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COUNSELOR - 2020.04.12

“コロナ不安”をカウンセリング技法で解消!~認知行動療法で現実に対処する力を身につけよう~

記事を書いた方のご紹介

大久保ゆうこ(リカレント専任講師)

公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士、EAPメンタルヘルスカウンセラー。
現在は専任講師として活躍しながら心療内科、更生保護施設、外部EAPの企業にてカウンセラーとして従事。
さまざまな心理療法を実践しつつ、メンタルヘルスのための食事アドバイスも行っている。
著書に『食べる順番健康法ー好きなものをガマンしないでいい!』(こう書房)がある。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年4月8日に7都府県に対して緊急事態宣言が発令されました。メディアでは連日新型コロナウイルスの報道がされており、日に日に感染者が増え続けている状況です。非常事態宣言が出ていない地域でも予断の許されないような状況と言われています。

この状況では、誰でも不安な気持ちになって当然です。特に家族の中に病気の方や幼い子供、高齢者がいる方は余計に気がかりなことでしょう。しかし、不安が募っているばかりでは、心にも身体にも良いことがありません。今回は不安な気持ちがある中でも、心のバランスを取り戻す方法をご案内します。

ある程度の不安感は必要です

では、不安が全くなれは良いかというと、そうではありません。新型コロナウイルス感染症は拡大しているので、油断してしまっては感染リスクをあげることになってしまいます。人間の感情は命を守るためにも機能しています。現実に即した不安感はむしろ必要です。

不安があるからこそ、人ごみの中に出かけるのをやめようと思ったり、しっかり手洗いをしようという意識に繋がります。逆に、非現実的な不安は何も手につかなくなったり、過剰に買い物をする行動に走ってしまうなど、問題解決の妨げになります。非現実的な不安を取り除くことで、今、何に困って何が必要かを客観的に判断ができればさらに感染リスクを下げることにもなりますし、不要なストレスを減らすことにもつながります。

こんな時は認知行動療法を実践するのがオススメです

認知行動療法とは心理療法の一つで、現状をどのように対処するかを考えることにおいて適している療法です。ここでは「新型コロナウイルスに感染したらどうしよう」という不安をテーマに、認知行動療法の進め方を具体的にお伝えします。紙とペンを用意して実際にやってみるとよいでしょう。

<ワーク>認知行動療法で「新型コロナウイルスに感染したらどうしよう」という不安を分析しよう

<やり方>

①自分の心の中に湧き上がる感情とパーセンテージを書きます

あなたは新型コロナウイルスに感染することを考えるとどんな感情になりますか?

心の中に湧き上がる感情は不安感だけではないかもしれません。自分の感情にはどんなものがあるか、まずは自分の感情をじっくり感じてみてください。

そして、一つ一つの感情がどのくらいの強さなのかをパーセンテージで表してみましょう。不安を例にあげると、最高潮の不安を100%、不安が全くない状態を0%とした時に今の自分にはどのくらいの不安があるのか、という具合です。あまり深く考えず、数値は直感で出すことをオススメします。

例) 不安 80%   怖さ 40%   イライラ 30%

②「感染する」という思い込みが正しいとする客観的な事実を探します(証拠)

まず注意があります。この項目をやる場合には、必ずこの後に続く③までやり終えてください。②だけで終わってしまうと、かえって不安感が増してしまうこともあります。この項目をやること自体不安のある方は③をやってから②をやってもいいです。

ここでは、「感染するのでは」という不安が正しいとする「証拠」を考えて書き出します。自分の思い込みではなく、目で見たり聞いたり、体験した出来事のなかから証拠を見つけていきます。なるべく客観的なことがいいでしょう。

 例)
・今日買い物に行った時に、人がたくさんいた
・すれ違いざまに人とぶつかってしまった
・ニュースでは「感染した感覚がなくても感染している場合がある」と言っている
・なんとなく喉がイガイガする

③「感染しない」という思い込みが正しいとする客観的な事実を探します(反証)

今、不安に思っていることの逆の考え方に対しての証拠を探します。この場合には「感染するのでは」ということに対しての反対なので「感染しない」ということの証拠探しをします。これを「反証」といいます。

②と同様、なるべく客観的なことをあげてください。自分の思い込みではなく、目で見たり聞いたり、体験した出来事の中から証拠を見つけていきます。②で出した項目に対して、「それでも感染していないとしたらどんな証拠はある?」というように、②の答えと対応付けて考えるのも一つです。(例えば、「なんとなくイガイガする。それでも感染していないとしたらどんな証拠がある?」と自分に問いかけてみてください)。

 例)
・出かけるときは必ずマスクをしているし帰ったらすぐ手を洗う
・買い物以外は家にずっといた
・人とぶつかったときは服と服が触れただけで肌には触れなかった
・スーパーで知り合いを見つけたけど立ち話をしないですぐに帰った
・何日経っても家族の全員が体調を崩さないでいる。感染したとしても全員が無症状なんてことはあり得るんだろうか?
・私は花粉症である

④ ②と③を「しかし」でつなぎます(適応思考)

「感染しているのでは」ということに対しての「証拠」と「反証」を並べてみることが狙いです。二つ並べてみることで現実的な考え(適応思考)になります。箇条書き全体に対して「しかし」でつないでもいいですし、箇条書きの一つ一つに対して「しかし」をつないでもいいです。

■箇条書き全体に対して「しかし」でつなぐ場合

例)
・今日買い物に行った時に、人がたくさんいた
・すれ違いざまに人とぶつかってしまった
・ニュースでは「感染した感覚がなくても感染している場合がある」と言っている
・なんとなく喉がイガイガする

   「しかし」

・出かけるときは必ずマスクをしているし帰ったらすぐ手を洗う
・買い物以外は家にずっといたし
・人とぶつかったときは服と服が触れただけで肌には触れなかった
・何日経っても家族の全員が体調を崩さないでいる。感染したとしても全員が無症状なんてことはあり得るんだろうか?

■箇条書き一つずつに対して「しかし」でつなぐ場合

例)
・今日買い物に行った時に、人がたくさんいた

   「しかし」

・買い物以外は家にずっといた

・すれ違いざまに人とぶつかってしまった

   「しかし」

・人とぶつかったときは服と服が触れただけで肌には触れなかった
 

⑤改めて感じる感情を書きしるし、それぞれにパーセンテージをつけ、②と比較します。

気付いたことなども一緒にメモしておくといいでしょう。
①の時とどう変わったかを見ていきましょう。

例) 不安 40%  怖さ  20%  イライラ10%

自分が意外とコロナ対策していることに気づけた。買い物するときは込んでなさそうな時間を選ぶともっといいかもしれない。

現実を見ながらの判断がカギ

新型コロナウイルスの感染予防のための自粛生活はまだまだ続きそうです。感染リスクがある以上、不安があることは命を守ることでもあり、おかしなことではありません。しかし不安に踊らされないようにすることが大事です。そのために、現実的な判断をしながら気持ちも整えていきましょう。不安が大きくなったら認知行動療法をつかってみてくださいね。

どうしてもつらいときは専門家に相談するもの一つです。どうしても不安がとれなかったり、さらにいろいろな悩みが重なったり、気持ちをどうしたらいいかわからない時はカウンセラーに話を聴いてもらうことも有効です。日本全国に相談ダイヤルがありますから、この機会に利用してみるもの良い方法です。

厚生労働省 心の電話相談
公的な相談窓口だけでなく、NPOが主催している全国の相談窓口が掲示されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html

こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
働いている人の心のサポートのためのサイトです。電話相談だけでなくメール相談もでき、メンタルヘルスのためのいろいろな情報が載っています。
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/

今までの歴史の中で、感染症が終息しないという事例は1例もありません。しばらくは家にいなくてはならず、お友達に会えない日が続くかもしれません。それでも全国ONE TEAMでこの危機を乗り越えていきましょう。

 

いかがでしたでしょうか。今回は大久保ゆうこ先生に「不安」をテーマに、認知行動療法で不安を解消する方法を教えていただきました。

不安な気持ちになることは誰にでもありますが、認知行動療法を取り入れることで、心を落ち着かせることができます。ぜひ皆さんも実践してみてくださいね。

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