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CAREER - 2023.09.05

キャリアコンサルタントを目指す方なら、知っておきたい。「キャリア教育」【第4回】 なぜ今「キャリア教育」が必要なのか?大学等の高等教育機関で行われている「キャリア教育」とは?

「キャリア教育」をテーマとしたこのシリーズは今回で第4回目を迎えます。

第1回目では、「キャリア教育」の概要を解説、第2回目では小学校・中学校で望まれる「キャリア教育」について、第3回目では高等学校における「キャリア教育」をお伝えしました。第4回目となるこのページでは、大学などの高等教育機関で行われるキャリア教育について解説します。

現在の日本では、大学などの高等教育機関に進学する学生が2022年度学校基本調査(確定値)によると8割を超えています。そのため、高等教育機関こそが社会に出る直前のキャリア教育であることが多いのが現状です。

高等学校までのキャリア教育では、多様なキャリア形成に共通して必要となる能力や態度を育成すること、これらの育成を通じて勤労観・職業観などの価値観を培うことが目標でした。これらを踏まえて、高等教育機関では社会・職業への移行を見据え、より専門性に特化したキャリア教育が重要となってきます。

高等教育機関は大学をはじめ、短期大学、高等専門学校や専門学校といった専修学校など多岐にわたるので、このページではそれぞれの教育機関のポイントをお伝えします。

現在の日本の大学教育

「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的」(学校教育法第83条)として設立されたのが大学です。

大学教育の特徴は、学生自らが視野を広げ、進路を具体化し、それまでに育成した社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を専門分野の学修を通して伸長・深化させていくことにあります。

ところが、大学教育の「ユニバーサル化」により、明確な学習目標を持たない学生や将来の進路に対してイメージができない学生、高等学校卒業時に希望の就職ができずに「セカンドチョイス」として大学進学を選択した学生が増えています。学習意識や「将来的に自分がどのような社会でどう働いていくのか」を思い描けなければ、就職や勤労への意欲も薄れていくことでしょう。事実、大学の新規学卒者の3割が就職後3年以内に離職しているという現状があります。

そこで、学生に対する履修や生活の指導、学習のモチベーションを維持し支援をするといった対策が積極的にとられています。加えて厳しい雇用情勢の昨今、職業を通じて社会と関わっていく具体的な目標を持ち、実現する能力を身につけることは必須なのです。

大学のキャリア教育の現状と課題

大学のキャリア教育は専門とする分野や各大学の個性・特色・教育課程の編成方針などに応じて、取り組みも多種多様です。

例えば専門分野と職業の結びつきという視点で見ると、工学、保健、家政、芸術などの分野では業務独占資格の育成を行う課程が規定された教育内容を通して専門教育を早期的に行っていることから、専門性の修得に偏らないバランスのとれた職業能力の育成が求められます。一方で人文科学や社会科学といった分野では職業との結びつきが必ずしも強いとはいえず、職業人として求められる能力を獲得する意識の形成と確立が重要となってきます。

また、業種や職種、企業の規模、業務内容の多様化が進む反面、企業での人材育成が追いついていないのが実状であり、産業構造の変化に対応できる柔軟性や、より専門的な人材の育成が大学に求められています。故に、画一的な取り組みだけでは不十分なのです。

もう一つの課題として、キャリア教育は担当教職員のみが行うものと認識し、全学的なキャリア教育の位置づけが遅れているケースもあります。教育課程や運営組織・体制の整備はもとより、教職員への意識啓発も重要課題といえるでしょう。

これによって、訓練可能性を持つ人材を選抜する「スクリーニング機能」だけではなく、社会の変化に合わせ、社会を支えて改善しうる資質を育成する「スクーリング機能」を備えた教育課程が必要不可欠です。

実社会と適応した授業科目、グループワーク・ゼミ、調査・実習・発表の重視、課題対応型学習、インターンシップなどの活用や教育課程外の活動を効果的に組み合わせ、全学として授業とキャリア教育を行うことがより重要となってきます。

短期大学におけるキャリア教育の現状

短期大学は「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的」(学校教育法第108条)としており、実際の職業と深く結びついた教育課程が特徴です。職業や業務遂行につながる資格の取得に必要な知識と技術を修得していることに加え、教養教育のもと、理論的背景に培われた専門的知識・技能を身につけることも要求されます。

このような背景から、職業横断的な実務能力の必要性が叫ばれており、現代ニーズに応え、且つ地域や社会に対応した職業教育の充実、職業教育と教養教育の調和がとれた教育課程の見直しなどに期待が高まっています。

専修学校におけるキャリア教育の現状

中学卒業を入学資格とし、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成する」(学校教育法第115条)、5年一貫の体験重視型専門教育機関が高等専門学校です。技術の進歩に対応した高度な教育を実践し、応用力・実践力・創造力に富んだ人材を育てています。今後は地域やニーズを踏まえ、教育内容の高度化などがさらに望まれることでしょう。

高等学校卒業が入学資格である専門学校は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」(学校教育法第124条)を目的としています。各専門分野の職業教育を行い、特定の職業への就職や業務に必要となる資格を得られることもあります。専門性が評価される中、問題解決能力や応用力の養成といった課題への対策が急がれています。

大学院のキャリア教育とは

「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度な専門性が求められる職業を担うために深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的」(学校教育法第99条)により設立されたのが大学院です。近年では、法科大学院や会計専門職大学院などの専門職大学院も設立されています 。

博士課程修了後に大学教員や企業研究員を目指す非常勤研究者のポストドクターが正規職員に就けない という問題があります。そうした背景を踏まえ、ポストドクターや修士・博士課程の学生を対象にしたキャリア形成プログラムが実施されている大学院も出てきました。大学院教員、研究者、高度専門職業人、知識基盤の社会を支える人材として求められる意識、コミュニケーションや協働といった能力を養い、研究成果を基に社会を牽引できるように導いています。

各種学校のキャリア教育とは

各種学校とは「学校教育法第1条に規定のある学校以外のもので、学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別な規定のあるものや専修学校の教育を行うものを除く)」(学校教育法第134条)であり、自動車操縦(自動車学校)や外国人学校、予備校などがそれにあたります。

各種学校は設置されている近隣地域との連携し、就職情報などの収集と整理を行い、身につけた専門技術を活かせるよう積極的に学生へのサポートを行っています。 そのほか、文部科学省が先導するキャリア形成促進プログラム なども導入されています。

キャリアコンサルタント/キャリアカウンセラーに求められていること

若者が就職できない、あるいは初めて就く職が非正規雇用というように、安定した職を確保できない若年層がいるのは存知でしょうか。

また先述の通り、新規学卒者の3割が就職後3年以内に離職しているという現状があります。そこで大学をはじめとした高等教育機関においては、卒業者に対しても、在籍者と同等に最低3年程度のキャリアコンサルティングや職業斡旋といった支援が受けられる制度の整備が急務といえるでしょう。

在籍者においては体験的な学習活動を効果的に活用することにより、各教育機関の特性や専門性を活かした職業教育を充実させることが重要となります。

さらには、必要に応じて何度も学び直せるリカレント教育、生涯学習へのニーズも高まっています。企業と連携した就業者への能力向上など、社会人を対象とした教育の機会も増えているため、キャリアコンサルタント/キャリアカウンセラーによる支援は在籍時のみならず長きにわたって求められます。

いずれにしても各教育機関との連携が鍵となりますが、教育機関側との認識の差などに始まる連携不足 などで充分にキャリアコンサルティングができない場合もあります。キャリアコンサルタントは教育機関側・学生・企業との重要な掛け橋ですので、キャリアコンサルタント側からも積極的に働きかけることも大切です。

それぞれとの連携と対話を密にして、高等教育機関ならではの専門性を発揮できる人材を社会に送り出せるようサポートしていくことば求められています。

まとめ

このページでは大学などの高等教育機関で行われる「キャリア教育」について解説しました。

大学などの高等教育機関は学校教育と職業を直接つなぐ出口です。キャリア教育は就職活動支援がフォーカスされがちですが、それだけに留まりません。社会の多様化や産業・技術の進化、社会情勢の目まぐるしい変化の中、学んでいる学生の特性や求められる人材のニーズが複雑に絡み合っています。

このような状況に合わせて、学生一人ひとりに寄り添える高いスキルを持ったキャリアコンサルタント/キャリアカウンセラーの存在がクローズアップされることでしょう。

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