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キャリア - 2024.04.29更新 / 2024.04.24公開

キャリアラダーの意味と特徴を紹介! スキルアップとの違いは?

企業は、経営面での成長だけでなく、従業員の成長に対しても注力することが求められています。

このページでは、企業側が従業員に提示するべき「キャリアラダー」を取り上げ、その言葉の意味やキャリアアップとの違いを解説していきます。

従業員のキャリアを考える人事の方だけでなく、キャリアコンサルタントの仕事に興味のある方も、知識のひとつとして参考にしてください。

キャリアラダーとは?

キャリアラダーとは、従業員がキャリアアップのために、スキルを習得していく階層構造を示す枠組みです。

ラダーは「はしご」を意味しますので、キャリアラダーは「はしご」を段階的に登り、スキルアップをしていくというイメージでしょうか。

キャリアラダーの起源

キャリアラダーの歴史は意外なほどに古く、1970年代にはすでにアメリカで導入されていました。このキャリアラダーの考えの基礎となった論文を作成したのはパトリシア・ベナーという人物です。

もともとキャリアラダーの考え方は、「看護師」という特定の職業と密接に結びついていました。

パトリシア・ベナーの論文も看護師を対象としたもので、看護師を「初心者」「新人」「一人前」「中堅」「達人」に分けて、それぞれの段階でクリアすべき目標を設定していました。

日本でキャリアラダーが普及したのは1980年ごろ

日本でも、キャリアラダーの考え方は1980年ごろから看護師の教育を目的として、積極的に活用されてきました。

このキャリアラダーは、現在では一般企業でも広く受け入れられ、実践されるものとなっています。

一つひとつのステップに、目標や習得するべき技術、そして期待される仕事内容を明確に設定することで、従業員自身が目的意識をもって業務に当たることができる、と認識され始めたからです。

またこのキャリアラダーは、従業員(部下)を評価する立場の上層部(上司)にとっても、分かりやすい指標となりえます。

キャリアラダーとキャリアパスの違い

さて、この「キャリアラダー」と非常によく似たものとして、「キャリアパス」があります。

キャリアラダーもキャリアパスも、企業内での地位を向上させるための手段である点では一致しています。しかしキャリアラダーとキャリアパスには違いがあります。

キャリアラダー

まずキャリアラダーの場合は、「専門性の習得」を主な目的とします。基本的にはキャリアラダーはどれか一つの特定の専門職にあり続けることを想定し、より深く、より多くの知識を習得していくことを目指します。

キャリアパス

対してキャリアパスの場合は、「企業内でのポジションの向上」を主な目的としています。そのため、キャリアパスの場合はどちらかといえばコミュニケーション能力や、人を管理する能力の向上が求められます。

またキャリアパスの場合、今まで就いていた専門職を離れ、ほかの職種を務めることも視野に入ってきます。

専門分野でのキャリアラダー、全般的なキャリアパス

現在ではキャリアラダーもキャリアパスもさまざまな職種・業界・企業に採用されるようになった考え方です。

ただそれでも、キャリアラダーは専門職としての性質が強い医療系・福祉系などにより適したものであり、キャリアパスは職種の変更も含まれる全般的で普遍的な概念だといえるでしょう。

キャリアラダーであれキャリアパスであれ、それを示す企業側は、従業員が戸惑わずに済むように明確な指標を打ち出す必要があります。

「このような目標を掲げ、このようなスキルを持ち、このような仕事をしてほしい」、「〇〇の資格を取り、××の経験を踏めば、部長職に昇進できる」などのような明示を行うことで、従業員は「次のステップのためにクリアするべき目標」を見定めてそれにまい進できるようになるからです。
 

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キャリアラダーのもたらすメリット4つ

企業側がキャリアラダーを提示することには、いくつかのメリットがあります。

  1. 従業員が自身の課題感を把握できる

  2. 目的意識を持って取り組みやすくなる

  3. 公平性と客観性を保ちやすくなる

  4. 従業員のモチベーションアップにつながる

それぞれ細かく見ていきましょう。

従業員が自身の課題感を把握できる

企業側がキャリアラダーを提示することで、従業員自身が課題感を把握することにつながります。

たとえば、不足しているスキルがある場合は、目標をクリアするために、主体的に行動することができるでしょう。

また、段階的にキャリアアップをしていく上では、習得すべき能力が明示されることにより、行動計画を立てやすくなります。

目的意識を持って取り組みやすくなる

キャリアラダーを提示することで、従業員は明確な目的意識を持ちやすくなります。

人間は、明確な「ゴール」がない状態で努力し続けることは難しいものです。評価軸が明確に示されていないと、「何をどう努力してよいかわからない」「何をしたら次のステップにつながるかわからない」という状況に陥ります。

このような状況では、ステップアップのための目的意識が持ちにくくなり、「この資格を取っておくと有利になる」といわれても、勉強に身が入らないということも多いでしょう。

しかしキャリアラダーとして、「〇〇の資格をとれば、次のステップにつながる」などのように明確な目標を提示すれば、従業員が学ぶことに意欲的になり、仕事に対しても目的意識を抱いて取り組みやすくなります。

公平性と客観性を保ちやすい

キャリアラダーは従業員のステップアップのために役立つものですが、企業側にとっても大きなメリットがあります。

指標化と公平な評価の確保

上司や、人事権を持つ人は、部下や従業員の働きを見て、彼らの待遇を決めていくことになります。

この人事査定においては、従業員の能力や働き方を、数値化する必要がありますが、この「数値化」には、公平性が求められます。

しかし、指標が決まっていなければ、評価にぶれが生じる可能性があります。

また仮に、人事査定を行う人が公平な視点で評価をしていたとしても、低い評価をつけられた従業員は「これは正当な評価ではない、人事の私情が入っているのではないか」と考えるケースもあるでしょう。

このような状況に陥ることを避けるためにも、キャリアラダーは役に立ちます。

透明性のある人事評価が可能に

キャリアラダーは、その企業に勤める人に対して、「クリアするべき目標や、取得するべき資格(能力)、果たすべき仕事内容」を示すものです。

つまりこれを満たしていれば人事評価が高くなり、満たしていなければ低くなると、わかりやすく提示できる手段でもあります。

人事査定をする人は、このキャリアラダーを基準に評価を行えば迷うことがありませんし、人事査定を受ける側にとっても、理解しやすいといえるでしょう。

つまり、公平性と客観性が保ちやすく、透明性も高く、だれもが納得しやすい人事評価ができるようになるのです。

従業員のモチベーションアップにつながる

上でも少し触れましたが、キャリアラダーは従業員のモチベーションをアップさせる方法のうちのひとつです。

自分がクリアすべき目標は何かを知ることで、人はその目標に到達するための手段を積極的に考えるようになります。

従業員のキャリア自律形成に役立つ

求められる資格やスキルが明確になれば、それを取得するための勉強を自主的に行えるようになるでしょう。

求められる仕事が示されれば、その仕事をこなすための時間配分を自ら考えたり、その仕事をこなすために必要な要素を考えたりするようになります。

このときのポイントは、「自分で考える」という工程がさしはさまれることです。

自分自身の頭で考え、キャリアラダーを意識し、意欲的に仕事に取り組んでいくことは、従業員のモチベーションの向上につながります。

そしてこのような「自分自身で考える力を持つ従業員」「仕事や出世、スキルの習得へのモチベーションが高い従業員」は、企業に対して大きなプラスをもたらします。

まとめ

キャリアラダーは、「キャリアのはしご」を意味する言葉です。

従業員のモチベーションアップにつながったり、評価軸を明確にしたり、従業員に目的意識を抱かせたり、従業員自身の客観視につながる非常に有用なものといえるでしょう。

Q&A

キャリアラダーとは?
キャリアラダーとは、従業員がキャリアアップのために、スキルを習得していく階層構造を示す枠組みです。
キャリアラダーのメリットは?
企業がキャリアラダーを提示することのメリットには、
・従業員が自分の課題を把握できる
・目的意識を持って取り組める
・公平性と客観性を保てる
・従業員のモチベーションアップにつながる
が挙げられます。
キャリアラダーを提示するときの気を付けるべき点とは
「ステップを細かくする」「頻繁な変更は控える」「取り組もうとする人にわかりやすい提示を行う」
キャリアラダーは、無計画に設定すればよいというものではありません。キャリアラダーを設定した場合は、分かりやすいかたちで提示することも重要です。
キャリアラダーの実施例を知りたい
株式会社メルカリが、キャリアラダーを取り入れています。エンジニア組織に対してキャリアラダーを提示しているのですが、その全文がインターネットで公開されています。またメルカリは、顧客にとってより良いサービスを提供するために、「エンジニアがそれぞれ個別に持つ長所はもちろん、短所も歓迎する」として、多様性を受け入れる姿勢をとっています。

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