カウンセラーPress Counselor Press

カウンセラーの世界が広がる、
リアルなコラムや役立つ情報が多彩に

MENTAL HEALTH - 2023.01.15

カウンセラーを目指す方なら知っておきたい!働く人のメンタルヘルス対策【4】職場におけるハラスメント問題

パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなど、職場におけるハラスメントが問題となるケースが増えています。

「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」(日本労働組合総連合会調べ)によると、「職場でハラスメントを受けたことがある」と答えた人は32% にも上っています。

職場でのハラスメントによりメンタル不調を引き起こす従業員も増えており、中にはハラスメントにより休職・離職してしまう人もいます。

企業にとってハラスメント問題への対応は急務であるといえるでしょう。このページでは、職場におけるハラスメントとその実態について解説します。

「ハラスメント」とは?

「ハラスメント」とは、「嫌がらせ・いじめ」のこと。相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけられたと感じさせたり、脅威を与えたりする行為が該当します。

ここで重要となるのは、その発言・行動をした本人の意図に関係なく、「相手がどう感じたか」ということです。嫌がらせやいじめを行うつもりがなくても、その発言や行動が、相手を傷つける行為、苦痛を与える行為、不利益を与える行為になると、ハラスメントとなってしまいます。

先述の「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」では、上司からのハラスメントで多いのは「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃」となっており、同僚からは「隔離・仲間はずし・無視などの人間関係から切り離し」 のハラスメントが多くなっています。

それでは、職場におけるハラスメントにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

パワーハラスメント(パワハラ)

厚生労働省が発表した「2020年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワハラに該当すると判断した事案の具体的な内容は、精神的な攻撃が74.5%と最も高く、次いで人間関係からの切り離し20.6%、過大な要求16.9%と続いています。

厚生労働省 | 職場のハラスメントに関する実態調査について 図表16を参考に作成

厚生労働省によると、「職場のパワーハラスメント」は以下のように定義されています。

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

引用:厚生労働省  |  職場のパワーハラスメントについて

「職場のパワーハラスメント」を6つの類型

では、具体的にどのような行為が「パワーハラスメント」となるのでしょうか。厚生労働省では、「職場のパワーハラスメント」を6つの類型 に整理しています。

1.身体的な攻撃

暴行や傷害

2.精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3.人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視

4.過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5.過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6.個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

これらは典型的な例を類型化したものです。上記以外の行為がパワハラに該当することもあります。

重要なことは、何がパワハラにあたるかを認識し、パワハラの予防・解決に向けた取り組みを行うこと。近年、企業のパワハラに対する予防・解決の意識は高くなっており、52.2%の企業が取り組み実施しています。

また、パワハラに限らず、従業員向けの相談窓口を設置している企業は73.4% 。職場におけるハラスメントをはじめ、従業員の労働環境やメンタルヘルスなどの改善に取り組む企業が多いこともわかります。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場でのハラスメントで、パワーハラスメントの次に多いのがセクシュアルハラスメントです。また、取引先からのハラスメントで多いのも、セクシュアルハラスメント となっています(「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」連合調べ)。

セクハラは、以下のように定義されています。

セクシュアルハラスメントとは、職場における性的な言動に対する他の従業員の対応等により当該従業員の労働条件に 関して不利益を与えること又は性的な言動により他の従業員の就業環境を害することをいう。

引用:厚生労働省   |  職場におけるハラスメント対策マニュアル

「職場」とは、働いているところだけではなく、出張先、職務の延長と考えられる宴会なども該当します。労働者は、正社員に加え、契約社員、パートタイム労働者など、非正規労働者も含まれます。さらに、派遣労働者に関しては、派遣先の事業主は、自ら雇用する労働者と同様に扱うことが必要となります。

セクハラには、「対価型」「環境型」と2つの種類があります。

「対価型」

「対価型」は、「経営者から性的な関係を強要されたが、拒否したら解雇をされた」という場合が該当します。従業員の意に反する性的な言動に対して拒否したり、抵抗したりしたことで、解雇や配置転換などの不利益を被るものです。

 

「環境型」

「環境型」は、セクハラ行為により、就業環境が不快なものとなり、従業員の業務に支障が生じる場合のことです。

 
セクハラの内容は、性的な冗談やからかい、性的な事実への質問、食事やデートへの執拗な誘いなどがありますが、セクハラを受けるのは女性だけではなく男性も含まれていることも認識しておく必要があります。

妊娠・出産、育児休業・介護休業等に関するハラスメント

近年、問題となっているハラスメントのひとつが、妊娠・出産、育児、介護などに関するものです。厚生労働省のWebページではこのように定義されています。

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同 僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労 働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることです。

引用:厚生労働省   |  職場におけるハラスメント対策マニュアル

妊娠や出産に関するマタニティハラスメント(マタハラ)の場合、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などで、マタハラの防止措置をとることが使用者の義務とされています。

まだまだある職場におけるハラスメント

・モラルハラスメント(モラハラ)
言葉や態度による精神的な暴力・嫌がらせのこと。パワハラやセクハラは、モラハラの一種です。

・ジェンダーハラスメント
「男らしさ」「女らしさ」で判断し、相手を非難するハラスメント。LGBTに対するハラスメントも問題となっています。

・アルコールハラスメント
お酒の席での飲酒の強要、意図的な酔いつぶし、飲めない人への配慮を欠くこと、迷惑な行為や発言などのハラスメントです。

・エイジ・ハラスメント
年齢による差別のことで、他のハラスメント以上に、誰もが加害者にも被害者にもなる点が特徴。「もう若くないんだから」「若い世代に任せて」などの言葉もハラスメントになりえます。

他にも、タバコにまつわる「スモークハラスメント」、就活中の学生に対して他企業の辞退や就職活動の終了を強要する「終われハラスメント」、SNSでのコメントなどを強要してストレスを与える「ソーシャルメディアハラスメント」なども職場で起こりうるハラスメントです。

職場でのハラスメントにどう対応するか

ハラスメント問題は、従業員のメンタルヘルスの不調にもつながります。ハラスメントを受けて「仕事のミスやトラブルが多くなった」という人は全体の18%、特に20代男性は27%と高く、ハラスメントが従業員の生産性低下につながっていることがわかります。

また、 ハラスメントを受けた人の57%が「仕事のやる気がなくなった」、24%が「心身に不調をきたした」、23%が「仕事をやめた・変えた」と答えています。さらに、ハラスメントを受けた30代の男女と40代の女性の3割近くが離職を選んでいるというデータもあります(「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」連合調べ)。

パワハラに関しては、予防・解決の効果が高い取組として、相談窓口の設置や従業員向けの実施を挙げている企業が多くなっています(厚生労働省「2020年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査」より)。複数の取組を実施することが、従業員にとっては職場環境の改善などの効果を感じやすいようです。

しかし、職場でハラスメントを受けたことがある人のうち、「誰にも相談しなかった」という人はパワハラが35.9%、セクハラが39.8%でした。「相談しても無駄だと思ったから」「職務上不利益が生まれると思ったから」という人が多いようです。

職場でのハラスメントを予防・解決に力を入れている企業は増えていますが、被害を受けた従業員が相談しやすい環境を作ることも重要になります。

こうした職場におけるハラスメントにおいて適切な対応と被害にあった従業員のケアを行う際に効果的なのが、働く人のメンタルヘルスケアを行う「EAP(従業員支援プログラム)」です。

EAPメンタルヘルスカウンセラーは、メンタル不調を抱える従業員やその周囲の人に対して、カウンセリングを行い、問題の解決を支援します。つまり、ハラスメントの被害を受けている人、加害者となっている人や周囲の人も含めてカウンセリングを実施するため、効果的な解決策を提案しやすくなり、適切なケアを行うことにつながるのです。

まとめ

このページでは、職場におけるハラスメント問題について解説しました。

従業員のメンタルヘルス対策において、ハラスメントに関する問題は避けては通れません。職場では様々なハラスメント問題が起こり得ます。

ハラスメントによるメンタル不調、休職・退職を未然に防ぐためにも、EAPやメンタルヘルスのプロフェッショナルの知識とスキルが必要となります。

カウンセラーやキャリアコンサルタントとして活躍している方、目指している方にとって、この記事が参考になればと思います。

 
次回  働く人のメンタルヘルス対策【5】

カウンセラーを目指す方なら知っておきたい!働く人のメンタルヘルス対策【5】「ダイバーシティ支援:障害者の雇用・支援」

 

前回  働く人のメンタルヘルス対策【3】

カウンセラーなら知っておきたい!働く人のメンタルヘルス対策【3】近年注目を集めている「健康経営」とは何か

 

Information

初心者から短期間で
カウンセラーやキャリアコンサルタントになるには

リカレントはカウンセリングスクールとして、初心者から「キャリアコンサルタント」を育成する『リカレントキャリアデザインスクール』と、日本で初めての「EAPメンタルヘルスカウンセラー」、「EAPコンサルタント」を育成する『リカレントメンタルヘルススクール』を運営しています。

初心者からカウンセリングスキルを学んでみたい方、カウンセラーになりたい方、メンタルヘルスケアを学びたい方、国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得したい方など、対人支援の資格とスキルを取得してみたい方は、ぜひ下の青いボタンからパンフレットをご請求ください。

パンフレットは2,3日中にお手元に無料でお届けします。 パンフレットは2,3日中にお手元に無料でお届けします。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

RECOMMENDおすすめ記事

FEATURE特集

人気講師の対談や専門知識など、
役立つ情報が満載!

MoreView
↑