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キャリア - 2024.09.09更新 / 2024.03.28公開

越境学習とはこれまでの学習とどう違うのか? メリットや事例を紹介

人材育成のひとつとして「越境学習」に注目が集まっています。

この記事では、越境学習とは何か、注目される背景やメリット、企業導入事例やプロジェクト事例をご紹介していきます。

越境学習とは何か

越境学習とは

越境学習とは一般的に、所属する組織などの枠組みを越えて、異なる環境に身を置いて学ぶことを指します。

近年はビジネスパーソンの学びの一つとして注目されることが多い越境学習ですが、本来は年代に関わらず、越境によって ”知” を探索する行為全般を指しています。過ごし慣れている環境と、そうでない環境を行き来することによる学びとも言い換えることができます。

VUCA時代の人材育成

後ほど詳しく解説しますが、越境学習は近年注目を集めている学習方法であり、特にビジネスの領域で関心が高まっています。

日本では、経済産業省が「越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」を推進しており、企業ごとの取り組みも進んでいます。すでに、越境学習導入のメリットを表す事例も多くあり、認知度も高まっています。

越境学習とこれまでの学習の違い

越境学習とその他の学びには、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは主に企業内・ビジネスパーソンの学びにフォーカスして説明します。

これまでの日本における人材育成では、OJTや実務などの社内または部署内での学びが重視される傾向にありました。一つの領域の専門性の高さは、日本企業の強みでもあったので人材育成の方針もそちらに向くことが多かったのです。

一方で越境学習は枠組みを越え、新しい環境に身を置いて学んでいきます。自分の価値観を再認識する、内省的な学びが期待できます。同じ環境で過ごし、その環境やそこでの役割に慣れていくのではなく、越境による違和感や葛藤を経験することで、新しい知識の探求につながるのです。

では、越境学習が具体的にどのような仕組み・プロセスであるのかを次の章で詳しくみていきましょう。

越境学習の仕組み・プロセス

慣れた環境から離れる、つまり越境をすることで多角的な物の見方ができるようになり、新たな気づきも得やすくなります。

また、普段通りの状態から、新しい環境に身を置いて学習することにより、内省や発見が起こります。

そのため越境学習によって、自分自身を見つめなおす機会を得ることがで可能になるのです。

アイデンティティの見直しがその一つです。慣れた環境にいると、アイデンティティを問い直す機会は発生しづらいものです。

越境で普段と異なる経験をすることで、「自分は何者なのか」という根源的な問いが起こり、アイデンティティを自分の中で再説明していく、多元化していくということが起こります。

内省や振り返りを意味する「リフレクション」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

あわせて読みたい

「リフレクション」をサクっと解説! 進め方やポイントとは? | リカレントcounselor

 

越境学習のメリット・注意点を解説

越境学習への関心の高まりについて先にも触れました。この章では、越境学習が注目される背景や期待されているメリットについて詳しくみていきましょう。

越境学習が注目される背景

越境学習が注目される理由を一言で述べると、環境の変化への対応の必要性があります。

すでに、グローバル化による企業間競争の激化、様々な技術革新、日本においては少子高齢化による深刻な働き手不足など、大きな環境変化が生じています。

これらが経済や企業はもちろん、個人に大きな影響を与えていることも明確です。従来の人材育成、働き方では乗り切れない時代になっているといえます。

経済産業省も推進する越境学習

また、先にも紹介しましたが、経済産業省がVUCA時代を乗り切る手段の一つとして越境学習を推進しています。

VUCAとは「Volatility (変動性)・Uncertainty (不確実)・Complexity (複雑性)・Ambiguity (曖昧性)」を表す言葉で、それらが飛躍的に高まった状況が今であり、これから更に加速していくことが予想されます。予測困難な環境変化が新たに発生する可能性のある未来を生きる必要があるのです。

企業などの組織には環境変化の激しい時代を生き抜く力が求められます。それは、働き手一人ひとりの力です。

近年「キャリア自律」という言葉が重視されていることからも分かる通り、働き手個人が自身のキャリアを考え、主体的に学び、成長していくことが課題となっています。

人材のキャリア自律の促進

越境学習によって、キャリア自律が促され、企業がこれからの時代に必要な人材育成を実現し、また個人にとっては自分の価値観を大事にして生きていく力を得ることができます。

さらに、ビジネスに関わらず、そもそも越境というのは多くの人が体験している身近なものです。

例えば、インターンシップや留学などは、学生を成長させるものとしても期待されており、経験した方も多いのではないでしょうか。

その他にも、あらゆる状況や立場で越境体験をすることができます。越境学習自体は、成長や視野を広げるものとして浸透しており、その効果も身近なものであるといえます。

越境学習のメリット

人材育成・個人として成長ができる

越境学習で得られる学びは、これからの時代を生き抜くために重要なものであり、企業にとっては人材育成の有効な手段となります。働き手個人としても、自分の価値観を持ちキャリアを形成していく糧になります。

越境学習で得たノウハウが活かされる・イノベーションが生まれる

越境学習で新たな知見を得た人材が、社内に新たな知見をもたらす可能性があります。越境学習は組織から離れて行われるため、組織内にはない新しい情報が得られやすいこともポイントです。イノベーションが生まれやすくなるといえるでしょう。

越境体験者の周囲への影響

越境学習を体験していない従業員も、越境学習を体験した従業員から影響を受ける可能性があります。知識や考え方、価値観などの共有が期待できます。

越境学習を行う際の注意点

越境学習には様々なメリットがありますが、実施する際は注意しなければいけないこともあります。

企業などの組織で行う場合は、施策として継続的に行うことが重要です。また、次に挙げる、それぞれの段階の意味や目的を明確にして取り組むことが必要となります。

越境先の選定、マッチング

目的によってマッチする越境先は異なります。期間などもあわせて選定します。

越境学習中のストレスや成長管理

越境学習の実施中のストレスや成長管理を行っていくことも重要です。メンタルヘルスにも気を配った上で、越境学習の効果が出ているかを併せて測定していくとよいでしょう。

越境学習後の評価と具体的なアクションへつなげる目標設定

越境学習実施後は、どのような結果が得られたか評価を行いましょう。また、越境学習で得たものを、今後どのように活かしていくか、アクションプランを設定することも重要です。施策の効果が反映されやすくなります。

【事例紹介】様々な現場で導入される越境学習

最後に、越境学習の様々な事例をご紹介します。

越境学習を導入した企業の例

金融業界で進む越境学習、野村グループの事例

野村グループでは、スタートアップ企業などへ出向させ、幹部候補として育成する制度を設けています。

これからの時代に必要な人材育成が社内だけでは難しくなっていることや、社外のリソースを活用する文化が定着しつつあることから、出向先には他業種の企業も入っています。

金融業界自体が、ITなどの技術革新の影響を大きく受けており、対応の仕方もこれまでとは異なってきていることが背景にあります。

社会課題の現場での越境学習、NECグループの事例

NECグループは、「社会課題体感型人材開発プログラム」として、インドなど社会課題を持つ国際地域での越境学習を行っています。

大企業だからこそ業務や部署構造が決まってしまい、視野が狭くなっていることを自社課題とし、自社の存在意義である「社会価値の創造」を実現していくために越境学習が必要であるとしました。

「社会と社会課題を深く理解した人材」 「社会価値創造の原体験を持った人材」が増えることで、社会価値を創造する企業として成長することを目指しています。

越境学習のプログラム事例

越境学習の目的によって、プログラムの内容は異なってきます。経済産業省のホームページでは、対象者の年代や立場ごとに様々なプログラムが掲載されていますので、いくつかご紹介します。
越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」(経済産業省:未来の教室)

【若手 / 中堅層向け】留職プログラム(主催:NPO法人クロスフィールズ)

実施方法

リアルで実施

目的/効果

リーダーシップ育成

期間

3~12ヶ月程度

 
ビジネスパーソンが新興国のNPOや社会的企業に飛び込み、現地の社会課題の解決に挑むプログラム。

参加者は普段とは異なる環境に飛び込み、志の高い現地のリーダーと課題解決に取り組みます。その過程では自ら解決策を模索し、周囲を巻き込んで困難を乗り越えることが求められます。

こうしたタフな環境での原体験を通じてリーダーシップを磨いていきます。これまで新興国を舞台にプログラムを展開し、200人以上が参加してきました。現在は日本国内の団体へも派遣しています。

留職プログラム(主催:NPO法人クロスフィールズ)

【係長/主任層】フィールドアカデミー(主催:株式会社Ridilover)

実施方法

オンライン/リアル併用

目的/効果

人材育成

期間

3か月間(延べ8日程度)

 
慣れ親しんだ会社の外に飛び出して、リアルな社会課題にゼロから挑む、越境型・多業種合同型の人材育成プログラムです。

フィールドアカデミー(主催:株式会社Ridilover)

この他にも、様々な越境学習の方法があります。興味のある方は企業内の制度や、気になる外部機関のプロジェクトをチェックしてみてください。

はじめに述べた通り、越境学習とは普段の環境を離れて学ぶことですが、ごく身近なことからチャレンジすることも可能です。

まとめ

本記事では、越境学習とは何か、注目される背景やメリット、企業導入事例やプロジェクト事例をご紹介しました。

これからの時代を生き抜くためには、組織も個人も価値観を問い直す力、あらためていく力が必要といえます。

越境学習で得た力は、より自分らしく生きていく糧になりますので、ぜひ挑戦してみてください。

Q&A

越境学習とは何ですか?
越境学習とは一般的に、所属する組織などの枠組みを越えて、異なる場所に身を置いて学ぶことです。また、年代や属性に関わらず、越境によって ”知” を探索する行為全般が越境学習といえます。過ごし慣れている環境と、そうでない環境を行き来することによる学びとも言い換えることができます。
越境学習はなぜ注目されているのですか?
近年は環境変化が激しく、キャリア自律などによって対応力を高める必要があり、越境学習が効果的であるとされているからです。
越境学習のメリットは何ですか?
組織目線だと人材・個人目線だと自身が成長できること、越境学習で得た知見が活かされ良い変化を促すこと、越境学習の体験者が周囲にも良い影響を与えること、などがあります。
越境学習を行う際の注意点はありますか?
越境学習の候補者選び、越境先の選定、越境学習中のストレスや成長管理、越境学習後の評価と具体的なアクションへつなげる目標設定、などが気をつける点として挙げられます。

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