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CAREER - 2020.02.24

キャリア支援で役立つ 理論家シリーズ【第3回】「進路選択ツール」を開発した「職業選択理論」の提唱者 「ジョン・L・ホランド」

高校や大学などの教育課程の中で、多くの方が進路について向き合い、キャリアカウンセリングを受けたり、職業研究をしたりしていることでしょう。価値観が多様化している今、学生に限らず、転職・再就職などでもキャリアカウンセリングは活用されていますが、今日のキャリアカウンセリングにはさまざまな理論が土台となっています。
この「理論家シリーズ」では、現代のキャリアカウンセリングにおいて、ベースとなっている理論とその提唱者について探求していきます。

第3回目のこのページでは、進路選択ツールの開発や、六角形で表現されるパーソナリティタイプの理論としても著名な「ジョン・L・ホランド」を紹介します。

ジョン・L・ホランドとは

ジョン・L・ホランド(1919~2008) はアメリカの心理学者です。第二次世界大戦時では陸軍に従軍し、面接官として兵士を適材適所に配置する任に当たっていました。その時の経験から、「一人ひとりの職業経験にはたくさんの規則性がある」「規則性はタイプ別に分類できる」と推察。この考えは後に「RIASEC」「ホランドタイプ 」などと呼ばれる6類型のパーソナリティタイプの提唱につながっています。

適職探しを理論的にまとめる

ホランドは、戦後も復員兵病院などで職業カウンセラー業に携わりながらリサーチを重ねます。そして、ホランドの理論として有名となる「職業選択理論」を確立していきました。現在の適職適性診断などで使われている職業レディネス・テストやVPI職業興味検査はこの理論に基づいているので、ホランドの考えが現代のキャリアカウンセリングにおいて重要な位置にあるのかを、理解いただけたのではないでしょう。

「職業選択理論」とは

それでは、ホランドが「職業選択理論」を完成させるまでを紐解いていきましょう。

ホランドはリサーチの中で、「1人の人間と家庭や学校、友人といった環境との関わりが相互に作用し合い、その人間の価値観や世界観の形成に影響する」と考えました。ここでいう「1人の人間」とは持って生まれた遺伝子的な要因により、興味・関心の範囲や方向性、行動の選択をいいます。興味・関心に従って選択した行動を周囲の人に褒められれば、その興味・関心は強まり、得意分野となっていきます。一方で貶されたり、罰せられたりすれば、その興味・関心は失われて、逆に苦手な分野となり得るでしょう。
つまり、周囲が何をどのように褒めるのか、罰するのかによって、興味・関心の方向性が変わる可能性もあるのです。このように幼い頃は家庭、成長につれて学校や友人との関わり、社会などの集団の中で常に「1人の人間」と「環境」が作用し合って、その人特有のパーソナリティとなっていきます。

個性から適材適所を考える

ホランドはここからさらに、特有のパーソナリティが程度の差こそあれ、いくつかのパターンに分類できるとし、個人のパーソナリティを6タイプに分類しました。
そして、それぞれのパーソナリティタイプに属する人々は、似たような系統の職業に就いていることから、世の中に存在するあらゆる職業を体系的に整理し、それぞれのパーソナリティタイプを調べれば、適職を選択できると考えたのです。

6つのパーソナリティタイプの特徴

では、分類された6つのパーソナリティタイプの特徴をみていきましょう。
 

(1)現実的(Realistic)
明確で秩序的、組織的な操作や体系化された行動を好む傾向にあります。
道具、モノ、機械、動物などを扱うことが好き
手作業、農作業、機械作業、組み立てや修理などの作業が得意

 

(2)研究的(Investigative)
事象の観察、言語的記述、定型的研究、創造的な研究活動を好む傾向にあります。
好奇心が強くて、学術的探究が好き
生物学や物理学、数学や科学、医学関係に興味や関心がある

 

(3)芸術的(Artistic)
繊細で感受性が高く、独創的で発想が豊かで自由な活動を好む傾向にあります。
言語、美術、音楽、演劇などが好き
慣例にとらわれず、創造的な才能を活かせる職業に関心がある

 

(4)社会的(Social)
社会的活動に熱心で、対人関係を大切にし友好的。コミュニケーション能力が高い傾向があります。
人に伝えたり、人に教えたり、人を援助する活動が好き
教育関係の仕事、カウンセリング、看護、保育など人に接する仕事に関心がある。

 

(5)企業的(Enterprising)
リーダーシップをとり、目標達成などのために他者との交渉を伴う活動を好む傾向にあります。
リーダーシップ、説得力など人と仕事をする際に必要とされるスキルを伸ばす活動が好き。
外交的、精力的で、人の管理、販売、営業などに関する職業に関心がある。

 

(6)慣習的(Conventional)
情報を系統的、秩序的、体系的に扱うために必要な活動を好む傾向にあります。
定型的や規則性に従う、反復性の高い仕事が好き。
データ処理、管理、ファイリング、情報処理機器の操作などを行う仕事に関心がある。

 
なお、先述の「RIASEC」は下の各パーソナリティタイプの頭文字から由来しています。

パーソナリティと適職を教えてくれる「スリーレターコード 」

さて、私たちは誰しもこの6つのパーソナルタイプを複合的に持っているものです。どれかのタイプが突出していたとしても、他のタイプも少なからず持ち合わせています。
よりパーソナリティを解するには、その人物が特に得意としていること、興味・関心をもっている上位3つのパーソナリティタイプを最も値が高いものから順に並べていく方法があります。
例えば、1番高いものは「現実的」、2番目が「芸術的」、3番目が「企業的」というように並べていくのです。そしてその頭文字を並べたものが、スリーレターコードと呼ばれるものです。この方の場合は「RAE」となります。
人と環境の相互作用によってパーソナリティ(個性)は変わる可能性がありますから、3つのパーソナリティタイプの組み合わせは、同じ方でも多様になることもあります。

ここで大切なのは、職業にも6つのパーソナリティタイプが当てはまり、職業によっても多様なスリーレターコードの組み合わせが存在するということ。個人のスリーレターコードと一致したスリーレターコードの職業が、その人に合った職業になるかもしれません。その可能性をキャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーと一緒に考えていきます。

6つのパーソナリティタイプの関連性

しかしながら、スリーレターコードのみに頼って短絡的に職業を決めればよいというものでもありません。6類のパーソナリティタイプを六角形に配置することによってタイプの関連性を探ることができますが、六角形モデルに表される値の分布によっては注意が必要だからです。

(1)から(6)の順番に六角形の頂点にそれぞれ配置すると、隣り合ったタイプは親和性が高いということがわかります。例えば、「現実的」は隣り合った「研究的」「慣習的」との親和性につながる一面があるともいえるのです。その一方で、対角線上に位置するものは相反する性質をもつことになります。「現実的」は「社会的」とは相反する性質と考えられます。

個人が複合的に持ち合わせているパーソナリティタイプを六角形のモデルと照らし合わせてみて、特定のタイプが高く、その他は低いというような場合は「分化」していると考えられます。また、特定のタイプとその両隣が比較的高く、対角線上のタイプが低い場合は「一貫性」が高いとみてとれます。

この「分化」と「一貫性」は、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーにとって、着目しておきたいことの一つになるので、覚えておきましょう。

「職業選択理論」を通じてキャリアカウンセリングを掘り下げよう

ホランドの理論はキャリアカウンセリングの中でも、進路相談や職業選択そのものに関わる重要なものです。六角形モデルを基にわかりやすく体系化されていますが、同時に「分化」と「一貫性」の視点から、その人のパーソナリティの発達の程度を見極める基準とすることもできます。

もし、どの類型にもあまり差が見られないとき、その人はまだパーソナリティの発達段階にあるとも考えられるので、六角形モデルの分布状況に合わせて、学びや余暇の楽しみ方を提案するといった手助けが必要な場合もあります。

対角線上にあるタイプが共に高い値を示した場合は「一貫性」が低いとみられ、これまでの活動や経験を見直し、クライエントの興味・関心がどちらに向いているのか、どのように能力を引き出せばよいのかをより深く掘り下げていく必要があるでしょう。

まとめ

このページでは、理論家シリーズ【第3回】として、さまざまな人と関わる中で、共通項目に着目し、進路選択ツールの開発や、六角形で表現されるパーソナリティタイプの理論を打ち出した「ジョン・L・ホランド」について解説してきました。
それぞれの興味・関心などから職業を選択するのは、現代ではごく普通に行われていることですが、ホランドの「職業選択理論」があってこそともいえるのではないでしょうか。ホランドの優れた観察眼は「労働者全員が活き活きと自分らしく働ける」という理想の世界を既にとらえていたのかもしれません。

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