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COUNSELOR - 2020.11.23

杉山教授のこころラボ 第7回「時代が求めるカウンセラー③」ー心理学ブームとカウンセリングの職業化ー

この記事を書いた方のご紹介

杉山崇(神奈川大学教授)

リカレント スクール教務顧問
神奈川大学教授/1級キャリアコンサルティング技能士/臨床心理士
脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法を開発・研究を行う。
うつ病研究、認知行動療法のトップランナー。臨床歴20年以上。著書は20冊以上。
講演、TV、雑誌などメディア実績も多数。

杉山教授のこころラボ 第7回「時代が求めるカウンセラー③ー心理学ブームとカウンセリングの職業化ー」

カウンセリング界の思春期は反抗期?

カウンセリングの第1世代は経済の高度成長期で蔑ろにされてきた心を救うべく、まるで勇敢な「革命家」のように日本に傾聴を導入しました。続く第2世代は世の中がバブル経済に向かう中でまるで文学者か哲学者のように内省に富む「深み」のあるカウンセリングを展開しました。
その中で進んだカウンセリングの資格化、資格の推進派と反対派の分裂、「家元制度」とも言われる学派間の乖離…。師の村瀬孝雄は「思春期」と表現しましたが、当時のカウンセリング界が「時代が求めるカウンセリング」を提供していたかどうかは慎重に振り返る必要があります。
なぜなら思春期とは、まだまだ「自分で精一杯」なステージです。自己確認や自分探しの中で「反抗的」になることもあります。もしかしたら、師の「思春期」という表現には「反抗期」というニュアンスもあったのかもしれません。各派閥が交流しなかったのも、思春期に子ども部屋に籠もるような現象だったのかもしれません。
しかし、仮に「反抗期」だったとしても、「思春期」は次の成長のための試行錯誤のステージです。旧厚生省や医療関連の団体との協力を目指して諦める…、という試行錯誤で生まれた文部科学省管轄の臨床心理士資格。この資格化は第1世代とも第2世代とも違うタイプの次の世代をカウンセリング界に呼び込みました。
今回もこの世代の誕生について考えてみましょう。

第3世代誕生のさらなる背景―1990年代の「心理学ブーム」

前回の「時代が求めるカウンセラー②」でも故河合隼雄らの尽力で進められた資格化と第3世代の誕生の関連をご紹介しました。ただ、第3世代について考えるには、さらなる背景も考慮する必要があります。
その背景を一言で表すなら「心理学人口の激増」と言えるでしょう。

私が特に注目したいのは、
①1990年代の「心理学ブーム」と大学における「心理バブル」
②カウンセリングや心理学が「仕事がある学問」
と期待され始めたこの2つです。

まずは①「心理学ブーム」について考えてみましょう。
心理学が発展する中で、心理学は世の中のさまざなな「なぜ?」に興味深い答えを出せるようになってきました。
その結果、心理学が社会的に注目され始めました。たとえば故大山正(元東京大学教授)など心理学をわかりやすく解説する一流の学者の尽力もあって、1990年代は心理学ブームが起こりました。

大学の「心理学バブル」の始まり

当時はテレビやマスコミに連日のように「心理の専門家」を名乗る方が登場するほどのブームでした。中には怪しい解説をする「自称、専門家」もいたようです。ただ、この時期に心理学に関心を持つ人が急増したことは間違いありません。
 心理学への興味は高校生にも広がりました。時代はまさに人口のボリュームゾーン世代の受験生の急増期。心理学を目指す受験生が急増しました。一方で、心理学を学べる大学が少なかった時代です。その結果、各大学の心理学科(とそれに類する課程)の偏差値が跳ね上がるという現象が起こりました。そして、心理学課程の拡大・拡充、新設を進める大学が急増しました。この動きの中で、1990年代半ばから大学における「心理学バブル」がはじまります。その実態として、大学で何が起こったのかについては次回以降でご紹介しようと思います。

心理学は「仕事がない学問」だった?

さて、大学における「心理学バブル」がはじまったわけですが、
この背景にはさらに②の心理学が「仕事がある学問」かもしれない…という期待の高まりもありました。
第1世代や第2世代が職業選択を行ったころ(1980年半ばごろまで)、「心理学は仕事がない(学んでも仕事や収入につながらない)」と当たり前のように言われていました。
もちろん「仕事がない」のは心理学に限りませんでした。文学や社会学、文化人類学などは今でもそう言われています。「仕事や収入に注目すると、医療系や法律系、経済や経営、化学工業などの実用に重きを置く「実学」が圧倒的に有利だからです。
ただ、心理学が収入につながりにくい時代にあっても、第1世代や第2世代にとっては大きな問題ではなかったようです。私の知る限り「自分たちがやらなければ」という使命感や経済中心の世の中の雰囲気へのアンチテーゼのようなものがこの世代の行動原理として強かった印象があります。

心理学が仕事になる時代へ

しかし、資格化によってカウンセリングや心理学は「実学」になるかも…という期待が広がりました。実態としてはIT系のように「仕事がいっぱい」というわけではありません。ですが「心理を活かした仕事」が少ないながらも「ある」のです。その結果、「心理は仕事がない」と一概には言いにくくなりました。
この変化は大きな変化です。なぜなら、ちょうど時代的にも出身学部と就職先のリンクがゆるくなったことも重なって、受験生の親が「心理学への進学」に反対することが減ったのです。「心理の仕事も、他の仕事もあり得る」という期待が、心理学を目指す受験生を後押ししたことは言うまでもありません。このことも大学の心理学バブルの一因だったと言えるでしょう。

心理学とカウンセリングが職業として選ばれる時代へ

私が第3世代と呼ぶ層の多くは、当時の受験生だった方々です。
この世代は、ご紹介してきた背景の中で「心理で仕事につく」、「心理で稼ぐ」という意識が相対的に強い世代だと言えるでしょう。つまり、当時の受験生には「すでに確立された職業」の選択の一環として「心理学」や「カウンセリング」があり得た時代だったのです。
折しも、バブル経済の崩壊は「就職氷河期」を作り出し、「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代を作り出しました。ロストジェネレーション世代の多くは、企業に依存したキャリア」を一つのロールモデルにしていました。
しかし、バブル崩壊でそれが難しくなりました。そこで資格で仕事に就こうと考える人が増えました。その仕事につながる資格の一つとして臨床心理士が選ばれたことも、「職業としての選択」を後押ししたと言えるでしょう。

第3世代の職業意識

第1世代、第2世代に続く世代が誕生した背景をここまでご紹介してきました。
心理学やカウンセリングへ向かっていく背景や環境がその前の世代と大きく違ったことをご理解いただけたと思います。
私の印象ですが、次の世代は第1世代、第2世代のように「自分が生きる道はこれしかない」という意識が相対的に低かったように思われます。そのかわり、職業を通して社会に参加するという比較的「一般的な感覚」が相対的に高く、「道」というより「職業」として捉える意識が強かったようです。
そのため、90年代前半から2000年代の前半までは臨床心理士の受験資格は得ても去っていく方が相対的に多かったようです。その理由としては、「医師並みに評価はあり得ない」という現実や「心理学バブル」の実態にがっかりした、あるいは第1世代、第2世代との意識の違いに戸惑った、などと耳にしたことがあります。
その中で、評価や実態、世代間の意識の違いを乗り越えて心理学やカウンセリングを職業として続けた層が次の第3世代となります。「失われた20年」と言われる時代の中で、第3世代はどのような心理学やカウンセリングを展開したのでしょうか?次回以降で考えてみたいと思います。

まとめ

杉山教授のこころラボ 第7回では「時代が求めるカウンセラー」をテーマに「心理学ブームとカウンセリングの職業化」を解説していただきました。第3世代は心理学やカウンセリングへ向かっていく背景や環境がその前の世代と大きく違ったことをご理解いただけのではないでしょうか。
この後、心理学やカウンセリングはどのように展開していくのか。次回もぜひお楽しみに。

心の専門家を目指す皆さんにとって有意義となる情報を、杉山教授がわかりやすく解説をしていくのがこのコーナーです。ぜひ楽しみにしていてくださいね。

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