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キャリア - 2023.08.11公開

メンター・メンティ―とは? 役割や事例を紹介

「メンター」「メンティー」「メンター制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「メンター制度」は、近年多くの企業が導入しており、「メンター」と「メンティー」というポジション間でコミュニケーションを取ることで、人材育成に貢献しています。

本記事では、「メンター」「メンティー」とはそれぞれどういう意味なのか、注目されるようになった背景とメリットは何なのか、メンター制度の導入のポイントや、具体的な導入事例をご紹介します。

メンターとメンティ―とは何か

メンター・メンティーとは

メンター

「メンター(Mentor)」は、日本語で「指導者」「助言者」と訳される言葉です。ビジネスシーンでは、新入社員や若手社員の育成や、精神的なサポートを行う先輩社員を指します。

メンティー

「メンティー(Mentee)」は、メンターから指導やサポートを受ける立場の社員を指します。メンターがメンティーに行う指導や支援、サポートは「メンタリング(Mentoring)」と呼ばれます。

この関係と役割を「メンター制度」「メンタリング・マネジメント」として導入する企業も増えてきています。

OJT制度やマネジメント、コーチングとの違い

新入社員や若手社員の育成をサポートする仕組みとして、OJTやマネジメント、コーチングといった言葉を想像される方も多いのではないでしょうか。

メンタリングとの違いについて、それぞれ説明します。

マネジメントとの違い

「マネジメント(Management)」は、経営や管理の意味を持つ言葉です。マネジメントと聞くと、「人を管理すること」とイメージされる方も多いと思います。マネジメントは、組織のために、人、モノ、金、など、あらゆる資源を管理する意味を持っており、人材マネジメントは要素の一部です。

メンタリングによって個人の可能性を広げるアプローチを「メンタリング・マネジメント」と呼んだり、制度として導入するケースもあるので、ビジネス上でのメンタリングはマネジメントの一種と捉えることもできます。

コーチングとの違い

一般的にコーチングは、コーチングを受ける人に答えを与えるのではなく、対話を繰り返す中で本人に気づきを与える手法です。また、業務目標達成やプロジェクトの成功など、具体的なテーマに絞って行われます。

メンタリングの場合は、相談する内容や支援する範囲が広いのが特徴です。メンターが人生の先輩として、自身の経験や知見を共有します。相談者の中に気づきや答えが現れるのを待つコーチングとは異なる手法です。

また、コーチングは社外の専門家が行う場合が多いのに対し、メンタリングは社内のメンターが行うのも異なる点です。

なぜメンターが必要とされているのか

先に、メンターの意味や役割について説明しました。OJTなど、新入社員や若手社員をサポートする様々な制度がある中で、なぜメンターが必要とされているのでしょうか。

メンターが注目される背景

終身雇用制度の崩壊や少子高齢化による人口減少と労働力不足の問題、労働時間の短縮・改善など、近年は雇用環境の変化が激しい時代です。

中でも、社員の受け入れや育成に関して様々な課題が生じており、メンター制度を導入することで、社員のエンゲージメントや定着率の向上が期待されているのです。

メンタルケアにもつながる

メンターは新入社員や若手社員であるメンティーをサポートし、スキル向上や職業成長を支援します。

直属の上司や先輩には相談し難い悩みなど、メンティーが抱える会社や仕事に対する不安をメンターに話せる環境にあることで、「誰にも相談できない」という孤独感を軽減することにつながります。

メンター制度のメリット

先に挙げたメンターの役割が発揮されると、どういったメリットがあるのか解説します。

人材育成のサポート

メンターのサポートによって、メンティーが職場や業務に対する不満や不安を抱えづらくなる効果が期待できます。

不満や不安が少ないと、どういったふうに働きたいか、挑戦したいことは何かといった、ポジティブな思考になりやすく、積極的に業務に取り組む、成長のために努力するといった行動を取りやすくなります。

メンタリングは人材育成にもつながるのです。

社内にロールモデルを見つけやすくなる

メンティーはメンターと関わることで、「こういう風に働きたい」などのロールモデルを手にすることができます。

身近な環境に行動規範となる人物がいることで、メンティーのキャリア形成によい影響を与えることが期待できます。

メンターの成長

メンティーのサポートを通じて、メンター自身も成長することができます。

メンティーに対する接し方、自身の経験を棚卸ししてみる、どう伝えるか考える。こういった経験は、メンタリングだけではなく様々な機会で活かされるはずです。

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メンター制度を導入するためのポイント

メンター制度を導入する際のポイントをご紹介します。

良いメンターとはどんな人なのかなど、メンター制度を導入する際のポイントをご紹介します。注意点も紹介しますので、しっかり押さえて、効果的に活用しましょう。

メンターに適しているのはこんな人

メンターの選定は非常に重要なポイントです。メンターに向いている人として、以下のようなことが挙げられます。

傾聴力とコミュニケーション能力を持っている

傾聴力とは、相手の話に対して耳を傾け、理解しようとする能力を指します。メンターは相手の課題や目標について話を聞き、深く理解する必要があります。傾聴力を持つことで、相手の気持ちやニーズを把握し、適切なアドバイスや支援が期待できるのです。

また、コミュニケーション能力もメンターにとって重要なスキルと言えるでしょう。メンターは相手と効果的にコミュニケーションを取り、意見や情報を明確に伝える必要があります。良好なコミュニケーションは信頼関係の構築や円滑な情報の共有につながります。

メンターという役割を通して、こういった力が高まるということもあります。

業務経験・社内知識を持っている

メンターとメンティーは業務上の先輩後輩ではない場合が一般的ですが、仕事の相談をされた際に状況を把握しながら、経験や知見を伝えることができる関係がベストです。そのため、ある程度の業務経験を持ち、社内について幅広い知識を持っている社員がメンターに向いてるといえます。

また、メンター制度はメンティーのキャリア形成支援が目的でもあるため、キャリアプランのアドバイスを行える知識も重要です。

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メンティーと業務上で直接の上下関係・利害関係がない

「業務に支障が出るかもしれないから相談しづらい」「チームの人間関係に影響するのではないか」などの不安から、メンティーが相談できないという状況にならぬよう、メンターは別チームや他部署の先輩社員といった、業務上の利害関係がない相手がベストといえます。

メンター制度導入時の注意

組織全体で取り組みを推進する

メンター制度を導入したままで終わるのではなく、経営層や人事部門、各現場のマネージャーまで、制度の目的を理解できるようにすることが重要です。

具体的な実施方法を定める、進捗報告や記録をとるためのフォーマットなどを用意するといった工夫が必要です。

メンター制度は3か月から1年、長期では3年の実施期間を設ける企業もあるため、メンターとメンティー双方の直属の上司や組織によるフォローアップ体制も必要不可欠でしょう。

研修などを行い、メンターの育成を図る

メンター制度やメンタリングの理解を組織全体で深めるために、メンタリングの基礎からキャリア形成に関する知識、異なる意見や視点に対応できるようにダイバーシティに関する研修などを積極的に行うことが有効です。

メンター社員のケアも重要

人事部門やマネジメント側がメンター社員への影響を認識し、バランスを考慮する必要があります。メンターとしての役割や負担、そして制度への取り組み度合などを理解し評価をすることで、メンターのモチベーション維持にもつながるでしょう。

評価されることによって、メンターは自身の負担とやりがいのバランスを取りながら、効果的にメンティーを支援することができるのです。

メンター・メンティ―の導入事例

近年のメンター制度の導入事例をご紹介します。

JAXA 女性躍進の鍵にもなるメンター制度

理系学生が入社するケースが多く男性比率の高かったJAXA(宇宙航空研究開発機構)では、年々女性比率が高まっており、2021年度の新入社員は女性が半数を上回っています。

入社後の女性社員が能力を発揮できる職場環境を作り上げる上で、メンター制度が非常に有効であるとされています。

同性の先輩メンターとの関係を通じて、仕事とプライベートの両立について相談できることは、具体的な情報交換や問題解決のヒントを得るだけではなく、メンターとの対話を通じて貴重なアドバイスを受けることで、メンティーの自信や成長にもつながっているのです。

メンター制度は、女性社員の能力開発とキャリア進展を促進し、職場環境の多様性と包括性を強化するために重要なツールとなっていると言えるでしょう。

「逆メンター」を導入した三菱マテリアル

一般的にメンタリングは先輩が後輩をサポートするものですが、近年ではその立場を逆転させた「リバースメンタリング」も注目されています。

三菱マテリアル株式会社は、2021年度にリバースメンタリングを本格導入しました。役員をメンティーとし、20〜30代の若手社員がメンターとなって、メンタリングを実施しています。

メンティーが知りたいこと、メンターが伝えたいこと、先端技術、働く上での価値観、多文化共生など幅広いテーマについて話し合っています。

リバースメンタリングを通して、メンティーである役員側は、若手社員の考え方を知ることができたと報告しています。

また、メンターである若手社員側は、経営層が何を考えているのか聞けて仕事意欲が高まったということやメンター同士の交流にもつながったと報告しています。

社内で立場の異なる者同士が、お互いの知見を共有し、さらなる成長につなげるという目的のメンタリングも増えています。

まとめ

このページでは、メンター・メンティーとは何か、注目されるようになった背景とメリット、メンター制度の導入のポイントや、具体的な導入事例をまとめました。

仕事を取り巻く変化が激しい現代、メンター制度を導入することで社員を多面的にサポートし、組織に貢献する人材育成につなげることができます。

本記事が、皆様のお役になれましたら幸いです。

Q&A

メンター・メンティーとは何ですか?
「メンター(Mentor)」は、日本語で「指導者」「助言者」と訳される言葉です。
ビジネスシーンでは、新入社員や若手社員の手本となって仕事やキャリアなどの助言・指導を行い、成長を支援したり精神的なサポートをしたりする社員を指します「メンティー(Mentee)」は、メンターから指導やサポートを受ける立場の社員を指します
メンターに期待される役割は何ですか?
上司や直属の先輩ではカバーしづらい部分をサポートする効果が期待されています。
メンター制度を導入する場合の注意点は何ですか?
制度の目的を理解できるよう組織全体で取り組みを推進すること。研修などを行いメンターの育成を図ること、またメンター以外の従業員の理解も深めること。メンターのサポートやケアを行い、メンターとしての働きをしっかり評価する体制をつくること、などが挙げられます。
メンター制度を導入するメリットは何ですか
メンター制度を導入するメリットとして、人材育成が挙げられます。メンティーの育成やメンターの成長が期待できるため、社員エンゲージメントの向上につながります。

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