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キャリア - 2024.02.29公開

知っておきたいリスキリングの今、効果的な取り組みを解説

主体的なキャリア形成が重視される近年、スキルや知識の学び直し、新たな知識取得の機会について考える方も多いでしょう。

中でも注目が集まっているのが2022年頃から急速に広がりをみせている「リスキリング」です。

本記事では「リスキリング」とは何か、メリットや取り組み事例、課題と解決方法をご紹介していきます。

リスキリングを知りたい、挑戦してみたいという方の参考になれば幸いです。

リスキリングとは何か

リスキリングの意味

「リスキリング」は英語で「reskilling」、再び(re)スキル(skill)を習得するという意味の言葉で、動詞の「リスキル:reskill」の進行形です。

再教育、再訓練、学び直しと訳されることもありますが、近年は、職業変更や技術革新に伴って必要となるスキルの更新について用いられます。

リスキリングについて、経済産業省掲載の文書では次のように説明されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

リスキリングが注目される背景

リスキリングは世界的に注目されています。その大きなきっかけとなったのは、2020年に開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表されたことです。

またこれ以前、2018年の世界経済フォーラムから毎年「リスキル革命」と銘打ったセッションがなされています。

技術革新やビジネスモデルの変化への対応が求められているというのが、リスキリングが注目される背景にあるといえるでしょう。

第4次産業革命の影響

デジタルの急速な技術革新により、業務効率化が進み社会全体が「最適化」されている21世紀初頭から現在までは、第4次産業革命と呼ばれています。

第4次産業革命によって消失するとされる仕事は数年で8,000万件とされる一方で、9,700万件の新たな仕事が生まれ、新たな人材の需要が出てくるとされています。

つまり、技術革新などの大きな変化に対応し、働き手が職業や働き方を変化させる必要があるということです。世界経済フォーラムの年次レポート「仕事の未来レポート」2023年版では、今後5年間で約4分の1の仕事が変化するという報告がなされています。

第4次産業革命の例

第4次産業革命のコアとなるものとして、IoT、ビッグデータ、AIなどがあります。それぞれの活用例として、次のものが挙げられます
 

活用例

IoT
モノとインターネットをつなぐ仕組み

セルフレジ
デジタル家電

ビッグデータ
巨大なデータ群

SNS広告
リアルタイムの渋滞情報

AI
人口知能

AIチャット
車の自動運転

 
これら技術の発展と普及により、人手が不要になった仕事、新しく創出された仕事があることは想像しやすいのではないでしょうか。

現在所属している部署での業務がIoTやAIの影響によって自動化されたとしても、成長が期待される新規事業部への異動となり、適切なスキルが必要になってくるかもしれません。

また、現段階で保有しているスキルを活かしながら、不足しているスキルを新たに習得すれば、新しい分野に挑戦することも可能になるでしょう。

世界規模での「リスキリング革命」

「リスキリング革命」では「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言しています。社会の急速な変化への対応は喫緊の課題であり、これに対応するためには人的投資が必須であると捉えられているのです。

これら世界の動きに伴い、日本でもリスキリングの動きが大きくなっています。詳しくは後ほど紹介しますが、例えば、2022年に政府はリスキリングなどの人的投資に5年で1兆円を投入する方針を出しています。同年「リスキリング」は新語・流行語大賞にノミネートされるなど一気に注目を集めています。

日本の「DX取組状況」と課題

2022年に総務省がまとめた情報通信白書から「デジタル化を進める上での課題や障壁(国別)」をみてみると、デジタル化を進める上での課題・障壁として、日本企業は人材不足が67.6%、次いでデジタル技術の知識・リテラシー不足44.8%と、人材に関する課題を抱えていることがわかります。
 

総務省 2022年情報通信白書 図表3-8-2-3加工して作成

このような状況が、日本でリスキリングが注目されているという背景につながっているといえるでしょう。

【あわせて読みたい】

VUCA時代でも迷わないキャリア戦略とは?個人に与える具体的な影響も解説

 

「リスキリング」「リカレント」の違い

「リカレント」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。リスキリングとどう違うのか解説します。

「リカレント:recurrent」とは、「再び行う、繰り返す」という意味を持つ単語です。「リカレント教育」という言葉で用いられることが多く、リスキリングと混同されることがあります。

リカレント教育とは、教育機関を卒業し社会にでた後も、自身に合ったタイミングで学びの機会を設けるなど、〝働く〟と〝学ぶ〟を生涯にわたって繰り返していくことです。

リスキリングとリカレント教育、いずれも「re」に表れるように「学び直し」と捉える方も多いと思いますが、仕事から離れて関心のあること、新しいことを主体的に学ぶリカレント教育に対し、リスキリングは仕事で価値創出し続けるために必要なスキルを学ぶことにフォーカスするものです。

ではリスキリングではどういった効果が得られるのか、事例もあわせて説明していきます。

リスキリングのメリット

先に、リスキリングが仕事で価値を創出し続けるためのものであることを述べました。では、具体的にどのように価値を生むのでしょうか。例をご紹介します。

リスキリングのメリット・期待される効果

業務改善

リスキリングによって働き手の知識が増えると、業務の効率化や新しいフローの構築ができやすくなります。業務の質の向上、作業時間の削減も見込めます。

革新的なアイデア創出

新しい知識をもとに革新的な発想が生まれることもあるでしょう。様々な分野で技術革新が起こる近年は、これまで未開だった市場や例がなかった商品・サービスを作り出すパイオニアになれる可能性があります。

失業のリスク回避・働き方の選択肢を増やす

リスキリングによって働き手としての価値をアップデートすることは、失業のリスク回避につながります。

先に挙げたように、近年の仕事と雇用の変化は激しいものです。リスキリングなしに乗り越えていくことは難しい時代になっています。反対に、リスキリングによって活躍できる場所を増やすことも可能になっていきます。

企業にとってのメリット

前述のように、働き手個人がより高いスキル、時代に合ったスキルを学び、仕事に活かしていくことは、企業など雇用側のメリットにも直結します。

加えて、リスキリングに力を入れている企業は、人的投資が手厚い企業という印象を受けやすいので、採用活動への好影響、従業員の高い満足度と離職防止にもつながります。

リスキリングの政府の動向や取り組み

リスキリング推進のためどのような取り組みがなされているのかご紹介します。

経済産業省

世界経済フォーラムなど国際的な動きに伴い、日本政府も様々な方針を打ち出しています。「5年1兆円投資」の方針などはその主たるものです。具体的には次のような取り組みがなされています。

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」

ウェブデザイン、動画制作、プログラミングなどを対象とし、キャリア相談、リスキリング、転職までを支援する事業を行っています。

「高等教育機関における共同講座創造支援事業」

デジタル・グリーンなどの分野に関して高度な知識・技能を持つ人材を育成するため、大学や高等専門学校などで共同講座を運営する費用を補助する事業を行っています。

「第4次産業革命スキル習得講座認定制度」

IT・データの分野の専門的・実践的な講座を、経済産業大臣が認定する制度を設けています。

その他、経済産業省は、次に挙げる厚生労働省主体の制度の助成金についての仕組みづくりなどを担っています。

厚生労働省

「教育訓練給付金」

資格取得のために講座や教育機関に通った際の費用を支援する制度を設けています。

「人材開発支援助成金」

企業が従業員にリスキリングなどを行った場合にかかった費用を助成する制度です。

「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース )」

高齢者や障害者などの就職困難者を、ハローワークの紹介から雇い入れて人材育成に取り組む企業などに助成金を支給する制度です。

「公的職業訓練のデジタル分野の重点化によるデジタル推進人材の育成」

民間機関に対し、デジタル分野の資格取得を目指すための委託費の増額などを行っています。

「キャリアコンサルティングの推進」

国家資格である「キャリアコンサルタント」を持つ専門家によるリスキリングや求職活動支援に力を入れています。詳しくは後ほど紹介します。

その他、政府の取組み

文部科学省は社会人の学びを支援

文部科学省は社会人の学びを支援するサイトの運営、教育事業の検討と導入などを進めています。

世界と比較して、日本はリスキリングなどの人的投資が弱いとされています。経済産業研究所が過去2010~2018年までの「国内総生産に対する人的資本投資額」を調査したところ、他先進国と比べてかなり低いことがわかりました(1位のイギリス1.58%に対して0.34%)

この状況を課題として、政府は今後もリスキリングに積極的な企業への支援などをますます拡大させていくと考えられます。

企業のリスキリング取り組み事例

「全日本空輸(ANA)のリスキリング施策」

ANAは、環境の変化に対応し、いきいきと働けるよう、様々な施策を実施していますが、その重要施策の中に、これから多様なキャリアを形成していく従業員の育成とあわせて、「シニア人材のリスキリング」も入れています。

ANAをはじめとした航空会社は、2020年からの新型コロナウイルス流行によって深刻な影響を受けました。これまでのノウハウで人材の活用、利益の創出はできない状況が続きました。

こういった変化を受け、ANAではそれまで客室乗務員を担っていた人材をエンジニアとして活躍させるなど、様々な取り組みを行っています。中でも、今後の中長期的目標を考えたとき、シニア人材のリスキリングが効果を発揮するとして重要施策に位置づけています。

ミドル・シニア層こそ「リスキリング」

「学び」というと、若手社員に期待されるものと思われがちですが、ミドル・シニア層こそリスキリングの効果が高いと言われています。

人生100年時代においては、一人ひとりの働く年数も増えていくことが予想されていますが、その長いキャリアをいきいきと送ることは個人にとって重要です。日本ではミドル・シニア層の働き手が多いため、この層でリスキリングの効果が発揮できると大きなインパクトがあると考えられています。

個人の取組み現状と課題

世界経済フォーラムでの「リスキリング革命」の発表と、日本での「5年1兆円投資」の発表があった2022年以降、個人の認知度、関心も高まっていることが、各調査で報告されています。

また、リスキリングの必要性を感じている人、リスキリングしたいと考えている人も多いことがわかっています。

以上から、リスキリングに意欲があっても取り組めない人が多いことが推測されます。

リスキリングは仕事に活かすことを目的としますが、そもそも今の職場で何を学んだら活きるのかわからない、会社から何を求められているかわからない、求められていると感じないというケースも多いようです。

リスキリングをどう始めるべきか、何をリスキリングの対象とすべきか、それをどう仕事に活かし、将来的に何を目指すか、これらが明確にできないという課題があるのです。

そのような場合は、リスキリングの内容を自分だけで絞りこまず、専門家に相談することで可能性が広がることもあります。

本記事ではキャリアコンサルタントへの相談例を紹介しますので、参考にしてください。

【リスキリング支援】キャリアコンサルタントに相談してみよう

キャリアコンサルタントとは

キャリアコンサルタントとは、キャリアに関する多角的な相談に応じ、助言や指導を行う国家資格を持つ専門家です。企業、教育機関、ハローワークなど様々な場所で活動しています。

キャリアコンサルタントに相談するメリット

キャリアコンサルタントに相談することで、先に挙げたリスキリングに関する課題を、キャリアの観点から助言がもらえます。

キャリアコンサルタントによるリスキリング支援は、厚生労働省によって推進されており、様々な方法で相談することが可能になっています。

自分に必要なリスキリングを見極められることに加え、継続的な支援も受けられるので、目標までたどり着きやすくなります。

まとめ

本記事では、リスキリングとは何か、メリットや取り組み事例、課題と解決方法を解説してきました。

リスキリング支援は進み、今後はより取り組みやすくなることが期待されます。

本記事が、リスキリングに挑戦してみたいという方の参考になれば幸いです。

Q&A

リスキリングとは何ですか?
「リスキル:reskill」の進行形で、再教育、再訓練などと訳される言葉です。近年は特に、職業変更や技術革新に伴って必要となるスキルの更新について用いられます。
リスキリングとリカレント教育の違いは何ですか?
リカレント教育とは、教育機関を卒業し社会にでた後も、自身に合ったタイミングで学びの機会を設けるなど、「働く」と「学ぶ」を生涯にわたって繰り返していくことです。リカレント教育は仕事から離れて、関心のあることや新しいことなどに主体的に取り組むものであるのに対し、リスキリングは仕事で価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶことにフォーカスしています。
リスキリングはなぜ注目されているのですか?
第4次産業革命に対応するために強化が必要な人的投資と捉えられているからです。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で「リスキリング革命」という言葉が発表されたことで一気に注目を集めました。
リスキリングに関する課題を相談したい
リスキリングに関する課題は、厚生労働省も推奨しているキャリアコンサルタントに相談してみるとよいでしょう。

Information

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