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COUNSELOR - 2024.01.26

心理カウンセラーが教えるー交流分析で人間関係の「困った!」を解消。~誰もが知らずに行っている“ゲーム”とは~

記事を書いた方のご紹介

大久保ゆうこ(リカレント専任講師)

公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士、EAPメンタルヘルスカウンセラー。
現在は専任講師として活躍しながら心療内科、更生保護施設、外部EAPの企業にてカウンセラーとして従事。
さまざまな心理療法を実践しつつ、メンタルヘルスのための食事アドバイスも行っている。
著書に『食べる順番健康法ー好きなものをガマンしないでいい!』(こう書房)がある。

誰かとやりとりしていた時に「そんなつもりじゃなかったのに。どうしてこうなっちゃったの?」と、予想外の展開に驚き、嫌な後味を感じるということはありませんか?

例えば、
「ある人と普通に仲良くしていたのに、なぜか相手は突然怒りだした。」
「相手を励まそうと思っていたのにだんだんイライラしてしまって、気がついたらお説教していた。」
「こちらが被害者だと思っていたのに、相手から “自分こそが被害者だ” といわれ困惑。」

などなど…もしも似たような経験があるとしたら、それは “ゲーム” かもしれません。

交流分析のゲーム理論

ここでいう “ゲーム” とは、相手を自分の都合の良いように操作したり利用しようとしたりすることで始まるコミュニケーションです。その最後は何とも言えない後味の悪い結果になる、パターン化されたやりとりのことを指します。

“ゲーム” は心理療法の一つである交流分析の専門用語です。交流分析は専門用語ながら言葉がわかりやすく、心理面の深い内容であっても誰もが理解しやすいのが特徴です。

そのため心理職だけではなく、企業をはじめ医療や教育関係などさまざまな分野で広く活用されています。

ゲームにはいろいろあります

これらはゲームの一例です。よくあるゲームをいくつかご紹介します。

「はい、でも」のゲーム

相手に対して相談を持ちかけるが、相手が提案することはすべて「はい、でも」と言いかえし決して同意しない。相手はうんざりしたり無力感にとらわれたりする。

「まぬけ」のゲーム

「自分はどうせダメな」「自分なんて馬鹿だ、まぬけだ」と、自分のことを過剰に卑下した言い方をする人に対し、「そんなことないよ」と一生懸命アドバイスするが、本人はまったく意見を取り入れない。

そのため相手はだんだんイライラしてきて「だから君は馬鹿でもまぬけでもないって言っているだろう。このバカ!まぬけ!!」というように、卑下した立場を結果的に認めてしまう。そして「言ってしまった…」という嫌な後味を味わう。

「お役に立とうとしただけなのに」のゲーム

熱心な支援者と、(表面的には)支援を望んでいる人との間で繰り広げられるゲーム。

支援の求めに応じて精いっぱい支援しようと助言・行動するが、その価値や成果をすべて却下されてしまい、何の役にも立たなかったという無力感を味わう。

「こんなに一生懸命やってるのに」のゲーム

相手の要望に答えようと頑張りすぎてしまう人のゲーム。

その相手自身は本当にそれを望んでいるかはわからないが、勝手に空気を読み取って「こんな要求されているに違いない」と、思い込んで自分にノルマを課す。無理して頑張りすぎてしまうため、やがてストレスが限界となり、逆ギレしてしまう。

自分がゲームをしていると気づいたら

最後に嫌な後味を感じるのに、なぜ人はゲームをするのでしょう。これは幼少期の親子関係(育ててもらった人との関係)にあるといわれています。

子どもは一人では生きていけません。誰か大人に世話をされる必要があります。お世話として食事を与えてもらったり、清潔が保てたりすればいいわけではありません。

話しかけられたり、なでられたりと、なんらかの働きかけがないと心のバランスを崩し、生きていけないといわれています。この働きかけのことをストロークといいます。

「ストローク」とは

親から常にほめたりなでられたりというプラスのストロークがあればいいのですが、親にも事情があります。

忙しくて動き回っていたり、病気で寝込んだりして子どもの相手をしていられない場合もあります。親は十分ストロークしているつもりでも、子どもが満足しない場合もあります。

これらの場合、子どもにとって一番つらいことはストロークがないことです。無視が一番つらいのです。

無視されるよりは怒鳴られたり叩かれたりなど、マイナスストロークでも求めてしまいます。その時に子どもが子どもなりの頭で戦略を練って親のストロークを引き出そうとして考え出すのがゲームといわれています。

大人になってもある「ストローク」

ストロークの欲求は大人になってもなくなるわけでありません。ストロークがないと生きていけないのは大人も一緒です。

そして、幼少期につくりだしたゲームのパターンが消えずに残っていて、知らず知らずのうちにゲームに巻き込み・巻き込まれ、マイナスのストロークをもらうことになってしまいます。ゲームはどんな人でもやっている可能性があります。

もしもゲームに巻き込まれたら。対応例をご紹介

ゲームに気づいたらどうしたらいいでしょう。ここでは、一番簡単な方法がゲームから降りること、健康的なストロークを行うことをポイントにして、対応例を紹介します。

「はい、でも」ゲーム対応例

1) 職場の同僚に悩みを相談されてアドバイスしていたが、同僚が「はい、でも」のゲームをしていると気づいた場合の対応例

「いま話を聞いただけで私が簡単に答えを出せるのなら、あなたも悩んでいないと思う。」と伝え、悩みながらもよくやっていると、その人の頑張りにストロークする。

 

「まぬけ」のゲーム対応例

2) 友達とおしゃべりしているとき、その友達が自分のことを卑下し「まぬけ」のゲームになっていると気づいた場合の対応例

「あなたは自分のことを間抜けだと思っているけど、私はそうは思わない。私はあなたのことを~というように素敵だと思っているよ。こんな話ばっかりしていてもなんだから、お茶でも飲みに行こう!」とつたえ、違う場所に行って気分転換を図る。

相手が過剰に卑下していても相手を変えようとせず、本人の卑下する気持ちを尊重しながら、自分は自分で相手を大切にする気持ちを持ち続けるという立ち位置でかかわります。

 

「お役に立とうとしただけなのに」「こんなに一生懸命やってるのにゲーム対応例

3) 部下があまりにも仕事に一生懸命になりすぎていて、「お役に立とうとしただけなのに」「こんなに一生懸命やってるのに」のゲームになりそうだと気づいた場合の対応例

会社や自分のために頑張ってくれていることを大いにねぎらった後で、部下自身がどんな仕事をしたいかを聞いてみます。

このゲームをやる人は相手に合わせすぎてしまって自分を見失うところがありますから、自分自身がどうしたいのかを聞き取り、仕事のやり方を調整するといいでしょう。

 
ゲームは子どものときから命がけの戦略です。実際にはちょっとやそっとでやめてくれないことも多いです。

わかっていても“ゲーム”に巻き込まれて最終定期に嫌な後味を感じる場合もよくあります。ですからゲームにはまったからと言って自分を責める必要はありません。気づいただけでもよくやったと、自分をほめてあげましょう。

自分がゲームをしていると気づいたら

気づいた時点でゲームをやめ、いったんトイレにでも行って一呼吸し、仕切り直して相手とのコミュニケーションを再開する…ということができたら理想的です

実際はゲームが完了して嫌な後味を感じながら大反省…ということがほとんど。それだけ子どものころの戦略とは強いものです。

だからこそ、繰り返して書きますが、自分を責めないことです。深呼吸をして姿勢を正し、自分の中の冷静な判断力を取り戻しましょう。

自分が欲しいストロークは?

ゲームをした後でもできることはないか、フォローできることはないかを考えて行動に移します。

そして、本当に欲しいストロークはなにかを自分に問うてみましょう。自分からストロークを求めることは決して悪いことではありません。

また、カウンセリングで自分を見つめるというのもいいでしょう。事実、交流分析のセラピストは自分のゲームの問題を解消することが推奨されています。

自分自身がゲームをしているのにクライエント(相談者)のゲームを解決することはできないからです。

まとめ

このページでは、心理カウンセラーの大久保先生が心理療法の一つである「交流分析」でで人間関係の「困った」を解消する方法をお伝えしました。

このページでいうゲームとは、心理療法の一つである交流分析の専門用語で、決まって後味の悪い結末で終わるパターン化されたやり取りのことをいいます。そしてそれは幼少期からの生き抜くための戦略でもあります。

自分がゲームをされた、してしまった、としてもお互いさまです。誰もが何かしらのゲームをしているからです。自分を責めず、今できることは何かを探していきましょう。ゲームは力強く生きてきた証でもあります。

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