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アンコンシャス・バイアスとは―だれにでもある「無意識の思い込み」について

「プレゼントのリボンはピンクがいいかな」
「あの子は花が好きだから帰りに買って帰ろう」

上記の情報から、プレゼントを贈る相手は女の子だろうと思った方は多いのではないでしょうか。このように、何気ない日常生活の中にも無意識の思い込みが存在しています。

そこで今回の記事では、人が無意識のうちに持つ偏見や思い込みである、「アンコンシャス・バイアス」について詳しく解説していきます。

アンコンシャス・バイアスとは

「アンコンシャス・バイアス」とは、無意識に働く偏見や思い込みを指し、過去の経験や周囲の意見、日々の情報によって形成された、偏った見方などが影響しています。

アンコンシャス(Unconscious)は直訳すると「無意識」、バイアス(Bias)は「偏見」を意味しますので、「アンコンシャス・バイアス」は、「無意識の偏見」や「自覚の及ばない影響」を指す言葉となります。

「偏見」と「差別」の違いについて

「アンコンシャス・バイアス」は無意識の思い込みや「偏見」ですが、では「偏見」と「差別」ふたつの言葉の違いはどのようなものなのでしょうか。

年齢に基づく偏見と差別

年齢に基づいた「偏見」と「差別」の例をみていきましょう。

偏見
人事担当者が「50歳以上の人は新しいスキルを身につけるのは難しいだろう」という先入観を持っているとします。この場合、その担当者が年齢に基づいた無意識の先入観を持っている状態が「偏見」です。

差別
人事担当者が、50歳以上の候補者からは採用しないという場合は差別に該当します。年齢に基づく不平等が生じている状態が「差別」といえます。

「アンコンシャス・バイアス」は無意識の思い込みや「偏見」を意味しますので、具体的には「差別」とは異なります。では、「アンコンシャス・バイアス」にはどのような種類があるのでしょうか。

アンコンシャス・バイアスの種類

この章では、「アンコンシャス・バイアス」の種類について紹介していきます。

  • ステレオタイプ
  • 正常性バイアス
  • 確証バイアス
  • 集団同調性バイアス

1つずつ順番に見ていきましょう。

ステレオタイプ

ステレオタイプ
個人や集団を属性に分けて、その属性に基づく先入観や固定概念を抱いてしまうこと
例)  「女性が家事をやるのは当然」「最近の若者は〇〇」

 

正常性バイアス

正常性バイアス
物事が良くない方向に進んでいるにも関わらず、「私の置かれている状況は問題がない」ととらえてしまうこと
例  「火災報知機が鳴ったが “誤作動だろう”と思い、その場にとどまる」

 

確証バイアス

確証バイアス
自分自身の思想や価値観、知識を肯定・正当化する情報ばかりを、無意識的に探し、自分の思想・感情・知識を補強すること
例  「B型だからマイペースだ」という先入観があるため、普段はテキパキ働いている〇〇さんが、たまにのんびりしているところを見ると、「やっぱり〇〇さんはB型だからマイペースだよね」と思ってしまう。

 

権威バイアス

権威バイアス
医師や政治家などの権威のある人が言った言葉を、ほぼ無条件で「この情報には間違いがない」ととらえること
例  「医者が言っているから、この情報は正しい」「芸能人がすすめている商品だから効果があるに違いない」

 

集団同調性バイアス

集団同調性バイアス
周囲の人と同じようにふるまおうとすること
例  「火災報知機が鳴ったが ”ほかの人は逃げていないから大丈夫だろう”と思い、その場にとどまる」

 
 
単純に「アンコンシャス・バイアス」としたとき、このなかでも特に「ステレオタイプ」を指すことが多いといえます。本記事では主にアンコンシャス・バイアスに分類されるステレオタイプについて詳しく取り上げていきます。

アンコンシャス・バイアスの例

アンコンシャス・バイアスの例をいくつか見ていきましょう。

  • 心臓外科において世界的な権威であり、いくつもの論文を発表している
  • 幼少期からピアノとバレエを習っていて、22歳の今は保育士として活躍している
  • 長く単身赴任をしており、子どもとは週末にビデオ通話などで顔を合わせるだけだが、年収は2000万円に達していて『稼いでいる親の背中を見せるのも教育』と思っている
  • 子どもが生まれたのをきっかけに仕事を辞めて、今は育児と家事をワンオペで担いながら、家で在宅ワークをしている

このような事例をみたとき、多くの人が無意識に、「1と3は男性であり、2と4は女性である」ととらえるでしょう。

実際には心臓外科として働く女性もいれば、単身赴任をしている女性もいます。また保育士として活躍する男性もいますし、妻の仕事をサポートするために仕事を辞めて育児に専念する男性もいるでしょう。

しかし私たちは、予備知識なく上記の文章を提示されたとき、多くの日本人が「仕事をバリバリ行うのは男性であり、育児や家事を主に担うのは女性である」ととらえるのです。

またこのようなアンコンシャス・バイアスは生活の場にも表れています。

生活の中にあるアンコンシャス・バイアス

たとえば共働きの家庭が小さなお子さんを保育園に入れる際に、「子どもが熱を出した場合などの緊急連絡先はどこにするか」という問題が出てきます。この場合、年収や職場からの距離などを考慮するより以前に、「母親が迎えにいくもの」と考えるケースは非常に多いといえます。

仕事でトラブルが起き、帰宅せずに対応しなければならなくなった際には、「女性は気の毒だから終電で帰らせるが、男性は泊まっていって」などのように言われたことのある人もいるかもしれません。

もっともこれらの「思い込み」は、ある程度統計に基づいたものだともいえます。

男女の偏りは統計上でも出ている

たとえば厚生労働省が出した「保育士登録者数等(男女別)」では、2020年(令和2年)の段階でも、男性の割合はわずか5%程度にすぎません。このため、アンコンシャス・バイアスがかかる理由は「個人の感情」のみではなく、男女比の偏りが統計上で出ていることも関係しています。

出典)厚生労働省 | 「保育士登録者数等(男女別)

男性に聞いた「性別役割意識」に関するデータ

データで見る アンコンシャス・バイアス

ここからは、データを元にアンコンシャス・バイアスを見ていきましょう。

内閣府男女共同参画局が出したデータから、男女ともに、職場・プライベートから1つずつ取り上げていきます。

男性

まずは、男性に聞いた「性別役割意識」に関するデータがこちらです。
 

参考)内閣府 | 2022年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究

男性・職場

「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と答えた人の割合は、男性では全年齢層で40%を超え、年齢が上がるほどこの傾向は顕著になります。女性の場合も同様の意識が強く、20代女性でも40%近くに達し、30代以降では常に40%を超え、世代が上がるほど高い割合を示しています。

男性・プライベート

「デート費用などは男性が負担すべきである」と答えた男性は、「男性60代」の層がもっとも高く、下の世代になるほど割合は低くなっていきますが、どの世代でも30%を超える結果となっています。

女性の場合は30代~40代がもっとも高く25%程度で、もっとも低いのは「女性60代」の層です。

女性

次は、女性の役割に関するデータを見ていきます。

女性・職場

男女に聞いた、女性の職場での役割に関するデータがこちらです。

男女に聞いた、女性の職場での役割に関するデータ
参考)内閣府 | 2022年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究

「職場においては、女性は男性のサポート役に回るべきだ」と答えた層がもっとも多かったのは、「20代男性」で、これが20%を超えています。また30代男性~40代男性もこのように考えている人が多いといえます。

女性の場合も、20代のうちの13%を超える女性が、「そう思う」、または「どちらかといえばそう思う」と回答しています。

女性・プライベート

続いて、男女に聞いた、女性のプライベートでの役割に関するデータがこちらです。

男女に聞いた、女性のプライベートでの役割に関するデータ
参考)内閣府 | 2021年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究

「家事や育児は女性がすべきである」と答えた層のなかでもっとも多いのは、「60代の男性」で、これが36.6%です。対してもっとも少ないのは「20代の女性」であり、17.1%にすぎません。

なお、ここで紹介したのは、ほんの一例です。実際にはもっと多くのデータが取り上げられています。

性別役割を感じさせた人の割合

内閣府が2021年にまとめた「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」では、調査した36項目中で性別役割を感じさせた人の割合が男性では「父親」が27項目、女性では「職場の男性の上司」が13項目という結果になっています。

特に「職場の男性の上司」は男性でも14項目と高い割合となっており、会社という組織内においては男女ともに「男性の職場の上司」から性別役割を感じさせられた経験があるとの回答が多くなっています。

性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果
内閣府 2021年性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 17ページの結果を加工して作成

アンコンシャス・バイアスを性別・年齢で見る

ところで、「アンコンシャス・バイアスを男女・年齢の視点から見る」と聞いたとき、多くの人がまず、「一番アンコンシャス・バイアスがかかっているのは60代の男性(=高齢の男性)だろう」と思ったのではないでしょうか。たしかに項目によっては、60代の男性がもっとも多くなっています。

しかしそれ以外の項目ももちろんあります。

たとえば、「男性は出産休暇や育児休暇を取るべきではない」と答えた層で一番多いのは、「20代の男性」です。多少の増減はあるものの、年齢を重ねている男性の方がこの数字が低くなっています。

また上記でも取り上げた「職場では、女性は男性のサポートに回るべきである」と答えた男性の割合も、年齢が上がるにつれて減少しています。

「共稼ぎであるならば、子どもが調子を崩したときには母親が面倒を見るべきだ」と答えた層はたしかに60代の男性が多いものの、その数字は60代の女性とほぼ変わらず、「年齢が上がれば上がるほどこの傾向が男女ともに顕著になること」が示されています。

「アンコンシャス・バイアスを男女・年齢の視点から見る」としたときに、もしもあなたが「高齢の男性が一番偏見を持っているのだろう」と考えたのだとすれば、それもまたアンコンシャス・バイアスがかかった結果であるといえるのかもしれません。

出典)
内閣府 | 男女共同参画局「2021年 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」
内閣府 | 「2022年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」

アンコンシャス・バイアスを解消するためにできること

それでは、このようなアンコンシャス・バイアスを解消するためにはどのようなことを心がけたらよいのでしょうか。

1.自分がアンコンシャス・バイアスを持っていることを自覚する

どれほどアンコンシャス・バイアスについての知識がある人であろうとも、アンコンシャス・バイアスを完全になくすことはできません。

ここでは主に性別による差について取り上げてきましたが、世界中のあらゆる人は、無意識になんらかの偏った考えや価値観を持っていると言えます。まずは「アンコンシャス・バイアスを持っている」ことを自己認識することが重要です。

そして、何かに触れる際に「先入観を持っていないだろうか?」と疑うことで、アンコンシャス・バイアスを解消する過程をスタートさせることができます。

自分を客観的に見つめなおす「リフレクション」が、アンコンシャス・バイアスの自覚に役立つかもしれません。

「リフレクション」については、こちらの記事で詳しく解説をしています。
 

「リフレクション」をサクっと解説! 進め方やポイントとは?
あわせて読みたい

「リフレクション」をサクっと解説! 進め方やポイントとは?|リカレントcounselor

 

2.相手のサインを感じ取る

60代の男性のうちの34.4%、60代の女性のうちの40.4%が「家事・育児は女性がするべきだ」と他者からの言動や態度から感じたことがあると答えています。

このように、直接言葉で伝えなくても、態度に「アンコンシャス・バイアス」が出てしまうこともあるでしょう。その際に、相手の表情や声のトーンにも注目し、その人の出したサインを感じ取るようにすることで、自分の立ち居振る舞いがその人に与えた影響に気づけるかもしれません。

3.決めつけになるような言葉は控える

「男なんだから、そんな怪我くらいで泣かないでよ」「男性の一人暮らし? どうせ食事とかはコンビニなんでしょう」「お母さんなんだから、子どもが泣いたらその理由がすぐに分かるよね」「若い女性には、長期出張など無理だよ」といった決めつける言葉は、控えるとよいでしょう。

また、自分で良かれと思って発言したことでも、アンコンシャス・バイアスが基になっていることもあります。例えば、「小さなお子さんがいるお母さんに、残業なんてさせられないよ」などが挙げられます。そう言われて喜ぶ人もいますが、「もっと働きたいのに」「特別扱いされたくないのに」と感じる人もいるでしょう。
 

【仕事と子育ての両立】マミートラックがキャリア形成に与える影響とは
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善意からのフォローを一概に否定することはできません。ただ、善意の気持ちを持ったうえで、「属性」ではなく「その人一人ひとりの事情」に配慮して物事を提案できるようになるとより望ましい環境ができあがるでしょう。

まとめ

アンコンシャス・バイアスは、だれもが持つ「思い込み」です。これ自体は良い・悪いと判断されるものではありませんが、それによってだれかが傷つけられたり、働きにくさを感じたりしているようならば、偏った考えや価値観を修正していくことが求められます。

まずは、自分はどのようなアンコンシャス・バイアスにとらわれやすいか、という点を確認しながら進めていくとよいでしょう。
言動を意識していくことで、改善が期待できます。

Q&A

アンコンシャス・バイアスとは具体的にどのようなものですか?
アンコンシャス・バイアスとは、人が無意識のうちに持つ偏見や思い込みのことです。過去の経験や周囲の意見、日々の情報によって形成され、私たちの判断や行動に影響を与えます。例えば、「女性は家事をするもの」といった固定観念などがこれにあたります。
アンコンシャス・バイアスはなぜ問題になるのですか?
アンコンシャス・バイアス自体は誰にでもある無意識の思い込みであり、それ自体が悪ではありません。しかし、それによって特定の誰かを傷つけたり、不当な扱いに繋がったり、その人の選択肢を狭めてしまったりすることが問題です。職場や日常生活における人間関係、採用活動など、様々な場面で悪影響を及ぼす可能性があります。
アンコンシャス・バイアスにはどのような種類がありますか?
主な種類としては、以下のようなものがあります。ステレオタイプ: 特定の属性を持つ人に対する固定観念(例:「男性はこうあるべき」)
確証バイアス: 自分の考えを肯定する情報ばかりを集めてしまう傾向
正常性バイアス: 危険な状況でも「大丈夫だろう」と過小評価してしまう傾向
権威バイアス: 権威ある人の意見を無条件に信じてしまう傾向
集団同調性バイアス: 周囲の意見や行動に流されてしまう傾向
特にステレオタイプが、アンコンシャス・バイアスとしてよく認識されます。
アンコンシャス・バイアスを解消するために、個人でできることは何ですか?
まず最も重要なのは、自分にもアンコンシャス・バイアスがあることを自覚することです。その上で、何かに触れる際に「もしかして先入観で見ていないか?」と自分に問いかけ、客観的に見つめ直す「リフレクション」を心がけましょう。また、相手の表情や言葉の裏にあるサインを感じ取ったり、「男だから」「女だから」といった決めつけになるような言葉を控えることも有効です。
アンコンシャス・バイアスは世代や性別によって傾向が異なりますか?
はい、異なります。社会の常識や統計データは時代とともに変化するため、生きてきた年代によって特定の価値観に偏りが出ている場合があります。例えば、以前は性別による役割分担が当たり前だった時代背景から、高齢層にその傾向が強く見られることもありますが、若い世代でも特定のアンコンシャス・バイアスが強く出ることもあります。どの世代や性別にも無意識の思い込みは存在します

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