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キャリア - 2023.09.15更新 / 2023.09.20公開

OJTとOFF-JTの違いは?それぞれの意味やメリット、事例を紹介

「OJT」や「OFF-JT」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

「OJT」は、上司や先輩が指導者となり、職場で業務を遂行しながら実践的な能力を身につけさせる教育訓練のことです。現在では多くの企業で採用され一般化しています。

対して「OFF-JT」は、職場から離れて行われる教育訓練全般を指します。近年は、この「OFF-JT」のニーズが高まっています。

本記事では、「OJT」「OFF-JT」とはそれぞれどういったものなのか、意味や他の制度との違い、重要視される背景や、それぞれのメリット、具体的な事例をご紹介します。

人材育成にお悩みの方のご参考になれば幸いです。

OFF-JTとは? OJTとの違い

OFF-JTとは

OFF-JTは、「Off The Job Training」の略称です。職場とは異なる場所で行われる教育訓練全般を指します。

外部から講師を招いた研修やセミナー、通信教育やeラーニングなどの例があります。普段の業務を遂行する上では、上司や先輩から実践的なスキルを学ぶことが多いですが、OFF-JTの場合は、ビジネス全般に関わる知識や、理論について学ぶことができます。

OJTとは

OJTは、「On The Job Training」の略称です。実際の職場で業務を遂行しながら、実践的な能力を身につける教育訓練を指します。

業務上の先輩や上司が指導者になるのが一般的です。従業員が即戦力として成長できるトレーニングとして期待されています。

SDS、OJDなどその他の制度

SDSとの違い

SDS(Self Development System)は、従業員の自己啓発活動を援助する制度です。

従業員の、職場内外での自主的な自己啓発活動を職場として認知し、時間面、経済面での援助や施設の提供などを行うものです。資格取得といった個人の活動、自主的な勉強会開催といったグループでの活動などが支援対象となります。資格取得の受験料を援助する・合格した場合に支援金を出すといった取り組みをしている企業が多いです。

SDSは、従業員が学びたいことを選択し自主的に取り組むものなので、企業側に強制力のある制度ではありません。

OFF-JTは、企業側が従業員に対して必要な教育機会を提供するものなので、その点が異なります。

OJDとの違い

OJD(On The Job Development)は、職場での能力開発を指すもので、近年誕生した制度です。

OJTが現在の職場での実践的なスキル習得、実務対応力の向上を狙うものであるのに対し、OJDは、将来的に期待する役割から必要になるだろう能力を導き開発していくものです。

3年後、5年後というように、長期的なキャリアについての考えを上司と共有し、業務を遂行する中でフィードバックを受け、自己分析や細かな目標立て、課題解決につなげていきます。

OFF-JTがなぜ必要とされているのか

OFF-JTが注目される背景

日本経済には、これまでの制度だけでは対応しきれない問題が発生しており、それぞれの課題を解決する有効な手段としてOFF-JTが注目されています。

OJTなどの制度とOFF-JTをあわせて用いることで、高い効果が発揮されると期待が高まっているのです。

OFF-JTが注目される主な背景には、次のようなことがあります。

少子高齢化による労働人口の減少

日本では、少子高齢化と人口減少が深刻な問題となっています。働き手の減少も見込まれており、各企業で人材を確保することが難しくなっていくことが予想されます。

今いる人材、確保した人材を即戦力として育成することが一層重要となってきます。効果的な学習機会を効率良く提供するために、従来の職場での訓練にプラスしてOFF-JTが期待されているのです。

高い生産性が求められる雇用環境へシフト

労働人口の減少やグローバル化による企業間競争の激化は、一人当たりに求められる生産性に影響します。

企業が少ない人材でこれまで同様の生産性を維持するためには、一人当たりの労働力を上げる必要がありますし、多くの企業は競合相手が国内外に増えたので、他社と戦う力もなければいけません。

従業員一人ひとりに、高い生産性を発揮できる能力を身につけてもらうような動きが高まっているのです。人的投資は、VUCA時代という言葉に見られる不測の事態への対応力、DXに見られる新たなトレンドが到来した際の適応力にもつながると期待されています。

働き方の多様化

特に新型コロナウイルス流行以降、テレワークなど多様な働き方を認める動きが高まっています。これまでのように、職場や会社で顔を合わせて業務を遂行する、訓練を行うという機会が持てないというケースも増加しています。

OFF-JTには、オンラインで受けられるものも多くあるため、企業が従業員に提供する訓練機会としてあらためて注目されています。

OJTとOFF-JTそれぞれのメリット

ここまで、OFF-JTが注目される背景を説明してきました。実際にOFF-JTを導入した場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。OJTと比較し、それぞれ解説いたします。

育成場所の違いによるメリット

職場で実践的に学べるOJTに対し、職場から離れて知識を整理できるのがOFF-JTです。

教育訓練を行っているかどうかに関わらず、職場では通常通り業務が回っている状態なので、指導者が育成に集中できないということが多々発生します。

OFF-JTの場合は、一度職場から離れて行われるので、指導する側も指導を受ける側も決まった時間で集中して取り組むことができます。

ただ、OFF-JTは、講師や受講者と時間や場所を調整して行う必要があるので、費用やスケジューリングの負担が発生します。OJTの場合は、通常業務と兼ねて行うことができるので、そういった負担は発生しません。

対象者の違いによるメリット

OJTは、各現場の先輩・上司が新入社員などに対して行うものなので、それぞれの現場に必要な専門性・実践力を高めることができます。一方で、体系的な知識について理解、理論の整理はしづらいケースが多いです。

OFF-JTは、対象者を広く設定することが可能です。全従業員向け、特定の年次の従業員向けなど、OJTよりも広く対象を定めて実施することで、従業員の間に共通の知識を浸透させやすく、むらなく能力を高めることができます。

学ぶ内容の狭さ・広さによるメリット

各現場でそれぞれの専門性・実践力を高めるOJTに対し、OFF-JTは会社、業界、ビジネス全般など、広い知識を学ぶことができます。

業務を遂行する上で前者は必須ですが、能力の高い従業員育成を図るのであれば後者も取り入れることが有効でしょう。

OJTによって得たことはすぐに活かしやすいのに対し、OFF-JTで得たことを応用するには時間がかかると考えた方がよいでしょう。

このように、OJTとOFF-JTにはそれぞれのメリットがあります。それぞれの長所を見極め、自社に合った形・頻度で取り入れることで、人材育成に役立つはずです。

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OJTとOFF-JTを活用するためのポイント

実際に、OJTとOFF-JTを実施する際のポイントをご紹介します。

OJTとOFF-JTを使い分ける

OJTとOFF-JTにはそれぞれ異なるメリットがあることは前述しました。自社に合った形で取り入れることで人材育成に役立ちます。

例えば、業界や職種によって人材育成で重視するポイントが異なる場合があります。業務遂行に高い専門性が求められ、時間をかけてスキルアップしていくことが求められる職種では、OFF-JTよりもOJTが重視されることがあります。

基本的に、OJTとOFF-JTのどちらかが不要ということはありませんが、実施の頻度などは企業・職場に合わせて検討するのがよいでしょう。

OJTとOFF-JTそれぞれの特徴を把握し、使い分け、うまく組み合わせることでと効果を発揮します。

OJTとOFF-JTのタイミング

基本的に、OJTは職場に配属されたタイミング、異動や役割の変更に応じて行われます。

一方、OFF-JTには決まったタイミングがありませんが、「入社◯年目」や、昇進・昇格した従業員を対象にするなどの、キャリアの節目になるようなタイミングで行うと効果的です。従業員がキャリアについての気づきを得て、モチベーションが高まることが期待できます。

先につながるような工夫をする

OJTの場合もOFF-JTの場合も、実践でさらに力を発揮できるように取り組むことが重要です。

OJTの場合、即戦力になることを目的として実際の職務現場で実施されるため、その後の成長、実務対応力に直結しやすいという特徴があります。

OFF-JTの場合は、職場や実務から一度離れて行われるので、研修・セミナーを受けたところで完結してしまわないような工夫が必要となります。例えば、研修で学んだことをどのように実践で活かしていくかレポートを求める、実際に取り組んだ結果を報告するまでをプログラムにするなどが挙げられます。

職場のメンバーや、同期入社間で、学んだことを共有する文化の醸成も、従業員が「この知識をどう活かそう」と自発的に考えるきっかけにつながります。

OJTとOFF-JTの事例

実際に、OJTとOFF-JTに取り組んだ企業の事例、OFF-JTの重要性が見直されている例をご紹介します。

OJTでは乗り越えられない課題感からOFF-JTを導入した日立造船

日立造船では、2011年に「スキルインストラクター制度」というOFF-JTの制度を設けています。それまでのOJTの制度とは別に、業務時間外の座学や実習などを通して従業員のスキル向上を図るものです。

この制度を採用した背景には、製造業を取り巻く事業環境の変化、人材力の低下、今後見込まれるベテラン層の退職などがあります。制度の導入に合わせ、スキルを評価する制度も見直し、従業員と経営側双方が能力を把握できる環境整備を行っています。

制度導入後、「OJTのみでは実現できなかった作業が可能になった」「海外工場で仕事をこなせる若手が育ってきた」などの効果が現れています。

厚生労働省が支援するOFF-JTでの「リスキリング(学び直し)」の取り組み

2022年、厚生労働省は、企業の研修費用を助成する仕組みを見直し、OFF-JTを対象とした費用上限額を大幅に引き上げました。これによって、企業の新規事業を担う人材育成を促進する狙いがあります。

日本では、OJTを中心とした職場での訓練は活発であるものの、それ以外の人材投資は諸外国と比較して劣るとされています。今後グローバルに活躍できる企業、人材を育てる上で、OFF-JTは無視できないものとなっています。

まとめ

このページでは、「OJT」と「OFF-JT」について解説してきました。

「OJT」「OFF-JT」とはそれぞれどういったものなのか、意味や他の制度との違い、重要視される背景や、それぞれのメリット、導入のポイントや具体的な事例をまとめました。

自社に合った形で「OJT」と「OFF-JT」の仕組みをつくることができれば、人材育成面での高い効果が期待できます。

本記事が、皆様のお役に立てば幸いです。

Q&A

「OJT」とは何ですか?
OJTは、「On The Job Training」の略称で、実際の職場で業務を遂行しながら、実践的な能力を身につける教育訓練を指します。
「OFF-JT」とは何ですか?
OFF-JTは、「Off The Job Training」の略称で、職場とは異なる場所で行われる教育訓練全般を指します。外部から講師を招いた研修やセミナー、通信教育やeラーニングなどがあり、ビジネス全般に関わる知識や、理論について広く学ぶことができます。
OFF-JTのメリットは何ですか?
職場から離れて行われるので決まった時間で集中して取り組むことができる、体系的な知識や理論の習得ができる、対象者を広く定めて実施することができ従業員の間に共通の知識を浸透させやすい、などがあります。
OFF-JTを実施する際のポイントは何ですか?
実務遂行力を鍛えるOJTなどの取り組みと合わせて使うこと、キャリアの節目になるタイミングで定期的に実施する仕組みをつくること、OFF-JTを受けて終わりではなくその先にどのように活かしていくか従業員が考えられるような取り組みにするといったことが挙げられます。

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