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キャリアコンサルタント資格 - 2023.09.11公開

エンパワーメントの意味と具体例、そのメリット

組織をより成長させるための考え方として、「エンパワーメント」と呼ばれるものがあります。このページでは「エンパワーメント」の意味や具体例、メリットなどを紹介していきます。

エンパワーメントとは

エンパワーメントを直訳すると、「権限付与」「権限を与えること」という意味になります。

ただ、エンパワーメントという言葉は単に「権限を与えること」という意味だけではなく、「(従業員に)自信を与え、その能力を引き出し、自発的に行動できるようにすること」の意味も持ちます。

エンパワーメントの歴史

エンパワーメントの考え方が注目されるようになったのは、20世紀の後半頃だといわれています。つまり、比較的新しい考え方なのです。

20世紀の後半から、アメリカではフェミニズムの考え方が広まり、黒人差別に対抗するための公民権運動が盛んになりました。世界が「自由と公平」へと変わっていこうとするなかで、「社会的な地位の向上」などといった意味でエンパワーメントが使われるようになったのです。

ビジネスシーンでの「エンパワーメント」

そしてその後、ビジネスの場でも、「一人ひとりが自発的に動けるようにすること」「能力を引き出すための働きかけを行うこと」「一人ひとりが仕事において権限を持つこと」という意味で注目が集まるようになりました。

なお、「エンパワーメント」の考え方は、さまざまな業界・さまざまな業種・さまざまな企業で取り入れられています。

エンパワーメントのメリットとは

エンパワーメントには数多くのメリットがあります。なおエンパワーメントは、「企業側からの働きかけ」を必須とするものであるため、ここではエンパワーメントのメリットを企業側からの視点で解説していきます。

管理職の負担を減らせる

管理職は、その名前の通り「部下を管理する役目」を持ちます。また、プロジェクトの決定権などを持つ立場でもあります。

精神的負担の軽減にもつながる

あまりにも多くの部下を抱えていたり、決めなければならないことが多すぎたりすると、管理職の負担が大きくなってしまいます。その結果として、長時間の時間外労働や、大きな精神的な負荷が発生するといったことが起こりえます。

しかしエンパワーメントによって、部下一人ひとりに決定権を持たせれば、このような管理職の負担は大きく軽減されます

事業拡大の速度を速めることができる

業種にもよりますが、現在のビジネスの場でのスピードは昔に比べてとてもに早くなっています。なかには、「1年前の情報はもう『使えない情報』になっている」という業種・業界もあることでしょう。

このように、日々めまぐるしく急速なスピードで状況が移り変わっていく現在においては、1日の遅れや足踏みが、事業拡大の妨げになることすらあります。

「1日の遅れ」を回避する

「1日の遅れ」は、「何かの決定をするときには、必ず上層部を通さなければならない」というルールのある組織などでは度々発生します。その「上層部」が何段階にも分かれているのであれば、さらにスピードは遅くなるでしょう。

しかし従業員が自らの判断である程度意思決定ができる状況ならば、このような「1日の遅れ」は大幅に短縮されます。その結果として、事業拡大がスピーディーに進みやすくなります。

従業員のモチベーションアップが期待できる

100人いればその考え方は100通りあるのが当然であり、それぞれに「何をモチベーションとするか」は異なります。

やりがいにもつながる

多くの人は、「信頼されていること」「やりがいのある仕事を任せられていること」で、仕事のモチベーションを保ちやすくなります。

また、「信頼されていること」を実際に「権限委譲」というかたちで示されることで、より情熱をもって仕事に取り組めるようになる人も多いことでしょう。

モチベーションが高い状態にある従業員は、その会社で長く働きたいと願うため、離職する確率も低くなります。離職率を低く保つことで、企業側も安定した人材運用がしやすくなります。

従業員の個々の能力のレベルを上げられる

エンパワーメントの実践は、従業員一人ひとりの能力アップにもつながります。

定型業務だけをしているだけでは分からなかった個々の得意分野を発掘したり、新しいアイデアを出すための道筋を発見したりすることができるからです。

従業員の個々の能力が上がり、それを業務に反映させることができれば、業務はより効率よく進んでいきます。

新しい分野の仕事の獲得につながることも

また、個々の能力を最大限に発揮できる働き方を実践していくなかで、今まで手掛けてこなかった新しい分野の仕事の獲得につながったり、今までとは異なる新しい方法での仕事の進め方が可能になったりするかもしれません。

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【企業の取り組み】エンパワーメントを成功させるための5つのポイント

このように、エンパワーメントの実践には多くのメリットがあります。では、このようなメリットを得るためには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。

ここからは、エンパワーメント実践のための具体的な5つの方法について解説していきます。

早い段階で非定型業務に就かせる

仕事には、「定型業務」と「非定型業務」の2つがあります。定型業務とは、その名前の通り、ルーティン化している業務をいいます。対して非定型業務とは、定められたやり方がなく、流動的な業務をいいます。

「非定型業務」はリーダーシップ能力向上が期待できる

定型業務も非定型業務も、両方とも非常に重要なものです。また、定型業務は新入社員でも取り組みやすく、これをこなすことによって業務自体に慣れていけるというメリットもあります。

ただ、エンパワーメントを意識するのであれば、早い段階で非定型業務に就かせることも重要です。非定型業務は、仕事への理解と勉強が必要となりますが、これに就かせることによって、リーダーシップを取るための能力も向上します。

なんらかの決裁権を持たせる

「権限付与」と訳されることからも分かる通り、エンパワーメントには「従業員が権限を持つ」という意味が含まれています。

実力に見合った定権や決裁権

権限が与えられ、決裁権を与えられれば、人はそれを行使するためにさまざまな勉強を行います。また、これを与えられることによって自信がつき、仕事に対してのやりがいを得ることができるようになるでしょう。

もちろん、経験が浅い人に大きすぎる決定権・決裁権を与えることは危険です。そのため、まずはその人に見合った、あるいはその人の現在の実力から見て、少し背伸びをすれば届く程度の決定権・決裁権を与えるようにするとよいでしょう。

「小さなものであっても、決定権・決裁権をもたせること」自体が非常に重要なのです。

技術や資格の習得のための投資を行う

エンパワーメントを成功させるためには、「適切な投資」を行うことも重要です。

たとえば、従業員が何かの技術を学びたいと申し出てきた場合には、それを積極的に応援し、教えるために人員と時間を割きましょう。

投資で人材が育つ

資格習得のための支援金を出したり、資格を取得できたら報奨金を出したりといった方法も有用です。

このような「技術や資格の習得のための投資」を行うことで、企業にとって有用性の高い人材を育てることができます。

またこれらの投資は、従業員に「新しい資格取得に取り組もう」「周りも応援してくれているのだから、がんばろう」という自発的で前向きな気持ちを抱かせることにもつながります。

「放置」ではなく、適切な指導と評価を行う

エンパワーメントは「従業員一人ひとりになんらかの決定権を与え、自発的に行動できるようにすること」を意味する言葉ですが、これは「放置」とイコールではありません。

「権限を与えたのだから、それをうまく使えるかは部下次第」「決定権を持たせたのだから、失敗してもその責任を負うのは部下」というスタンスを企業側がとってしまうと、失敗したときに従業員は非常に大きい精神的なストレスを抱えることになります。

また、このような考えが行き過ぎてしまうと、「失敗するのは怖いから、安全な方法以外はとらないでおこう」と、従業員が守りの姿勢に入ってしまう可能性が高くなります。

こうなってしまうと、エンパワーメントにおけるメリットの「スピーディーな事業拡大」「従業員のモチベーションの向上」も難しくなってしまいます。

適切な判断が重要

企業側は従業員一人ひとりの決断によってもたらされた結果を、冷静に見て、適切に判断しなければなりません。

その判断が良いものであったのならば、プラスの評価をはっきりと可視化できるかたちでその従業員に伝えます。

またそうではなかった場合でも、冷静に観察して問題の洗い出しを行い、冷静に「何が悪かったのか」「次にどうすればいいのか」を一緒に考えて、アドバイスをしていく姿勢を見せる必要があります。

ツールを活用する

エンパワーメントを成功させるためには、「ツール」を活用することも重要です。適切で便利なツールを使うことで、業務は進めやすくなりますし、ミスも少なくなります。

「どのようなツールを導入すればよいか」は業務内容によって異なりますが、タスクを管理するためのツールやレギュレーション作成・管理ツールなどは、どの業務や業種であっても有用なものでしょう。

なお、ツールを導入した場合は、マニュアルの共有もしっかり行うようにしましょう。

まとめ

「個人の能力を引き出すこと」「個人が自信を持ち、得意分野を発掘していくこと」を目指し、従業員それぞれに決定権を与えるエンパワーメントの考え方は、企業にとって大きなメリットを持つものです。

エンパワーメントを実践することで、事業の拡大速度が非常に早まりますし、管理職の負担も軽減されます。また、従業員のモチベーションが保ちやすくなるため離職率の低下や、個々の能力を上昇させられることによる業務の効率化も望めます。

エンパワーメントを実践するためには、「早いうちから非定型業務に就かせる」「決定権を与える」「技術や資格習得のための支援を行う」「『放置』はしない」「ツールを利用する」などの取り組みが必要です。

このような取り組みをするためには費用もかかりますし、一時的に失敗もありえます。しかし中長期的な目線で企業の成長を目指そうとしたとき、エンパワーメントの考え方は、非常に有意義なものとなるでしょう。

Q&A

エンパワーメントとは?
エンパワーメントを直訳すると、「権限を与えること」という意味になります。 ただ、エンパワーメントという言葉は単に「権限を与えること」という意味だけではなく、「(従業員に)自信を与え、その能力を引き出し、自発的に行動できるようにすること」の意味も持ちます。
エンパワーメントを行うメリットは?
企業においては、管理職の負担を減らせ、事業拡大の速度を速められる、従業員のモチベーションをアップさせられるといったメリットがあります。
エンパワーメントにデメリットはあるか
エンパワーメントを導入することで、やり慣れていない仕事を行ったり、経験不足であることが原因で、一時的に「失敗」が増える可能性はあります。そのため、エンパワーメントを取り入れる場合は、これらの「失敗」が起こることを前提としたうえで、対策も講じておく必要があります。
エンパワーメントを成功させた具体的な企業は?
有名なホテルである「リッツ・カールトン」は、従業員に対して1日に2000ドルまでの自己決裁権を与えたことで有名になりました。「利用するお客様にとって、最良のサービスを」という考えの下で個々の従業員が自由に動けるようにしたことで、非常に高い顧客満足度を獲得するにいたりました。
また、日本では、星野リゾートがとくに有名です。星野リゾートでは、「立候補者のなかから管理職を選ぶ」というスタイルを20年以上にわたって取り続けています。

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