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キャリア - 2024.04.19更新 / 2022.12.22公開

「キャリア自律」がもたらすメリット~企業側と個人側の両面から

日本の企業でも「よりよい働きができる会社」を目指してさまざまな提案がなされており、そのうちのひとつとして「キャリア自律」があります。

今回の記事ではこの「キャリア自律」を取り上げて、個人と企業両方の側面からのメリットを紹介していきます。

「キャリア自律」とは

キャリア自律(じりつ)とは、キャリアの方向性を従業員自らが決定し、行動していくことを指します。

企業ではなく、従業員自身が主体となり、自らのキャリアを形成していくことで、『理想的な働き方』の実現が期待できます。

キャリア自律には個人側と企業側、両面で多くのメリットがあります。次の章でくわしくみていきましょう。

キャリア自律の個人側メリット

まずは、個人側のメリットです。

多様な働き方が可能になる

現代社会では多様な働き方が許容され、求められる傾向が強まり、多くのビジネスパーソンが「こう働きたい」という理想や目標を持つようになりました。

望ましい働き方が実現しやすくなる

キャリア自律を意識して、「自分にとっての働きやすさは何か」「その働きやすさを得るためにはどのようにすればよいか」を考えていくことで、「より自分にとって望ましい働き方」を実現しやすくなります。明確な希望を言語化できるようになれば、そのような働き方を許容するところから声がかかることもあるでしょう。

能力がアップし、昇進などにつなげやすくなる

キャリア自律に必須なのは、自分を律し、自分で勉強し、「自分で能力をアップしていく」という考え方です。これまでは企業側が率先して行ってきた「研修」に寄らず、自分の理想とする仕事をするための勉強を自己判断で行っていくことになります。

キャリア・アンカーを知る

キャリア・アンカーを知ることで、キャリア自律の意識が高まることが期待できます。

キャリアアンカーとは、自己の価値観やスキル、関心事に基づいて、キャリアを方向付ける重要な要素です。キャリアアンカーを理解することで、自分自身がどのような仕事や環境で最も満足し、成長することができるかを把握することができます。

こちらの記事では、キャリア・アンカーについて詳しく解説をしています。ぜひ参考にしてみてください。

 

あわせて読みたい

【あなたはどのタイプ?】キャリア・アンカーを知って自分らしく生きる | リカレントcounselor

 

キャリア自律の企業側メリット

ここまでキャリア自律が個人にもたらすメリットを紹介してきましたが、単純に「キャリア自律のメリット」というと、「企業側のメリット」を指すことが多いといえます。実際、キャリア自律は企業にさまざまなメリットをもたらします。

モチベーションアップによる生産性の向上

個々の性格によって異なる要素がありますが、自らが選択したものに対して強い愛着を持つことは一般的です。

これは職場においても同様であり、他者からの強制によって受ける研修よりも、自らの意思で選んだ学習体験に対して好意的な反応を示しやすいといえるでしょう。

自らが選択したことによって従業員に「やりがい」が生じることは、企業にとっても大きなメリットであるといえます。

従業員自らが選択することの重要性

キャリア自律を促進することで、従業員は自らのキャリアの方向性や目標を明確に設定し、主体的に成長することができます。

このような状況では、従業員はより意欲的に学習し、スキルを向上させるための取り組みを行う傾向があります。そのため、モチベーションアップが期待でき、生産性向上につながると考えられています。

組織の活性化

組織が活性化し、新しいアイデアが生まれやすくなるためには、企業の研修プログラムも見直す必要があります。

従来のアプローチでは、過去の経験に基づき、自社にとって最適とされる内容に焦点を当てることが一般的でした。もちろん、これは重要な視点ですが、時には新しい視点や方法を導入する必要があります。なぜなら、過度な価値観の固着化やイノベーションの停滞を招く可能性があるからです。

イノベーションが起こりやすくなる

従業員が自身のキャリアを自律的に考え、新しい情報やスキルに積極的に触れ、学びを深め、それを組織に還元することで、組織内に新しい風を取り入れることができます。この新しい風は、組織全体を活性化させ、革新的なアイデアやイノベーションを生み出すことにつながります。

組織は常に変化し続けることによって柔軟性を持った人材が育成され、新しいチャレンジに臨む姿勢が養われることになります。それが、組織の競争力を高め、持続的な成長を実現する一助となるでしょう。

優秀な人材の発掘や採用につながる

キャリア自律を促すことは、ある意味では企業にとって負担となります。そのための制度を考えて、環境を整えなければならないからです。

しかし、企業が環境を整備することは、結果的に「優秀な人材を確保すること」というメリットにつながります。

数多く存在する優秀な人材は、さまざまな企業や働き方の中から、理想的な環境を探すことができます。優秀な人材にとっては、自由裁量権が大きい「キャリア自律を意識した職場」は魅力的に移ります。その結果として、まだ埋もれている優秀な人材の発掘や採用に影響すると考えられています。

高いパフォーマンスを発揮する人材の確保につながる

優秀な人材は、自由な環境でより高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。彼らは、自らの能力を最大限に活かし、結果を出すことに意欲的です。そのため、キャリア自律を重視する企業は、優秀な人材を確保し、組織の成果に貢献することができます。

企業側が行うキャリア自律の支援制度とは

キャリア自律は、個人と企業、双方にとってメリットをもたらします。そしてキャリア自律の主体は、あくまで「個人」ですが、キャリア自律を促進するためには、企業側の働きかけが必要であるといえるでしょう。

最後に、「それでは企業はどのような支援を行えるか」について解説していきます。

「メンター」をつけることによって、双方の成長を促す

メンターとは「助言者」という意味を持ち、ビジネスシーンでは主に、若手従業員も育成やサポートをする先輩従業員を指します。「新人に対して、有用なアドバイスを行ったり、その悩みを聞いたりする役目を負う人」と解釈することができるでしょう。

キャリア自律を実現できる若手従業員は少ないといえます。このような場合、「こういう選択肢もある」と提示するメンターの存在は、その新人がキャリア自律を行うための手助けとなります。

また、メンター自身も自分とは違う価値観に触れることで、偏った考え方を防ぐことが期待できます。

 

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メンター・メンティ―とは? 役割や事例を紹介 | リカレントcounselor

 

キャリアプログラムや学習の機会を設ける

組織の一員として働いている限り、従業員には日常の業務があり、その日常の業務が多忙な状態になってしまえば勉強をする余裕がなくなります。このときになくなる「余裕」とは、時間的なものだけでなく、体力的・精神的な面も含みます)。

そのため、企業側は意識して「従業員それぞれが、自らのキャリア自律を考えられる環境」を作っていかなければなりません。そのためには、企業側がキャリアプログラムや学習の選択肢を提案する必要があるでしょう。キャリア自律はあくまで自分自身の力で行うものですが、そのための土台固めは組織がある程度担う必要があるわけです。

以上のような観点から、お、企業は「キャリアプログラム」や「学習」の選択肢を設けることで、従業員のキャリア自律を支援することができるでしょう。

「キャリアプログラム」「学習」の選択肢

「キャリアプログラム」「学習」の選択肢としては、以下のようなものがあります。
社内スクール
自社以外が主催する勉強会
特定のカテゴリーに興味を持つ人が入れるコミュニティ
E-ラーニング
「どれか1つ」だけではなく、複数の選択肢を提案するとよいでしょう。

企業が行うキャリア支援『キャリア開発』については、こちらの記事で詳しく解説をしています。

 

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外部との連携を行う

キャリア自律においては自社内だけではなく、「外部」との連携も大きな意味を持ちます。

外部の研修を利用するのもひとつの方法ですし、副業を認めることも選択肢のひとつとして挙げることができます。

東京都が発表した「都内企業における兼業・副業に関する実態調査」では、副業を「全面的に認めている」が6.3%、副業を「条件付きで一部認めている」が28.6%で、合計すると34.9%の企業が副業を認めているという結果となっています。


東京都 都内企業における兼業・副業に関する実態調査 概要版2頁、図表2を加工して作成

「本業がおろそかになるのではないか」と副業をに止めるこを不安視する傾向もありますが、副業を行うことは、従業員の経済面はもちろん、新しい人脈の構築や新しい考え方との出会い、本業とは異なるスキルや経験に獲得ができるなどのメリットがあります。

相談できる窓口を作ることで、温度差や悩みを解消する

以前の日本では「企業が人を育て、人は企業のなかで育っていく」という考え方が広く浸透していました。そのため「キャリア自律」そのものを受け入れがたいと感じる従業員も少なくありません。

企業側はこのような考えを持つ従業員にも寄り添い、互いの温度差を埋めていくことが課題の一つであるともいえます。そのための方法のひとつとして、「相談窓口の設置」が挙げられます。

相談窓口では、「キャリア自律を考えて実行してきたが行き詰った」などのように悩む従業員はもちろん、「そもそもキャリア自律と言っても何をしたらいいかわからない」「キャリア自律に積極的になれない」という悩みに対しても、最適なサポートを行うことが求められます。

また、キャリア自律だけではなく、キャリアに係る悩みをもつ従業員からの相談を受け付けますので、キャリアの専門家であるキャリアコンサルタントが担当するケースも増えています。

まとめ

『だれもが働きやすい世の中』を実現する方法の一つとして、『キャリア自律』が挙げられます。この概念は、個人だけでなく企業にも多くのメリットをもたらします。

ただし、『キャリア自律は個人で自発的に行うものだから、従業員個人で進めてください』というスタンスを企業側が取った場合は、実際にキャリア自律を実現するのは難しいといえます。キャリア自律を促進するためには、企業が具体的な方法を考えそれを実行に移すことが不可欠であるといえるでしょう。
 

Q&A

キャリア自律とは?
企業が主体となってキャリア形成を行うのではなく、一人ひとりの個人が主体となって自らのキャリアを形成していくことを、キャリア自律といいます。
企業側にとって、キャリア自律を促すことのメリットとデメリットを教えてください
メリットとしては、個人のモチベーションがアップすることにより組織の活性化が期待できます。デメリットとしては、帰属意識が低下する可能性が考えられます。キャリア自律を実行していくと、「新しい働き方」「外部の企業の魅力」にも気づくことになります。そのため、自社への帰属意識が低下し、逆に離職者を出してしまう可能性があります。
キャリアアップを望まない従業員がいる場合は?
組織全体の底上げのために対話は求められますが、強制力はありません個人の「主体性」によるところが大きいのがキャリア自律ですので、従業員の希望をしっかりと確認していくことが望ましいといえます。
キャリア自律において考慮したほうがよいことはありますか?
「入社直後」「一定年数が経過した後(3年・5年・15年など)」「一定年齢に達したとき(30歳・40歳など)」は、キャリア支援や方向性の見直しを行うべきタイミングであるといえますので、キャリア形成やキャリア開発を年齢を考慮しながら行うことにより、効果が期待されるでしょう。

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