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COUNSELOR - 2020.04.24

杉山教授のこころラボ 第1回 「不安の方程式とコロナ禍」

この記事を書いた方のご紹介

杉山崇(神奈川大学教授)

リカレント スクール教務顧問
神奈川大学教授/1級キャリアコンサルティング技能士/臨床心理士
脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法を開発・研究を行う。
うつ病研究、認知行動療法のトップランナー。臨床歴20年以上。著書は20冊以上。
講演、TV、雑誌などメディア実績も多数。

皆さん、新型コロナウィルスの猛威が一向に収まりませんね。世界の死者は執筆現在で15万人と言われています。感染リスク、とても不安ですよね。

不安は人生のパートナーです

不安は私たちが安全に生き抜くためのパートナーです。私たちに、この先に潜むリスクについて教えてくれます。大切にしなければなりません。

ただ、不安も過ぎると私たちの判断を鈍らせたり、焦りを招いたりして私たちを混乱させます。不安の言いなりになるだけではなく、上手に付き合う必要があります。不安との対話が必要です。

大切なパートナーのことはよく知っておかないと、一緒にやっていけませんよね。そこで、ここでは不安について学びましょう。

ところで、心の専門家を目指す皆さんは、このように感情(感覚:センス)をちょっと擬人化して向き合うアプローチ、どこかで聞いたことがあるかもしれません。これはフォーカシングという技法の一部です。機会があったら、ぜひご一緒に学びましょう。

不安の方程式

ここで、皆さんに不安の方程式をご紹介しましょう。この方程式はP.Salkovskisという英国の心理療法家らが強迫性障害の心理教育に活用しているものです。

心理教育とは心の仕組みを簡単に説明する心理支援の一種です。「心の取扱説明書」を学ぶようなアプローチと思って下さい。認知行動療法でよく活用されています。

取扱説明書なので設計図のようなものではありません。なので、不安のすべてを解き明かす方程式というわけではないのです。ですが、この方程式による説明で多くの方が不安を軽減することができています。したがって、不安の性質の一端を表していると言えるでしょう。この方程式も、機会があったら使いこなし方をご一緒に学びましょう。

この方程式は、全てご本人の主観的な数字(すべて0-100)ということになりますが…

という分数で表されます。

分数ですので、分子が“0”でない限り、分母が“0”だと不安は無限大(∞)に膨らみます。この方程式の第1のポイントは、有効な手立てがないと、不安は限りなく大きくなるということです。

コロナ禍に当てはめると「手立ての有効性」は限りなく“0”

この方程式をコロナ禍と呼ばれる今現在に当てはめてみましょう。新型ウィルスとは「免疫を持つ人がいない、有効な抗ウィルス薬がない」という場合にこのように呼ばれます。つまり、分母に当たる「手立ての有効性」は限りなく“0”に近い状態です。

最強最悪を「死亡」とすると…

次に最強最悪の事態を「新型コロナウィルス感染による死亡」と設定してみましょう。死亡は最強最悪な事態のなかでも別格に「最凶」です。危険性はほとんどの方にとって“100”です。

ただ、2月くらいまでは、このウィルスで死亡する可能性は低いと考えている方が多かったようです。実は、感染力と毒性は反比例するという「感染症の公式」があります。この公式では広く感染が拡大する場合は毒性が弱まることを示唆します。そこで、「ほとんどが比較的軽症で終わる」と考えられていました。

つまり、「最強最悪が本当になる可能性は、ほぼ“0”」と思われていたのです。そこで、「新型=手立ての有効性が“0”」であるにも関わらず、不安をあまり感じていない方も多かったようですね。

「死亡リスク」は“0”ではなかった!

しかし、高齢者の死亡リスクが高いことや欧米で健康と思われていた若い方の死亡事例が報道されるにつれて、「このウィルスで死亡する可能性は“0”ではない!」と知られてきました。となると、不安は一気に無限大まで上昇します。現在の私たちは、この「無限大の不安」の中を生きています。

正しい情報で、不安をコントロール!

この方程式の第2のポイントは、本当は可能性が低いことに怯えている事が多い、ということです。効な手立てを思いつかないときの分母は“0”、すなわちどんなに可能性が低くても不安は無限大になるからです。そこで、認知行動療法では手に入る限りの情報を精査して、手立てと可能性を考え直します。

コロナ禍においては、4月13日に厚労省が公表したデータでは感染した方の中で30代以下の死亡は“0”です。50代までは数百人に1人、60代で100人に1人くらいです。ただし、70代では5.7%、80代で9.57%、90代以上では9.17%の方が亡くなっています。この数字をどのように捉えるかはあなたの年齢などで変わってくると思います。また、自分が感染させるリスクも込で考える必要があります。

大事なことは、このような正しい情報を見ながら「本当に有効なこと」を見つけることです。これは私の場合ですが、いわゆるアラフィフの私の場合は自分が感染している可能性を考慮して、うつさないことを第1に心配しています。

不安は正しく考えよう!

やや怪しげな表現かもしれませんが、有効な手立てを考えながら「不安さん、これでよろしいでしょうか?」と相談してみましょう。そうすると、本当に有効な手立てを考えることができます。不安は主にかなり原初の脳の働きなので、合理的で戦略的な人類の脳との対話も可能なのです。「不安は友達、怖くない!」心の専門家を目指す皆さんはこのことを忘れないでくださいね!

まとめ

杉山教授のこころラボ 第1回では、「不安の方程式とコロナ禍」をテーマに不安のメカニズムと対処法を解説していただきました。心の専門家を目指す皆さんにとって有意義となる情報を、杉山教授がわかりやすく解説をしていくのがこのコーナーです。ぜひ楽しみにしていてくださいね。

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