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MENTAL HEALTH - 2020.09.25

精神科医Dr.KSの診察室⑥秋はこころのピンチ?! 「秋うつ(季節性障害)かと思ったら」

この記事を書いた方のご紹介

Dr.KS

精神科医/日本医師会産業医/臨床心理士/法政大学産業医・学生相談室学校医/渋谷もりやクリニック/神奈川大学人間科学部特任准教授

精神分析学派のもと、卓越した理論とサイコセラピー技術を融合させた独自の臨床観と高度な専門性を持つ。産業から医療、教育と多領域で活躍。精神科医であり臨床心理士、特任准教授として大学で教鞭もとるマルチなドクター。大手ファーストフード、輸入バッグ企業ほか6社もの産業医を務める。

秋の気配を感じるこの頃ですが、今回は精神科医Dr.KSが、秋はこころのピンチ?!と題して、秋うつ(季節性障害)についてのコラムをお届けします。
秋になると気持ちが沈みがちな方、夏の疲れで気力が出ない方なども必見の内容です。どうすれば症状が和らぐかなど、対処の仕方もアドバイスもしますので、ぜひお役立てください。

秋うつ(季節性障害)

秋の訪れ

夏の暑さも去って、気温も下がり始めましたね。
こんな季節の変わり目を、皆さんはどのように感じていますか?
暑い夏がやっと終わって、秋の訪れに心地よさを感じていますか?

それとも、コロナ禍のために夏らしい夏が過ごせなかったことに、さびしさを覚えていますか。それとも、もう10月が迫り、いつの間にか今年もあと3か月?と驚きを感じていますか?

暑さとコロナ禍の中で張りつめていた気持ちの状態から、秋になって急に気が抜けたように脱力してしまう、夏の疲れが一気に出て気力が出ない、何もできずに夏が終わってしまったさびしさ…そんなことから鬱々としてしまっている人もいるかもしれません。

秋は心のピンチ?!

秋には夏の疲れが身体に出て、自律神経が乱れたり、ホルモンバランスが崩れたりすることで体調が悪くなる、なんて人も少なくありません。
秋に、そんな経験をしたことはありませんか?

秋になってなんとなく気持ちが沈んでいる人、元気が出ない…と感じている人、動くのがだるいな…と、こころも身体も重たい人は、要注意です。

「秋うつ」「SAD」

秋に症状が出る鬱を「秋うつ」といい、秋から冬への季節の変わり目に起こる季節的なうつ、「季節性障害:Seasonal Affective Disorder(SAD)」とも呼ばれています。SADは発症時期として季節性があり、春先には回復するというパターンを持つというのが特徴。明らかな心理的な原因やライフイベントが原因となっていないことが診断のポイントです。

「SAD」はなぜ起こる?

どうしてSADは起こるのでしょうか。こんな背景が原因のひとつとして考えられるようです。
私たちのカラダとココロは、自分の意思とは離れたところで、微妙なバランス機能が働いています。生物が持つ体内で働く調整機能を「サーカディアンリズム」と言いますが、季節の変わり目の環境変化からさまざまな影響を受け、ルーティンで動いてくれていたリズムが、乱れることがあります。

例えば、日照時間が減り、夕暮れが早くなると、日光は脳に活動を促す働きがあるので、日照時間が少なる分、脳のエネルギーが低下することもあり得るでしょう。寒くなってくることで体温が下がりやすいと、それだけでも身体の怠さ、疲れやすくなると、当然気持ちも沈みがちとなり、気力が出なくなります。

私たちは日光の影響を受けながら生きている

また、日中の脳の活動性に関与している脳内物質のセロトニンも、睡眠を導くのに欠かせない脳内物質のメラトニンも、サーカデイアンリズムの流れの一部です。つまりは、鬱に深く関係している脳内物質は日光の影響を受けている。うつ病は脳のセロトニンが欠乏することが一因だといわれています。だから日照時間時間の短くなる季節に、鬱になりやすいのですね。

早く暗くなることで、日照時間が減る影響だけでなく、物悲しくなる、以前の嫌な気分が呼び戻されやすくなる、そのために憂うつ感が起きやすくなる。このような変化が自然に起こりやすくなります。この変化が極端で、普段できている日常生活にも支障が生じるようであれば、季節性感情障害(SAD)を疑っていきます。実際、夏は1日中太陽がしずまない「白夜」があり、それとは逆に、冬には太陽が昇らない「極夜」が2ヶ月ほどある北欧の国々では、SADの傾向が強く出ています。

症状が辛い場合は治療が必要

SADの診断が下りた場合、症状がきつくて辛い状態であれば、やはり治療が必要でしょう。サーカディアンリズムの乱れと日照時間の変化が大きく関係しているという点から、治療の第一選択としては、高照度光療法が考えられます。これは1~2時間程度、高照度の光を照びるというものです。順調にいくと1週間程度で症状は改善することが多いといわれます。

秋をどう受け止めるか

誰もが同じスピードで季節を過ごしていても、物事をポジティブに受け止めるか、ネガティブに受け止めるのか、捉え方の傾向で感情が大きく左右されます。

あなたは秋がお好きですか?
「秋が好き」という日本人は、「春が好き」という人の次に多い。
なるほど、わからなくない気がしますね。

春は厳しい冬の後、暖かくなって希望を感じさせたり、桜やいろいろな花も色鮮やかに咲き出して、心躍りますよね。
年度が切り替わることで、新しさにワクワクしたりもします。

秋は樹木が色づいていく季節の移り変わりがなんとも風情があり、紅葉や落ち葉など目にすると、心が静かに落ち着く感じがします。だから何かに取り組むこころの余裕が生まれるのかも。
「読書の秋」や「芸術の秋」といわれるのは、このあたりからかもしれませんね。

夏の蒸し暑さが過ぎていき、風は少しひんやり、日差しの暖かさが心地よい、そんな秋晴れの空は、気分を軽くさせてくれるものです。そんなふうに秋をポジティブに捉えると、秋はとても楽しい季節になるのだろうと思います。

一方で、まだ17時なのに、もう薄暗い…1日がもう終わるの? と感じたり、年末が見えてきて、ビジネスマンにとっては「今年もたいした成果が上がっていない、どうしよう」などと、日々焦りの気持ちが高まり、ついネガティブな思考になったりもします。

心配ごとや問題を抱えていると…

何か現実的な心配や問題があると、そのことに気分が引っ張られて秋空がますます物悲しく見えてしまい、こころがふさぎ込むこともあるでしょう。

また、実際に人は冷たい風を受けたり、身体が冷えると自然に気持ちまで冷えていくものです。
なんとなく孤独を感じたり、さびしさを感じるのです。だから秋は気をつけないといけません。

そんなときは、誰かに話しを聴いてもらいましょう。

ろくに話も聴かずに待ってましたとばかりに解決策をすぐに切り出されたり、「現実を受け入れなくちゃ!」と悟されたり、「そんなことで落ち込んでるの?」と冷たいリアクションをしてくるような人では話相手になりません。「うん、うん、そうか、そうなんだね」「どうしてそう感じるの?」といった姿勢で、あなたの話に熱心に耳を傾けてくれる人。身近にそんなふうに親身になって聴いてくれる人がいなければ、カウンセリングもおすすめです。

形容詞は自分の感性が付けるもの

物悲しい木枯らしの秋になるのか? それとも風情あふれる季節と楽しめるか? 月夜の静寂さに、しっとりと落ち着きを感じるか? それとも孤独感やわびしさを感じるか?

「さびしい秋」「しっとりした秋」…
目に映る情景に、形容詞は自分の感性が付け加えていくもの。
今の自分の心情に共鳴するように、見ている風景の形容詞は浮かぶものでしょう。

無理やりポジティブに形容するのもどうかとは思いますが、ネガティブに見えた情景に視点を変えて、ちょっと違う言い方を見つけて形容してみるのも、大切かも知れませんね。

この秋をあなたはどのように形容しますか? 

まとめ

今回は秋はこころのピンチ?!と題して、Dr.KSが秋うつ(季節性障害)についてのコラムをお届けしました。「秋になったら心が沈んできた」「もしかしたら私は秋うつかも?」と思ったら、ぜひDr.KSのアドバイスを取り入れてみてくださいね。

精神科医Dr.KSの診察室では皆さんからの悩みや質問、知りたい情報などをお待ちしております。

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