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CAREER - 2020.03.18

企業の生産性向上対策最前線!働き方改革【第1回】働き方改革とは?

近年、長時間労働による過労死や自殺などが 度々ニュースで取り上げられるようになり、従業員の働き方について見直されるような風潮が高まってきました。

また、終身雇用を行う企業は少なくなり、リストラや大企業の早期退職制度など、就労に関するニュースには事欠かなくなったともいえます。

そんな中、2019年4月より「働き方改革」が始動。 いよいよ本格的に働き方について社会全体で取り組むことになりました。

そこで「働き方改革」シリーズと題して、複数回にわたって「働き方改革」に対し、様々な側面から迫ります。

第1回目のこのページでは、「働き方改革」とはどんなものなのかといった概要をご紹介します。

「働き方改革」とは何か?

かつての企業では、始業と終業の時間が一律に決められており、同じ会社に勤める従業員の多くが、全く同じような形態で働くことが普通でした。しかしIT化に加え、様々な価値観が共存する現在、例えばフレックスタイム制など、それぞれの仕事内容に応じた勤務体系を取り入れることは、もはや必然となっています。

また、子育てや介護と両立しながらの勤務、定年後のセカンドライフとしての再就職、障害者の積極的な雇用というように、様々な立場の人がそれぞれの事情を抱えながらも自分らしく働ける環境が望まれています。

厚生労働省は、個人の事情に応じた多様な働き方ができる「一億総活躍社会」の実現に向けて、労働時間や柔軟な働き方を受け入れる体制作り、雇用形態の待遇の見直しといった措置として、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を発令しました。それが「働き方改革」です。

「働き方改革」の背景にあるもの

厚生労働省がこのように「働き方改革」を推し進める背景には、冒頭の長時間労働による過労死や自殺が社会問題となっていることに加えて、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」という切実な問題があります。

現状のままでいけば日本は近い将来、人口減少によるさらなる労働力不足になることは目に見えているのが現状です。

しかしながら、出産や育児、介護などで一度職場を離れた方たちの「育児や介護と両立しながら働きたい」というニーズや、定年を迎えたものの「まだまだ現役で働きたい」と考えている方など、労働力となり得る潜在的な人材は、多数存在しているのです。

この潜在的な人材の中には、家庭の事情などにより、働ける時間や場所が制限されている方もいます。そんな事情でも安心して働けるような職場が増えれば、労働力不足に歯止めをかけることができます。

つまり、個人のニーズに合わせた多様な働き方を実現することを通して、一人ひとりの仕事へのモチベーションが高まり、総じて企業としての生産性の向上や社会の発展にもつながっていくのです。様々な働き方を柔軟に選択できる社会の実現は、多くの方にとって、仕事を通して充実した人生を送るきっかけになるのではないでしょうか。

「働き方改革」の三本柱と取り組みの概要

それでは「働き方改革」の内容についてお話しましょう。「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」では「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の3本を柱として、様々な取り組みを具体的に規定しています。

労働時間法制の見直しを通じて、働き過ぎの防止と仕事以外の時間を充実させるワーク・ライフ・バランスの調整を行うと同時に、色々な働き方ができるようになりました。また、正規と非正規雇用の不合理な待遇差にも注目し、どの労働形態であっても納得して働き続けられるようにすることで、労働者自身が多様で柔軟な働き方を選択できるようにします。

「働き方改革」第1の柱「長時間労働の是正」

柱の1本目である「長時間労働の是正」は当然のことながら、最大の課題となっている過重労働の減少、有給休暇を取りやすさが目的となります。具体的には下記の通り、労働時間法制を見直しています。

(1)残業時間の上限を規制

これまで残業時間の上限に関して行政指導はあったものの、法律上の規制はありませんでした。今回の改正により、原則として月45時間で年360時間、臨時的な特別の事情であっても月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)で年720時間以内と決められました。

(2)「勤務間インターバル」制度の導入を促進

深夜まで働いて翌朝も定時には出社という過去の事例を教訓とし、企業は終業時刻から翌日の始業時刻までに充分な休息をとれる一定の時間を確保しなければなりません。

(3)1人1年当たり5日間の年次有給休暇の取得を義務づけ

年次有給休暇は制度として整えられていても、仕事の状況や周囲への遠慮から取得が進まないのが現状でした。そこで年5日は確実に取得することを目的として、年次有給休暇の日数のうち5日は使用者(休暇を与える企業など)が時季を指定するなどで取得させる ことが義務づけられました。

(4)月60時間を超える残業の割増賃金率を引き上げ

これまで25%とされていた超過残業の割増賃金率が、50%に引き上げられました。

(5)労働時間の状況を客観的に把握することの義務づけ

企業が労働者の健康管理を徹底するためであり、管理職や 裁量労働制適用者も対象となります。

(6)フレックスタイム制の拡充

労働時間の調整が可能な期間(清算期間)が1カ月から3カ月に延長されました。

(7)専門的な職業人の働き方である「高度プロフェッショナル制度」の新設

対象となるのは、職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,075万円以上)の労働者とされ、高度の専門的知識を必要とする業務に従事する場合に年間104日の休日を確実に取得させることなどの健康確保措置を講じることが定められています。

なお、この7つの取り組みのうち、(6)と(7)は「多様で柔軟な働き方の実現」にもつながる要素でもあるので、次の章でもっと詳しく説明します。

「働き方改革」第2の柱「多様で柔軟な働き方の実現」

2本目の柱「多様で柔軟な働き方の実現」というのは、長年、日本の企業の在り方というものに根付いた「9時から17時まで出社して働く」というスタイルから脱却することにあるといえるでしょう。

例えば、前述(6)のフレックスタイム制は以前から存在はしていましたが、時間の管理などの問題から実質的な導入が進まないケースもありました。精算期間が延長されたことにより、育児や介護と両立する労働者らに対して、状況に応じて変更・延長をするなど、活用しやすくなりました。

また、(7)の「高度プロフェッショナル制度」は特定高度専門業務・成果型労働制という新しい制度で、高度な専門性を擁する職業人に対しては働いた時間ではなく、成果で支払うべきという考えに基づいたものです。

もう一つ、厚生労働省が力を入れている制度が「テレワーク」です。「テレワーク」とは「Tel(離れて)」と「Work(働く)」を組み合わせた造語で、「ICT(情報通信技術)」を通してオフィスから離れた場所で仕事をすること。在宅勤務のほか、外出先で作業をするモバイル勤務、本拠地となるオフィスとは別に設置された施設などを利用するサテライトオフィス勤務などがあります。

全くオフィスに顔を出さずに周囲との仕事上の連携は大丈夫なのかといった不安もある一方、スカイプやZOOMなどのオンラインを活用して、コミュニケーションを図るスタイルを確立している企業も多数あります。

また、午前中在宅で働き、午後出社するというような部分在宅勤務もあるので、特に育児や介護をしながら働く方には利用しやすい働き方といえそうです。

「働き方改革」第3の柱「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」

最後の柱となるのは、パートタイム労働者や有期雇用労働者、派遣労働者などの非正規雇用と無期雇用やフルタイムで働く正規雇用の労働者の間に生じる、基本給や賞与などの不合理な待遇の差をなくす「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」です。規定として次の2つを法律に定めています。

(1)均等待遇規定

職務内容(業務内容+責任の程度)や人事異動の範囲などが同じ場合。差別的な扱いを禁止する。

(2)均衡待遇規定

職務内容(業務内容+責任の程度)や人事異動の範囲などが異なる場合。その内容を考慮して不合理な待遇差を禁止する。

また、非正規雇用労働者が待遇差を感じた場合は、事業主に対して正規雇用労働者との待遇差の内容や理由の説明を要求することが認められています。行政による事業主への助言・指導、裁判をせずに解決する手続きである「裁判外紛争解決手続(行政ADR)」なども整備されているので、非正規雇用が正規雇用労働者に立場的に劣るといったことはなくなるでしょう。

※何をもって待遇差が不合理とするかについては、下記のガイドライン(指針)に具体例と合わせて明示されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

まとめ

今回は「働き方改革」シリーズの第1回として、「働き方改革」の概要をお伝えしました。各種制度や法規にはメリットもありますが、実践していくうえでの課題もあり、賛否両論の声もあるでしょう。

社会に浸透して、成熟するにはそれなりの時間が必要かもしれません。それでも、政府主導によって「働き方改革」が施行されているという事実により、世の中には様々な働き方があって、一人ひとりの価値観や必要性に応じて働き方が選べる時代だという共通の意識の下、それぞれに即した生き方を考えることができるようになったのは大きな意義があるではないでしょうか。

次回は、中小企業としての取り組みについて紹介します。

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