秀な人材の定着を図ることができ、自社の生産性を維持し続けやすくなります。

また、複数の会社からオファーが来るような優秀な求職者の場合、「ライフステージが変わっても柔軟に対応してくれる会社であるから、こちらの企業の方がより働きやすそうだ」として、プラスの評価を与えてくれるかもしれません。

企業のイメージも上昇する

多様な働き方を支援する企業は、「従業員を大切にする」「先進的な取り組みを行っている」と社会から高く評価されるため、ポストチェンジ制度は、企業のイメージアップに貢献します。

また現在では、インターネットを通じて企業の活動が広く知られるようになっています。広報の失敗が炎上につながる一方で、良い企業イメージは消費者の共感を呼び、「この会社を応援したい」という気持ちを生み出します。その結果、商品やサービスが「買い支えられる」ことになり、最終的に売り上げ向上にもつながっていくのです。

職場でのポストも柔軟に~ポストチェンジ制度について

流動的に職位を変更できる「ポストチェンジ制度」

ポストチェンジ制度は、「ライフステージの変化によって、部長・課長などの責任と重圧のある職位を維持し続けることが困難になった人を、一時的に主任などの職位に移し、家庭が落ち着いたら元の職位に戻す」という制度です。これは単なる降格人事ではなく、従業員自身の意思によって行われるものです。

このポストチェンジ制度は、従業員の働きやすさの確保に役立ちます。またこの制度は、「優秀な人材の確保」「企業イメージの上昇により売り上げアップ」など、企業にも大きな恩恵をもたらしてくれるものでもあります。

Q&A

ポストチェンジ制度とは?
部長や課長などの管理職を対象に、家庭の事情やライフステージの変更を理由として、本人の希望により、今の立場(職位)から、ほかのポジションに移ることができる、という制度です。
ポストチェンジ制度の注意点を知りたい
導入にあたり、人事制度の整頓・改革が必要です。 ポストチェンジ制度を敷く場合は、人事制度の見直し・改革が必須です。また、周囲の従業員から不満が出ることがあること、空いたポストをどのようにするか考えること、ポストチェンジ制度を利用した後の賃金はどのようにするべきかを決めておくことなどが非常に重要です。
ポストチェンジ制度の取り組みはどこの会社が始めた?
京王電鉄株式会社です。 ポストチェンジ制度は、京王電鉄株式会社が2024年から始めたものです。ちなみに、移行期間は最大で3年間です。
ポストチェンジ制度と一緒に行うべきことは?
キャリアアップのための取り組みや、従業員との話し合いも大切です。 ポストチェンジ制度は、「ただ実施すればよいもの」ではありません。従業員にポストチェンジ制度の内容を理解してもらうための説明を行う必要がありますし、またポストチェンジ制度と並行してキャリアアップのための取り組みを行ったり、従業員からの意見を募ったりすることも大切です。

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