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MENTAL HEALTH - 2023.01.19

カウンセラーを目指す方なら知っておきたい!働く人のメンタルヘルス対策【8】「ストレスチェック制度」

私たちを取り巻く労働環境は大きく変化しています。厚生労働省が制定した医療計画の対象はがん、脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患、糖尿病の4疾病でしたが、2013年に精神疾患が追加されて5疾病となり、社会全体でメンタルヘルスに対する適切なサポートが急務と考えられるようになりました。

さらに2015年12月より労働者に対して年に1回のストレスチェック制度が義務化され、いよいよ職場でのメンタルヘルス対策が重要視されています。

このページでは、働く人を支援するカウンセラーを目指すあなたに、ストレスチェック制度の解説を通してメンタルヘルス対策を考えている事業者にどのように働きかけていけばよいかを解説します。

ストレスチェックとは?どのような制度?

「ストレスチェック制度」とは、その名の通り、雇用している労働者のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査のこと。

ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入した内容を、集計・分析します。「労働安全衛生法」の改正により、労働者が50人以上いる事業所では全ての労働者に対して毎年1回行うことが義務づけられるようになりました。現在のところ、契約期間が1年未満の労働者、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満となる短時間労働者は対象外となっています。

なお、ストレスチェックの実施やストレスの程度の評価などを行う実施者は医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師といった専門家と決められています。

また、結果は実施者から労働者本人に通知され、事業者が結果を入手するには結果通知後に、労働者本人の同意が必要となるなど、労働者個人のプライバシーを尊重した制度となっています。

労働者のストレスチェック制度を受けるメリット

労働者

ストレスチェックではストレスの度合いや、仕事上のどのようなことがストレスの原因となり得るのかなどがわかります。

また一人ひとりのストレスの特徴や傾向を数値や図表を通して解説するので、自分のストレスの状況を客観的に把握できます。ストレスが高まる前にセルフケアを始めるきっかけとなる方も多いのではないでしょうか。

なお、通知票の仕様については、決まりはありませんが、セルフケアのアドバイスを設けている場合もあります。ストレスの程度によっては、面接指導が必要かどうかを伝えます。そのため、労働者が安心して面接指導を申し出られるように、面接指導の医師もあらかじめ決めておかなければなりません。

ストレスチェックの結果は、部署や課など一定数の人数で、集計・分析します。事業者はその結果を通して状況を把握し、職場改善の対策を立てていくので、将来的な働きやすさにつながります。

事業者

一方、ストレスチェック制度の導入は、労働者側だけではなく、事業者側にとっても、職場の問題点を定期的に把握でき、職場改善の具体的な対策が検討しやすいというメリットがあります。

働き方改革が話題にのぼることが多い中、社会情勢などと合わせて多くの事業者が職場改善には頭を悩ませているので、労働者がどのような状態にあるのかがひと目でわかるのは、非常に有益です。

「労働者のメンタル不調を未然に防ぐ」という目的のもと、早急な対策がたてられれば、労働生産性が向上し、従業員の離職を防げるだけではなく、パフォーマンスの向上にもつながります。

全ての労働者にストレスチェックを受けてもらえるようにすること、高ストレスと判定された労働者が面接指導の申し出やすいようにすること、面接指導の結果を踏まえた適切な措置ができるようにすることなど、環境づくりが大切になります。

ストレスチェックの実施手順

ストレスチェックが労働者にも事業者にも大きな意義があるということは、おわかりいただけたと思います。次にストレスチェックの手順を説明します。

事前準備

 
主に事業者が行う

  1. ストレスチェック制度実施の方針を明示する。

  2. 実施を担当する部署など(実施担当者)を決め、実施方法などの詳細を話し合う。

  3. 話し合いの内容を明文化して、全労働者に明示する。

 

ストレスチェック

 
実施者・実施事務従事者と労働者の間で行われる

  1. 実施者が質問票を配布

  2. 労働者が質問票に記入

  3. 実施者・実施事務従事者が質問表を回収

  4. 実施者がストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定

  5. 実施者から労働者本人へ結果通知

 

面接指導

 
高ストレスと判定された労働者と専門の医師の間で行われる

  1. 労働者本人から面接指導の申し出をする

  2. 医師による面接指導の実施

  3. 就業上の措置の要否や具体的な提案を医師から意見聴取

  4. 就業上の措置の実施

 

集団ごとに集計・分析

 
実施者と事業者の間で行われる

  1. 実施者が回収された質問票を、部署などの集団ごとに集計・分析する

  2. 集計・分析結果を事業者へ通知する

  3. 事業者は結果を基に、職場の環境改善策を検討する

 
留意すべき点は、個人情報がしっかり保護され、適切な対応や改善につなげられる仕組みが守られることです。プライバシーが厳重に保護されることが大切で、労働者への不利益となるような扱いを防止するように努めなければなりません。

事業者、担当する部署などの実施担当者、医師などの実施者、実施の補助業務を行う実施事務従事者と立場がはっきり分かれているのもそのためです。

実践する上で注意すること

ストレスチェックを施行する事業者は、事前準備として前述の留意点が守られるよう詳細まで話し合い、明確にすることが大切です。

事前準備

  1. いつ、誰にストレスチェックを実施させるのか

  2. どんな質問票を使用するのか

  3. ストレスの程度の評価方法

  4. 面接指導の申し出は誰にするのか

  5. 面接指導を担当する医師は誰にするのか

  6. 組織分析の方法

  7. ストレスチェックの結果の保管方法 など

 
実施者については前述の通り、医者をはじめ、厚生労働省が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神健康福祉士、公認心理師から選定となっており、中でも事業場を把握している産業医が望ましいと言われています。また、実施事務従事者には社長や人事部長といった人事権のある人はなることができません。

質問票は「ストレスの原因に関する質問項目」「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」の3点が含まれていること以外は特に指定はありません。国が推奨する57項目の質問票もあります。

ストレスチェック、面接指導

事業者がストレスチェック制度を導入することは義務ですが、労働者が質問票に記入して提出することは義務ではありません事業者がストレスチェック制度を導入することは義務ですが、労働者が質問票に記入して提出することは義務ではありません。したがって強制はできないものの、職場改善につながるメンタルヘルス対策として労働者全員が受けるように推奨することは重要といえます。

結果通知方法には配慮が必要です。事業者を含めた第三者に知られない厳重な方式をとらなければなりません。

例えば面接指導が必要と判断された労働者に対してのみ、他の従業員と違う通知方法にするのは個人情報漏えいにつながる可能性があります。面接指導の要否が第三者に類推されない配慮が必要です。結果の保存においても、第三者に見られずに管理できる実施者か実施事務従事者に限られています。

面接指導を受けるかどうかも労働者個人の選択に任されています。事業者に各労働者の面接指導の要否が通知されることは禁じられていますが、労働者が面接指導の申し出を行えるように積極的に環境を整えてください。

結果通知からおおむね1カ月以内に申し出をし、そこから1カ月以内に面接指導の実施、さらに1カ月以内に医師からの意見聴取というように期限があります。

集団ごとの集計・分析

基本的には実施者によって行われます。労働者の同意がなくても結果を事業者に通知することができますが、10人に満たない集団の場合はストレス評価点総計の平均値を求める方法や仕事のストレス判定図(※)を使用するなど、個人の特定につながらない方法をとる必要があります。

※仕事のストレス判定図は、「仕事の量的負担」「コントロール」「上司支援」「同僚支援」の4つの尺度による計算で心理社会的な仕事のストレス要因の程度と労働者の健康に与える影響の大きさを評価する方法です。

EAPメンタルヘルスカウンセラーができること

ストレスチェックの実施においても、外部委託も可能となっており、EAPメンタルヘルスカウンセラーが事業者、実施担当者、実施者、実施事務従事者と連携して、事前準備から実施後に至るまでサポートするケースも増えてきています。

ストレスチェックの重要性を理解するための事業場全体への働きかけや、実施に至るまでの支援、報告書の作成、組織診断、職場環境改善の提案、事業場内での教育・研修などを幅広く行います。

また、個人に対するカウンセリングスキルを身につけているので、労働者個人の相談窓口としてカウンセリングを行うことも可能です。

加えて、高ストレス判定者が所属する集団などの組織に対するEAPコンサルティングスキルも心得ており、ブリーフセラピー、認知行動療法、交流分析、システム・アプローチといった心理療法や心理アセスメントにより、本人だけではなく、家族、同僚など本人を取り巻く人々を含めた支援を行うことが可能です。これからの時代、さらに活躍の場も広がっていくことでしょう。

まとめ

このページでは、働く人のメンタルヘルス対策の第8回目として、「ストレスチェック制度」の全容と、ストレスチェックにおけるEAPメンタルヘルスカウンセラーの役割についても解説しました。

EAPメンタルヘルスカウンセラーは事業者側、労働者側の双方と綿密な関係を保ち、総合的な職場改善につなげることができるのが最大の強みです。

ストレスチェック制度の導入に伴い、メンタルヘルス対策に取り組んでいく事業者は増えていきます。そして、そのトータルサポートができるEAPメンタルヘルスカウンセラーの存在も重要性が増すばかりです。まさに、これからの社会に必要不可欠といえるでしょう。

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