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MENTAL HEALTH - 2020.05.29
精神科医Dr.KSの診察室③「家族にストレスが溜まってしまうあなたへ」
このコーナーでは、カウンセラーとカウンセラーを目指す方のための総合サイト「リカレントCounselor」に寄せられた悩みを、精神科医Dr.KSが答えます。
第3回はコロナ感染症予防のために、在宅勤務が多くなり、家族との関係に悩んでいる方からの質問をテーマにお届けします。
第3回のテーマは家族関係の悩み
Question
コロナの感染防止のために、在宅勤務も長くなり、家にいる時間が多くなりました。家族と顔を合わせることも多く、ストレスが溜まってしまいます。どうしたらいいのでしょうか。
Anser
ストレスの発散には、発想の転換が有効。前向きな工夫や想像はいくらでも広げられます。
ストレスの発散には、発想の転換がとても有効です。今しかできないことって何だろうと、発想を逆転させることだってできるかも知れませんね。
たっぷりと時間を使う
例えば、ソーシャルディスタンスをとってのお散歩から近所の再発見とか。家で過ごすたっぷりある時間で、何をするか。もっと能動的に好きなことを追求する、新たな自分や周りを発見する、今までできなかった数十巻に及ぶ書物を読破するとか、興味の持てる資格の勉強を始めてみるとか。普段はやらない手間のかかる家のこと(細かな掃除とか)に取り組むと気分がよくなることがあるでしょう。
家族との時間
家族との深い関わりから、新たな発見や関係性を見い出すことができたらホントよいですよね。そうは言っても、家にいる時間が長くなると、自由が制限されるので、イライラしたり不安が強くなることは普通に起こることです。家族と顔を合わせる時間が多くなり、本来、自分にとっての大事な人がストレッサーになってしまう。ストレスから人に優しくなれなくなる。そんな自分にも苛立ちが募る…。そしてとても残念なことに、コロナ禍で家庭内で虐待・DVが増えているのも事実です。社会の禍を家庭内に招き入れているようなものです。
さて、身近な人に苛立つとき…、どうしたらよいのでしょうか。
可能な限り家の中でも空間と時間を分けることを意識してみてはいかがでしょうか。日常生活のなかにも時間割やルール作りを決めてみる、など。ルールを意識して心の中で区切りをつける。つまり、家の中でも心のソーシャルディスタンシングを取ることになります。
ひとりの時間も大切に
部屋や時間を決めてお互いに一人になれる時間、空間を確保する、など。相手が子どもだったら、家の中で冒険ごっことして、一人で過ごさせる時間を遊びとして演出する、とか。たとえば、子どもにマントを羽織らせて、「これから勇者はひとりで過ごすものよ、制限時間は1時間、その中で勇者は何ができるかな?」なんて言って、その気にさせてみるのはどうでしょうか。あるいは「3時までお母さん、テレワークに魔法をかけられてこの部屋から出られないの。3時ちょうどになったら、このお菓子を持ってきてくれたら扉が開くよ。3時になったら助けに来てくれる?」とか(笑)。こんな遊びがきっかけで、子どもが親とは別々の時間を持てる習慣づけになったらよいですね。家の中でもお互いにルールや決まりごとを作って、それを意識して生活してみるのが有用だと思います。
ユーモアを持つ
すぐに解決策が見つからないこと、自分の力ではどうにもできないこと、世の中にたくさんあります。コロナウイルスのことはまさにこれ。そんなとき、「ユーモアを持つ」ことは無力感への強力な武器となります。顔の表情を意識して、あえて笑顔を作ってみることや、小声でクスっと笑うだけでも、不安感やイライラを和らげることができます。大笑いできる時間が持てるなら、なおよいでしょうね。そうそう、始終べったりとくっついてくる子どもに、冒険ごっこを提案するのも、ユーモアのセンスですよね。
家の中にいても、不安と恐怖が広がることもあるでしょうが、それなら工夫と想像だって、いくらでも広げられるものなのでしょうね。これが発想の転換です。
感謝の気持ちがストレスを軽減させる
コロナ禍だからこそ得られることだってあります。当たり前の日常に感謝することなども、こんな時だからこそ得られるよきことでしょう。たとえば、宅配に頼ることが多くなってきていると思いますが、感染リスクを負って配達してくれている人たちに、いつもより丁寧にお礼の言葉がけをしている人も少なくないのではないでしょうか。
郵便物が届いて当たり前の世の中になって、これまで配達してくれることに特別な感情を持つこともなかったという人が多いのではないかと思いますが、今、ウィルス漂う空間の危険を顧みず、仕事・役割として、配達をしてくれる人たちに、自然と感謝の気持ちになりますね。彼らのように在宅勤務にならない、いろいろな職種の人々がたくさん働いています。そして、感染症の最前線で働いている医療従事者の皆さんに対しても感謝の念しかないでしょう。
皆、仕事・役割なので、不安・恐怖に負けずに機能しているのです。そう思うと、「役割」が、自分の心を律するのかも知れません。家庭なら、母としての役割、父としての役割、妻としての役割、夫としての役割、子どもとしての役割、小学生としての役割、中学生としての役割…等々です。不幸にして、家庭内で虐待・DVが起こっているとしたら、ここに立ち返ってもらいたいものです。そして不思議なことに、役割とは、相手に要求した時より、自分で自覚して引き受けた時の方が、効果的に機能するもののようです。
感謝の気持ちを持つようにすることが、実は、心の中でストレス反応を軽減する効果もあるのです。今まで誰も体験したことがないコロナ禍のストレス、正しく不安を察知し、正しく恐れ、正しい処置を忠実に実行し、発想の転換と自分の役割を意識し、ユーモアと感謝の念を持って過ごして、この禍が行き過ぎるのをただただ待ちたいものですね。
まとめ
精神科医Dr.KSの診察室③ではコロナ感染症予防のために、在宅勤務が多くなり、家族との関係に悩んでいる方からの質問をテーマにお届けしました。ストレスの発散には、発想の転換が有効というアドバイスに「なるほど」と思われた方も多いのではないでしょうか。Dr.KSのアドバイスが毎日の生活の中でのヒントになればと思います。
精神科医Dr.KSの診察室では皆さんからの悩みや質問をお待ちしております。
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この記事を書いた方のご紹介
Dr.KS
精神科医/日本医師会産業医/臨床心理士/法政大学産業医・学生相談室学校医/渋谷もりやクリニック/神奈川大学人間科学部特任准教授
精神分析学派のもと、卓越した理論とサイコセラピー技術を融合させた独自の臨床観と高度な専門性を持つ。産業から医療、教育と多領域で活躍。精神科医であり臨床心理士、特任准教授として大学で教鞭もとるマルチなドクター。大手ファーストフード、輸入バッグ企業ほか6社もの産業医を務める。
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