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CAREER - 2020.01.31

キャリア支援を行うなら知っておきたい。理論家シリーズ【第2回】キャリアを定義した「キャリア発達理論」の提唱者 「ドナルド・E・スーパー」

キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーが実践しているキャリアカウンセリングは、心理学や経営学といったさまざまな理論や知識から成り立っています。

キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーをめざすのであれば、カウンセリングの考え方やスキルのベースとなる理論を把握しておく必要があります。

この「理論家シリーズ」では、キャリアカウンセリングを考える上で欠かせない理論とその提唱者の人物像に迫ります。

理論家シリーズの第2回目となるこのページでは「キャリア発達理論」を提唱した「ドナルド・E・スーパー」と、理論の鍵となる用語や思想を紹介します。

「ドナルド・E・スーパー」とは

「ドナルド・E・スーパー(以下、スーパー)」(1910~1994)はアメリカの経営学者・キャリア研究者であり、心理学者です。コロンビア大学の名誉教授で、1950年代にキャリア構築や職業選択を定義付けした独自の理論「キャリア発達理論」を打ち立てました。この理論は「キャリアの古典」と呼ばれるようになります。

キャリアの定義

スーパーは、はじめにキャリアという言葉について「人々が生涯にわたって追求し、社会的に占めている地位・業務・職務の系列」として、一時期の職業活動だけに限定しない、人生の生き方や人間関係、社会的役割であると考えました。

また、キャリアカウンセリングの目的は「人生における自己理解の深化と順応能力の向上、職業や人間関係、社会参加を含む総合的な自己実現を援助すること」であるとして、職業選択・進路相談だけに留まるものではないと考えていました。これはまさに、今日のキャリアやキャリアカウンセリングの考え方であり、実際に後のキャリアカウンセリング、職業選択、進路相談、能力開発などの分野に大きく影響しました。

「キャリア発達理論」とは

スーパーが提唱した理論の他にもさまざまな「キャリア発達理論」が存在しますが、スーパーの理論で注目すべきは前述のキャリアの定義を前提として、職業選択を通じて自身の「職業的自己概念」を実現しようとすることが働くこと、あるいは「自己概念」の実現の手段を選ぶことが職業を選ぶことにつながると考えたところです。

このことからわかるように、「自己概念」という言葉がスーパーの理論を理解する上で欠かせません。

自己概念を理解する

「自己概念」は仕事や家庭、社会などの集団の中の人間関係に映し出される自分です。スーパーは、「自己概念」はそれぞれの集団の影響を受けながら変化を続け、生涯を通して形成・発展させていくものであると述べています。

あなたも家庭や学校、地域社会などの集団の中で「自分にはどのような特徴や性質があるのか、何が好きで何が嫌いなのか」といったことを観察して、自分をイメージする経験をこれまでの人生の中でしてきたと思います。

そのイメージが「自己概念」ですが、そこには主観に基づいた「主観的自己」と他者からのフィードバックによって形成された「客観的自己」があり、両者が統合的に影響し合って個人の中に形づくられていくものなのです。

そして、仕事という集団における自身の価値観・考え方に対するイメージが「職業的自己概念」です。つまり、ある1つの職業を選択して就くということは、自分がどのような人間であるのか、またはどのようになりたいのかを仕事を通して表現することになります。さらにいえば仕事の満足度とは、選択した職業を通してその人が自己概念をどのくらい実現できているのかということです。

「キャリア発達理論」の2つの基準

次に、スーパーがキャリアを考える上で重要とした2つの基準について説明しましょう。
1つ目はキャリアの長さ、「ライフステージ(キャリアの段階)」です。スーパーは、キャリアには5段階のライフステージがあるとしました。

キャリアを段階化したライフステージ

(1)「成長期(0~14歳)」
身体的な発達と自己概念の形成を主とする時期で、自分の興味・関心や能力について探求を始める発達的な段階。仕事に関しても空想や憧れなどの欲求から、職業世界へ関心を寄せるようになります。

(2)「探索期(15~24歳)」
色々な分野の仕事があること、それぞれの仕事に就くためには必要条件があることなどを知り、自身の興味・関心と合わせて特定の職業に絞り込んでいく時期。必要に応じて職業訓練などを始める段階でもあります。

(3)「確立期(25~44歳)」
特定の職業に就いて、責任を果たし、生産性を上げる時期。職業的専門性が高まり、この時期の中〜後半では昇進が期待できます。

(4)「維持期(45~64歳)」
確立した地位の維持のほか、さらなるスキルや知識を身につけて役割や責任を果たす時期。後半は退職後のキャリアライフについて計画を立てるようになります。

(5)「解放期(65歳~)」
退職し、職業外の新しいライフキャリアを歩む時期。

このライフステージは10代で仕事に就くことが珍しくなかった時代に発表されたものですから、現代とは年齢設定に若干の差があるかもしれません。

また、当時と現在とでは景気や技術革新などの世相も大きく異なるため、このライフステージ通りに運ぶのが、理想的とはいえない部分も出てくるかもしれません。
後年にスーパー自身も、「成長期、探索期の後に確立期を少し経て、しばらくまた探索期に戻って新たな職業選択を行い、その職業で維持期に達しないことが普通になるかもしれない」といっています。

「キャリア発達理論」の2つの基準

もう1つの基準はキャリアの幅、「ライフロール(キャリアの役割)」と呼ばれるものです。人は誰でも年齢や集団などによってさまざまな役割を持ち、それぞれの場面で演じています。スーパーはその役割を次に示した8つに分けて説明しています。

キャリアの役割を演じるライフロール

(1)子ども
親との関係における自身、親に対して費やしている時間のこと。

(2)学生
学ぶ立場にあること。小・中・高校・大学のほか、働きながら学ぶ場合なども入ります。

(3)労働者
仕事を行う立場にあること。アルバイトなどの非正規雇用も含みます。

(4)家庭人
親元を離れたときから始まる立場で、家事全般や日曜大工などの家庭に関することに費やす時間のことです。

(5)余暇人
趣味やスポーツなど、好きなことに費やす時間のこと。

(6)市民
社会を構成する一員として、社会貢献する時間のこと。スーパーは、特に無給のボランティアをする役割としています。

(7)その他のさまざまな役割
配偶者、親、年金生活者など

さて、それぞれの役割における定義には、かなり幅があることにお気づきでしょうか?どの役割も数年で終わるものではなく、場合によっては人生の大半で演じなければならないもの、一度終わったと思った役割でも再度演じる必要があるものなどがあるようです。この考え方が次にお話する「ライフキャリアレインボー」につながってきます。

人生を虹に例えた「ライフキャリアレインボー」

「自己概念」でお話したように、スーパーは「キャリアは一生発展し続ける」と考えました。その理念のもと、ライフステージとライフロールの組み合わせを虹になぞらえた概念図に表したものが「ライフキャリアレインボー」です。

人は5つのライフステージを重ね、時にはいくつかの段階を繰り返しています。一方ではライフロールの役割のうちのいくつかを同時期に演じることになります。例えば子どもの役割は生まれてから歳を経るにつれ、次第に演じることに費やされる時間は少なくなっていきますが、例えば。親の介護をきっかけに再び費やされる時間が増えるかもしれません。

複数の役割を長年重複して演じる上で、役割を果たすことへの満足感(「自己概念」の実現)に応じて、役割を増やしたり減らしたりする必要性や、ライフステージとの組み合わせの見直しをしてワークライフバランスの調整をすることになるでしょう。

「キャリア発達理論」

生涯を通じて展開されるスーパーの理論は、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーの根幹といえるほど、重要であることは間違いありません。それではキャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーとして、この理論を実践にどう活かせばよいのでしょうか?

スーパーによると「職業指導とは本人と働く世界における役割について統合された妥当なイメージを発展させ、受容させること」「自分にとっての満足と社会にとっての有益さを両立できる自己概念を実現していくプロセスを支援すること」です。

個人が自身の内在された自己概念に意識を向け、自己概念を実現していくためには、個人の存在を尊重しつつ、客観的な視点で支援できる専門家が必要です。キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーの存在は、今後もクローズアップされ続けていくことでしょう。

まとめ

このページでは、理論家シリーズ【第2回】として、「ドナルド・E・スーパー」とスーパーが提唱した「キャリア発達理論」について解説しました。

キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーを目指して学習を進めていけば、ほとんどの方が目にする理論でもあり、キャリア支援を行うのであれば、知っておきたいのがスーパーの「キャリア発達理論」です。

キャリアを生涯という大きな視点でとらえているところなどは、多様化・複雑化した現代社会でこそ、さらに活用されるものともいえます。1950年代にこの理論を発表したスーパーの先見の明は、実に奥深いものだったのかもしれません。

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