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キャリア - 2023.08.09公開

「ストレス」とは何か~職場やキャリアにおける「ストレス」について

人は生きていくなかで、ストレスを感じることが多々あります。「ストレス」と聞いたとき、仕事でのストレスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

このページでは、基本的なストレスの知識と、職場やキャリアに関連したストレスについて紹介していきます。

「ストレス」「ストレッサー」「ストレイン」の違い

まずは、「そもそもストレスとは何か」「ストレスに関係する言葉」について解説していきます。

ストレスとは

「ストレス」という言葉は、もともと「圧力をかける」といった工学用語の意味で使われていました。医学の分野でも使われるようになったのは、1936年にカナダの生理学者であるセリエが提唱したのがきっかけです。

ストレスとは、「外からの刺激によって生じる、心身の反応」を指します。

ストレスという言葉はあらゆる場で使われていますが、より適切に理解するために、「ストレッサー」と「ストレイン」という言葉を紹介します。

ストレッサーとは

ストレッサーとは、「ストレスの原因となる、外から受ける刺激のこと」をいいます。

代表例としては、「試験やプレゼンの連続」「職場の嫌な上司」「周りからの過剰な期待」「長時間の労働」などが挙げられます。また、暑さや寒さといった、人為的ではないものもストレッサーとなることがあります。

なお、ストレッサーは「望ましくないこと」だけを指すものではありません。たとえば、「昇進に伴う引っ越し」「部下ができた」などの、本来ならば喜ぶべきこともストレッサーとなりえます。

仕事以外の例では、結婚や出産などの望ましいとされている変化もまた、ストレッサーとなりえます。

ストレインとは

ストレインとは、「ストレッサーによって生じた心身の反応」を指します。「ストレス反応」とも言います。

たとえば、「長時間の労働によって発症したうつ病」「プレゼンに追い立てられて、プレゼンの前に必ず起きるようになった胃痛」「職場の嫌なことを忘れようとして増えた飲酒量」などがこの「ストレイン」の代表例です。

ストレッサーへの反応は人によって様々

ストレッサーがあったときの反応、つまりストレインは人によって異なります。

たとえば、「人からの期待」がプレッシャーとなって非常に強いストレスを受ける人もいる一方で、「人に期待されればされるほどがんばれる、逆に人に期待してもらえない環境の方がストレスである」という人もいます。前者にとっては「人からの期待」は大きなストレッサーとなりえますが、後者の人はこれをストレッサーととらえません。

残業なども、「長時間の残業でプライベートの時間がとれない」という人もいれば、「残業代がたくさん出てうれしい、夏の旅行の資金にしよう」と前向きに考える人もいるでしょう。

また、ストレインが生じたときにとる対応も一人ひとり異なります。だれにも相談ができずに一人で抱え込み悩む人もいれば、身近な人や専門の相談窓口に話を聞いてもらう人もいるでしょう。

職場やキャリアにおけるストレス

キャリアとストレスは、密接に関わっているといえます。

「新しい会社に馴染めない」「異動による環境の変化」「昇格によるプレッシャー」「仕事のミスによる落ち込み」「評価への不満」「退職への不安」など、日々の業務やキャリアの変化の中で、ストレスが生じることは必ずと言っていいほどあります。

「ストレス」を測る指標について

自分自身がストレスを抱えているかどうか、あるいは職場の人がストレスを抱えているかどうかを、客観的に見るのはなかなか難しいといえます。

ストレスを測る指標は複数ありますが、ここでは「ホルムズの43段階」と、「日本のストレスチェックで使われている調査票」について取り上げていきます。

ホルムズの43段階

ホルムズが1968年に出した「社会的再適応評価尺度」というものがあります。

これは、日常生活の中でのストレッサーを43項目選定し、それぞれのストレスの度合いを数値化してランキングにしたものです。

ホームズの社会的再適応評価尺度

1~22項目

1 配偶者の死
2 離婚
3 夫婦別居生活
4 拘留
5 親族の死
6 個人の怪我や病気
7 結婚
8 解雇・失業
9 夫婦の和解・調停
10 退職
11 家族の健康上の大きな変化
12 妊娠
13 性的障害
14 新たな家族構成員の増加
15 仕事の再調整
16 経済状態の大きな変化
17 親友の死
18 転職
19 配偶者との口論の大きな変化
20 1万ドル以上の抵当(借金)
21 担保、貸付金の損失
22 仕事上の責任の変化

 
23~43項目

23 息子や娘が家を離れる
24 親戚とのトラブル
25 個人的な輝かしい成功
26 妻の就職や離職
27 就学・卒業
28 生活条件の変化
29 個人的習慣の修正
30 上司とのトラブル
31 労働条件の変化
32 居住の変更
33 学校を変わる
34 レクリエーションの変化
35 教会活動の変化
36 社会活動の変化
37 1万ドル以下の抵当(借金)
38 睡眠習慣の変化
39 団欒する家族に数の変化
40 食習慣の変化
41 休暇
42 クリスマス
43 些細な行為

参考)国立保健医療学園 | ライフイベント法とストレス度測定 表1を加工して作成
 
この中で、職場やキャリアに関するものとして以下が挙げられています。

・解雇・失業
・退職
・仕事の再調整
・転職
・仕事上の責任の変化
・上司とのトラブル
・労働条件の変化

ホルムズの43段階の指標では、1位~7位を「家族との別れや健康の問題、拘留」が占めています。職場やストレスに関するもののトップは「解雇」で、8位に入っています。

しかし、「日本人」にしぼった場合は順位が大きく変わることが分かっています。

「日本人」にしぼったホームズの社会的再適応評価尺度

ホームズの社会的再適応評価尺度を「日本人の勤労者」に絞った場合、1位こそ「配偶者の死」で変わりありませんが、2位には「勤めていた会社の倒産」、6位に「所属していた会社が変わる」、8位に「心身の過労」、10位に「仕事のミス」……などのように、職場やキャリアでのストレスが上位に入っていることがわかります。
 

順位 ストレッサー
1 配偶者の死
2 会社の倒産
3 親族の死
4 離婚
5 夫婦の別居
6 会社を変わる
7 自分の病気や怪我
8 多忙による心身の過労
9 300万円以上の借金
10 仕事上のミス

 
なおホームズのこの指標では、「人は、このような出来事が起きた回数×ストレスの値の合計値が1年間で300以上になった場合、約80パーセントの人が精神的な疾患を抱えることになる」としています。
出典:国立保健医療科学院「ライフイベント法とストレス度測定」|夏目誠、村田弘

ストレスチェックでの調査票

国の取り組みとして、2015年に「ストレスチェック」が開始されました。従業員数が50人を超える事業所が対象になっています。

ストレスチェックは、労働者のストレスについて検査をし、それを分析してメンタルヘルス不調になるのを予防することを目的としています。
このストレスチェックにおいて、厚生労働省が推奨している調査票が「職業性ストレス簡易調査票」で、57項目が挙げられています。

「職業性ストレス簡易調査票」A

A あなたの仕事についてうかがいます。最もあてはまるものにチェックを付けてください。

1…そうだ
2…まあそうだ
3…ややちがう
4…ちがう

 

1 2 3 4
1 非常にたくさんの仕事をしなければならない
2 時間内に仕事が処理しきれない
3 一生懸命働かなければならない
4 かなり注意を集中する必要がある
5 高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ
6 勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない
7 からだを大変よく使う仕事だ
8 自分のペースで仕事ができる
9 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
10 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる
11 自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない
12 私の部署内で意見のくい違いがある
13 私の部署と他の部署とはうまが合わない
14 私の職場の雰囲気は友好的である
15 私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない
16 仕事の内容は自分にあっている
17 働きがいのある仕事だ

 

「職業性ストレス簡易調査票」B

最近1 か月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはまるものにチェックを付けてください。

1…ほとんどなかった
2…ときどきあった
3…しばしばあった
4…いつもほとんどあった

 

1 2 3 4
1 活気がわいてくる
2 元気がいっぱいだ
3 生き生きする
4 怒りを感じる
5 内心腹立たしい
6 イライラしている
7 ひどく疲れた
8 へとへとだ
9 だるい
10 気がはりつめている
11 不安だ
12 落ち着かない
13 ゆううつだ
14 何をするのも面倒だ
15 物事に集中できない
16 気分が晴れない
16 気分が晴れない
17 仕事が手につかない
18 悲しいと感じる
19 めまいがする
20 体のふしぶしが痛む
21 頭が重かったり頭痛がする
22 首筋や肩がこる
23 腰が痛い
24 目が疲れる
25 動悸や息切れがする
26 胃腸の具合が悪い
27 食欲がない
28 便秘や下痢をする
29 よく眠れない

 

「職業性ストレス簡易調査票」C

あなたの周りの方々についてうかがいます。最もあてはまるものにチェックを付けてください。

1…非常に
2…かなり
3…多少
4…全くない

 
次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?

1 2 3 4
1 上司
2 職場の同僚
3 配偶者、家族、友人等

 

あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?

1 2 3 4
1 上司
2 職場の同僚
3 配偶者、家族、友人等

 

あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?

1 2 3 4
1 上司
2 職場の同僚
3 配偶者、家族、友人等

 

「職業性ストレス簡易調査票」D

満足度について。最もあてはまるものにチェックを付けてください。

1…満足
2…まあ満足
3…やや不満足
4…不満足

 
次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?

1 2 3 4
1 仕事に満足だ
2 家庭生活に満足だ

 
これは、労働者のメンタルヘルスを守るために作られたものです。そのため、「家庭生活」については最終質問に1つあるだけで、設問事項の中心は職場あるいは現在抱えている具体的な健康上の問題になっています。

出典:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)

まとめ

このページでは、ストレスについての基礎を、職場やキャリアでのストレスをメインに解説しました。

一見良い出来事であっても、それがストレスになるケースがあるというのは意外だったかもしれません。ストレスの基礎を理解し、ストレスケアへの一歩となれば幸いです。

Q&A

ストレッサーとは?
ストレッサーとは、「ストレスの原因となる、外から受ける刺激のこと」をいいます。
ストレインとは
ストレインとは、「ストレッサーによって生じた心身の反応」を指します。
「職場内でのストレス」は、どのようなことによって生じる?
「どのような仕事をしているか」「どんな役職に就いているか(責任の有無や軽重など)」「職場の人間関係」「職場環境」など、「現在の職場の状況へのとらえ方」によって生じます。また自分自身のキャリアの構築(昇進や異動など)によっても、ストレスは生じます。
ストレスチェックにはどのようなものがありますか?
ストレスチェックは、厚生労働省が推奨している調査票「職業性ストレス簡易調査票」57項目があります。

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