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MENTAL HEALTH - 2022.11.14

メンタルケアPLUS 第2回「メンタルヘルス セルフケア編ー生体リズム」

この記事を書いた方のご紹介

蔵屋鉄平(リカレントメンタルヘルススクール専任講師)

リカレント メンタルヘルススクール専任講師
臨床心理士/公認心理師/精神保健福祉士
東京都内のメンタルクリニックで休職者の復職支援(リワーク)や、復職後のフォローアップ支援に従事している。

前回の記事では、身近でありながらも実は難しい、睡眠の生理的背景を中心にお届けしました。第2回では、その「睡眠-覚醒リズム」とも深く関与する、身体がもつリズムについて考えていきましょう。少し複雑な話になるかもしれませんが、生活習慣の見直しには、身体がもつ機能を理解することが助けになりますから、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。

身体が自律的に刻む約24時間のリズム

私たちは24時間を一日という単位として捉え、概して朝になると目を覚まし、日中に活動し、夜になると眠るというサイクルを繰り返しています。
このサイクルは、あらかじめ準備された時計の針に合わせて、生活を築いた結果というわけではありません。地球の自転によってもたらされる明暗周期に、人間が同調した結果として備わったものです。ちなみに、人間は日中に活動するので昼行性といわれますが、夜行性の生物も知られているように、24時間サイクルの性質は生物種によって異なっています。

このような、生体がもつ機構によって刻まれるリズムのことを「生体リズム」といいます。生体リズムにもさまざまなサイクルを示すものが知られていますが、「睡眠-覚醒リズム」のような、約24時間の生体リズムは「概日リズム(circadian rhythm)」といわれます。

多くの人は、睡眠と覚醒が概日リズムに従って繰り返されていることを自覚できると思いますが、実は身体が示す概日リズムは睡眠と覚醒だけではなく、「体温」や「ホルモン分泌」などにもみられることが知られています。これらのサイクルを自覚的に感じ取っているという人はいないのではないでしょうか。それでも実際に身体はリズムを刻んでいるのです。

脳の中の時計

概日リズムを駆動している機構は「生物時計」とよばれます。もしかすると「体内時計」という表現のほうが一般的かもしれません。ここでは、「生物時計」も「体内時計」も同義だと考えていただいて差し支えありません。

私たち人間は哺乳類に分類されますが、哺乳類の生物時計は脳の中にある「視交叉上核(suprachiasmatic nuclei; SCN)」という場所がその機能を担っているとされます。当然ですが、いつも私たちが目にしている時計が脳の中にあるわけではなく、脳の一部分が生体の生活における時間調節の役割を果たしているという意味で、“時計”とよばれています。

生物時計はズレている

ここまで「概日リズム」について、“24時間”と“約24時間”という両方の表現をしてきました。用語や概念を正確に理解するために、ここで少し整理しておきましょう。

「概日」という言葉があてられているのは、「概ね一日のリズム」であることを意味しています。つまり「概日リズム」は厳密に24時間のサイクルということではなく、約24時間ではあるが、24時間よりは少しずれているということをあらわしているのです。

私たちの「概日リズム」は環境からの刺激などで日々調整されているのですが、そのような調整がまったくなされなかったとしたら、24.5~25.5時間サイクルだといわれています。つまり、環境に対して約1~2時間ほど遅れ気味になっているということです。

ついつい夜更かし気味になってしまう人は少なくないかもしれませんが、その理由の一つとして、生物時計がもともと遅れ気味であるということが関係しているのかもしれません。

では、“遅れ気味の時計”をもつ私たちは、なぜ環境とサイクルを合わせた生活ができているのでしょうか。それは、時報に合わせて時計の針を調整するように、環境からの刺激によって生物時計を日々同調させているからです。

生物時計を同調する因子は時間同調因子(zeitgeber;ツァイトゲーバー)といいます。そのもっとも強力なものは光です。つまり、人間の24時間の生活リズムというのは、朝の光を浴びることで概日リズムを調整しながら維持されているのです。ですから、安定した生活リズムを維持するために、朝目覚めたらまずはカーテンを開けて、陽の光を浴びるということがとても大切なのです。

睡眠と体温

人間の体温変化も明瞭な概日リズムを示します。朝方4時~5時頃に最低となり、19時~20時頃に最高体温になると、また朝方に向けて低下していくというサイクルを繰り返しています。このサイクルは、およそ1℃程度の幅で変動しています。

このような体温の変動は眠気や覚醒度と関連があり、一般に最高体温付近では覚醒度が高くなるといわれています。最高体温を示してから徐々に体温は低下し始めますが、この体温の低下が入眠に効果的であると考えられており、体温が低下し始めると2~3時間後には平均体温に近くなり、睡眠が始まります。入眠すると、体温はさらに急速に低下し、明け方に最低体温になると再び上昇し始めます。最低体温時から2~3時間が経過して、平均体温付近まで上昇すると覚醒します。

ちなみに、ここで体温といっているのは「深部体温」のことであり、脳や内臓などの身体の中の温度を指しています。脇の下に体温計を挟んで計測する「皮膚温」と比べると、深部体温の方が高くなっています。

睡眠と内分泌活動

内分泌活動にも概日リズムはみられます。たとえば「成長ホルモン」です。このホルモンは睡眠との関係がとても深く、入眠すると分泌され始めます。第1睡眠周期の徐波睡眠期に最大の分泌量を示すため、入眠初期の深い睡眠をしっかりとることが重要であるといえます(睡眠については前回の記事をご確認ください)。

「成長ホルモン」というと、子どもの成長を促すようなホルモンのイメージが強いかもしれませんが、大人にとってもとても重要なホルモンです。子どもの成長促進はもちろんですが、大人でも身体の修復や疲労回復に重要な役割を果たしています。

「コルチゾール」も同様に概日リズムを示し、これは睡眠の後半に向けて分泌量が増加していき、起床前後で最大を示します。「コルチゾール」は副腎皮質から分泌される抗ストレスホルモンであり、血糖値の上昇や抗炎症、免疫促進作用などをもちます。成長ホルモンは入眠すると分泌される睡眠依存性ですが、「コルチゾール」は独立した概日リズムを示すため、実際には眠っていなくても分泌はみられます。

生体がもつリズムを意識した生活スタイルを

前回と今回の記事では、少し難しい説明が多かったかもしれません。ですが、生体が本来もっているリズムを理解し、そのリズムを乱さないような生活スタイルを築くことが、セルフケアのもっとも基本となるところです。

次回からは、「睡眠の生理」と「生体リズム」を踏まえた上で、日常生活の中でできる工夫を考えていきたいと思います。

まとめ

リカレント専任講師の蔵屋先生の連載「メンタルケアPLUS」の第2回では、「メンタルヘルス セルフケア編 –生体リズム」をテーマにお届けしました。

セルフケアを行う上で知っておきたい身体が持つ睡眠や覚醒のリズムについて理解すると
そのリズムを乱さないような生活リズムを築くことが、セルフケアの基本となるという話に、納得された方も多いのではないでしょうか。
次回は日常生活の中でできるセルフケアをテーマにお届します。

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