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COUNSELOR - 2021.02.05

杉山教授のこころラボ 第8回「時代が求めるカウンセラー④」ー職業意識が高い第3世代ー

この記事を書いた方のご紹介

杉山崇(神奈川大学教授)

リカレント スクール教務顧問
神奈川大学教授/1級キャリアコンサルティング技能士/臨床心理士
脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法を開発・研究を行う。
うつ病研究、認知行動療法のトップランナー。臨床歴20年以上。著書は20冊以上。
講演、TV、雑誌などメディア実績も多数。

杉山教授のこころラボ 第8回「時代が求めるカウンセラー④ー職業意識が高い第3世代ー」

第3世代の最初の仕事は…

ここまで、革命家のような第1世代とも哲学者のような第2世代とも職業意識がちがう第3世代誕生の背景をご紹介してきました。
第3世代は相対的に職業としてカウンセリングを考える意識が強く、その分、仕事に忠実でもありました。
1990年代の半ば、第3世代が最初に出会う「仕事」は自分が師事した学派に忠誠を誓うことだったように思われます。その中で第2世代のコピーのような第3世代も一部には生まれました。
そこで、まずは第1世代、第2世代が作り上げた学派についてご紹介しましょう。

精神分析

カウンセリングの学派の中で最も歴史が古く、壮大な思想体系を持つのが「精神分析」です。
正確には「精神分析」とは創始者のS.Freudの思想体系のみを指す言葉です。
したがって、S.Freudの弟子や後継者の思想は「精神分析的アプローチ」などと区別して表すこともあります。
ただ、一般的にはS.Freudの思想の発展版も含んで「精神分析」と呼ばれることもあります。

また、精神分析は長い歴史の中で正統派を名乗る「自我心理学派」、イギリスで乳幼児の観察などを経て発展した「対象関係学派(クライン派)」、後の家族療法や対人関係療法の礎となった「新フロイト派」、自己愛について体系的に論じた「自己心理学派(コフート派)」の4学派を構成するに至っています。日本の医療心理といえば長く精神分析でした。

なお、世界的には決してメジャーな学派ではないのですが、日本では故河合隼雄の存在感が大きかったこともあって、C.Jung思想に基づくユング派(ユンギャン)も一つの学派を構成しています。ユング派は日本では箱庭療法や芸術療法と深く結びつき、独自の発展を見せています。

来談者中心療法と人間性心理学

そして第1世代が活躍していた時期に、ほぼほぼ「カウンセリング」の代名詞のようになった「来談者中心療法」も一つの学派を構成していました。
創始者のC.Rogersの人間観を信奉するカウンセラーは「ロジェリアン」と呼ばれています。
実はこの方法論は精神分析の後継者争いの中で追放されたS.Ferencziとその共同研究者だったO.Rankが論じたものをC.Rogersがわかりやすく整えたものでした。そこで、広い意味では来談者中心療法も精神分析から派生した学派と考えることもできます。

ただ、独特の人間観は哲学者のE.Gendlinの考察と融合し、ロジェリアンの多くはフォーカシングを志向する学派へと発展しました。こうなると、もはや精神分析から完全に乖離したと言えるかもしれません。
また、科学的な心理学とは一線を画する人間の考察(人間学)に由来する「人間性心理学」は、「生き方の価値」を考察し、カウンセリングに活かしています。来談者中心療法もこの流れに合流しているので、ますます精神分析とは乖離していると言えるでしょう。なお、「精神分析の口語版」とも言われる交流分析は、近年は人間性心理学との親和性が高くなってきていますが、交流分析も日本では一つの学派を構成していると言えるでしょう。

ちなみに、私の師であった故村瀬孝雄は、晩年はフォーカシングの輸入に尽力していました。私も多少はその活動をお手伝いしましたが、私自身は主に師匠のカウンセリングの基礎となる心理科学を追求する仕事を受け継いで今日に至っています。

行動療法→認知行動療法と家族療法

そして、精神分析とほぼ完全に別文脈で生まれ、一時は精神分析を激しく批判していたのが行動療法も一つの学派を構成していました。
日本では「応用行動分析」という呼び方で子ども関連の問題に強い学派として定着していました。しかし、1990年代にはストレス研究が盛んになる中で、大人のストレス緩和でも行動療法は盛んに活用されるようになりました。また、1990年代に認知療法が輸入されると「認知行動療法」として学派を構成しました。

これらの学派は概ね1990年代には成立していましたが、90年代の半ばから台頭したのが家族療法(家族心理学:システムズアプローチ)です。家族療法の中にも精神分析のように複数の学派があります。
ただ、精神分析の学派間では相対的に議論の交流がよく行われ「統合的精神分析」の試みもあるのに対し、家族療法の学派間の関係はもっと複雑なようです。この状況は日本でも再現されているようです。

第3世代は家元制度に忠実だった?

第3世代が心理学の世界に足を踏み込んだ頃、日本はこのように多くの学派がありました。そして、学派間の交流はとても乏しい状況でした。思春期に自室に籠もって好きなことに没頭する少年・少女ではありませんが、それぞれに独自の人間観を信奉する文化を練り上げていったのです。

第3世代の多くは学びはじめる中で「医師並みの待遇」が得られないことはすぐに理解しました。中には、「騙された!」と憤って去っていく人もいましたが、「お金にならない」ことを覚悟して職業として選んだ人たちもいました。その多くが第1世代の気概や第2世代の理想に共感した人柄のいい人達でした。

あおして、当時は企業に入ったら「企業色に染まれ」というのが職業観の主流でした。職業としてカウンセリングを考える第3世代の多くも、まずはその「職業文化」に馴染もうとしました。すなわち、「家元制度」とも言われることのある文化に馴染み、自分の属する学派の正当な後継者となるための訓練に身を投じたのです。
こうして、第3世代の多くは、キャリア初期は第1世代や第2世代のコピーのように学派の理想を受け継ぎ、その禁忌を守り、家元制度を支える人材となりました。

職業としてのカウンセリング

しかし、大学を離れて職業としてカウンセリングを展開する中で、学派の限界を実感する第3世代も現れました。
例えば、私の周りでも認知行動療法の後継者としての訓練を受けた人がキャリア10年前後でユング派の学びを求めるようになっていました。
また、割と多い例としては医療現場が徐々に認知行動療法中心になる中で、精神分析のトレーニングを受けた人が認知行動療法を担当するようにもなってきました。
これは職業としては当然の姿勢です。カウンセリングという職業は対象者がいて、対象者のニーズがあって、そのニーズに応じたサービスを展開しなければなりません。一つの学派が提供するものは限られています。
幅広いニーズに対応するには、自分自身の幅を広げる必要があるのです。

学派を超えた展開が…

かく言う私は師の故村瀬孝雄に支持する前に行動療法による障害児支援の仕事に就いていましたが、師の影響で徐々にロジェリアンとなりました。
しかし、精神科に務めるようになって楽観的な人間観では患者を扱えない現実に直面し、当時の医療領域の主流だった精神分析の正統派を名乗る方に弟子入りしました。
やがて、精神分析の人間観にも限界を実感し、ユング派のトレーニングを受け、科学的で体系的な助言や提案の必要性から認知行動療法や人間関係療法を学ぶようになりました。

第3世代の多くはキャリア初期には学派に忠実だったかもしれません。しかし、職業意識が高い彼らは、徐々に理想よりも職業としての現実を見始めて、学派の枠を超えた活動を始めたのです。
次回は、その実際を更に詳しく紹介し、この流れが次に何をもたらすのかご紹介しましょう。

まとめ

杉山教授のこころラボ 第8回では「時代が求めるカウンセラー」をテーマに「職業意識が高い第3世代」について解説していただきました。第3世代は職業意識が高いゆえに、学派の枠を超えた活動へと展開していった背景をご理解いただけのではないでしょうか。
この後、心理学やカウンセリングはどのように展開していくのか、次回もとても楽しみですね。

心の専門家を目指す皆さんにとって有意義となる情報を、杉山教授がわかりやすく解説をしていくのがこのコーナーです。杉山教授に解説していただきたいテーマも合わせて募集しています。お気軽にお寄せください。

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